棄婦篇 曹植 魏詩
3年たってこなきはされ、さて曹植はなんて云うのか?
2013年3月20日 | 同じ日の紀頌之5つのブログ |
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棄婦篇 曹植 魏詩<56-#3> 女性詩709 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2093
棄婦篇
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
光好曄流離、可以戲淑靈。
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④いくら待っても子ができない)
悲鳴復何為、丹華實不成。
その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)
石榴【せきりゅう】を前庭に植う、緑葉【りょくよう】縹青【ひょうせい】を搖がす。
丹華灼【かしゃく】として烈烈、帷彩【いさい】として光榮有り。
光榮【こうえい】曄【よう】として流離【るり】、以て淑靈【しゅくれい】を戲らしむ可し。
鳥有り飛び乗り集まり、翼を樹って以て悲鳴す。
悲鳴夫れ何の爲めぞ、丹華は実成らず。
拊心長歎息、無子當歸甯。
わたしは胸をうって長いためいきをつくことになる。子がなければ実家に帰らねばならないのだ。
有子月經天、無子若流星。
子があれば月が天をわたると同じに晴れやかに一生をおえる。子がなければさ流れ星のように消え去るのみなのだ。
天月相終始、流星沒無精。
天の月はそのなかでいつまでも運行するが、流れ星は燃え尽きて消えればもう光明はない。
棲遲失所宜、下與瓦石并。
ぐずぐず日を過ごして、子作りの時機を逸してしまえば、流れ星のように下界で瓦や石ころ同様にされてしまうことになる。
憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
そんな心配事を思えばせつない思いがが次々に湧いてきて、夜通し眠れず、鶏のなく時刻になって歎きの吐息をするのである。
反側不能寐、逍遙於前庭。
ねがえりしても眠られず、前庭をひとりでぶらつくのだ。
心を射ちて長に歎息す、子無くんは當に歸寧すべし。
子有らば月天を経り、子無くんは流星の若し。
天と月とは相終始するも、流星は捜して精無し。
棲遲して宜しき所を失はば、下 瓦石と幷【あわ】せらる。
憂懐 中従り来り、歎息して鶏鳴に通ず。
反側して寐【い】ぬる能はず、前庭に逍遙す。
歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
收淚長歎息、何以負神靈。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。
招搖待霜露、何必春夏成。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
晚穫為良實、願君且安甯。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。
歭躇して還って房に入れば、肅肅たり 惟幕の聲。
帷を搴げ 更に帶を攝め、節を撫して素箏を弾ず。
慷慨餘音有り、要妙として悲しく且つ清し。
涙を収めて長歎息す、何を以てか神靈に負かん。
招揺霜露を待つ、何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と為る、願はくほ君且く安寧なれ。
『棄婦篇』 現代語訳と訳註(本文)
歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
收淚長歎息、何以負神靈。
招搖待霜露、何必春夏成。
晚穫為良實、願君且安甯。
(下し文)
歭躇【ちちょ】して還って房に入れば、肅肅たり 惟幕の聲。
帷を搴げ 更に帶を攝め、節を撫して素箏を弾ず。
慷慨餘音有り、要妙として悲しく且つ清し。
涙を収めて長歎息す、何を以てか神靈に負かん。
招揺霜露を待つ、何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と為る、願はくほ君且く安寧なれ。
(現代語訳)
あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。
(訳注)
歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
・歭躇 歭䠧は躊躇と同じ意味の語。あれこれ迷って決心できないこと。ためらうこと。
・肅肅 (1)しずかなさま。ひっそりとしているさま。 (2)おごそかなさま。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
・慷慨 1 世間の悪しき風潮や社会の不正などを、怒り嘆くこと。2 意気が盛んなこと。また、そのさま。情詩 曹植 魏詩<17>古詩源 巻三 643 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1789
曹植『情詩』
微陰翳陽景,清風飄我衣。
游魚潛淥水,翔鳥薄天飛。
眇眇客行士,徭役不得歸。
始出嚴霜結,今來白露晞。
遊者歎黍離,處者歌式微。
慷慨對嘉賓,悽愴內傷悲。
・要妙 幼抄とも書く。微妙の意。
收淚長歎息、何以負神靈。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。
招搖待霜露、何必春夏成。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
・招搖 北斗七星の柄の上端にある星。方向を指示し、それが西南を指すと秋になる。別にこれを桂樹の名と見る解もある。
・待霜露 何事も秋にならなければ成就せぬとの意。おなかに子供を宿しているかどうかがわかるということ。
晚穫為良實、願君且安甯。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。