漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

李白の詩を紹介。青年期の放浪時代。朝廷に上がった時期。失意して、再び放浪。李白の安史の乱。再び長江を下る。そして臨終の歌。李白1000という意味は、目安として1000首以上掲載し、その後、系統別、時系列に整理するということ。 古詩、謝霊運、三曹の詩は既掲載済。女性詩。六朝詩。文選、玉臺新詠など、李白詩に影響を与えた六朝詩のおもなものは既掲載している2015.7月から李白を再掲載開始、(掲載約3~4年の予定)。作品の作時期との関係なく掲載漏れの作品も掲載するつもり。李白詩は、時期設定は大まかにとらえる必要があるので、従来の整理と異なる場合もある。現在400首以上、掲載した。今、李白詩全詩訳注掲載中。

女詩・女の生き方

▼絶句・律詩など短詩をだけ読んでいたのではその詩人の良さは分からないもの。▼長詩、シリーズを割席しては理解は深まらない。▼漢詩は、諸々の決まりで作られている。日本人が読む漢詩の良さはそういう決まり事ではない中国人の自然に対する、人に対する、生きていくことに対する、愛することに対する理想を述べているのをくみ取ることにあると思う。▼詩人の長詩の中にその詩人の性格、技量が表れる。▼李白詩からよこみちにそれているが、途中で孟浩然を45首程度(掲載済)、謝霊運を80首程度(掲載済み)。そして、女性古詩。六朝、有名な賦、その後、李白詩全詩訳注を約4~5年かけて掲載する予定で整理している。
その後ブログ掲載予定順は、王維、白居易、の順で掲載予定。▼このほか同時に、Ⅲ杜甫詩のブログ3年の予定http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/、唐宋詩人のブログ(Ⅱ李商隠、韓愈グループ。)も掲載中である。http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/,Ⅴ晩唐五代宋詞・花間集・玉臺新詠http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/▼また漢詩理解のためにHPもいくつかサイトがある。≪ kanbuniinkai ≫[検索]で、「漢詩・唐詩」理解を深めるものになっている。
◎漢文委員会のHP http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/profile1.html
Author:漢文委員会 紀 頌之です。
大病を患い大手術の結果、半年ぶりに復帰しました。心機一転、ブログを開始します。(11/1)
ずいぶん回復してきました。(12/10)
訪問ありがとうございます。いつもありがとうございます。
リンクはフリーです。報告、承諾は無用です。
ただ、コメント頂いたても、こちらからの返礼対応ができません。というのも、
毎日、6 BLOG,20000字以上活字にしているからです。
漢詩、唐詩は、日本の詩人に大きな影響を残しました。
だからこそ、漢詩をできるだけ正確に、出来るだけ日本人の感覚で、解釈して,紹介しています。
体の続く限り、広げ、深めていきたいと思っています。掲載文について、いまのところ、すべて自由に使ってもらって結構ですが、節度あるものにして下さい。
どうぞよろしくお願いします。

棄婦篇 曹植 魏詩<56-#3> 女性詩709 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2093

棄婦篇 曹植 魏詩
3年たってこなきはされ、さて曹植はなんて云うのか?

2013年3月20日 同じ日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩棄婦篇 曹植 魏詩<56-#3> 女性詩709 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2093
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩原毀 韓愈(韓退之) <119-#5>Ⅱ中唐詩621 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2089
●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
Ⅲ杜甫詩1000詩集寒食 杜甫 <430>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2095 杜甫詩1000-430-613/1500
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Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集種桑 謝霊運<19> kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 2096 (03/20)
●森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”といわれているがこれに疑問を持ち異なる視点で解釈して行く。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性隔漢江寄子安 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-110-45-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2097
 
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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。
李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首
 

棄婦篇 曹植 魏詩<56-#3> 女性詩709 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2093


棄婦篇
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
光好曄流離、可以戲淑靈。
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④いくら待っても子ができない)
悲鳴復何為、丹華實不成。

その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)

石榴【せきりゅう】を前庭に植う、緑葉【りょくよう】縹青【ひょうせい】を搖がす。
丹華灼【かしゃく】として烈烈、帷彩【いさい】として光榮有り。
光榮【こうえい】曄【よう】として流離【るり】、以て淑靈【しゅくれい】を戲らしむ可し。
鳥有り飛び乗り集まり、翼を樹って以て悲鳴す。
悲鳴夫れ何の爲めぞ、丹華は実成らず。

拊心長歎息、無子當歸甯。
わたしは胸をうって長いためいきをつくことになる。子がなければ実家に帰らねばならないのだ。
有子月經天、無子若流星。
子があれば月が天をわたると同じに晴れやかに一生をおえる。子がなければさ流れ星のように消え去るのみなのだ。
天月相終始、流星沒無精。
天の月はそのなかでいつまでも運行するが、流れ星は燃え尽きて消えればもう光明はない。
棲遲失所宜、下與瓦石并。
ぐずぐず日を過ごして、子作りの時機を逸してしまえば、流れ星のように下界で瓦や石ころ同様にされてしまうことになる。
憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
そんな心配事を思えばせつない思いがが次々に湧いてきて、夜通し眠れず、鶏のなく時刻になって歎きの吐息をするのである。
反側不能寐、逍遙於前庭。
ねがえりしても眠られず、前庭をひとりでぶらつくのだ。
心を射ちて長に歎息す、子無くんは當に歸寧すべし。
子有らば月天を経り、子無くんは流星の若し。
天と月とは相終始するも、流星は捜して精無し。
棲遲して宜しき所を失はば、下 瓦石と幷【あわ】せらる。
憂懐 中従り来り、歎息して鶏鳴に通ず。
反側して寐【い】ぬる能はず、前庭に逍遙す。

歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
收淚長歎息、何以負神靈。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。
招搖待霜露、何必春夏成。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
晚穫為良實、願君且安甯。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。

歭躇して還って房に入れば、肅肅たり 惟幕の聲。
帷を搴げ 更に帶を攝め、節を撫して素箏を弾ず。
慷慨餘音有り、要妙として悲しく且つ清し。
涙を収めて長歎息す、何を以てか神靈に負かん。
招揺霜露を待つ、何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と為る、願はくほ君且く安寧なれ。


『棄婦篇』 現代語訳と訳註
魚玄機55021(本文)

歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
收淚長歎息、何以負神靈。
招搖待霜露、何必春夏成。
晚穫為良實、願君且安甯。


(下し文)
歭躇【ちちょ】して還って房に入れば、肅肅たり 惟幕の聲。
帷を搴げ 更に帶を攝め、節を撫して素箏を弾ず。
慷慨餘音有り、要妙として悲しく且つ清し。
涙を収めて長歎息す、何を以てか神靈に負かん。
招揺霜露を待つ、何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と為る、願はくほ君且く安寧なれ。


(現代語訳)
あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。


(訳注)
歭躇還入房、肅肅帷幕聲。

あれこれ迷ってまたわが部屋に戻ると、ひっそりとしずまりかえっていてとばりの衝立の中の寝台の音だけがする。
・歭躇 歭䠧は躊躇と同じ意味の語。あれこれ迷って決心できないこと。ためらうこと。
・肅肅  (1)しずかなさま。ひっそりとしているさま。  (2)おごそかなさま。


搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
そのとばりをかかげ、衣と帯をして衣裳ををととのえ、絃を指で押さえ撫でて白木の箏をかきならす。


慷慨有餘音、要妙悲且清。
意気が盛んな胸の思いをのせて余音は長く、妙なる調べは、悲しくもまたさやかにひびきわたる。
・慷慨 1 世間の悪しき風潮や社会の不正などを、怒り嘆くこと。2 意気が盛んなこと。また、そのさま。情詩 曹植 魏詩<17>古詩源 巻三 643 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1789
曹植『情詩』
微陰翳陽景,清風飄我衣。
游魚潛淥水,翔鳥薄天飛。
眇眇客行士,徭役不得歸。
始出嚴霜結,今來白露晞。
遊者歎黍離,處者歌式微。
慷慨對嘉賓,悽愴內傷悲。
・要妙 幼抄とも書く。微妙の意。


收淚長歎息、何以負神靈。
涙をおさめて長いため息をもらしつつ思う。神のみ心にどうしてわたしがそむくことができるというのでしょう。


招搖待霜露、何必春夏成。
北斗七星であるあの招揺の星も霜露の秋を待つものを、何も春や夏に急いで実を結ばねはならぬことはない。
・招搖 北斗七星の柄の上端にある星。方向を指示し、それが西南を指すと秋になる。別にこれを桂樹の名と見る解もある。
・待霜露 何事も秋にならなければ成就せぬとの意。おなかに子供を宿しているかどうかがわかるということ。


晚穫為良實、願君且安甯。
収穫はおそければよい実がなるというもの、あなたもどうかあせらずに、しばらく心をおちつけていただきたい。

棄婦篇 曹植 魏詩<56-#2> 女性詩708 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2088

棄婦篇 曹植 魏詩
子無くして棄てられた妻の心をよんだもの、君主に棄てられた家臣も同様と考えて作ったものである。

2013年3月19日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 

棄婦篇 曹植 魏詩<56-#2> 女性詩708 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2088



棄婦篇
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
光好曄流離、可以戲淑靈。
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④いくら待っても子ができない)
悲鳴復何為、丹華實不成。

その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)

石榴【せきりゅう】を前庭に植う、緑葉【りょくよう】縹青【ひょうせい】を搖がす。
丹華灼【かしゃく】として烈烈、帷彩【いさい】として光榮有り。
光榮【こうえい】曄【よう】として流離【るり】、以て淑靈【しゅくれい】を戲らしむ可し。
鳥有り飛び乗り集まり、翼を樹って以て悲鳴す。
悲鳴夫れ何の爲めぞ、丹華は実成らず。

拊心長歎息、無子當歸甯。
わたしは胸をうって長いためいきをつくことになる。子がなければ実家に帰らねばならないのだ。
有子月經天、無子若流星。
子があれば月が天をわたると同じに晴れやかに一生をおえる。子がなければさ流れ星のように消え去るのみなのだ。
天月相終始、流星沒無精。
天の月はそのなかでいつまでも運行するが、流れ星は燃え尽きて消えればもう光明はない。
棲遲失所宜、下與瓦石并。
ぐずぐず日を過ごして、子作りの時機を逸してしまえば、流れ星のように下界で瓦や石ころ同様にされてしまうことになる。
憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
そんな心配事を思えばせつない思いがが次々に湧いてきて、夜通し眠れず、鶏のなく時刻になって歎きの吐息をするのである。
反側不能寐、逍遙於前庭。
ねがえりしても眠られず、前庭をひとりでぶらつくのだ。
心を射ちて長に歎息す、子無くんは當に歸寧すべし。
子有らば月天を経り、子無くんは流星の若し。
天と月とは相終始するも、流星は捜して精無し。
棲遲して宜しき所を失はば、下 瓦石と幷【あわ】せらる。
憂懐 中従り来り、歎息して鶏鳴に通ず。
反側して寐【い】ぬる能はず、前庭に逍遙す

歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
收淚長歎息、何以負神靈。
招搖待霜露、何必春夏成。
晚穫為良實、願君且安甯。
歭躇して還って房に入れば、肅肅たり 惟幕の聲。
帷を搴げ 更に帶を攝め、節を撫して素箏を弾ず。
慷慨餘音有り、要妙として悲しく且つ清し。
涙を収めて長歎息す、何を以てか神靈に負かん。
招揺霜露を待つ、何ぞ必ずしも春夏に成らん。
晩穫は良實と為る、願はくほ君且く安寧なれ。


oborotsuki01h『棄婦篇』 現代語訳と訳註
(本文)
拊心長歎息、無子當歸甯。
有子月經天、無子若流星。
天月相終始、流星沒無精。
棲遲失所宜、下與瓦石并。
憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
反側不能寐、逍遙於前庭。

(下し文)
心を射ちて長に歎息す、子無くんは當に歸甯【きねい】すべし。
子有らば月天を経り、子無くんは流星の若し。
天と月とは相終始するも、流星は捜して精無し。
棲遲して宜しき所を失はば、下 瓦石と幷【あわ】せらる。
憂懐 中従り来り、歎息して鶏鳴に通ず。
反側して寐【い】ぬる能はず、前庭に逍遙す。


(現代語訳)
わたしは胸をうって長いためいきをつくことになる。子がなければ実家に帰らねばならないのだ。
子があれば月が天をわたると同じに晴れやかに一生をおえる。子がなければさ流れ星のように消え去るのみなのだ。
天の月はそのなかでいつまでも運行するが、流れ星は燃え尽きて消えればもう光明はない。
ぐずぐず日を過ごして、子作りの時機を逸してしまえば、流れ星のように下界で瓦や石ころ同様にされてしまうことになる。
そんな心配事を思えばせつない思いがが次々に湧いてきて、夜通し眠れず、鶏のなく時刻になって歎きの吐息をするのである。
ねがえりしても眠られず、前庭をひとりでぶらつくのだ。


(訳注)
拊心長歎息、無子當歸甯。
わたしは胸をうって長いためいきをつくことになる。子がなければ実家に帰らねばならないのだ。
・拊心 むねをうつ。拊は拍とおなじ。
・歸甯 寧とおなじ。やすらか。やすんずる。さとがえりする。


有子月經天、無子若流星。
子があれば月が天をわたると同じに晴れやかに一生をおえる。子がなければ流れ星のように消え去るのみなのだ。
・月経天 月が天を運行する。晴れやかなさまのたとえ。


天月相終始、流星沒無精。
天の月はそのなかでいつまでも運行するが、流れ星は燃え尽きて消えればもう光明はない。
・天月相終始 天上の中に包まれるように存在するという意味で、天の月に解す。相終始は終始変わらず循環する意で、相は月が一方的に循環する。相思の場合と同じで、互いにという意味だけでなく一方的に思うこと。
・精 光明。


魚玄機5x5棲遲失所宜、下與瓦石并。
ぐずぐず日を過ごして、子作りの時機を逸してしまえば、流れ星のように下界で瓦や石ころ同様にされてしまうことになる。
・棲遅 遊息すること。ここは夫の家にとどまってのんびり暮らす意。子供がいないと仕事をしていないわけであるから、ぐずぐず過ごすこと。


憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
そんな心配事を思えばせつない思いがが次々に湧いてきて、夜通し眠れず、鶏のなく時刻になって歎きの吐息をするのである。


反側不能寐、逍遙於前庭。
ねがえりしても眠られず、前庭をひとりでぶらつくのだ。

棄婦篇 曹植 魏詩<56-#1> 女性詩707 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2083

棄婦篇 曹植 魏詩
子無くして棄てられた妻の心をよんだもの、君主に棄てられた家臣も同様と考えて作ったものである。

2013年3月18日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩棄婦篇 曹植 魏詩<56-#1> 女性詩707 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2083
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
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李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
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女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 


棄婦篇 曹植 魏詩<56-#1> 女性詩707 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2083


棄婦篇
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
光好曄流離、可以戲淑靈。
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
悲鳴復何為、丹華實不成。
拊心長歎息、無子當歸甯。
有子月經天、無子若流星。
天月相終始、流星沒無精。
棲遲失所宜、下與瓦石并。
憂懷從中來、歎息通鷄鳴。
反側不能寐、逍遙於前庭。
歭躇還入房、肅肅帷幕聲。
搴帷更攝帶、撫節彈素箏。
慷慨有餘音、要妙悲且清。
收淚長歎息、何以負神靈。
招搖待霜露、何必春夏成。
晚穫為良實、願君且安甯。


棄婦篇
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
光好曄流離、可以戲淑靈。
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④いくら待っても子ができない)
悲鳴復何為、丹華實不成。

その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)

石榴【せきりゅう】を前庭に植う、緑葉【りょくよう】縹青【ひょうせい】を搖がす。
丹華灼【かしゃく】として烈烈、帷彩【いさい】として光榮有り。
光榮【こうえい】曄【よう】として流離【るり】、以て淑靈【しゅくれい】を戲らしむ可し。
鳥有り飛び乗り集まり、翼を樹って以て悲鳴す。
悲鳴夫れ何の爲めぞ、丹華は実成らず。


pla044『棄婦篇』 現代語訳と訳註
(本文)
石榴植前庭、綠葉搖縹青。
丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
光好曄流離、可以戲淑靈。
有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
悲鳴復何為、丹華實不成。


(下し文)
(棄婦篇)
を前庭に植う、緑葉縹青を搖がす。
丹華灼として烈烈、帷彩として光榮有り。
光榮曄として流離、以て淑靈を戲らしむ可し。
鳥有り飛び乗り集まり、翼を樹って以て悲鳴す。
悲鳴夫れ何の爲めぞ、丹華は実成らず。


(現代語訳)
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④いくら待っても子ができない)
その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)


haqro04(訳注)
棄婦篇

・棄婦篇 子無くして棄てられた妻の心をよんだもの、君主に棄てられた家臣も同様と考えて作ったものである。


石榴植前庭、綠葉搖縹青。
石榴の木を前庭に植えた。緑の葉がゆれて若葉の萌黄がはえる。(①嫁を娶った)
・石榴 漢の張鶱が西域の安石国(安息国。すなわち西アジアのパルティア王国。漢字はそのアルサケス朝を音訳したもの)から持ち帰ったと伝えられるので安石榴ともいう。女性の性器を卑猥なほど直接的な表現を使っている。石榴の種子を持ち帰ったことはそれとして評価するにしても、張鶱という人物を派遣して西王国を探しに行かせ、そこにある植物の種子を持ち帰るように命じた。不老長寿、回春のための浪費の一部である。王朝自慢の植物をできるだけ揶揄的にとらえて強調する。
・縹青 (浅青色)またもえぎ(青黄色)石榴(ざく、ろ)の葉にいうのであるから、もえぎ色とみる。


丹華灼烈烈、帷彩有光榮。
まっかな花が火の燃えるように輝き、きらきらと光って、とばりは五色にてりはえている。(②婚姻後の性交渉)
・曜珠 玉のかがやくさま。


光好曄流離、可以戲淑靈。
その照栄えるさまの輝かしさは、まるで瑠璃の玉のようであり、これこそりっぱな神霊を宿らしめるにふさわしいものである。(③これほどに大事にしたので授かるはずである)
・曄 光明のさま。
・流離 璧流離の略で、瑠璃の玉のこと。瑠璃は通常青色の宝玉を指すが、十種の光を放つというから丹色にも通じるものである。
・淑霊 善美な霊性の意。ここは性行為の比喩的語句である。


有鳥飛來集、樹翼以悲鳴。
そこへ鳥が飛んで来て木にとまり、羽ばたきをして、悲しげに鳴く。(④なかなか子ができないので心配する)


悲鳴復何為、丹華實不成。
その悲しげに鳴くのはなぜか。それはあかい花はりっばだが実がならないためなのだ。(⑤いくら待っても子ができない)

陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<55-#5> 女性詩706 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2078

陌上桑行 古詩・漢の無名氏
陌上桑は道のほとりの桑の意である。別の題名を「艶歌羅敷行」ともいい、王台新詠(巻二 には「日出東南隅行」とある。

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陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<55-#5> 女性詩706 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2078

この時代、一夫多妻制で、権力者はその力で美女を手元とに集めた。奇麗な女性を数多く妻にすることは、この時代の男性の評価基準とされるものなのである。場合によれば上位のものに献上するということも考えられる時代である。趣味と実用と、ある意味切り札にもなったのである。

舞台として、桑畑である、ここで働くのは寡婦という設定なのである。この詩の場合は、その夫が求婚者の太守以上の天子に御目見えしている高級官僚であるから、啖呵一括で終わりとなるのである。儒教者の節操という意味でいろんな寡婦像が描かれている中の一つである。

面白いのは、中国では、これが理不尽な求婚ではないということなのだ。この求婚した男に対する批判はないのである。男が、惚れぬいて妻にして、飽きたら捨てたとしても批判はされないのである。女は球根に対してのちに捨てられようとも断ることはできないので、求婚を受けるか、死ぬかの選択をせまられるのである。




陌上桑 #1
日出東南隅,照我秦氏樓。秦氏有好女,自名為羅敷。
東南の隅から出た朝日が昇る晩春のことである。まずわが秦氏の高殿を照らしている。
その秦氏に美しいむすめがいる。その名を自ら羅敷という。

羅敷喜蠶桑,採桑城南隅。青絲為籠係,桂枝為籠鉤。
羅敷は養蚕が上手である、城郭の南隅の桑畑で桑つみをする。
その時の彼女の格好は青い糸を籠のひもにし、桂の枝を寵のさげ柄にしている。

頭上倭墮髻,耳中明月珠。

頭の上に髪のまげをむすびのこりのかみをそのしたに垂れている。耳には明月の珠をかざり、
#2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。行者見羅敷,下擔捋髭須。
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。

少年見羅敷,脫帽著帩頭。耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。

來歸相怨怒,但坐觀羅敷。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
#3
使君從南來,五馬立踟躕。使君遣吏往,問是誰家姝。
その日に、うわさを聞いた国の太守が羅敷を見るため南の方からやって来て、五頭立の馬車をそこに立ちどまって進もうとしないのである。
太守は役人をよこしてたずねる。「ここのあなたはどちらの家の娘殿であろうか」と。

“秦氏有好女,自名為羅敷。”
まわりの人々が答えた。「泰家の美しい娘、その名は羅敷さんとおっしゃいます」
“羅敷年幾何?”
「その羅敷とやらはいくつになられるのか」
“二十尚不足,十五頗有餘。”
「二十にはまだまだならないけれど、十五歳は過ぎて随分たっています」
“使君謝羅敷,寧可共載不?”
太守はそこで羅敷にあいさつし、「どうだ、わたしの車に一緒に載って行くことはできませんか」と。
#4
羅敷前置辭:“使君一何愚!使君自有婦,羅敷自有夫。”
羅敷が進み出て申しあげる。「太守さまはいったいなんと愚かなことを謂われます。
太守さまには自らもとめた奥さまがいらっしゃるし、羅敷にも自らもとめられた夫があります。

“東方千餘騎,夫婿居上頭。何用識夫婿?白馬從驪駒;
東方地方軍における千余騎の軍隊、わたしの夫はその頭におります。
それに「夫を何で見わけるかといえば、白い馬に黒の若駒を従えています。」

青絲係馬尾,黃金絡馬頭;
青糸の紐を面繋から尻繋に押しかけし、それに黄金をからめてかざりをつけていいます」
#5
腰中鹿盧劍,可直千萬餘。
夫の腰には鹿盧の剣をおびている。その価は千万金余もする名剣なのです。
十五府小吏,二十朝大夫,
夫は十五の歳に役所の書記になっており、二十で朝廷の大夫になっています。
三十侍中郎,四十專城居。
三十では天子に近侍する侍従職、四十では一城の主となりました。
為人潔白晰,鬑鬑頗有須。
生まれつきの体格にめぐまれ、性格もよくすっきりした色白で、ふさふさとしたあごひげをしております。
盈盈公府步,冉冉府中趨。
威風堂々と役所を歩みます、急がねばならない時にはさっさと役所内を急ぎまわるのです。
坐中數千人,皆言夫婿殊。”
参列に同坐の方々から朝廷の数千人のひとびとが、みなわたしの夫が目立ってすぐれていると申します。」と。
(太守如きがこれ以上言うならば許しませんよ。早々に無礼を謝って立ち去りなさい。)

#1
日は東南隅に出でて、我が案氏の榎を照らす。
秦氏に好女有り、自ら名つけて羅敦と為す。
羅敷荒桑を善くし、桑を城の南隅に探る。
青緑をは籠系と為し、桂枝をば寵鈎と為す。
頭上には倭堕の磐、耳中には明月の珠。
#2
純綿を下裾と為し、紫緒を上宿と為す。
行く者は羅敦を見て、標を下して髭麦を括り、
少年は羅敷を見て、帽を睨して略頭を著はす、
耕す者は其の梁を忘れ、鋤く者は其の鋤を忘る。
来り節って相怨怒するは、但羅数を観るに坐するのみ。
#3
使君南より来り、五馬立って踟躕【ちちゅう】す。
使君吏をして遣かしめ、問う 「是れ誰が家の妹ぞ」 と。
「秦氏に好女有り、自ら名いうて羅敷と為す」。
「羅敷は年幾何ぞ」。

oushokun04「二十には尚は足らず、十五頗【すこぶ】る餘り有り」 と。
使君羅敷に謝す、「寧ろ共に載【の】る可きや不【いな】」 と。
#4
羅敷前【すす】んで辭を致す、「使君一に何ぞ愚なる。
使君自ら婦有り、羅敷は自ら夫有り。
東方の千餘騎、夫婿【ふせい】は上頭に居る。
何を用てか夫婿を識る、白馬驪駒【りく】を從へ、
青絲を馬尾【ばび】に繋【か】け、黄金を馬頭に絡【まと】ふ。
#5
腰中の鹿盧の剣は、千萬徐に値す可し。
十五にして府の小史、二十にして朝の大夫。
三十にして侍中部、四十にして城を専らにして居る。
人と為り潔白晰、鬑鬑【れんれん】頗【すこぶ】る須【ひげ】有り。
盈盈【えいえい】公府步,冉冉【ぜんぜん】として府中に趨【はしる】。
坐中の数千人、皆言ふ 『夫婿は殊なり』 と。


『陌上桑行』 現代語訳と訳註
(本文) #5

腰中鹿盧劍,可直千萬餘。十五府小吏,二十朝大夫,
三十侍中郎,四十專城居。為人潔白晰,鬑鬑頗有須。
盈盈公府步,冉冉府中趨。坐中數千人,皆言夫婿殊。”


(下し文) #5
腰中の鹿盧の剣は、千萬徐に値す可し。
十五にして府の小史、二十にして朝の大夫。
三十にして侍中部、四十にして城を専らにして居る。
人と為り潔白晰、鬑鬑【れんれん】頗【すこぶ】る須【ひげ】有り。
盈盈【えいえい】公府步,冉冉【ぜんぜん】として府中に趨【はしる】。
坐中の数千人、皆言ふ 『夫婿は殊なり』 と。


(現代語訳)
夫の腰には鹿盧の剣をおびている。その価は千万金余もする名剣なのです。
夫は十五の歳に役所の書記になっており、二十で朝廷の大夫になっています。
三十では天子に近侍する侍従職、四十では一城の主となりました。
生まれつきの体格にめぐまれ、性格もよくすっきりした色白で、ふさふさとしたあごひげをしております。
威風堂々と役所を歩みます、急がねばならない時にはさっさと役所内を急ぎまわるのです。
参列に同坐の方々から朝廷の数千人のひとびとが、みなわたしの夫が目立ってすぐれていると申します。」と。
(太守如きがこれ以上言うならば許しませんよ。早々に無礼を謝って立ち去りなさい。)


(訳注) #5
腰中鹿盧劍,可直千萬餘。

夫の腰には鹿盧の剣をおびている。その価は千万金余もする名剣なのです。
・鹿盧劍 剣の柄頭に玉の轆櫓(井戸の滑車の形)を飾りとしたもの。ロクロ仕掛けの環がついているもののばあいもある。


十五府小吏,二十朝大夫,
夫は十五の歳に役所の書記になっており、二十で朝廷の大夫になっています。
府小史 役所の小書記。玉台新詠は小吏につくる。
・朝大夫 朝廷に職任ある重要な太夫。


三十侍中郎,四十專城居。
三十では天子に近侍する侍従職、四十では一城の主となりました。
・侍中郎 天子に近侍する郎官。侍従の職。侍中官・郎官と二つに分けて見るを要せねであろう。
・專城居 一城の持主。


為人潔白晰,鬑鬑頗有須。
生まれつきの体格にめぐまれ、性格もよくすっきりした色白で、ふさふさとしたあごひげをしております。
・為人 人の性格にも体格にもいう。ここは、生まれつき、体についていう。体格的に能く性格のよいことを云う。
鬑鬑 髭のふさふさとして長いさま。


盈盈公府步,冉冉府中趨。
威風堂々と役所を歩みます、急がねばならない時にはさっさと役所内を急ぎまわるのです。
・盈盈 威風堂々とゆったりとするさま。
・冉冉 進むさま。
・趨 小またにはやく歩むこと。


坐中數千人,皆言夫婿殊。”
参列に同坐の方々から朝廷の数千人のひとびとが、みなわたしの夫が目立ってすぐれていると申します。」と。
(太守如きがこれ以上言うならば許しませんよ。早々に無礼を謝って立ち去りなさい。)
・殊 特別。人と異なって勝れている意。
4岳陽樓詩人003

陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<56>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2063


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謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html 謝靈運詩 六朝期の山水詩人。この人の詩は上品ですがすがしい男性的な深みのある詩である。後世に多大な影響を残している。
謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。

李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 

陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<56>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2063


陌上桑は道のほとりの桑の意である。別の題名を「艶歌羅敷行」ともいい、王台新詠(巻二 には「日出東南隅行」とある。長詩なので5分割して掲載する。


陌上桑 #1
日出東南隅,照我秦氏樓。秦氏有好女,自名為羅敷。
東南の隅から出た朝日が昇る晩春のことである。まずわが秦氏の高殿を照らしている。
その秦氏に美しいむすめがいる。その名を自ら羅敷という。

羅敷喜蠶桑,採桑城南隅。青絲為籠係,桂枝為籠鉤。
羅敷ほ養蚕が上手である、城郭の南隅の桑畑で桑つみをする。
その時の彼女の格好は青い糸を籠のひもにし、桂の枝を寵のさげ柄にしている。

頭上倭墮髻,耳中明月珠。
頭の上に髪のまげをむすびのこりのかみをそのしたに垂れている。耳には明月の珠をかざり、
#2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
行者見羅敷,下擔捋髭須。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
少年見羅敷,脫帽著帩頭。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
來歸相怨怒,但坐觀羅敷。

家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
#3
使君從南來,五馬立踟躕。使君遣吏往,問是誰家姝。
“秦氏有好女,自名為羅敷。”
“羅敷年幾何?”
“二十尚不足,十五頗有餘。”
“使君謝羅敷,寧可共載不?”
#4
羅敷前置辭:“使君一何愚!使君自有婦,羅敷自有夫。”
“東方千餘騎,夫婿居上頭。何用識夫婿?白馬從驪駒;
青絲係馬尾,黃金絡馬頭;
#5
腰中鹿盧劍,可直千萬餘。十五府小吏,二十朝大夫,
三十侍中郎,四十專城居。為人潔白晰,鬑鬑頗有須。
盈盈公府步,冉冉府中趨。坐中數千人,皆言夫婿殊。”

#1
日は東南隅に出でて、我が案氏の榎を照らす。
秦氏に好女有り、自ら名つけて羅敦と為す。
羅敷荒桑を善くし、桑を城の南隅に探る。
青緑をは籠系と為し、桂枝をば寵鈎と為す。
頭上には倭堕の磐、耳中には明月の珠。
#2
純綿を下裾と為し、紫緒を上宿と為す。
行く者は羅敦を見て、標を下して髭麦を括り、
少年は羅敷を見て、帽を睨して略頭を著はす、
耕す者は其の梁を忘れ、鋤く者は其の鋤を忘る。
来り節って相怨怒するは、但羅数を観るに坐するのみ。

#3
使君南より来り、五馬立って蜘踊す。
使君束をして徒かしめ、間ふ 「是れ誰が家の妹ぞ」 と。
「秦氏に好女有り、自ら名いうて羅数と為す」。
「羅敷は年幾何ぞ」。
「二十には筒は足らず、十五頗る飴り有り」 と。
使君羅敦に謝す、「寧ろ共に載る可きゃ不」 と。
#4
羅敷前んで詞を致す、「使君一に何ぞ愚なる。
使君自ら婦有り、羅敷は自ら夫有り。
東方の千絵騎、夫巧は上頭に居る。
何を用てか夫靖を識る、白馬磯駒を徒へ、
青練を馬屋に繋け、黄金を番頭に絡ふ。
#5
腰中の鹿底の鉱は、千萬徐に値す可し。
十五に心て府の小史、二十にして朝の大夫。
三十にして侍中部、四十にして城を専らにして居る。
人と為り潔自習、孝養として頗る裏有り。
盈盈として公府に歩み、再再として府中に趨る。
坐中の数千人、皆言ふ 『夫巧は殊なり』 と。


桑摘女00

『陌上桑』 現代語訳と訳註
(本文)
#2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。行者見羅敷,下擔捋髭須。
少年見羅敷,脫帽著帩頭。耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
來歸相怨怒,但坐觀羅敷。


(下し文) #2
純綿を下裾と為し、紫緒を上宿と為す。
行く者は羅敦を見て、標を下して髭麦を括り、
少年は羅敷を見て、帽を睨して略頭を著はす、
耕す者は其の梁を忘れ、鋤く者は其の鋤を忘る。
来り節って相怨怒するは、但羅数を観るに坐するのみ。


(現代語訳)
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。

魚玄機5x5
(訳注) #2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。

浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
・緗綺 緗は、浅黄色。綺は綾の古名で,単色の紋織物をさす。中国では古く戦国時代にすでに〈綺〉の名称があり,《戦国策》鮑彪の注には〈綺は文様のある繒(かとり,上質の平絹)〉とある。また《漢書》地理志の顔師古の注に〈綺は今日いう細かい綾〉とあり,元の《六書故》に,綺は彩糸で文様を織りだした錦に対し,単色で文様をあらわした織物であることが記されている。現存する作例,例えば馬王堆1号漢墓その他の出土例から古代の綺の特色を見ると,ほとんどが平地の経の浮紋織,あるいは平地の経綾の紋織になっている。
・上襦 襦は短い上衣、袖無しの羽織。


行者見羅敷,下擔捋髭須。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
・擔 肩にになった荷物。
・髭須 口ひげと頬ひげ。


少年見羅敷,脫帽著帩頭。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
・帩頭 元服をして結ぶ髻を巾で包む。
かしらつつみ。また単に帽の下にかぶる頭巾の一種ともいう。これを取って髪を見せるのは一人前の男らしく気取って見せる。

曹植5x5
耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
・犁・鋤 犁はからすき、柄の曲がったもの、鋤は柄のまっすぐなもの。


來歸相怨怒,但坐觀羅敷。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
・怨怒 垂は夫が羅敷に見とれて仕事を怠ったことを怨み、夫は妻が羅敷ほどの美しさのないことを怒る。
・坐 そのおかげ、原因をいう。

為焦仲卿妻作 (まとめ-3) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会


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為焦仲卿妻作 (まとめ) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

その-3


#21為焦仲卿妻作-其九場面 (9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのように

三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀

お返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやり

とげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおも

われる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚

の仕度をととえてまいれ。」と。


#22(9)-2
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。

婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。

齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。

從人四五百,鬱鬱登郡門。

おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。



#23為焦仲卿妻作-其十場面 (10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。

何不作衣裳,莫令事不舉。
なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。
阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
可愛い娘は無言のままじっとしている。手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。
移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。

やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。。


#24(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。

府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。

新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。

門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。


#25(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。

果不如先願,又非君所詳。我有
親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。

以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」


#26(10)-4

磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」

卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。

「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」



#27(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。

執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。

念與世間辭,千萬不復全。

思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。



#28為焦仲卿妻作-其十一場面 (11)-1
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。故作不良計,勿複怨鬼神。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
命如南山石,四體康且直。阿母得聞之,零淚應聲落。

母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。


#29(11)-2
汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。

東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。

府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。



#30為焦仲卿妻作-其十二場面 (12)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。暗暗黃昏後,寂寂人定初。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。

我命絕今日,魂去屍長留。攬裙脫絲履,舉身赴清池。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。

府吏聞此事,心知長別離。徘徊庭樹下,自掛東南枝。

府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。



#31為焦仲卿妻作-其十三場面 (13)
兩家求合葬,合葬華山傍。東西植松柏,左右種梧桐。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。

枝枝相覆蓋,葉葉相交通。中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。

仰頭相向鳴,夜夜達五更。行人駐足聽,寡婦起彷徨。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。

多謝後世人,戒之慎勿忘。

こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。





為焦仲卿妻作 (まとめ) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1677

為焦仲卿妻作 (まとめ その-2) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

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Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる、最大長編の漢詩訳注解説(31回分割して掲載) 
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Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#8-(最終回)>Ⅱ中唐詩529 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1682 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/archives/6134505.html
Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
"●杜甫の全作品1141首のほとんどを取り上げて訳注解説するブログ 
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●人生としては4/5前で、詩としては1/3を過ぎたあたり。 " 
”成都紀行(9)” 桔柏渡 杜甫詩1000 <349>#2 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1683 杜甫1500- 520 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/archives/67755568.html
Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 幷序 韓退之(韓愈)詩<80> (12/17) 
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『更漏子 三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-17-2-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1684 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/archives/21062932.html
 
謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
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為焦仲卿妻作 (まとめ その-2) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

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その-2



#13為焦仲卿妻作-其五場面 (5)-1
府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。

あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」


#14(5)-2
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。

蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。

恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。

おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。



#15為焦仲卿妻作-其六場面 (6)-1
入門上家堂,進退無顏儀。阿母大拊掌,不圖子自歸。
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三教汝織,十四能裁衣。十五彈箜篌,十六知禮儀。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。

十七遣汝嫁,謂言無誓違。汝今何罪過,不迎而自歸?
だから十七でおまえを嫁入らせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」

蘭芝慚阿母,兒實無罪過。阿母大悲摧。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。



#16為焦仲卿妻作-其七場面 (7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。雲有第三郎,窈窕世無雙。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。

年始十八九,便言多令才。阿母謂阿女,汝可去應之。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。

阿女含淚答,蘭芝初還時,府吏見叮嚀,結誓不別離。
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。


#17(7)-2
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。

阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。

豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。

どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。



#18為焦仲卿妻作-其八場面 (8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。


#19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」

先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
否泰如天地,足以榮汝身。不嫁義郎體,
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。


#20(8)-3
其往欲何雲。蘭芝仰頭答,理實如兄言。
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」

雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」

為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

◆◆◆2012年12月16日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集
古代中国の結婚感、女性感について述べる、最大長編の漢詩訳注解説(31回分割して掲載)
為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

Ⅱ.中唐詩・晩唐詩
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#7>Ⅱ中唐詩528 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1678

Ⅲ.杜甫詩1000詩集
"●杜甫の全作品1141首のほとんどを取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、詩としては1/3を過ぎたあたり。 "
”成都紀行(9)” 桔柏渡 杜甫詩1000 <348>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1679 杜甫1500- 519

Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集
星行 韓退之(韓愈)詩<81> (12/16)


Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。
『更漏子 二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-16-2-#2 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1680

謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
女性詩人  http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html




為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1677

この詩は中国に於ては比較的に少ない叙事詩の傑作で、古今稀に見る長篇である。問答体の長篇であるから、便宜上、篇を十三場面に分けて解し、ここでの掲載は通し番号#によって細分してすすめ、場面は()-枝番としている。なお詩中の登場人物を表記しておく。



登場人物00



・建安 (196―220)後漢献帝の年号
・廬江府 廬江は漢の郡名、もと安徽省廬江県西にあったが、漢未には潜山県に治を

移した。




為焦仲卿妻作其(0)

序曰:漢末建安中,廬江府小吏焦仲卿妻劉氏,
為仲卿母所遣,自誓不嫁。其家逼之,乃投水而死。

仲卿聞之,亦自縊於庭樹。時人傷之,為詩雲爾。
(前夫の)焦仲卿は、このことを伝え聞き、自分もまた庭樹の東南の枝に首を吊って
果てた。時の人は、二人のことを傷(いた)んで詩にしたと云うことである。)

とそ
の経緯が述べられている。白居易の『長恨歌』の祖型になったとも謂える。


序文にいう:後漢末の建安年間に膳江府の小役人であった焦仲卿の妻に劉氏(名は蘭芝)というものがあった。蘭芝は仲卿の母におい出された。離縁された妻・劉氏(劉蘭芝)は更なる嫁入りはしないと心に誓った。(夫の方も、必ず呼び戻すと約束した。しかし実家の方は、劉蘭芝にとって玉の輿とも謂うべき再婚を逼り、嫁入り支度も整った後、前夫に出逢って、愚痴られた。夫婦ともあの世で添い遂げようということになった。その日の夕刻、終(つい)に水に入って死んだ。





為焦仲卿妻作-其一場面 (1)-1
孔雀東南飛,五裏一徘徊。十三能織素,十四學裁衣。
孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。

十五彈箜篌,十六誦詩書。十七為君婦,心中常苦悲。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。

君既為府吏,守節情不移。

あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。


#2(1)-2
賤妾留空房,相見常日稀。雞鳴入機織,夜夜不得息。
わたしはあなたがいないさびしい室に留守居して、ふだんはお目にかかることもめったにないでしょう。
にわとりか鳴くと機を織りはじめ、毎晩寝ることもままならないのです。

三日斷五疋,大人故嫌遲。非為織作遲,君家婦難為。
三日間に、五疋の絹を織りあげました、母さまは故意にゆっくり織っているといって嫌われます。
しかしそれは織り方が遅いためではなく、あなたの家の嫁としての勤めが難儀なのです。

妾不堪驅使,徒留無所施。便可白公姥,及時相遣歸。
わたくしはとてもこき使われるのに堪えかねます。ただとどまっていたとて、どうにもなりません。
おしゆうと様たちに申しあげたいのです。「今のうちに里方へ帰してくださいませ。」と。



#3為焦仲卿妻作-其二場面 (2)-1#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。兒已薄祿相,幸複得此婦。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」

結髮同枕席,黃泉共為友。共事二三年,始而未為久。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」

女行無偏斜,何意致不厚。
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」


#4(2)-2
阿母謂府潰何乃太區區。此婦無禮節,舉動自專由。
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」

吾意久懷忿,汝豈得自由。東家有賢女,自名秦羅敷。
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」

可憐體無比,阿母為汝求。
「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」


#5(2)-3
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。
「この嫁はすぐさま暇を出してしまいます。ここからおいかえしてしまうので決してとどめおいてはなりませんよ」
息子の府吏は膝まずいてうやうやしく答えるのである。「こうして謹んで母上に申しあげます。」

今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。
「今もしこの妻を出してしまうなら、わたしは生涯二度と妻をめとるということはいたしません。」
母はこれを聞きくなり、座牀をたたいてのたいへんな怒りようを示すのである。

小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。
「この子は親の意向を懼れる所を知らないのですか、嫁を助ける言葉ばかりをどうしていうのでしょう。
わたしはもうあの嫁に義理は持たぬばかりかお前にも恩義はない。これからはおまえに新たに添わせることなど許しはしませんよ。」



#6為焦仲卿妻作-其三場面 (3)-1
府吏默無聲,再拜還入戶。舉言謂新婦,哽咽不能語。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
やっと謂ったのは、

我自不驅卿,逼迫有阿母。卿但
暫還家,吾今且赴府。
「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」

#7(3)-2
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」

往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」

晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」


#8(3)-3
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。

妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。

箱簾六七十,綠碧青絲繩。
それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。


#9(3)-4
物物各具異,種種在其中。人賤物亦鄙,不足迎後人。
「わたしのそれぞれの物がそれぞれ異なっていますし、使い道も種々のものがその中に入っています。」
「子供じみた賎しい者が持つような物と思われるかもしれませんし、つまらぬ物とおおもいかもしれません、しかし、後から来られる方々にとっては不満足なものでしかないかもしれません。」

留待作遣施,於今無會因。時時為安慰,久久莫相忘。
それでも「わしの気持ちとして、そのまま残しおいて贈り物といたします。今となっては、あなたに会うためのよすがとなってはいけませんから。」
「ときどきはやすらぎと慰めになるとおもいます、いついつまでもお忘れないでくださいませ。」と。



#10為焦仲卿妻作-其四場面 (4)-1
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。



#11(4)-2
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。

本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。

今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


#12(4)-3
卻與小姑別,淚落連珠子。新婦初來時,小姑始扶床。
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。

今日被驅遣,小姑如我長。勤心養公姥,好自相扶將。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。

初七及下九,嬉戲莫相忘。出門登車去,涕落百餘行。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

為焦仲卿妻作-其十三(31) 漢詩<174>古詩源 巻三 女性詩614 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1673


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為焦仲卿妻作-其十三(31) 漢詩<174>古詩源 巻三 女性詩614 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1673


#31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
東西植松柏,左右種梧桐。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
枝枝相覆蓋,葉葉相交通。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。
仰頭相向鳴,夜夜達五更。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
行人駐足聽,寡婦起彷徨。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。
多謝後世人,戒之慎勿忘。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。

兩家 合葬を求め,華山の傍に合葬す。
東西に松柏を植え,左右に梧桐【ごとう】を種う。
枝枝 相い覆蓋【ふくがい】,葉葉 相い交通す。
中には雙の飛鳥有り,自ら名して鴛鴦【えんおう】と為す。
頭を仰いで相い向いて鳴き,夜夜 五更に達す。
行人 足を駐めて聽き,寡婦 起って彷徨【ぼうこう】す。
多謝するは後世の人なり,之を戒めて慎しんで忘るること勿れ。




『為焦仲卿妻作』-其十三(最終場面) 現代語訳と訳註
 (本文)
#31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。東西植松柏,左右種梧桐。枝枝相覆蓋,葉葉相交通。中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。仰頭相向鳴,夜夜達五更。行人駐足聽,寡婦起彷徨。多謝後世人,戒之慎勿忘。


(下し文) #31
兩家 合葬を求め,華山の傍に合葬す。
東西に松柏を植え,左右に梧桐【ごとう】を種う。
枝枝 相い覆蓋【ふくがい】,葉葉 相い交通す。
中には雙の飛鳥有り,自ら名して鴛鴦【えんおう】と為す。
頭を仰いで相い向いて鳴き,夜夜 五更に達す。
行人 足を駐めて聽き,寡婦 起って彷徨【ぼうこう】す。
多謝するは後世の人なり,之を戒めて慎しんで忘るること勿れ。


(現代語訳)
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。


(訳注) #31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
・崋山 安徽省 安慶市 樅陽県南京と九江の中間点の白蘯湖の傍にある山で、五岳の崋山とは異なる。
近くには仏教聖地の九崋山もあるが時代としてそこに墳墓を設けるほどの家系ではないし、両家が仏教徒という感じも見受けられない。


東西植松柏,左右種梧桐。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
松柏 五行思想にもとずく墳墓には植えられる木である。松は青松で東、西は白で柏。
梧桐 夫唱婦随の木である。李白は「古風 其三十九」において、玄宗と楊貴妃の生活を示している。また、元代の戯曲「梧桐雨」がある。また、『荘子』秋水篇の故事を用いる。荘子が梁の国の宰相恵子を訪れようとすると、それは宰相の地位を奪い取ろうとしているのだという重言があった。恐れる恵子に向かって荘子はたとえ話を持ち出す。南方に「鴛雛」という鳥がいて、梧桐にしか止まらず、練実(竹の実)しか食べず、清浄な水しか飲まない。鶴が「腐鼠」を食べていたところに鴛雛が通りかかると、鶴はにらみつけて「嚇」と叫んだ。今あなたは梁の国を取られはしないか恐れて威嚇するのか、と恵子に言った。猜疑心を抱きつつの後宮生活を示すものである。

枝枝相覆蓋,葉葉相交通。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
・この二句は夫婦の睦愛をあらわすものである。


中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれを鴛鳶という鳥だと名づけた。
・鴛鴦 オシドリ。仲むつまじい男女の象徴。


仰頭相向鳴,夜夜達五更。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
五更 日没から夜明けまでを5分割したその最後の時間、夜明けに近い4時ころ。杜甫「閣夜」李商隠「無題」「蝉」。

初起 李商隠 :紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 69

蝉 李商隠  紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 29 清廉潔白な男の詩

無題(何處哀筝随急管) 李商隠21



行人駐足聽,寡婦起彷徨。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。


多謝後世人,戒之慎勿忘。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。



為焦仲卿妻作-其十二(30) 漢詩<173>古詩源 巻三 女性詩613 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1669

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 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集記夢  韓退之(韓愈) (12/14) 
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為焦仲卿妻作-其十二(30) 漢詩<173>古詩源 巻三 女性詩613 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1669


#30為焦仲卿妻作-其十二(12)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暗暗黃昏後,寂寂人定初。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。
我命絕今日,魂去屍長留。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
攬裙脫絲履,舉身赴清池。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。
府吏聞此事,心知長別離。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
徘徊庭樹下,自掛東南枝。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。

其の日 牛馬嘶【いなな】き,新婦 青廬【せいろ】に入る。
暗暗たる黃昏の後,寂寂として人定まるの初め。
我が命は今日に絕ち,魂去りて屍のみ長く留まる。
裙【くん】を攬【と】りて絲履【しり】を脫し,身を舉げて清池に赴【おもむ】く。
府吏此の事を聞き,心に長き別離を知る。
徘徊して庭樹の下,自ら東南の枝に掛る。


『為焦仲卿妻作』-其十二 現代語訳と訳註
(本文)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。暗暗黃昏後,寂寂人定初。我命絕今日,魂去屍長留。攬裙脫絲履,舉身赴清池。府吏聞此事,心知長別離。徘徊庭樹下,自掛東南枝。


(下し文)
其の日 牛馬嘶【いなな】き,新婦 青廬【せいろ】に入る。
暗暗たる黃昏の後,寂寂として人定まるの初め。
我が命は今日に絕ち,魂去りて屍のみ長く留まる。
裙【くん】を攬【と】りて絲履【しり】を脫し,身を舉げて清池に赴【おもむ】く。
府吏此の事を聞き,心に長き別離を知る。
徘徊して庭樹の下,自ら東南の枝に掛る。


(現代語訳)
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。


(訳注)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
・青廬 五行思想で物事の始まりを示す青の幔幕をあずまやのようなところに張って庵をつくる。その部屋にいて体を清めた。


暗暗黃昏後,寂寂人定初。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。


我命絕今日,魂去屍長留。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。


攬裙脫絲履,舉身赴清池。
襦袢の裾をつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。


府吏聞此事,心知長別離。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。


徘徊庭樹下,自掛東南枝。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。
徘徊庭樹下,自掛東南枝 若干のためらいを示すけれども、北向きの枝で折れてはいけないので、ためらわずにしっかりした枝ぶりの方に首を掻けたということで、府吏の意志をあらわすものである。

為焦仲卿妻作-其十一(29) 漢詩<172>古詩源 巻三 女性詩612 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1665

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Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集

為焦仲卿妻作-其十一(29) 漢詩<172>古詩源 巻三 女性詩612

Ⅱ.
中唐詩・晩唐詩

石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#4>Ⅱ中唐詩525

Ⅲ.
杜甫詩1000詩集

”成都紀行(7)” 龍門閣 杜甫詩1000 <347>#2 


Ⅳ.
漢詩・唐詩・宋詞詩詩集

記夢  韓退之(韓愈)詩 (12/13)


Ⅴ.
晩唐五代詞詩・宋詞詩

『菩薩蠻十三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-13-13-#13 花間集



為焦仲卿妻作-其十一(29) 漢詩<172>古詩源 巻三 女性詩612 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1665



#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。故作不良計,勿複怨鬼神。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。

命如南山石,四體康且直。阿母得聞之,零淚應聲落。

母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。

#29
汝是大家子,仕宦於台閣。
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
慎勿為婦死,貴賤情何薄。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。
東家有賢女,窈窕豔城郭。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
阿母為汝求,便複在旦夕。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。
府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。

#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。
#29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。



現代語訳と訳註
(本文)
#29
汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。


(下し文) #29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。


(現代語訳)
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。


(訳注) #29
汝是大家子,仕宦於台閣。

「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
・台閣 (1)高くて立派な建物。 (2)政治を行う官庁。中央政府。内閣。


慎勿為婦死,貴賤情何薄。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。


東家有賢女,窈窕豔城郭。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
・東家有賢女 美人といっても賢くて美人の東家の女です。西は、色気がある傾国の美女を云う。
為焦仲卿妻作#4(-其二)で「東家有賢女,自名秦羅敷。」「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」と母親が息子の府吏にいっている。
・東家有賢女  ・東家 楚の宋玉の『登徒子好色の賦』「臣が里の美しき者は、臣が東家の子に若くはなし。」とある。ここから美人のたとえを”東家之子”又は”東家之女”と。美女を称して”東隣”とした事例に唐の李白「自古有秀色、西施与東隣」(古来より秀でた容姿端麗美人、西施と東隣)白居易「感情」のもある 
李白『白紵辭其一』「揚清歌、發皓齒。 北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。」

李白81白紵辭其一  82白紵辭其二  83 巴女詞
無題(何處哀筝随急管) 李商隠21

・秦羅敷 秦氏羅敷。「陌上桑」その美貌をほこって自ら泰氏の羅敷と称したのである。秋胡詩 (1) 顔延之(延秋胡詩 (1) 顔延之(延年) 詩<2>Ⅱ李白に影響を与えた詩471 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1230

阿母為汝求,便複在旦夕。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。


府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。


轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。


為焦仲卿妻作-其十一(28) 漢詩<171>古詩源 巻三 女性詩611 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1661

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 Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(7)” 龍門閣 杜甫詩1000 <346>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1663 杜甫1500- 515 
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集記夢  韓退之(韓愈)詩<78-#1>Ⅱ中唐詩443 (12/12) 
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為焦仲卿妻作-其十一(28) 漢詩<171>古詩源 巻三 女性詩611 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1661


#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
故作不良計,勿複怨鬼神。
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轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。

#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。

#29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。


『為焦仲卿妻作』-其十一 現代語訳と訳註
(本文)

府吏還家去,上堂拜阿母。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
兒今日冥冥,令母在後單。
故作不良計,勿複怨鬼神。
命如南山石,四體康且直。
阿母得聞之,零淚應聲落。

(下し文) #28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。


(現代語訳)
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。


(訳注)
府吏還家去,上堂拜阿母。

府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。


今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。


兒今日冥冥,令母在後單。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。


故作不良計,勿複怨鬼神。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
・不良計 府吏の自殺の計画をいう。


命如南山石,四體康且直。
母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」


阿母得聞之,零淚應聲落。
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。

為焦仲卿妻作-其十(27) 漢詩<170>古詩源 巻三 女性詩610 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1657

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 Ⅳ漢・唐・宋詞詩集酔留東野  韓退之(韓愈)詩<77-#2>Ⅱ中唐詩442 (12/11) 
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#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。

莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。

移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。

府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。

新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。

門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。

果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。

以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。

そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」

卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。

思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
黃泉下相見,勿違今日言。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。
執手分道去,各各還家門。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生人作死別,恨恨那可論。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。
念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


『為焦仲卿妻作』 現代語訳と訳註
(本文)
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。
黃泉下相見,勿違今日言。
執手分道去,各各還家門。
生人作死別,恨恨那可論。
念與世間辭,千萬不復全。


(下し文)
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


(現代語訳)
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。
思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。


(訳注) #27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。

わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。


黃泉下相見,勿違今日言。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と


執手分道去,各各還家門。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。


生人作死別,恨恨那可論。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。


念與世間辭,千萬不復全。
思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。



為焦仲卿妻作-其十(26) 漢詩<169>古詩源 巻三 女性詩609 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1653

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為焦仲卿妻作-其十(26) 漢詩<169>古詩源 巻三 女性詩609 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1653

#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。

果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。

以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」

#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
蒲葦一時韌,便作旦夕間。
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」
卿當日勝貴,吾獨向黃泉。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
新婦謂府吏,何意出此言。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。


現代語訳と訳註
(本文)
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。


(下し文) #26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。


(現代語訳)
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」


(訳注) #26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。

そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
#14で府吏に云っている
「君當作磐石,妾當作蒲葦。蒲葦韌如絲,磐石無轉移。」


蒲葦一時韌,便作旦夕間。
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」


卿當日勝貴,吾獨向黃泉。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。


新婦謂府吏,何意出此言。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」

為焦仲卿妻作-#25其十(10)-3 漢詩<168>古詩源 巻三 女性詩608 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1649

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為焦仲卿妻作-#25其十(10)-3 漢詩<168>古詩源 巻三 女性詩608 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1649


#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
自君別我後,人事不可量。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。
果不如先願,又非君所詳。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
我有親父母,逼迫兼弟兄。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。
以我應他人,君還何所望 。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏謂新婦,賀君得高遷。
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」
#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と


#25『為焦仲卿妻作』-其十 (10)-3 現代語訳と訳註
(本文)

#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。


(下し文)
#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と


(現代語訳)
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」


(訳注)
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。

馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。


自君別我後,人事不可量。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。


果不如先願,又非君所詳。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。


我有親父母,逼迫兼弟兄。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。


以我應他人,君還何所望 。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」


府吏謂新婦,賀君得高遷。
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」

為焦仲卿妻作-其十(24) 漢詩<167>古詩源 巻三 女性詩607 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1645

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 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其十(24) 漢詩<167>古詩源 巻三 女性詩607 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1645 
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 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩『菩薩蠻 八』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-8-8-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1648 
      
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 謝靈運index謝靈運詩古詩index漢の無名氏  
孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
為焦仲卿妻作-其十(24) 漢詩<167>古詩源 巻三 女性詩607 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1645


#24『為焦仲卿妻作』-其十(10)-2 
独善的な三段論法は得意だが相手の気持ちになることが出来ない、相手の気持ちになっての三段論法が苦手のなのであることがよくわかる詩である。この考え方というのも中國の歴史書、詩歌、物語、尖閣問題、日本製品排斥などの根底にある発想法のひとつである。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。

莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。

移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
暗暗日欲暝,愁思出門啼。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。
府吏聞此變,因求假暫歸。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
未至二三裏,摧藏馬悲哀。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。
新婦識馬聲,躡履相逢迎。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
悵然遙相望,知是故人來。

#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


『為焦仲卿妻作』-其十 現代語訳と訳註
(本文)
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。


(下し文) #24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。


(現代語訳)
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。


(訳注) #24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。

朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。


暗暗日欲暝,愁思出門啼。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。


府吏聞此變,因求假暫歸。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。


未至二三裏,摧藏馬悲哀。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。


新婦識馬聲,躡履相逢迎。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。


悵然遙相望,知是故人來。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。

為焦仲卿妻作-其十(23) 漢詩<166>古詩源 巻三 女性詩606 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1641

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為焦仲卿妻作-其十(23) 漢詩<166>古詩源 巻三 女性詩606 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1641


#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日來迎汝。何不作衣裳,
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。
莫令事不舉。阿女默無聲,
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手巾掩口啼,淚落便如瀉。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。
移我琉璃榻,出置前廳下。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手持刀尺,右手執綾羅。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


#23『為焦仲卿妻作』-其十(10)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。


(下し文)
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。


(現代語訳)
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。


(訳注) #23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,

母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。


明日來迎汝。何不作衣裳,
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。


莫令事不舉。阿女默無聲,
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。


手巾掩口啼,淚落便如瀉。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。


移我琉璃榻,出置前廳下。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした


左手持刀尺,右手執綾羅。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。

為焦仲卿妻作-其九(22) 漢詩<165>古詩源 巻三 女性詩605 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1637

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為焦仲卿妻作-其九(22) 漢詩<165>古詩源 巻三 女性詩605 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1637


#21為焦仲卿妻作-其九(9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。
#22 (9)-1
交語速裝束,絡繹如浮雲。
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
青雀白鵠舫,四角龍子幡。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。
婀娜隨風轉,金車玉作輪。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
齎錢三百萬,皆用青絲穿。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。
從人四五百,鬱鬱登郡門。

おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。


#21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。

#22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


現代語訳と訳註
(本文)
#22
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。從人四五百,鬱鬱登郡門。


(下し文) #22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


(現代語訳)
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。
おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。

 
(訳注) #22
交語速裝束,絡繹如浮雲。

両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。


青雀白鵠舫,四角龍子幡。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。


婀娜隨風轉,金車玉作輪。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。


躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
躑躅 行きて進まざるさま。
杜甫「醉歌行
春光潭沱秦東亭,渚蒲牙白水荇青。
風吹客衣日杲杲,樹攪離思花冥冥。
酒盡沙頭雙玉瓶,眾賓皆醉我獨醒。
乃知貧賤別更苦,吞聲躑躅涕淚零。』

醉歌行 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 94

蛇足だが、中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、うずくまってしまったと伝えられていることから躑躅(てきちょく)と言う。


齎錢三百萬,皆用青絲穿。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。


雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。


從人四五百,鬱鬱登郡門。
おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。


為焦仲卿妻作-其九(21) 漢詩<164>古詩源 巻三 女性詩604 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1633

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為焦仲卿妻作-其九(21) 漢詩<164>古詩源 巻三 女性詩604 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1633


#21為焦仲卿妻作 -其九 (9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。

三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。
#22
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。從人四五百,鬱鬱登郡門。


#21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。

#22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


『為焦仲卿妻作』-其九 (9)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#21
媒人下床去,諾諾複爾爾。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
府君得聞之,心中大歡喜。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。


(下し文) #21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。


(現代語訳)
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。


(訳注)
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
・諾々 すぐさま承知すること。唯々諾々 ( いいだくだく ). 自分の意見を少しも主張せずに、他人の言いなりになって盲従する様。 事の良し悪しに関わらず、ただ人の意見に従って言いなりになること。 唯々は「はいはい」という返事。 「韓非子・八姦編」


還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
・還部 部は郡幕府の事務室。


府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
・府君 太守を指す。


視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
・六合 吉祥をつかさどる星の名。陰陽家学説に従い、日・月と北斗(古代中国では六星)とによる六種の会合によって吉凶を判断する。


良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。


為焦仲卿妻作-其八(20) 漢詩<163>古詩源 巻三 女性詩603 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1629

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 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其八(20) 漢詩<163>古詩源 巻三 女性詩603 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1629 
 Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#3>Ⅱ中唐詩516 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1630 
 Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(3)” 白沙渡 杜甫詩1000 <342>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1631 杜甫1500- 507 
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集琴操十首 (5)拘幽操 文王羑裏作 韓退之(韓愈)詩<71-(5)>Ⅱ中唐詩435 (12/04) 
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#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」

先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」

不嫁義郎體,其往欲何雲。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。
#20為焦仲卿妻作-其八(20) 
蘭芝仰頭答,理實如兄言。
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
謝家事夫君,中道還兄門。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
處分適兄意,那得自任專。
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」
雖與府吏約,後會永無緣。
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
登即相許和,便可作婚姻

「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」

媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。
#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『為焦仲卿妻作』-其八 (8)-3 現代語訳と訳註
(本文)
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。


(下し文)#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。
家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。
處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。
府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。
登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


(現代語訳)
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」


(訳注) #20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。

蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」


謝家事夫君,中道還兄門。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」


處分適兄意,那得自任專。
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」


雖與府吏約,後會永無緣。
たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」


登即相許和,便可作婚姻 。
すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」
・登即 すぐさま、当時の俗語か。
・許和 おだやかに承諾すること。


為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625

 
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Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625
Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#2>Ⅱ中唐詩515 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1626
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 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集琴操十首 (4)越裳操 周公作 韓退之(韓愈)詩<70-(4)>Ⅱ中唐詩434  (12/03) 
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為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625


#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
#19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。
處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。
登即相許和,便可作婚姻 。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
舉言謂阿妹,作計何不量。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」
先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
否泰如天地,足以榮汝身。
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
不嫁義郎體,其往欲何雲。

#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。
#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『#19為焦仲卿妻作』-其八(8)-2 現代語訳と訳註
(本文)

阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。
不嫁義郎體,其往欲何雲。


(下し文)#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と


(現代語訳)
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。


(訳注)
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。


阿兄得聞之,悵然心中煩。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。


舉言謂阿妹,作計何不量。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」


先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」


否泰如天地,足以榮汝身。
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」


不嫁義郎體,其往欲何雲。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。

為焦仲卿妻作-其八(18) 漢詩<161>古詩源 巻三 女性詩601 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1621

 
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Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其八(18) 漢詩<161>古詩源 巻三 女性詩601 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1621
Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#1>Ⅱ中唐詩514 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1622
Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(2)” 木皮嶺 杜甫詩1000 <341>#2 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1623 杜甫1500- 505
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集琴操十首 (3)龜山操 孔子以季桓子受齊女樂,諫不從,望龜山而作。 韓退之(韓愈)詩<69-(3)>Ⅱ中唐詩433 (12/02) 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩『菩薩蠻 二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-2-2-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1624 
 
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為焦仲卿妻作-其八(18) 漢詩<161>古詩源 巻三 女性詩601 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1621


#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
說有蘭家女,承籍有宦官。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。
雲有第五郎,嬌逸未有婚。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
遣丞為媒人,主簿通語言。
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。
直說太守家,有此令郎君。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
既欲結大義,故遣來貴門。

「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
#19
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。不嫁義郎體,
其往欲何雲。
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。

#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。
直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。

#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『為焦仲卿妻作』-其八 (8)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。


(下し文)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。


(現代語訳)
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。


(訳注) #18
媒人去數日,尋遣丞請還。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた
・請還 太守の方に向けることを請うという意味。・還 旋または回の意、県令の方から太守の方に向くようにいうこと。


說有蘭家女,承籍有宦官。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております
・蘭家女 蘭芝の家の母親の実家。
・承籍 継承官籍の義、官位ある人の戸籍を受けつぎ、家柄の貧賤でない意。


雲有第五郎,嬌逸未有婚。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」


遣丞為媒人,主簿通語言。
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。


直說太守家,有此令郎君。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」


既欲結大義,故遣來貴門。
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
・主薄 書記の官。
・太守 盧江の大守、郡の長官、県の上位にある。

為焦仲卿妻作-其七(17) 漢詩<160>古詩源 巻三 女性詩600 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1617

 
  同じ日の紀頌之5つのブログ 
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其七(17) 漢詩<160>古詩源 巻三 女性詩600 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1617
Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩 盧仝 詩<7-#2>Ⅱ中唐詩513 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1618
Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(2)” 木皮嶺 杜甫詩1000 <341>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1619 杜甫1500- 504
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集琴操十首 (2)猗蘭操 孔子傷不逢時作 韓退之(韓愈)詩<68-(2)>Ⅱ中唐詩432 (12/01) 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩『菩薩蠻 一』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-1-1-#1 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1620 
 
 ■主要詩人の一覧・詩目次・ブログindex  
 謝靈運index謝靈運詩古詩index漢の無名氏  
孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
為焦仲卿妻作-其七(17) 漢詩<160>古詩源 巻三 女性詩600 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1617


#16為焦仲卿妻作-其七(7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
府吏見叮嚀,結誓不別離。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。
#17
今日違情義,恐此事非奇。
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
自可斷來信,徐徐更謂之。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。
阿母白媒人,貧賤有此女。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
始適還家門,不堪吏人婦。
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許

どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


#16為焦仲卿妻作-其七(7)-1
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。
#17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。


『為焦仲卿妻作』-其七 (7)-2 現代語訳と訳註
(本文)
#17
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。


(下し文) #17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。


(現代語訳)
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。
どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


(訳注) #17
今日違情義,恐此事非奇。

今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
・今日違情義 前に「府吏見叮嚀,結誓不別離。」と府吏の情義があり、これの確認が済まないうちに県令の「縣令遣媒來」に対して返事をすることはできないという意味。


自可斷來信,徐徐更謂之。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。」


阿母白媒人,貧賤有此女。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
・貧賤 貧は貧乏。賤は身分が賤しい、この時代は何にもまして、血縁、出自を問題にしたが、女性は美貌と才智は跡継ぎに好影響を与えるため評価されていた。


始適還家門,不堪吏人婦。
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。


豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。
どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


為焦仲卿妻作-其七(16) 漢詩<159>古詩源 巻三 女性詩599 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1614

 
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為焦仲卿妻作-其七(16) 漢詩<159>古詩源 巻三 女性詩599 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1614


#16為焦仲卿妻作-其七(7)
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
府吏見叮嚀,結誓不別離。

前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。
#17
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。

#16為焦仲卿妻作-其七(7)
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。
#17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。




『為焦仲卿妻作』-其七 現代語訳と訳註
(本文)
#16 (7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。雲有第三郎,窈窕世無雙。
年始十八九,便言多令才。阿母謂阿女,汝可去應之。
阿女含淚答,蘭芝初還時,府吏見叮嚀,結誓不別離。


(下し文)
#16為焦仲卿妻作-其七(7)
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。


(現代語訳)
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。


(訳注)
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
遣媒 婚礼の申し込みをする使いのもの。その県のトップからの申し込みであるから前夫の上司であるから断れるものではない。


雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
・窈窕 美しくしとやかなさま。男として魅力のあることをいう。セックスアピールのこと。


年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」


阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
・去應之 この申し出を承諾して嫁に行けというほどの意味。


阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。


府吏見叮嚀,結誓不別離。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。

為焦仲卿妻作-其六(15) 漢詩<158>古詩源 巻三 女性詩598 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1611

 
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#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。
阿母大拊掌,不圖子自歸。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三教汝織,十四能裁衣。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五彈箜篌,十六知禮儀。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
十七遣汝嫁,謂言無誓違。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。汝今何罪過,不迎而自歸?
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」
蘭芝慚阿母,兒實無罪過。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
阿母大悲摧。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
門に入って家堂に上る,進むも退ぞくも顏儀無し。
阿母は大いに掌を拊【う】ち,圖らざりし子が自ら歸える。
十三で汝に織を教え,十四では能く衣を裁つ。
十五で箜篌【くうこう】を彈き,十六では禮儀を知る。十七で汝を遣わして嫁しす,謂【おも】うこと言【ここ】に 誓うこと違【たが】う無からんと。
汝 今 何の罪過ありてか,迎えざるに自ら歸る」と。
蘭芝は阿母に慚づ,兒 實に罪過【ざいか】無し。
阿母 大いに悲摧【ひさい】す


『為焦仲卿妻作』-其六(6)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。阿母大拊掌,不圖子自歸。十三教汝織,十四能裁衣。十五彈箜篌,十六知禮儀。十七遣汝嫁,謂言無誓違。汝今何罪過,不迎而自歸?蘭芝慚阿母,兒實無罪過。阿母大悲摧。


(下し文)
門に入って家堂に上る,進むも退ぞくも顏儀無し。
阿母は大いに掌を拊【う】ち,圖らざりし子が自ら歸える。
十三で汝に織を教え,十四では能く衣を裁つ。
十五で箜篌【くうこう】を彈き,十六では禮儀を知る。十七で汝を遣わして嫁しす,謂【おも】うこと言【ここ】に 誓うこと違【たが】う無からんと。
汝 今 何の罪過ありてか,迎えざるに自ら歸る」と。
蘭芝は阿母に慚づ,兒 實に罪過【ざいか】無し。
阿母 大いに悲摧【ひさい】す。


(現代語訳)
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。

おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。


(訳注)
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。

蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。、
無顏儀 顏貌儀容がないという意。ふさぎこんで顔つきのさえぬさま。


阿母大拊掌,不圖子自歸。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。


十三教汝織,十四能裁衣。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
・織 税金の基礎であり、良い嫁の尺度となるものである。


十五彈箜篌,十六知禮儀。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
箜篌 古代東アジアで見られたハーブ琴のような弦楽器。癒しとなる女性の不可欠な嗜み。


十七遣汝嫁,謂言無誓違。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。


汝今何罪過,不迎而自歸?
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」


蘭芝慚阿母,兒實無罪過。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
・兒 蘭芝が自分のことを実の母に対して幼い時につかう言葉として使う。嫁ぎ先の義母に対しては、妾をつかう。我、吾は生意気とされる。


阿母大悲摧。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。
・悲摧 悲しんで心がくだけること。

為焦仲卿妻作-其五(14) 漢詩<157>古詩源 巻三 女性詩597 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1608

 
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#13為焦仲卿妻作-其五(5)
府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。

下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」

吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
#14
君既若見錄,不久望君來。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
我有親父兄,性行暴如雷。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。
恐不任我意,逆以煎我懷。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
舉手長勞勞,二情同依依。
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。

府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。
#14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


『為焦仲卿妻作』-其五 (5)-2 現代語訳と訳註
(本文) #14
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。


(下し文) #14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


(現代語訳)
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。


(訳注) #14
君既若見錄,不久望君來。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
・見錄 「録」は記録の意、心に記録すること、見棄てずに取りあげてくれること。


君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。


蒲葦韌如絲,磐石無轉移。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
韌如絲 韌はなわ、糸を合わせて縄とすること。よりあわせたなわが糸の如く続いて断絶することないことにたとえる。一本に籾を軌に作る。しなやかで丈夫なこと。これもまた通じる。


我有親父兄,性行暴如雷。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。


恐不任我意,逆以煎我懷。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、


舉手長勞勞,二情同依依。
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります
労労 反覆慰労する。
依依 よりそうこと。

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#13為焦仲卿妻作-其五(5)
府吏馬在前,新婦車在後。
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
下馬入車中,低頭共耳語。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
誓不相隔卿,且暫還家去。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。

あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
#14
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。

府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。
#14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


『為焦仲卿妻作』-其五 現代語訳と訳註
(本文) #13  (5)-1

府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
吾今且赴府,不久當還歸。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。


(下し文)
府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。


(現代語訳)
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」


(訳注) #13為焦仲卿妻作-其五 (5)-1
府吏馬在前,新婦車在後。

府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。


隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
隠隠・甸甸 車馬の響。


下馬入車中,低頭共耳語。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。


誓不相隔卿,且暫還家去。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間実家に帰っていてほしい。」


吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。


誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
区区懐 区は小さいさま。転じておのれの心を謙 っていう。つまらぬ自分にこだわって下さるお心の意。


為焦仲卿妻作-其四(12) 漢詩<155>古詩源 巻三 女性詩595 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1602

 
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為焦仲卿妻作-其四(12) 漢詩<155>古詩源 巻三 女性詩595 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1602



為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
其四(4)-#10~#12
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。

指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。

本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。

今日還家去,念母勞家裏 。

こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
新婦初來時,小姑始扶床。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。
今日被驅遣,小姑如我長。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
勤心養公姥,好自相扶將。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
出門登車去,涕落百餘行。
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


#12『為焦仲卿妻作』-其四 現代語訳と訳註
(本文)

卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。


(下し文)
卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


(現代語訳)
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。


(訳注) #12
卻與小姑別,淚落連珠子。

こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
小姑 夫の妹、まだ幼児であろう。
連珠子 連子の玉飾り。


新婦初來時,小姑始扶床。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。


今日被驅遣,小姑如我長。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。


勤心養公姥,好自相扶將。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。


初七及下九,嬉戲莫相忘。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」


出門登車去,涕落百餘行。
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

為焦仲卿妻作-其四(11) 漢詩<154>古詩源 巻三 女性詩594 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1599

 
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為焦仲卿妻作-其四(11) 漢詩<154>古詩源 巻三 女性詩594 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1599


為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
昔作女兒時,生小出野裏。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
本自無教訓,兼愧貴家子。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
受母錢帛多,不堪母驅使。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。
今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


『為焦仲卿妻作』-其四 現代語訳と訳註
(本文)
#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
昔作女兒時,生小出野裏。
本自無教訓,兼愧貴家子。
受母錢帛多,不堪母驅使。
今日還家去,念母勞家裏 。


(下し文)
堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。


(現代語訳)
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


(訳注) #11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
・阿母怒不止 母は何を怒っているのだろうか。①嫁が気に入らない。②母は家のことをうまくやらない嫁に起こっているのではなく、出世につながらない結婚であったことを生産し、息子が出世できるために別の結婚を画策したのでそれを息子が拒否したことで、新しい嫁の家に対して恥をかくことでおこっている。この頃の母に対して息子は、母が今より、裕福な生活をさせてあげることが一番なのである。母としては息子が離婚して新しい嫁をもらうことを拒否するとは思ってもみなかったのである。この頃は、嫁した嫁は、後継ぎの子供ができるまではその地位は確立しなかったのである。一夫多妻制の時代である。


昔作女兒時,生小出野裏。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
野裏 野暮、いなかもの。


本自無教訓,兼愧貴家子。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
・教訓 教養、義訓。


受母錢帛多,不堪母驅使。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。


今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


為焦仲卿妻作-其四(10) 漢詩<153>古詩源 巻三 女性詩593 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1596

 
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 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
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為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。 指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。今日還家去,念母勞家裏 。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。新婦初來時,小姑始扶床。今日被驅遣,小姑如我長。勤心養公姥,好自相扶將。初七及下九,嬉戲莫相忘。出門登車去,涕落百餘行。


為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
著我繡夾裙,事事四五通。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
足下躡絲履,頭上玳瑁光。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰若流紈素,耳著明月璫。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
指如削蔥根,口如含珠丹。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
纖纖作細步,精妙世無雙。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
昔作女兒時,生小出野裏。
本自無教訓,兼愧貴家子。
受母錢帛多,不堪母驅使。
今日還家去,念母勞家裏 。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


現代語訳と訳註
(本文)
為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。 指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。


(下し文)
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。


(現代語訳)
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。


(訳注) 為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。

この嫁は難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。


著我繡夾裙,事事四五通。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
・繡夾裙 あわせのもすそ。裏付きのスカー卜。腰巻。
事事 服飾の一品ごとにの意。
・四五通 四、五種類。


足下躡絲履,頭上玳瑁光。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
玳瑁【たいまい】ウミガメ科のカメ。甲長約1メートル。背面の甲は黄褐色に黒褐色の斑紋があり、鱗板(りんばん)は瓦状に重なり合う。口の先端はくちばし状。熱帯・亜熱帯の海洋に分布。甲は鼈甲(べっこう)として装飾品の材料になるのでべっこう細工全般を云う。ここでは鼈甲の簪。.


腰若流紈素,耳著明月璫。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
若流紈素 紈素は自いねりぎぬ。粗厚のものを練といい、繊細のものを紈という。ここはその白絹が、ひだをなして下垂し、歩行につれて水の流れるように揺動するさま。艶婉な様子を云う。
明月環 真珠の耳飾りのたま


指如削蔥根,口如含珠丹。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
珠丹 珠の如くつやある丹紅の色をいう。


纖纖作細步,精妙世無雙。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。

為焦仲卿妻作-其三(9) 漢詩<152>古詩源 巻三 女性詩592 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1593

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