漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之のブログ 女性詩、漢詩・建安六朝・唐詩・李白詩 1000首:李白集校注に基づき時系列に訳注解説

李白の詩を紹介。青年期の放浪時代。朝廷に上がった時期。失意して、再び放浪。李白の安史の乱。再び長江を下る。そして臨終の歌。李白1000という意味は、目安として1000首以上掲載し、その後、系統別、時系列に整理するということ。 古詩、謝霊運、三曹の詩は既掲載済。女性詩。六朝詩。文選、玉臺新詠など、李白詩に影響を与えた六朝詩のおもなものは既掲載している2015.7月から李白を再掲載開始、(掲載約3~4年の予定)。作品の作時期との関係なく掲載漏れの作品も掲載するつもり。李白詩は、時期設定は大まかにとらえる必要があるので、従来の整理と異なる場合もある。現在400首以上、掲載した。今、李白詩全詩訳注掲載中。

▼絶句・律詩など短詩をだけ読んでいたのではその詩人の良さは分からないもの。▼長詩、シリーズを割席しては理解は深まらない。▼漢詩は、諸々の決まりで作られている。日本人が読む漢詩の良さはそういう決まり事ではない中国人の自然に対する、人に対する、生きていくことに対する、愛することに対する理想を述べているのをくみ取ることにあると思う。▼詩人の長詩の中にその詩人の性格、技量が表れる。▼李白詩からよこみちにそれているが、途中で孟浩然を45首程度(掲載済)、謝霊運を80首程度(掲載済み)。そして、女性古詩。六朝、有名な賦、その後、李白詩全詩訳注を約4~5年かけて掲載する予定で整理している。
その後ブログ掲載予定順は、王維、白居易、の順で掲載予定。▼このほか同時に、Ⅲ杜甫詩のブログ3年の予定http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/、唐宋詩人のブログ(Ⅱ李商隠、韓愈グループ。)も掲載中である。http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/,Ⅴ晩唐五代宋詞・花間集・玉臺新詠http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/▼また漢詩理解のためにHPもいくつかサイトがある。≪ kanbuniinkai ≫[検索]で、「漢詩・唐詩」理解を深めるものになっている。
◎漢文委員会のHP http://kanbunkenkyu.web.fc2.com/profile1.html
Author:漢文委員会 紀 頌之です。
大病を患い大手術の結果、半年ぶりに復帰しました。心機一転、ブログを開始します。(11/1)
ずいぶん回復してきました。(12/10)
訪問ありがとうございます。いつもありがとうございます。
リンクはフリーです。報告、承諾は無用です。
ただ、コメント頂いたても、こちらからの返礼対応ができません。というのも、
毎日、6 BLOG,20000字以上活字にしているからです。
漢詩、唐詩は、日本の詩人に大きな影響を残しました。
だからこそ、漢詩をできるだけ正確に、出来るだけ日本人の感覚で、解釈して,紹介しています。
体の続く限り、広げ、深めていきたいと思っています。掲載文について、いまのところ、すべて自由に使ってもらって結構ですが、節度あるものにして下さい。
どうぞよろしくお願いします。

古詩源

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李陵 《與蘇武詩三首 其三》 君と手をたずさえて橋の上に立った。旅姿の君よ、この日暮れどこへ行こうというのか。二人でともに小道のほとりを行きつ戻りつ、名残り惜しさに、いとまをつけることばも出ない。

 

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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。 
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李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。 
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李陵 《與蘇武詩三首 其三》 古詩源 文選  詩<106>Ⅱ李白に影響を与えた詩853 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2813

 

 

  ()

攜手上河梁,游子暮何之。

徘徊蹊路側,悢悢不得辭。

行人難久留,各言長相思。

安知非日月,弦望自有時。

努力崇明德,皓首以為期。

君と手をたずさえて橋の上に立った。旅姿の君よ、この日暮れどこへ行こうというのか。

二人でともに小道のほとりを行きつ戻りつ、名残り惜しさに、いとまをつけることばも出ない。

さりとて旅立つ君ゆえ、長くとどまることもかなわない。お互いにいつまでも忘れないといいかわすののだ。

人生の離合は日月の循環と同じではなかろうか。月は満ちたりかけたりし、ときには日と月とがあい望むこともあるように、われらもまたあい会うときがないとは限らないのだ。

どうか明徳を高めていただきたい。白髪になっても必ず再会することを約しましょう。

 

手を携えて河梁に上る、遊子暮に何くにか之く。

蹊路の側 に徘徊して、悢悢【りょりょう】として辞する能わず。

行人久しく留まり難し、各々言う長く相い思うと。

安んぞ日月に非るを知らんや、弦望自ら時有る。

努力して明徳を崇くせよ、皓首以て期と爲さん。

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『與蘇武詩三首 其三』 現代語訳と訳註

(本文)

攜手上河梁,游子暮何之。

徘徊蹊路側,悢悢不得辭。

行人難久留,各言長相思。

安知非日月,弦望自有時。

努力崇明德,皓首以為期。

 

 

(下し文)

手を携えて河梁に上る、遊子暮に何くにか之く。

蹊路の側 に徘徊して、悢悢【りょりょう】として辞する能わず。

行人久しく留まり難し、各々言う長く相い思うと。

安んぞ日月に非るを知らんや、弦望自ら時有る。

努力して明徳を崇くせよ、皓首以て期と爲さん。

 

 

(現代語訳)

君と手をたずさえて橋の上に立った。旅姿の君よ、この日暮れどこへ行こうというのか。

二人でともに小道のほとりを行きつ戻りつ、名残り惜しさに、いとまをつけることばも出ない。

さりとて旅立つ君ゆえ、長くとどまることもかなわない。お互いにいつまでも忘れないといいかわすののだ。

人生の離合は日月の循環と同じではなかろうか。月は満ちたりかけたりし、ときには日と月とがあい望むこともあるように、われらもまたあい会うときがないとは限らないのだ。

どうか明徳を高めていただきたい。白髪になっても必ず再会することを約しましょう。

 

 

(訳注)

攜手上河梁,游子暮何之。

君と手をたずさえて橋の上に立った。旅姿の君よ、この日暮れどこへ行こうというのか。

・河梁 河の橋。橋のたもとで人を見送るのが常であった。

 

徘徊蹊路側,悢悢不得辭。

二人でともに小道のほとりを行きつ戻りつ、名残り惜しさに、いとまをつけることばも出ない。

・蹊路 径路、こみち。

・悢悢 悲しみかえり去るざま。文選呂尚の註には「相恋の情、別を為す能はざるなり」とある。

 

行人難久留,各言長相思。

さりとて旅立つ君ゆえ、長くとどまることもかなわない。お互いにいつまでも忘れないといいかわすだけなのだ。

 

安知非日月,弦望自有時。

人生の離合は日月の循環と同じではなかろうか。月は満ちたりかけたりし、ときには日と月とがあい望むこともあるように、われらもまたあい会うときがないとは限らないのだ。

・安知非日月 どうして日月でないという理があろうか。それに違いないの意。人生の離合は日月の循環と同じではなかろうか。

・弦望 弦は半月(上弦:7日・下弦:20日)、望は満月の名。新月から上弦の月までは希望を著し、望月すなわち十五夜には月は東に出で、日は西にあって遙かに相望むとある。下弦の月は別れ、日月相望む如く、日と月は希望をあらわし、必ずわれらにも再会の期あるべきを予定した語となる。

 

努力崇明德,皓首以為期。

どうか明徳を高めていただきたい。白髪になっても必ず再会することを約しましょう。

・皓首 白髪の頭.老年。

denen01255 

 

 

 

蘇武與李陵詩

(偽作)

         ()

        骨肉緣枝葉,結交亦相因。

        四海皆兄弟,誰為行路人。

        況我連枝樹,與子同一身。

        昔為鴛與鴦,今為參與商。

        昔者長相近,邈若胡與秦。

        惟念當離別,恩情日以新。

        鹿鳴思野草,可以嘉賓。

        我有一(缶尊)酒,欲以贈遠人。

        願子留斟酌,敘此平生親。

 

 

 

         ()

        結發為夫妻,恩愛兩不疑。

        在今夕,燕婉及良時。

        徵夫懷遠路,起視夜何其。

        參辰皆已沒,去去從此辭。

        行役在戰場,相見未有期。

        握手一長嘆,淚為生別滋。

        努力愛春華,莫忘歡樂時。

        生當複來歸,死當長相思。

 

 

 

         ()

        黃鵠一遠別,千裡顧徘徊。

        胡馬失其群,思心常依依。

        何況雙飛龍,羽翼臨當乖。

        幸有弦歌曲,可以中懷。

        請為游子吟,泠泠一何悲。

        絲竹厲清聲,慷慨有余哀。

        長歌正激烈,中心愴以摧。

        欲展清商曲,念子不能歸。

        俯仰傷心,淚下不可揮。

        願為雙黃鵠,送子俱遠飛。

 

 

 

         ()

        燭燭晨明月,馥馥秋蘭芳。

        芳馨良夜發,隨風聞我堂。

        徵夫懷遠路,游子戀故

        寒冬十二月,晨起踐嚴霜。

        俯觀江漢流,仰視浮雲翔。

        良友遠別離,各在天一方。

        山海隔中州,相去悠且長。

        嘉會難再遇,歡樂殊未央。

        願君崇令德,隨時愛景光。

 

 

 

        李陵與蘇武詩

 

         ()

        良時不再至,離別在須臾。

        屏營衢路側,執手野躑躕。

        仰視浮雲馳,奄忽互相逾。

        風波一失所,各在天一隅。

        長當從此別,且複立斯須。

        欲因晨風發,送子以賤軀。

 

 

 

         ()

        嘉會難再遇,三載為千秋。

        臨河濯長纓,念子悵悠悠。

        遠望悲風至,對酒不能酬。

        行人懷往路,何以慰我愁。

        獨有盈觴酒,與子結綢繆。

 

 

 

         ()

        攜手上河梁,游子暮何之。

        徘徊蹊路側,悢悢不得辭。

        行人難久留,各言長相思。

        安知非日月,弦望自有時。

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李陵 《與蘇武詩三首 其二》 古詩源 文選  詩<105>Ⅱ李白に影響を与えた詩852 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2808

李陵 《與蘇武詩三首 其二》 二人での楽しい会合は、再度出逢うことは、困難なことであろう。 そしてそれは三年が千年を過ぎたほどに思えるものなのだ。いま君を送って黄河にのぞみ、涙にぬれた冠の紐を洗って、いさぎよく別れようとするが、君を思う心の悲しみは流れる水のように果てしない。

 

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李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html 
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。 
女性詩人 
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。 
孟郊詩 
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。 
李商隠詩 
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150

 


李陵 《與蘇武詩三首 其二》 古詩源 文選  詩<
105>Ⅱ李白に影響を与えた詩852 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2808

 

 

前漢 李陵

與蘇武詩 其二

(別れに際して蘇武に与える詩 其の二)

嘉會難再遇,三載爲千秋。

二人での楽しい会合は、再度出逢うことは、困難なことであろう。 そしてそれは三年が千年を過ぎたほどに思えるものなのだ。
臨河濯長纓,念子悵悠悠。

いま君を送って黄河にのぞみ、涙にぬれた冠の紐を洗って、いさぎよく別れようとするが、君を思う心の悲しみは流れる水のように果てしない。
minamo008遠望悲風至,對酒不能酬。

立って遠く眺めると秋風がもの悲しくおとずれる。送別の酒宴にのぞんでも、君に潤をすすめる元気も出ない。
行人懷往路,何以慰我愁。

旅立つ君も行く手のことが気にかかるというもので、どうやってわたしの愁いを慰めるということができるというのか。
獨有盈觴酒,與子結綢繆。

ただここに盃を満たした酒かある。せめてはこれを飲んでつきぬ交情を結びかわそう。 

 

蘇武に與【あた】うる詩  其の二

嘉會 再び遇ひ難く,三載は千秋と爲る。

河に臨みて長纓【ちょうえい】を 濯【あら】い,子【し】を 念【おも】いて悵として悠悠たり。

遠望すれば悲風至り,酒に對して酬いる能【あた】はず。

行人往路を懷い,何を以てか我が愁いを慰めん。

獨り觴【しょう】に 盈【み】つるの酒有りて,子【し】と綢繆【ちょうびょう】を結ばん。

 

 

『與蘇武詩 其二』 現代語訳と訳註

(本文)

與蘇武詩 其二

嘉會難再遇,三載爲千秋。

臨河濯長纓,念子悵悠悠。

遠望悲風至,對酒不能酬。

行人懷往路,何以慰我愁。

獨有盈觴酒,與子結綢繆。

 

 

(下し文)

蘇武に與【あた】うる詩  其の二

嘉會 再び遇ひ難く,三載は千秋と爲る。

河に臨みて長纓【ちょうえい】を 濯【あら】い,子【し】を 念【おも】いて悵として悠悠たり。

遠望すれば悲風至り,酒に對して酬いる能【あた】はず。

行人往路を懷い,何を以てか我が愁いを慰めん。

獨り觴【しょう】に 盈【み】つるの酒有りて,子【し】と綢繆【ちょうびょう】を結ばん。

 

 

(現代語訳)

(別れに際して蘇武に与える詩 其の二)

二人での楽しい会合は、再度出逢うことは、困難なことであろう。 そしてそれは三年が千年を過ぎたほどに思えるものなのだ。

いま君を送って黄河にのぞみ、涙にぬれた冠の紐を洗って、いさぎよく別れようとするが、君を思う心の悲しみは流れる水のように果てしない。

立って遠く眺めると秋風がもの悲しくおとずれる。送別の酒宴にのぞんでも、君に潤をすすめる元気も出ない。

旅立つ君も行く手のことが気にかかるというもので、どうやってわたしの愁いを慰めるということができるというのか。

ただここに盃を満たした酒かある。せめてはこれを飲んでつきぬ交情を結びかわそう。 

 

 

(訳注)

與蘇武詩 其二

(別れに際して蘇武に与える詩 其の二)

・與蘇武詩:『文選』第二十九巻に李少卿(李陵)として『与蘇武詩三首』の其一として載っている。『古詩源』卷二「漢詩」の中にもある。この作品は後人の偽作といわれる。

 

嘉會難再遇,三載爲千秋。

二人での楽しい会合は、再度出逢うことは、困難なことであろう。 そしてそれは三年が千年を過ぎたほどに思えるものなのだ。

・嘉會:楽しい宴会。すばらしい会。盛会。また、すばらしい出逢い。『與蘇武詩・其一』の「良時不再至」の「良時」と対になっていよう。 

・嘉:好い。すばらしい。 

・難:むつかしい。困難である。ここは「不再遇」としたいところを婉曲に「難再遇」としているので、実際は否定に近い働きをしている。 

・再遇:もう一度出逢うこと。再会すること。

(別れてしまうと)三年が千年に感じられる。 

・三載:三年。 

・爲:…になる。…である。 

・千秋:千年。「載」≒「年」≒「秋」≒「歳」。

 

臨河濯長纓,念子悵悠悠。

いま君を送って黄河にのぞみ、涙にぬれた冠の紐を洗って、いさぎよく別れようとするが、君を思う心の悲しみは流れる水のように果てしない。

・臨河:黄河にのぞむ。

・纓:冠のひも。官吏、仕官することを表す。また、「請纓」の意では、捕虜にした匈奴を縛る縄。出征の意になる。

・濯:洗う。洗濯をする。 

・長纓:冠のひも。官吏の大切な物、の意で使われている。『孟子』の『孺子歌』「滄浪之水淸兮,可以濯我纓,滄浪之水濁兮,可以濯我足。」や、『楚辞』の『漁父』「屈原既放, 游於江潭,行吟澤畔,顏色憔悴,形容枯槁。…屈原曰: 「吾聞之:新沐者必彈冠,新浴者必振衣。安能以身之察察,受物之者乎?寧赴湘流,葬於江魚之腹中,安能以皓皓之白,而蒙世俗之塵埃乎?」 漁父莞爾而笑,鼓枻而去。乃歌曰: 「滄浪之水淸兮,可以濯我纓,滄浪之水濁兮,可以濯我足。」遂去,不復與言。」に、その義は同じ。

・念子:あなたを思う。 ・念:心に鞏く思う。 ・子:あなた。ここでは、蘇武のことになる。

・悵:悼(いた)む。うらむ。うれえなげく。 

・悠悠:遠くはるかなさま。限りないさま。また、ゆったりと落ち着いたさま。

 

遠望悲風至,對酒不能酬。

立って遠く眺めると秋風がもの悲しくおとずれる。送別の酒宴にのぞんでも、君に潤をすすめる元気も出ない。

・遠望:遠くの方を眺めやる。ここでは、漢土の方を望むことになる。 

・悲風:悲しげな風。運命の風でもあるといえよう。 

・至:物事や場所に着く。達する。いたる。

・對酒:酒に向かって。酒の壷を前にして。 

・不能:…ができない。 

・酬:すすめる。主人が客に酒をすすめる。むくいる。応(こた)える。

 

行人懷往路,何以慰我愁。

旅立つ君も行く手のことが気にかかるというもので、どうやってわたしの愁いを慰めるということができるというのか。

・行人:旅人。旅立つ蘇武のことになる。 

・懷:胸の内で思う。 

・往路:行く手の道筋。李陵自身が、漢土から匈奴の地・胡地を目指しての出征の時のことになる。

・何以:どのようにして。どうして。何ゆえ。何を以て。 

・慰:なぐさめる。心が霽る。

・我愁:わたしの愁い。わたしの心の中の悲しさ。故国へ帰れないで胡地に独り留まることの愁い。

 

獨有盈觴酒,與子結綢繆。

ただここに盃を満たした酒かある。せめてはこれを飲んでつきぬ交情を結びかわそう。 

・獨有:ただ…だけがある。 (せめて、酒の酔いの中で、)あなたと心の中では、縺(もつ)れ纏(まつ)わって、絡(から)みついていたい。 

・盈觴酒:いっぱいに満たされた酒。 

・盈:(空っぽだった杯に酒を注がれて)満ち(た)。盛る。だんだん満ちる。みたす。 

・觴:(古代の)さかづき。

・與:…と。 

・結:むすぶ。ゆう。つなぐ。つなぎあわせる。 

・綢繆:縺(もつ)れあう。纏(まつ)わる。絡(から)みつく。感情が絡(から)みあって、細やかなこと。情緒が深く離れがたいこと。纏綿としていること。
oushokun04 

《蒿里曲》 無名氏  挽歌 漢・樂府<92>古詩源 巻三 811 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2603

無名氏  《蒿里曲》かの嵩里の土地はそもそもどのような者の棲みかであろう。そこには賢愚の差別なしに人の霊魂をとりおさめてある。


2013年6月30日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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《蒿里曲》 無名氏  挽歌 漢・樂府<92>古詩源 巻三 811 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2603

漢・樂府
蒿里曲
(士大夫や平民の葬送の際の歌)
蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。
かの嵩里の土地はそもそもどのような者の棲みかであろう。そこには賢愚の差別なしに人の霊魂をとりおさめてある。
鬼伯一何相催促,人命不得少踟蹰。
死神の促しかたのさても急なことであろう。ひとたびこれに誘われたら、人の命はしばしもこの世にたちどまることはできないということだ。

蒿里の曲
蒿里 誰が家の地ぞ,魂魄を聚斂して 賢愚無し。
鬼伯 一に何ぞ 相ひ催促し,人命 少【しばら】くも 踟蹰【ちちゅう】するを得ず。




『蒿里曲』 現代語訳と訳註
takadonosky01(本文)

蒿里曲
蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。
鬼伯一何相催促,人命不得少踟蹰。


(下し文)
蒿里の曲
蒿里 誰が家の地ぞ,魂魄を聚斂して 賢愚無し。
鬼伯 一に何ぞ 相ひ催促し,人命 少【しばら】くも 踟蹰【ちちゅう】するを得ず。


(現代語訳)
(士大夫や平民の葬送の際の歌)
かの嵩里の土地はそもそもどのような者の棲みかであろう。そこには賢愚の差別なしに人の霊魂をとりおさめてある。
死神の促しかたのさても急なことであろう。ひとたびこれに誘われたら、人の命はしばしもこの世にたちどまることはできないということだ。


(訳注)
蒿里曲
(士大夫や平民の葬送の際の歌)
漢代の挽歌。殯(もがり)の時に歌う。貴人の葬送には『薤露歌』「薤上露,何易晞。露晞明朝更復落,人死一去何時歸。」を歌う。蒿里の本来の意は、泰山の南にある山の名。人が死ぬと魂がここに来るという。墓地のこと。
曹操『蒿里行』
關東有義士,興兵討群凶。初期會盟津,乃心在咸陽。
軍合力不齊,躊躇而雁行。勢利使人爭,嗣還自相戕。
淮南弟稱號,刻璽於北方。鎧甲生蟣虱,萬姓以死亡。
白骨露於野,千里無鷄鳴。生民百遺一,念之斷人腸。


蒿里誰家地,聚斂魂魄無賢愚。
かの嵩里の土地はそもそもどのような者の棲みかであろう。そこには賢愚の差別なしに人の霊魂をとりおさめてある。
・蒿里 地名。山東省泰山の南にある。この曲によって墓地の通称に転用される。
・罪敵 あつめおさめる。何もかもとりこむこと。
・魂塊 人が死ぬと、魂と塊とに分離し、魂は遊離して天上に上り、塊は肉体に属
して地中に入る。
・蒿里:泰山の南にある山の名。人が死ぬと魂がここに来るという。墓地のことでもある。後、墓地の意で使われる。 ・誰家:どこの。だれの。 ・地:ところ。
・聚斂:集め収める。(税を)取り立てる。 ・魂魄:たましい。霊魂。 ・魂:天から受ける陽のたましい。また、精神の働きを司る。 ・魄:地から受ける陰のたましい。また、肉体の生命を司る。 ・無賢愚:差異がなくなる。平等である。賢者も愚人も同様になる。


鬼伯一何相催促,人命不得少踟蹰。
死神の促しかたのさても急なことであろう。ひとたびこれに誘われたら、人の命はしばしもこの世にたちどまることはできないということだ。
・鬼伯 伯は長、死をつかさどる神。
踟蹰 ためらう。躊躇。ものが行き悩むさま。ためらう。躊躇する。物が連なるさま。
yuugure02

名都篇 曹植 魏<57-#3> 女性詩712 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2108

名都篇 曹植 魏


2013年3月23日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
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孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 
名都篇 曹植 魏<57-#3> 女性詩712 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2108


名都篇 #1
名都多妖女,京洛出少年。寶劍直千金,被服麗且鮮。
大都会にはなまめかしい婦人が多い。ここ洛陽には青年が出没する。
彼らは千金の高値な宝剣をもち、奇麗できらきらかがやき、その上色もあざやかな衣服をまとう。

鬥雞東郊道,走馬長楸間。馳驅未能半,雙兔過我前。
時には、東の郊外の道で闘鶏をやり、時には、長い板の並木道で乗馬をする。
今日もあちこちへ疾駆している途中、二匹の兎が馬前を走るのを見つけた。
 #2
攬弓捷鳴鏑,驅上彼南山。左挽因右發,一縱雙禽連。
弓を手にとり、かぶら矢を腰の帯にたばさんで、遠く南の山まで追いあげるのである。
曲芸のような射法もやるのは左に引いて、右から矢をはなつかとおもうと、一発で二匹とも射とめてしまうのだ。

余巧未及展,仰手接飛鳶。觀者咸稱善,眾工歸我妍。
その腕前であってもまだ十分に発揮したのではないという、そこで手を高くあげ、飛んでくる鳶を射るのである。
見ていた人たちはみな声をそろえてほめそやす、多く入る弓矢の使い手の巧者連も、賞讃の言葉をおくるのである。

歸來宴平樂,美酒斗十千。
それが済むと帰って来て、平楽殿で宴会をひらくのである。そこに出される美酒は一斗で一万銭もするということなのだ。
#3
膾鯉皪胎濩,炮鱉炙熊蹯。
鯉をなますの刺身にし、子持ちのえびを吸物にする。またすっぽんを包み焼きにし、熊の掌をあぶりやきにする。
鳴儔嘯匹侶,列坐竟長筵。
友達どうしで呼びかわしたり、気勢を上げ、口笛を吹き、一同長椅子にいならんで、長くしいた竹むしろにいっぱいにあつまった。
連翩擊鞠壤,巧捷惟萬端。
今度は遊戯で、彼らは飛鳥の毛まりをけったり、木あてをする。その巧妙さで敏捷さ、まことにあらゆるわざをそなえている。
白日西南馳,光景不可攀。
真昼の太陽が西南に傾きだすと、彼らはちりぢりになって、引き留めることはできないだろう。
雲散還城邑,清晨復來還。
雲を散らしたように町なかへ帰って行くのであり、また明日の早朝には、また彼らの遊び場にもどって来るのである。


龍山落帽図00名都篇 #1
名都 妖女多く、京洛 少年を出す。
宝剣 千金に直し、被服 光き且つ鮮かなり。
鶏を闘わす 東郊の道、馬を走らす 長楸【ちょうしゅう】の間。
馳騎【ちてい】未だだ半ばなる能わざるに、双免 我が前を過ぐ。
#2
弓を携りて鳴鏑【めいてき】を捷【はさ】み、長駆して南の山に上る。
左に挽き因って右に発し、一たび縦【はな】てば 両禽【りょうきん】連なる。
余巧 未だ展【の】ぶるに及ばず、手を仰ぎて飛鳶【ひえん】を接【い】る。
観る者 咸【み】な善しと稱し、衆工 我に妍【けん】を帰す。
帰り来りて平楽に宴す、美酒 斗 十千なり。
#3
鯉を臍【なます】にし 胎濩【たいか】を皪【あつもの】にし、鱉【べつ】を炮【い】り熊蹯【ゆうはん】を炙【あぶ】る。
儔【とも】に鳴き 匹侶【ひつりょ】に嘯【うそぶ】き、坐に列して長筵【ちょうえん】に竟【わた】る。
連翩【れんべん】として鞠【きく】と壤【じょう】を撃ち、巧捷【こうしょう】惟れ万端なり。
白日 西南に馳せ、光景 攀【とど】む可からず。
雲散して城邑に還り、清晨 復た来り還らん。


『名都篇』 現代語訳と訳註
(本文)

yamanoki01

#3
膾鯉皪胎濩,炮鱉炙熊蹯。鳴儔嘯匹侶,列坐竟長筵。
連翩擊鞠壤,巧捷惟萬端。白日西南馳,光景不可攀。
雲散還城邑,清晨復來還。


(下し文)#3
鯉を臍【なます】にし 胎濩【たいか】を皪【あつもの】にし、鱉【べつ】を炮【い】り熊蹯【ゆうはん】を炙【あぶ】る。
儔【とも】に鳴き 匹侶【ひつりょ】に嘯【うそぶ】き、坐に列して長筵【ちょうえん】に竟【わた】る。
連翩【れんべん】として鞠【きく】と壤【じょう】を撃ち、巧捷【こうしょう】惟れ万端なり。
白日 西南に馳せ、光景 攀【とど】む可からず。
雲散して城邑に還り、清晨 復た来り還らん。


(現代語訳)
鯉をなますの刺身にし、子持ちのえびを吸物にする。またすっぽんを包み焼きにし、熊の掌をあぶりやきにする。
友達どうしで呼びかわしたり、気勢を上げ、口笛を吹き、一同長椅子にいならんで、長くしいた竹むしろにいっぱいにあつまった。
今度は遊戯で、彼らは飛鳥の毛まりをけったり、木あてをする。その巧妙さで敏捷さ、まことにあらゆるわざをそなえている。
真昼の太陽が西南に傾きだすと、彼らはちりぢりになって、引き留めることはできないだろう。
雲を散らしたように町なかへ帰って行くのであり、また明日の早朝には、また彼らの遊び場にもどって来るのである。


(訳注)#3
膾鯉皪胎濩,炮鱉炙熊蹯。

鯉をなますの刺身にし、子持ちのえびを吸物にする。またすっぽんを包み焼きにし、熊の掌をあぶりやきにする。
○膾 なますのさしみにする。日本のような刺身はない。膾鯉「詩経」小雅、六月に「鼈を炮(包焼)き鯉を膾す。」と見える。
○皪 汁の少い肉の吸物、ここでは動詞に用いる。
○胎濩 胎は子持ちの。とであろう、濩は蝦に同じ。
○炮鱉 亀のつつみ焼き。
○熊蹯 熊の手のこと。珍味とされる。


鳴儔嘯匹侶,列坐竟長筵。
友達どうしで呼びかわしたり、気勢を上げ、口笛を吹き、一同長椅子にいならんで、長くしいた竹むしろにいっぱいにあつまった。
○鳴儔嘯匹侶 仲間どうして、呼びかけあったり、口笛を吹いたりすること。相互の親しさをあらわしたもの。儔も匹侶も、仲間の意味。嘯は口笛を吹く。鳴というから、多少の奇声は発したのかも知れない。
○竟長筵 長い筵席に一ばいになること。竟は尽と同じ、うめつくすこと。筵はたかむしろ、即ち竹であんだむしろのこと。


連翩擊鞠壤,巧捷惟萬端。
今度は遊戯で、彼らは飛鳥の毛まりをけったり、木あてをする。その巧妙さで敏捷さ、まことにあらゆるわざをそなえている。
○連翩 鳥のように敏捷に身をひるがえす意。また次から次へとの意。
○擊鞠壤 毛毬に毛を固くつめたまりをけったり、木あてをしたりする。擊鞠も擊壤もともに昔の遊戯であり、擊壤とは、壤の形をした木片(これを壤という。)を二つ作り、一つを地上におき、他の一つを三四十歩のところから投げてあてるあそび(「太平御覧」にひく「芸経」に見える)。或はフットボールに、ポロとバレーを兼ねたような球戯もある。
○巧捷 巧妙かつ俊敏。
○惟 強めの助字。
○万端 千変万化ですべてを具備する。


白日西南馳,光景不可攀。
真昼の太陽が西南に傾きだすと、彼らはちりぢりになって、引き留めることはできないだろう。
○光景 日月をいうが、ここではすぎ去る時間をさす。
○攀 ひきとめる。


雲散還城邑,清晨復來還。
雲を散らしたように町なかへ帰って行くのであり、また明日の早朝には、また彼らの遊び場にもどって来るのである。
○雲散 雲のようにちらはる。
○城邑 まち。
○來還 散らばっていた若ものたちの遊び場に、かえってくる。
宮島(8)

白馬篇 曹植 魏詩<52-#3>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2028

白馬篇

2013年3月7日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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朔風 (一章) 曹植 魏詩<25-#1>文選 雑詩 上  http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67780868.html
謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html 謝靈運詩 六朝期の山水詩人。この人の詩は上品ですがすがしい男性的な深みのある詩である。後世に多大な影響を残している。
謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。

李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 



白馬篇 曹植 魏詩<52-#3>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2028


白馬篇
白馬飾金羈,連翩西北馳。
白馬には黄金のおもがいを飾り、馬を連ねての早く軽やかにかけ、西北の戦地をめざして疾駆する。
借問誰家子?幽幷遊俠兒。
あの勇士の若者はどこの家のものかと問うてみた、勇士の名門の幽州、幷州出身の遊侠のものだという。
少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
小さいころに郷里を離れたものであり、年若くして辺境の砂漠においてその名をあげているという。
宿昔秉良弓,楛矢何參差。
彼はその昔、良弓を手に、箙にさした矢が取りやすくして背にさしている。
#2
控弦破左的,右發摧月支。
弦をひけば、まず、左のぶら下がっているまとを破り、右に矢を放てば、月支の板のまとをくだいた。
仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
また手を高くあげて合図して、飛び上がっている猿を迎え射ち、身を低くして、馬蹄のまとをコナゴナにした。
(紙の「左的」,板の「月支」、飛び上がっている「猿」、ロープの「馬蹄」ここまで次第に難しくなる4つの的をことごとく射抜いた。)
狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
その敏捷さたるや、猴、猿をもはるかにしのぎ、勇敢であり俊敏・軽快なることは、まるで豹かミズチかと見紛うばかりである。
邊城多驚急,虜騎數遷移。
国境の城塞では非常事態がしばしばおこるものであるが、それは、遊牧の異民族どもが不意に移動してくるに対処するためである。
羽檄從北來,厲馬登高堤。

兵を緊急召集する文書が北からくると、さんざん馬にむちうち、敵兵を食い止めるための防塁のところまで駆けつけるのである。
#3
長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
長駆して匈奴の軍を踏みくだき、左にかえして鮮卑の兵を踏みしだいてやる。
棄身鋒刃端,性命安可懷。
この身を鋒や兵刃のあいだにすてさるのは覚悟していることである。善悪・道徳・生命など、どうしておしいとおもうものか。
父母且不顧,何言子與妻。
そして、父母さえ顧みないのである。ましてや、なんで子や妻のことを口にしようものか。
名在壯士籍,不得中顧私。
名前が勇士の名簿につらねているからには、心中に私事を思うべきではないのである。
捐軀赴國難,視死忽如歸。
また身命をなげうって、国難におもむく上のことである。戦死ということに見合われた時には「帰るべきところに帰ることになるだけだ」(帰る時は死ぬ時だけだ)と考えている。

白馬篇
白馬 金羈を飾り、連翩として西北に翩す。
借問す 誰が家の子ぞ、幽幷の遊侠児。
少小にして郷邑を去り、声を沙漠の垂に揚ぐ。
宿昔 良弓を秉り、楛矢 何んぞ参差たる。

#2
弦を控きて左的を破り、右に発して月支を摧く。
手を仰げて飛猱を接ち、身を俯して馬蹄を散ず。
狡捷なる 猴猿に過ぎ、勇別なる 豹螭の若し。
邊城 驚急多く,虜騎 數ば遷移す。
羽檄 北從り來り,馬を厲まして高堤に登る。
#3
長驅して匈奴を蹈み,左顧して鮮卑を陵がん。
身を鋒刃の端に棄つ,性命 安んぞ懷う可けん。
父母すら且つ顧みず,何んぞ子と妻に言わん。
名は壯士の籍に在り,中に私を顧みるを得ず。
軀を捐てて國難に赴むく,死を視ること忽ち歸する如がし。


駿馬04











『白馬篇』 現代語訳と訳註
(本文)
#3
長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
棄身鋒刃端,性命安可懷。
父母且不顧,何言子與妻。
名在壯士籍,不得中顧私。
捐軀赴國難,視死忽如歸。


(下し文) #3
長驅して匈奴を蹈み,左顧して鮮卑を陵がん。
身を鋒刃の端に棄つ,性命 安んぞ懷う可けん。
父母すら且つ顧みず,何んぞ子と妻に言わん。
名は壯士の籍に在り,中に私を顧みるを得ず。
軀を捐てて國難に赴むく,死を視ること忽ち歸する如がし。


(現代語訳)
長駆して匈奴の軍を踏みくだき、左にかえして鮮卑の兵を踏みしだいてやる。
この身を鋒や兵刃のあいだにすてさるのは覚悟していることである。善悪・道徳・生命など、どうしておしいとおもうものか。
そして、父母さえ顧みないのである。ましてや、なんで子や妻のことを口にしようものか。
名前が勇士の名簿につらねているからには、心中に私事を思うべきではないのである。
また身命をなげうって、国難におもむく上のことである。戦死ということに見合われた時には「帰るべきところに帰ることになるだけだ」(帰る時は死ぬ時だけだ)と考えている。


(訳注) #3
○白馬篇
 白馬にのる勇士の歌。「白馬篇」という題名の由来は、「名都篇」「美女篇」などと同じく、首句の二字をあてたもの。この詩は、曹操の勇臣で、幷州(山西・陝西の北部にあたる。)雁門出身の張遼のために作ったもので、建安十二年に、張遼が先鋒となり、「長駆して匈奴を踏ん」だ事実へ「魏志」武帝紀)ありという。この詩はを、李白、杜甫、王昌齢などの党の詩人と違い、曹植の体験による写実の作であるといわれているだけに迫力が違う。この詩の制作年代は、建安年間である。この十句は曹植の絶頂の時をあらわす迫力がある。おそらく曹操に認められ、評価を受けて自信満々の『檄文』である。


長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
長駆して匈奴の軍を踏みくだき、左にかえして鮮卑の兵を踏みしだいてやる。
〇匈奴 フンヌ。西北から北方の遊牧民族。万里の長城の向こう側の異民族を指す。
○陵 陵属、おかす。ふみつける。
○左顧 敵陣を背にしての方向性で、許都、洛陽に向かっての左方向。
○鮮卑 蒙古族の一つ。昔は興安嶺の東にいたが、三国当時は、敦煌から朔方、遼東、大遼江の北方にあって勢威強大であった。


棄身鋒刃端,性命安可懷。
この身を鋒や兵刃のあいだにすてさるのは覚悟していることである。善悪・道徳・生命など、どうしておしいとおもうものか。
○懐 おしむ。


父母且不顧,何言子與妻。
そして、父母さえ顧みないのである。ましてや、なんで子や妻のことを口にしようものか。
○且~ ~さえなお。程度の強調に用いる。


名在壯士籍,不得中顧私。
名前が勇士の名簿につらねているからには、心中に私事を思うべきではないのである。
○在 在籍する。
○中 心中。こころ。


捐軀赴國難,視死忽如歸。
また身命をなげうって、国難におもむく上のことである。戦死ということに見合われた時には「帰るべきところに帰ることになるだけだ」(帰る時は死ぬ時だけだ)と考えている。
『古詩十九首之第十四首』「思還故里閭,欲歸道無因。」(秋になれば儚さが増してくる、そう思うと、故郷が懐かしく、帰りたいとは思うが、道は遠く世は乱れ、帰る道すら求めがたいのである。)と対比してみると面白い。





白馬篇
白馬飾金羈,連翩西北馳。
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少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
宿昔秉良弓,楛矢何參差。
#2
控弦破左的,右發摧月支。
仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
邊城多驚急,虜騎數遷移。
羽檄從北來,厲馬登高堤。
#3
長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
棄身鋒刃端,性命安可懷。
父母且不顧,何言子與妻。
名在壯士籍,不得中顧私。
捐軀赴國難,視死忽如歸。


白馬篇 曹植 魏詩<52-#2>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2023

白馬篇

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●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
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李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html 李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人
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孟郊詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首 

 


白馬篇 曹植 魏詩<52-#2>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2023


白馬篇
白馬飾金羈,連翩西北馳。
白馬には黄金のおもがいを飾り、馬を連ねての早く軽やかにかけ、西北の戦地をめざして疾駆する。
借問誰家子?幽幷遊俠兒。
あの勇士の若者はどこの家のものかと問うてみた、勇士の名門の幽州、幷州出身の遊侠のものだという。
少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
小さいころに郷里を離れたものであり、年若くして辺境の砂漠においてその名をあげているという。
宿昔秉良弓,楛矢何參差。
彼はその昔、良弓を手に、箙にさした矢が取りやすくして背にさしている。
#2
控弦破左的,右發摧月支。
弦をひけば、まず、左のぶら下がっているまとを破り、右に矢を放てば、月支の板のまとをくだいた。
仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
また手を高くあげて合図して、飛び上がっている猿を迎え射ち、身を低くして、馬蹄のまとをコナゴナにした。
(紙の「左的」,板の「月支」、飛び上がっている「猿」、ロープの「馬蹄」ここまで次第に難しくなる4つの的をことごとく射抜いた。)

狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
その敏捷さたるや、猴、猿をもはるかにしのぎ、勇敢であり俊敏・軽快なることは、まるで豹かミズチかと見紛うばかりである。
邊城多驚急,虜騎數遷移。
国境の城塞では非常事態がしばしばおこるものであるが、それは、遊牧の異民族どもが不意に移動してくるに対処するためである。
羽檄從北來,厲馬登高堤。
兵を緊急召集する文書が北からくると、さんざん馬にむちうち、敵兵を食い止めるための防塁のところまで駆けつけるのである
#3
長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
棄身鋒刃端,性命安可懷。
父母且不顧,何言子與妻。
名在壯士籍,不得中顧私。
捐軀赴國難,視死忽如歸。


白馬 金羈を飾り、連翩として西北に翩す。
借問す 誰が家の子ぞ、幽幷の遊侠児。
少小にして郷邑を去り、声を沙漠の垂に揚ぐ。
宿昔 良弓を秉り、楛矢 何んぞ参差たる。

#2
弦を控きて左的を破り、右に発して月支を摧く。
手を仰げて飛猱を接ち、身を俯して馬蹄を散ず。
狡捷なる 猴猿に過ぎ、勇別なる 豹螭の若し。
邊城 驚急多く,虜騎 數ば遷移す。
羽檄 北從り來り,馬を厲まして高堤に登る。
#3
長驅して匈奴を蹈み,左顧して鮮卑を陵がん。
身を鋒刃の端に棄つ,性命 安んぞ懷う可けん。
父母すら且つ顧みず,何んぞ子と妻に言わん。
名は壯士の籍に在り,中に私を顧みるを得ず。
軀を捐てて國難に赴むく,死を視ること忽ち歸する如がし。


『白馬篇』 現代語訳と訳註
(本文)
#2
控弦破左的,右發摧月支。
仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
邊城多驚急,虜騎數遷移。
羽檄從北來,厲馬登高堤。


(下し文)
弦を控きて左的を破り、右に発して月支を摧く。
手を仰げて飛猱を接ち、身を俯して馬蹄を散ず。
狡捷なる 猴猿に過ぎ、勇別なる 豹螭の若し。
邊城 驚急多く,虜騎 數ば遷移す。
羽檄 北從り來り,馬を厲まして高堤に登る。


(現代語訳)
弦をひけば、まず、左のぶら下がっているまとを破り、右に矢を放てば、月支の板のまとをくだいた。
また手を高くあげて合図して、飛び上がっている猿を迎え射ち、身を低くして、馬蹄のまとをコナゴナにした。
(紙の「左的」,板の「月支」、飛び上がっている「猿」、
ロープの「馬蹄」ここまで次第に難しくなる4つの的をことごとく射抜いた。)
その敏捷さたるや、猴、猿をもはるかにしのぎ、勇敢であり俊敏・軽快なることは、まるで豹かミズチかと見紛うばかりである。
国境の城塞では非常事態がしばしばおこるものであるが、それは、遊牧の異民族どもが不意に移動してくるに対処するためである。
兵を緊急召集する文書が北からくると、さんざん馬にむちうち、敵兵を食い止めるための防塁のところまで駆けつけるのである。


(訳注) #2
○白馬篇 白馬にのる勇士の歌。「白馬篇」という題名の由来は、「名都篇」「美女篇」などと同じく、首句の二字をあてたもの。この詩は、曹操の勇臣で、幷州(山西・陝西の北部にあたる。)雁門出身の張遼のために作ったもので、建安十二年に、張遼が先鋒となり、「長駆して匈奴を踏ん」だ事実へ「魏志」武帝紀)ありという。この詩はを、李白、杜甫、王昌齢などの党の詩人と違い、曹植の体験による写実の作であるといわれているだけに迫力が違う。この詩の制作年代は、建安年間である。


控弦破左的,右發摧月支。
弦をひけば、まず、左のぶら下がっているまとを破り、右に矢を放てば、月支の板のまとをくだいた。
○控弦 弓を番える。ひくこと。
○左的 紙が張ってある左方のまと。
○推 破壊する。
〇月支 素支ともいう。板の的の別名。


仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
また手を高くあげて合図して、飛び上がっている猿を迎え射ち、身を低くして、馬蹄のまとをコナゴナにした。
○接 飛ぶものを迎えて射ること
○飛猱 飛び上がっている猿。
○散 失で射あてて、バラバラにする。
○馬蹄 馬蹄の的、月支と同じく別の的名。ロープを張って馬蹄をかけておく。当たれば飛び散る。
紙の「左的」,板の「月支」、飛び上がっている「猿」、ロープの「馬蹄」ここまで次第に難しくなる4つの的をことごとく射抜いた。


狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
その敏捷さたるや、猴、猿をもはるかにしのぎ、勇敢であり俊敏・軽快なることは、まるで豹かミズチかと見紛うばかりである。
〇狡捷 敏捷。
○猴猿 どちらも猿。サルの中のサル。さるとさる。猿がたくさんいることであろう。
○勇剽 功敢で軽快。
○豹螭 獣の一種。豹とミズチ。


邊城多驚急,虜騎數遷移。
国境の城塞では非常事態がしばしばおこるものであるが、それは、遊牧の異民族どもが不意に移動してくるに対処するためである。
○辺城 国境の城塞。
○驚急 事変突発の報
○虜騎 北方の民族で遊牧生活を営む異民族をいう。匈奴をさしていう場合もある。虜とは外敵に対する属称で、異民族を蔑む意味である。
○遷移 居所をかえる遊牧民族なるが故に当然である。そのため定住する農耕の漢族と紛争も起る。


羽檄從北來,厲馬登高堤。
兵を緊急召集する文書が北からくると、さんざん馬にむちうち、敵兵を食い止めるための防塁のところまで駆けつけるのである。
○羽檄 檄とは兵を徴集する時に用いる文事長さ一尺二寸(中国尺)の木札。羽は木簡に羽をつければ、緊急の意味になることを示すもので「羽檄」という。
○属馬 馬をむちうって、早く走らすこと。
○登高堤 敵兵を食い止めるための防塁。万里の長城の小型の様なもの。塹壕もあったのではなかろうか。

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http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 




白馬篇 曹植 魏詩<52>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2018


白馬篇
白馬飾金羈,連翩西北馳。
白馬には黄金のおもがいを飾り、馬を連ねての早く軽やかにかけ、西北の戦地をめざして疾駆する。
借問誰家子?幽幷遊俠兒。
あの勇士の若者はどこの家のものかと問うてみた、勇士の名門の幽州、幷州出身の遊侠のものだという。
少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
小さいころに郷里を離れたものであり、年若くして辺境の砂漠においてその名をあげているという。
宿昔秉良弓,楛矢何參差。

彼はその昔、良弓を手に、箙にさした矢が取りやすくして背にさしたという。
#2
控弦破左的,右發摧月支。
仰手接飛猱,俯身散馬蹄。
狡捷過猴猿,勇剽若豹螭。
邊城多驚急,虜騎數遷移。
羽檄從北來,厲馬登高堤。
#3
長驅蹈匈奴,左顧陵鮮卑。
棄身鋒刃端,性命安可懷。
父母且不顧,何言子與妻。
名在壯士籍,不得中顧私。
捐軀赴國難,視死忽如歸。


白馬 金羈を飾り、連翩として西北に翩す。
借問す 誰が家の子ぞ、幽幷の遊侠児。
少小にして郷邑を去り、声を沙漠の垂に揚ぐ。
宿昔 良弓を秉り、楛矢 何んぞ参差たる。

#2
弦を控きて左的を破り、右に発して月支を摧く。
手を仰げて飛猱を接ち、身を俯して馬蹄を散ず。
狡捷なる 猴猿に過ぎ、勇別なる 豹螭の若し。
邊城 驚急多く,虜騎 數ば遷移す。
羽檄 北從り來り,馬を厲まして高堤に登る。
#3
長驅して匈奴を蹈み,左顧して鮮卑を陵がん。
身を鋒刃の端に棄つ,性命 安んぞ懷う可けん。
父母すら且つ顧みず,何んぞ子と妻に言わん。
名は壯士の籍に在り,中に私を顧みるを得ず。
軀を捐てて國難に赴むく,死を視ること忽ち歸する如がし。


oushokun04



『白馬篇』 現代語訳と訳註
(本文)
白馬篇
白馬飾金羈,連翩西北馳。
借問誰家子?幽幷遊俠兒。
少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
宿昔秉良弓,楛矢何參差。


(下し文)
白馬 金羈を飾り、連翩として西北に翩す。
借問す 誰が家の子ぞ、幽幷の遊侠児。
少小にして郷邑を去り、声を沙漠の垂に揚ぐ。
宿昔 良弓を秉り、楛矢 何んぞ参差たる。


(現代語訳)
白馬には黄金のおもがいを飾り、馬を連ねての早く軽やかにかけ、西北の戦地をめざして疾駆する。
あの勇士の若者はどこの家のものかと問うてみた、勇士の名門の幽州、幷州出身の遊侠のものだという。
小さいころに郷里を離れたものであり、年若くして辺境の砂漠においてその名をあげているという。
彼はその昔、良弓を手に、箙にさした矢が取りやすくして背にさしたという。


(訳注)
白馬篇
○白馬篇
白馬にのる勇士の歌。「白馬篇」という題名の由来は、「名都篇」「美女篇」などと同じく、首句の二字をあてたもの。この詩は、曹操の勇臣で、幷州(山西・陝西の北部にあたる。)雁門出身の張遼のために作ったもので、建安十二年に、張遼が先鋒となり、「長駆して匈奴を踏ん」だ事実へ「魏志」武帝紀)ありという。この詩を、曹植の体験による写実の作であるといわれている。この詩の制作年代は、建安年間である。


白馬飾金羈,連翩西北馳。
白馬には黄金のおもがいを飾り、馬を連ねての早く軽やかにかけ、西北の戦地をめざして疾駆する。
○金羈 金製の面繋(おもがい)。くつわを釣るため、頭から頗にからむ組糸を属という。
○連翩 聯翩に同じ。鳥の列をなして飛ぶさま。ここでは馬を連ねての早く軽やかにかけるさまをいう。


借問誰家子?幽幷遊俠兒。
あの勇士の若者はどこの家のものかと問うてみた、勇士の名門の幽州、幷州出身の遊侠のものだという。
〇借問 試みにたずねる。
○幽幷 幽州と幷州。今の河北・山西・陝西の一部にあたる。古豪、勇士の出身地として知られる。
○遊俠兒 官途に就かず遊侠の男。死を軽んじ義を重んずる徒。「史記」の列伝に遊侠列伝あり。


少小去鄉邑,揚名沙漠垂。
小さいころに郷里を離れたものであり、年若くして辺境の砂漠においてその名をあげているという。
○少小 少年の頃。
○沙漠垂 北方の沙漠なる僻遠の地。垂ははて。


宿昔秉良弓,楛矢何參差。
彼はその昔、良弓を手に、箙にさした矢が取りやすくして背にさしたという。
○宿昔 ここではむかしの意。そのむかし。
○秉 手にとる。
○楛矢 楛はいばらに以た茎の赤い木。矢の材料となる。
○参差 箙【えびら】にさした矢が取りやすくしてあること。矢を構える際に重なっていると後れを取るので、わざわざ不揃いに射している。


箜篌引 曹植 魏詩<50-#3>古詩源 巻五 女性詩691 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2003

箜篌引 曹植 魏詩<50-#3>

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Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩箜篌引 曹植 魏詩<50-#3>古詩源 巻五 女性詩691 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2003
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩原性 韓愈(韓退之) <116-6>Ⅱ中唐詩602 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1994
●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
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●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集會吟行 謝霊運<1> kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 2006 (03/02)
●森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”といわれているがこれに疑問を持ち異なる視点で解釈して行く。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性江行 二首 其一 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-92-28-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2007
 
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女性詩人
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
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箜篌引 曹植 魏詩<50-#3>古詩源 巻五 女性詩691 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2003


箜篌引
置酒高殿上,親友從我游。
酒宴の用意を高楼の座敷にする。親友たちがぞろぞろと集まってくる。
中廚辦豐膳,烹羊宰肥牛。
料理の厨房ではたくさんのご馳走を準備した。羊を煮たり、牛を料理したりして、さまざまの珍味をととのえた。
秦箏何慷慨,齊瑟和且柔。
秦の国の箏は悲壮な調べをかなでる。斉の国の瑟はなごやかに、またやわらかなひびきをあげる。
陽阿奏奇舞,京洛出名謳。
陽阿の舞は世にもみごとな手振りを示し、洛陽の歌はとてもすぐれた節回しを聞かせる。
#2
樂飲過三爵,緩帶傾庶羞。
楽しみ飲んで、大盃三杯を傾け、帯をゆるめ、うちくつろいで酒の肴を平らげる。
主稱千金壽,賓奉萬年酬。
主人は客のために千金の寿をめでたいこととする。客は主人に酬いて万年の長寿を祝う。
久要不可忘,薄終義所尤。
まことに豪奢をきわめた交際をしているようではあるが、しかし其の交わりは旧約を重んじており、平生の言を忘れることはないのである。はじめに厚くして、終わりに薄くなるのは道義上非難をまぬかれぬものである。
謙謙君子德,磬折何所求。
謙遜は君子の美徳されるものである。しかし、だからといっていたずらに身をかがめるということは、ぺこぺこして何を求めようとすると思われるものである。
#3
驚風飄白日,光景馳西流。
昔の人で死なぬものが誰かいたであろうか。長寿を祈っても甲斐ないこと、『易経』に云うように天命を知れば何を憂えることがあろうか。突風がおこれば時として輝く太陽をもひるがえすこともある。穏やかな景色を作る太陽の光を西に吹き流すことすらあるというものだ。
盛時不再來,百年忽我遒。
人生の絶頂期は二度と来るものではない。人生どんなにしても百年であり、たちまちわが身に迫ってくるのである。
生存華屋處,零落歸山丘。
生きている間は奢侈の極み豪華な家に住んでいたとしても、草木が秋になって葉が色ずき凋み落ちるように死ぬと丘墳に帰らればならないのである。
先民誰不死,知命復何憂。

昔の人で死なぬものが誰かいたであろうか。長寿を祈っても甲斐ないこと、『易経』に云うように天命を知れば何を憂えることがあろうか。
箜篌引【くごいん】
酒を高殿の上に置き、親友我に従って遊ぶ。
中厨豊膳を辦【そな】へ、羊を烹【に】肥牛を宰おさむ。
秦箏【しんそう】何ぞ慷慨【こうがい】たる、斉瑟【せいしつ】和にして且つ柔なり。
陽阿【ようか】は奇舞を奏し、京洛は名謳【めいおう】を出す。
#2
楽しみ飲んで三爵【さんしゃく】に過ぎ、帶を緩めて庶羞【しょしゅう】を傾く。
主は千金の壽を稱し、賓は萬年の酬を奉ず。
久要【きゅうよう】忘る可からず、終りに薄きは義の尤【とが】むる所。
謙謙たる君子の徳、磬折【せいせつ】して何をか求めんと欲する。
#3
驚風 白日を飄し、光景を馳せて西に流る。
盛時再びす可からず、百年忽ち我に遒る。
生存しては華屋【かおく】に處り、零落【れいらく】しては山丘に歸る。
先民誰か死せざらん、命を知らは復何をか憂へん。


駿馬04










『箜篌引』 現代語訳と訳註
(本文)
#3
驚風飄白日,光景馳西流。盛時不再來,百年忽我遒。
生存華屋處,零落歸山丘。先民誰不死,知命復何憂。


(下し文) #3
驚風 白日を飄し、光景を馳せて西に流る。
盛時再びす可からず、百年忽ち我に遒る。
生存しては華屋【かおく】に處り、零落【れいらく】しては山丘に歸る。
先民誰か死せざらん、命を知らは復何をか憂へん。


(現代語訳)
突風がおこれば時として輝く太陽をもひるがえすこともある。穏やかな景色を作る太陽の光を西に吹き流すことすらあるというものだ。
人生の絶頂期は二度と来るものではない。人生どんなにしても百年であり、たちまちわが身に迫ってくるのである。
生きている間は奢侈の極み豪華な家に住んでいたとしても、草木が秋になって葉が色ずき凋み落ちるように死ぬと丘墳に帰らればならないのである。
昔の人で死なぬものが誰かいたであろうか。長寿を祈っても甲斐ないこと、『易経』に云うように天命を知れば何を憂えることがあろうか。


(訳注)#3
・箜篌引 引は古楽府の題名で、後漢に名づけられたもの。箜篌はハープに類する西域伝来の楽器のこと。曹植のこの作は主題と関係がなく、交道の終わりを全うすべきを述べ、人生の無常を歌い、天命に遵い安んずべきとよんだ詩である。酒宴が頽廃に向かうことはなかったことであろう。


驚風飄白日,光景馳西流。
突風がおこれば時として輝く太陽をもひるがえすこともある。穏やかな景色を作る太陽の光を西に吹き流すことすらあるというものだ。
○驚風 突風。
〇光景 日月をいうが、ここでは上句に白日があり太陽をさす。
○馳、流ともに迅速な時間の推移もあら・巴タ。


盛時不再來,百年忽我遒。
人生の絶頂期は二度と来るものではない。人生どんなにしても百年であり、たちまちわが身に迫ってくるのである。
○自隼 人の生涯を百年という。
○忽 せまる「楚辞」九弁に比える例に従えば尽きる意にとってもよい。すなわち「歳忽忽として蓮尽き」。


生存華屋處,零落歸山丘。
生きている間は奢侈の極み豪華な家に住んでいたとしても、草木が秋になって葉が色ずき凋み落ちるように死ぬと丘墳に帰らればならないのである。
〇華屋 奢侈の極み豪華な家。
○零落 草木が秋になって葉が色ずき凋み落ちること。『楚辞』離騒に「草木の零落を思い」と見える。ここでは人の死ぬこと。


先民誰不死,知命復何憂。
昔の人で死なぬものが誰かいたであろうか。長寿を祈っても甲斐ないこと、『易経』に云うように天命を知れば何を憂えることがあろうか。
先民 古人。昔の人。
知命復何憂  「易経」繫辞上に「天を楽しみ命を知る故に憂えず。」と見える。

箜篌引 曹植 魏詩<50-#2>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1998


箜篌引 曹植 魏詩<50-#2>

2013年3月1日 同じ日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩箜篌引 曹植 魏詩<50-#2>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1998
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●森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”といわれているがこれに疑問を持ち異なる視点で解釈して行く。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー
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登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。
李商隠詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html 李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首  
 
 




箜篌引 曹植 魏詩<50-#2>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1998


箜篌引
置酒高殿上,親友從我游。
酒宴の用意を高楼の座敷にする。親友たちがぞろぞろと集まってくる。
中廚辦豐膳,烹羊宰肥牛。
料理の厨房ではたくさんのご馳走を準備した。羊を煮たり、牛を料理したりして、さまざまの珍味をととのえた。
秦箏何慷慨,齊瑟和且柔。
秦の国の箏は悲壮な調べをかなでる。斉の国の瑟はなごやかに、またやわらかなひびきをあげる。
陽阿奏奇舞,京洛出名謳。
陽阿の舞は世にもみごとな手振りを示し、洛陽の歌はとてもすぐれた節回しを聞かせる。
#2
樂飲過三爵,緩帶傾庶羞。
謙遜は君子の美徳されるものである。しかし、だからといっていたずらに身をかがめるということは、ぺこぺこして何を求めようとすると思われるものである。
#3
驚風飄白日,光景馳西流。盛時不再來,百年忽我遒。
生存華屋處,零落歸山丘。先民誰不死,知命復何憂。
楽しみ飲んで、大盃三杯を傾け、帯をゆるめ、うちくつろいで酒の肴を平らげる。
主稱千金壽,賓奉萬年酬。
主人は客のために千金の寿をめでたいこととする。客は主人に酬いて万年の長寿を祝う。
久要不可忘,薄終義所尤。
まことに豪奢をきわめた交際をしているようではあるが、しかし其の交わりは旧約を重んじており、平生の言を忘れることはないのである。はじめに厚くして、終わりに薄くなるのは道義上非難をまぬかれぬものである。
謙謙君子德,磬折何所求。


箜篌引【くごいん】
酒を高殿の上に置き、親友我に従って遊ぶ。
中厨豊膳を辦【そな】へ、羊を烹【に】肥牛を宰おさむ。
秦箏【しんそう】何ぞ慷慨【こうがい】たる、斉瑟【せいしつ】和にして且つ柔なり。
陽阿【ようか】は奇舞を奏し、京洛は名謳【めいおう】を出す。
#2
楽しみ飲んで三爵【さんしゃく】に過ぎ、帶を緩めて庶羞【しょしゅう】を傾く。
主は千金の壽を稱し、賓は萬年の酬を奉ず。
久要【きゅうよう】忘る可からず、終りに薄きは義の尤【とが】むる所。
謙謙たる君子の徳、磬折【せいせつ】して何をか求めんと欲する。

#3
驚風 白日を飄し、光景を馳せて西に流る。
盛時再びす可からず、百年忽ち我に遒る。
生存しては華屋【かおく】に處り、零落【れいらく】しては山丘に歸る。
先民誰か死せざらん、命を知らは復何をか憂へん。

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『箜篌引』 現代語訳と訳註
(本文)
#2
樂飲過三爵,緩帶傾庶羞。主稱千金壽,賓奉萬年酬。
久要不可忘,薄終義所尤。謙謙君子德,磬折何所求。


(下し文) #2
楽しみ飲んで三爵【さんしゃく】に過ぎ、帶を緩めて庶羞【しょしゅう】を傾く。
主は千金の壽を稱し、賓は萬年の酬を奉ず。
久要【きゅうよう】忘る可からず、終りに薄きは義の尤【とが】むる所。
謙謙たる君子の徳、磬折【せいせつ】して何をか求めんと欲する。


(現代語訳)
楽しみ飲んで、大盃三杯を傾け、帯をゆるめ、うちくつろいで酒の肴を平らげる。
主人は客のために千金の寿をめでたいこととする。客は主人に酬いて万年の長寿を祝う。
まことに豪奢をきわめた交際をしているようではあるが、しかし其の交わりは旧約を重んじており、平生の言を忘れることはないのである。はじめに厚くして、終わりに薄くなるのは道義上非難をまぬかれぬものである。
謙遜は君子の美徳されるものである。しかし、だからといっていたずらに身をかがめるということは、ぺこぺこして何を求めようとすると思われるものである。


(訳注) #2
・箜篌引
 引は古楽府の題名で、後漢に名づけられたもの。箜篌はハープに類する西域伝来の楽器のこと。曹植のこの作は主題と関係がなく、交道の終わりを全うすべきを述べ、人生の無常を歌い、天命に遵い安んずべきとよんだ詩である。酒宴が頽廃に向かうことはなかったことであろう。


樂飲過三爵,緩帶傾庶羞。
楽しみ飲んで、大盃三杯を傾け、帯をゆるめ、うちくつろいで酒の肴を平らげる。
・三爵 爵は雀の形をした盃。礼記・玉藻に、君子の宴は三爵を度とすべきことが述べてある。
・庶差 たくさんの酒肴。


主稱千金壽,賓奉萬年酬。
主人は客のために千金の寿をめでたいこととする。客は主人に酬いて万年の長寿を祝う。
・千金壽 千金の価にふさわしい長寿。


久要不可忘,薄終義所尤。
まことに豪奢をきわめた交際をしているようではあるが、しかし其の交わりは旧約を重んじており、平生の言を忘れることはないのである。はじめに厚くして、終わりに薄くなるのは道義上非難をまぬかれぬものである。
・久要 昔の約束「論語」憲問に「久要不忘平生之言」「久要、平生の言を忘れず」朱子の注に「久要は旧約の意」とある。
・薄終 友達との交際が、初めは親しかったのが、終りには薄情になる。


謙謙君子德,磬折何所求。
謙遜は君子の美徳されるものである。しかし、だからといっていたずらに身をかがめるということは、ぺこぺこして何を求めようとすると思われるものである。
・謙謙 へりくだるさま。「易経」謙のことば。
・磬折 磬は石製の楽器、「く」の字なりに曲がっている。身を屈して敬礼すること。

箜篌引 曹植 魏詩<50>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1993

箜篌引 曹植 魏詩<50>

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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
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http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html 李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首   
 




箜篌引 曹植 魏詩<50>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1993



箜篌引
置酒高殿上,親友從我游。
酒宴の用意を高楼の座敷にする。親友たちがぞろぞろと集まってくる。
中廚辦豐膳,烹羊宰肥牛。
料理の厨房ではたくさんのご馳走を準備した。羊を煮たり、牛を料理したりして、さまざまの珍味をととのえた。
秦箏何慷慨,齊瑟和且柔。
秦の国の箏は悲壮な調べをかなでる。斉の国の瑟はなごやかに、またやわらかなひびきをあげる。
陽阿奏奇舞,京洛出名謳。
陽阿の舞は世にもみごとな手振りを示し、洛陽の歌はとてもすぐれた節回しを聞かせる。
#2
樂飲過三爵,緩帶傾庶羞。主稱千金壽,賓奉萬年酬。
久要不可忘,薄終義所尤。謙謙君子德,磬折何所求。
#3
驚風飄白日,光景馳西流。盛時不再來,百年忽我遒。
生存華屋處,零落歸山丘。先民誰不死,知命復何憂。


箜篌引【くごいん】
酒を高殿の上に置き、親友我に従って遊ぶ。
中厨豊膳を辦【そな】へ、羊を烹【に】肥牛を宰おさむ。
秦箏【しんそう】何ぞ慷慨【こうがい】たる、斉瑟【せいしつ】和にして且つ柔なり。
陽阿【ようか】は奇舞を奏し、京洛は名謳【めいおう】を出す。
#2
楽しみ飲んで三爵【さんしゃく】に過ぎ、帶を緩めて庶羞【しょしゅう】を傾く。
主は千金の壽を稱し、賓は萬年の酬を奉ず。
久要【きゅうよう】忘る可からず、終りに薄きは義の尤【とが】むる所。
謙謙たる君子の徳、磬折【せいせつ】して何をか求めんと欲する。
#3
驚風 白日を飄し、光景を馳せて西に流る。
盛時再びす可からず、百年忽ち我に遒る。
生存しては華屋【かおく】に處り、零落【れいらく】しては山丘に歸る。
先民誰か死せざらん、命を知らは復何をか憂へん。

宮島(3)


『箜篌引』 現代語訳と訳註
(本文)

置酒高殿上,親友從我游。
中廚辦豐膳,烹羊宰肥牛。
秦箏何慷慨,齊瑟和且柔。
陽阿奏奇舞,京洛出名謳。


(下し文) 箜篌引【くごいん】
酒を高殿の上に置き、親友我に従って遊ぶ。
中厨豊膳を辦【そな】へ、羊を烹【に】肥牛を宰おさむ。
秦箏【しんそう】何ぞ慷慨【こうがい】たる、斉瑟【せいしつ】和にして且つ柔なり。
陽阿【ようか】は奇舞を奏し、京洛は名謳【めいおう】を出す。


(現代語訳)
酒宴の用意を高楼の座敷にする。親友たちがぞろぞろと集まってくる。
料理の厨房ではたくさんのご馳走を準備した。羊を煮たり、牛を料理したりして、さまざまの珍味をととのえた。
秦の国の箏は悲壮な調べをかなでる。斉の国の瑟はなごやかに、またやわらかなひびきをあげる。
陽阿の舞は世にもみごとな手振りを示し、洛陽の歌はとてもすぐれた節回しを聞かせる。

姑蘇台02
(訳注)
箜篌引

箜篌引 引は古楽府の題名で、後漢に名づけられたもの。箜篌はハープに類する西域伝来の楽器のこと。曹植のこの作は主題と関係がなく、交道の終わりを全うすべきを述べ、人生の無常を歌い、天命に遵い安んずべきとよんだ詩である。酒宴が頽廃に向かうことはなかったことであろう。


置酒高殿上,親友從我游。
酒宴の用意を高楼の座敷にする。親友たちがぞろぞろと集まってくる。


中廚辦豐膳,烹羊宰肥牛。
料理の厨房ではたくさんのご馳走を準備した。羊を煮たり、牛を料理したりして、さまざまの珍味をととのえた。
・中厨 くりや、調理場。
・豊膳 たくさんのご馳走。
・宰 治むの意、料理すること。


秦箏何慷慨,齊瑟和且柔。
秦の国の箏は悲壮な調べをかなでる。斉の国の瑟はなごやかに、またやわらかなひびきをあげる。
・秦箏 軍はもと十二紋、今は十三絃の「こと」。秦の銅製であるとも伝える。秦人がよくこれを弾じたという。
・斉瑟 富は二十五紋の「大ごと」。史記蘇秦伝に、臨淄(斉の地名) の民で瑟を鼓せぬものはないと記してある。


陽阿奏奇舞,京洛出名謳。
陽阿の舞は世にもみごとな手振りを示し、洛陽の歌はとてもすぐれた節回しを聞かせる。
・陽阿 陽阿の踊りを踊る女。歌舞の名妓の名、また地名、山西省晋城県の西北。趙飛燕がそれから歌舞を学んだと漢書・外戚伝に見える。ここでは転じて舞踊の者。
秦の箏、齊の瑟、陽阿の奇舞、京洛の歌、良い酒宴の必須アイテム。これだけそろえば十分な宴会である。

泰山梁父行 曹植 魏詩・楽府<49>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1988

泰山梁父行 曹植 魏詩・楽府<49>

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女性詩人
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩
http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩
http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首 
 
 


泰山梁父行 曹植 魏詩・楽府<49>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1988


泰山梁甫行
八方各異氣,千里殊風雨。
天下の八方それぞれ気候は異なるものである。千里の遠方は風雨のようすさえも別なものになる。
劇哉邊海民,寄身於草野。
辺地、僻地、海辺の地域に住む民の生活はひどいものである。その身は草ぶきのあばら屋に寄せている。
妻子像禽獸,行止依林阻。
妻子はまるで禽獣のようである。仕事をするのは山林のけわしい所ばかりなのである。
柴門何蕭條,狐兔翔我宇。

その家の門は柴折戸のなんとものさびしいことであろうか。狐や兎までもが家の中をかけまわっているのである。

泰山梁父行
八方各の気を異にし、千里風雨を殊にす。
劇しい哉遠海の民、身を草堂に寄す。
妻子は禽獣に象、行止は林阻に依る。
柴門何ぞ蕭條たる、狐兎我が宇に翔る。


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『泰山梁父行』 現代語訳と訳註
(本文)
梁甫行
八方各異氣,千里殊風雨。
劇哉邊海民,寄身於草野。
妻子像禽獸,行止依林阻。
柴門何蕭條,狐兔翔我宇。


(下し文)
泰山梁父行
八方各の気を異にし、千里風雨を殊にす。
劇しい哉遠海の民、身を草堂に寄す。
妻子は禽獣に象、行止は林阻に依る。
柴門何ぞ蕭條たる、狐兎我が宇に翔る。


(現代語訳)
天下の八方それぞれ気候は異なるものである。千里の遠方は風雨のようすさえも別なものになる。
辺地、僻地、海辺の地域に住む民の生活はひどいものである。その身は草ぶきのあばら屋に寄せている。
妻子はまるで禽獣のようである。仕事をするのは山林のけわしい所ばかりなのである。
その家の門は柴折戸のなんとものさびしいことであろうか。狐や兎までもが家の中をかけまわっているのである。


(訳注)
泰山梁父行

貧しい人の歌。「楽府詩集」では相和歌辞楚調曲に入れる。古辞もあったらしいが、今は残っていない。梁甫は泰山の下にある山で、ともに人の死後、霊魂が帰ってゆくところといわれる。普通は「泰山吟」「梁父吟」の二曲に分けられて居り、両者とも、『薤露』『蒿里』などと同じく挽歌の類である。しかし曹植のこの篇は挽歌ではなく、賤山賤の苦しい荒涼たる生活を歌うもの。
この篇の制作動機については、諸説があり、斉の国の風土を詠むが故に、東阿・甄城王に封ぜられた時のものとか、漢末黄巾の乱による人民流離のさまを憫れみ作ったとか、曹植が「遷都の賦の序」でいう「連りに瘠せたる土に遇い、衣食継がず。」と同趣旨であるなどという。
晩年の大和年間の作品ではなかろうか。曹丕にも明帝にも権力闘争に敗れて以降の作品は、詩人らしく、哲学的な作品が増えている。


八方各異氣,千里殊風雨。
天下の八方それぞれ気候は異なるものである。千里の遠方は風雨のようすさえも別なものになる。
・八方 東・西・南・北の四万と東北・東南・西北・西南の四隅を合わせいう。八方の用語解説 - 1 四方と四隅。東・西・南・北と北東・北西・南東・南西の八つの方角。 2 あらゆる方面。ほうぼう。「―に目を配る」「―丸くおさまる」 3 「八方行灯(あんどん)」の略。


劇哉邊海民,寄身於草野。
辺地、僻地、海辺の地域に住む民の生活はひどいものである。その身は草ぶきのあばら屋に寄せている。
・劇哉 生活の困難をいう。
・辺海 辺地、僻地、海辺の地域。
・草堂 一本には草野に作る。「壁」はかりいお、なや、田畑の収穫をとり入れる小屋、また野原の意もある。


妻子像禽獸,行止依林阻。
妻子はまるで禽獣のようである。仕事をするのは山林のけわしい所ばかりなのである。
・象 …のよう。
・行止 行くと止まる。行動、動作の意。
・林阻 山林や険阻の地をいう。


柴門何蕭條,狐兔翔我宇。
その家の門は柴折戸のなんとものさびしいことであろうか。狐や兎までもが家の中をかけまわっているのである。
・柴門 柴を折って作った門扉。
・蕭條 さびしさをいう。
・翔 遊び廻る。
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鰕鱓篇 曹植 魏詩<16>玉台新詠・文選楽府 古詩源 巻五 女性詩642 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1785

鰕鱓篇 曹植

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鰕鱓篇 曹植 魏詩<16>玉台新詠・文選楽府 古詩源 巻五 女性詩642 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1785


鰕鱓篇 

192年(初平3年) - 232年(太和6年)11月28日)は、中国後漢末から三国時代の人物で、魏の皇族。字は子建。陳王に封じられ、諡は思であったことから陳思王とも呼ばれる。唐の李白・杜甫以前における中国を代表する文学者として、「詩聖」の評価を受けた人物でもある。才高八斗(八斗の才)・七歩の才の語源。建安文学の三曹の一人。
沛国譙県(現在の安徽省亳州市)の人。曹操の五男として生まれる。生母の卞氏は倡家(歌姫)の出身であるが、『世説新語』賢媛篇に名を列ねるほどの賢婦であった。同母兄に文帝曹丕・任城威王曹彰。同母弟に蕭懐王曹熊。子は曹苗(早世)・曹志。他に2人の娘がいた。
異母兄の曹昂と曹鑠が早世すると、197年(建安2年)頃[3]に卞氏が正室に上げられ、曹植は曹操の正嫡の三男となる。幼い頃より詩など数十万言を諳んじ、自身も詩人であった曹操に寵愛された。211年(建安16年)、平原侯(食邑5000戸)に封じられ、214年、臨葘侯(同)に転封される。

鰕鱓篇  *〔鱼+旦〕を鱓としてあてて表示。

鰕鱓篇
鰕鱣游潢潦、不知江海流。
燕雀戲藩柴、安識鴻鵠游。
世士此誠明、大德固無儔。
駕言登五岳、然後小陵丘。

小魚とどじょうは大きな水だまりに泳いでいるから、大江や大海、水の流れについては知らないものだ。
燕や雀は桓根の内にたわむれているのだから、鴻や鵠のような大きな鳥のような遊びは知らない。
世間一般の士太夫というものは、この人の持つ考えはよくわかるのであるが、大徳を行う人はもとより誰もが真似をできるものではなく、これを知ることは容易でない。
馬車を駆って五嶽の上にのぼって、はじめてほかの山や岡の小さいのがわかる。
#2
俯觀上路人、勢利惟是謀。
そして目を下にして路を行き交う人々を観察する、するとみな権勢傲欲私利私欲をのみ謀るものばかりである。
讎高念皇家、遠懷柔九州。
敵国の勢いが強盛になると王室の安危を思いそぶりをして、自己の安泰のために遠く九州の地まで懐柔政策をとるようになる。
撫劍而雷音、猛氣縱橫浮。
かくて剣を撫でて大声をあげて威嚇し、猛々しいよそおいを見せつつ自己の利益をほしいままにするのである。
泛泊徒嗷嗷、誰知壯士憂。
しかしその影に漂泊しつづけ、いたずらに歎き悲しむものがあるのである、このさすらう壮士のいだく心の憂いを誰が知るのであろうか。

鰕鱓篇【かせんへん】
鰕鱓【かせん】潢潦【こうりょう】に游いで、江海の流れを知らず。
燕雀【えんじゃく】藩柴【はんさい】を戲れ、安んぞ鴻鵠の游びを識らん。
世士【せいし】此れ誠明なり、大德【だいとく】固【もと】より儔【たぐい】無し。
駕して言【ここ】に五岳に登り、然る後 陵丘【りょうきゅう】を小す。
俯して路に上るの人を觀るに、勢利【せいり】惟だ是れをのみ謀る。
讎【あだ】高くして皇家を念い、遠く九州を柔【やす】んぜんことを懷う。
劍を撫して雷音あり、猛氣【もうき】縱橫に浮ぶ。
泛泊【しはく】して徒らに嗷嗷【ごうごう】たり、誰か知る壯士の憂を。


『鰕鱓篇』 現代語訳と訳註
(本文)
#2
俯觀上路人、勢利惟是謀。
讎高念皇家、遠懷柔九州。
撫劍而雷音、猛氣縱橫浮。
泛泊徒嗷嗷、誰知壯士憂。


(下し文)
俯して路に上るの人を觀るに、勢利【せいり】惟だ是れをのみ謀る。
讎【あだ】高くして皇家を念い、遠く九州を柔【やす】んぜんことを懷う。
劍を撫して雷音あり、猛氣【もうき】縱橫に浮ぶ。
泛泊【しはく】して徒らに嗷嗷【ごうごう】たり、誰か知る壯士の憂を。


(現代語訳)
そして目を下にして路を行き交う人々を観察する、するとみな権勢傲欲私利私欲をのみ謀るものばかりである。
敵国の勢いが強盛になると王室の安危を思いそぶりをして、自己の安泰のために遠く九州の地まで懐柔政策をとるようになる。
かくて剣を撫でて大声をあげて威嚇し、猛々しいよそおいを見せつつ自己の利益をほしいままにするのである。
しかしその影に漂泊しつづけ、いたずらに歎き悲しむものがあるのである、このさすらう壮士のいだく心の憂いを誰が知るのであろうか。


(訳注) #2
鰕鱓篇
「井の中の蛙大海を知らず。」ということをいろんな角度から詠う。
私利私欲の自分を守るために国の権力を利用し、自分は実際に戦いには出ずひとにやらせる。単に強欲のものである。


俯觀上路人、勢利惟是謀。
そして目を下にして路を行き交う人々を観察する、するとみな権勢傲欲私利私欲をのみ謀るものばかりである。
・勢利惟是謀 権勢傲欲私利私欲。


讎高念皇家、遠懷柔九州。
敵国の勢いが強盛になると王室の安危を思いそぶりをして、自己の安泰のために遠く九州の地まで懐柔政策をとるようになる。
・讎高念皇家 讎高は敵国外患の強盛なる意に解した。


撫劍而雷音、猛氣縱橫浮。
かくて剣を撫でて大声をあげて威嚇し、猛々しいよそおいを見せつつ自己の利益をほしいままにするのである。
・撫剣而雷音 憶慨し、怖がらせる。威嚇する意。


泛泊徒嗷嗷、誰知壯士憂。
しかしその影に漂泊しつづけ、いたずらに歎き悲しむものがあるのである、このさすらう壮士のいだく心の憂いを誰が知るのであろうか。
・泛泊/汎泊 江湖に漂泊すること。

為焦仲卿妻作 (まとめ-3) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会


◆◆◆2012年12月18日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆  
Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる、最大長編の漢詩訳注解説(31回分割して掲載) 
為焦仲卿妻作 (まとめ-3) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67754548.html


Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
招揚之罦一首 韓愈 韓退之(韓愈)詩<98-#1>Ⅱ中唐詩530 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1686 
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Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
●杜甫の全作品1141首のほとんどを取り上げて訳注解説するブログ 

●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする

●人生としては4/5前で、詩としては1/3を過ぎたあたり。 " 
”成都紀行(10)” 剣門 杜甫詩1000 <349>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1687 杜甫1500- 521 
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Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#3> (12/18) 
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『更漏子 四』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-18-2-#4 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1688 
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為焦仲卿妻作 (まとめ) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

その-3


#21為焦仲卿妻作-其九場面 (9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのように

三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀

お返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやり

とげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおも

われる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚

の仕度をととえてまいれ。」と。


#22(9)-2
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。

婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。

齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。

從人四五百,鬱鬱登郡門。

おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。



#23為焦仲卿妻作-其十場面 (10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。

何不作衣裳,莫令事不舉。
なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。
阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
可愛い娘は無言のままじっとしている。手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。
移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。

やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。。


#24(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。

府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。

新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。

門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。


#25(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。

果不如先願,又非君所詳。我有
親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。

以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」


#26(10)-4

磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」

卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。

「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」



#27(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。

執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。

念與世間辭,千萬不復全。

思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。



#28為焦仲卿妻作-其十一場面 (11)-1
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。故作不良計,勿複怨鬼神。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
命如南山石,四體康且直。阿母得聞之,零淚應聲落。

母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。


#29(11)-2
汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。

東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。

府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。



#30為焦仲卿妻作-其十二場面 (12)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。暗暗黃昏後,寂寂人定初。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。

我命絕今日,魂去屍長留。攬裙脫絲履,舉身赴清池。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。

府吏聞此事,心知長別離。徘徊庭樹下,自掛東南枝。

府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。



#31為焦仲卿妻作-其十三場面 (13)
兩家求合葬,合葬華山傍。東西植松柏,左右種梧桐。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。

枝枝相覆蓋,葉葉相交通。中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。

仰頭相向鳴,夜夜達五更。行人駐足聽,寡婦起彷徨。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。

多謝後世人,戒之慎勿忘。

こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。





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為焦仲卿妻作 (まとめ その-2) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

◆◆◆2012年12月17日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆  
Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる、最大長編の漢詩訳注解説(31回分割して掲載) 
為焦仲卿妻作 (まとめ その-2) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67755196.html
Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#8-(最終回)>Ⅱ中唐詩529 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1682 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/archives/6134505.html
Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
"●杜甫の全作品1141首のほとんどを取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、詩としては1/3を過ぎたあたり。 " 
”成都紀行(9)” 桔柏渡 杜甫詩1000 <349>#2 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1683 杜甫1500- 520 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/archives/67755568.html
Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 幷序 韓退之(韓愈)詩<80> (12/17) 
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『更漏子 三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-17-2-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1684 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/archives/21062932.html
 
謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
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為焦仲卿妻作 (まとめ その-2) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

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その-2



#13為焦仲卿妻作-其五場面 (5)-1
府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。

あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」


#14(5)-2
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。

蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。

恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。

おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。



#15為焦仲卿妻作-其六場面 (6)-1
入門上家堂,進退無顏儀。阿母大拊掌,不圖子自歸。
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三教汝織,十四能裁衣。十五彈箜篌,十六知禮儀。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。

十七遣汝嫁,謂言無誓違。汝今何罪過,不迎而自歸?
だから十七でおまえを嫁入らせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」

蘭芝慚阿母,兒實無罪過。阿母大悲摧。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。



#16為焦仲卿妻作-其七場面 (7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。雲有第三郎,窈窕世無雙。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。

年始十八九,便言多令才。阿母謂阿女,汝可去應之。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。

阿女含淚答,蘭芝初還時,府吏見叮嚀,結誓不別離。
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。


#17(7)-2
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。

阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。

豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。

どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。



#18為焦仲卿妻作-其八場面 (8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。


#19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」

先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
否泰如天地,足以榮汝身。不嫁義郎體,
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。


#20(8)-3
其往欲何雲。蘭芝仰頭答,理實如兄言。
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」

雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」

為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

◆◆◆2012年12月16日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集
古代中国の結婚感、女性感について述べる、最大長編の漢詩訳注解説(31回分割して掲載)
為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会

Ⅱ.中唐詩・晩唐詩
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#7>Ⅱ中唐詩528 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1678

Ⅲ.杜甫詩1000詩集
"●杜甫の全作品1141首のほとんどを取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、詩としては1/3を過ぎたあたり。 "
”成都紀行(9)” 桔柏渡 杜甫詩1000 <348>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1679 杜甫1500- 519

Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集
星行 韓退之(韓愈)詩<81> (12/16)


Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。
『更漏子 二』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-16-2-#2 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1680

謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
女性詩人  http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html




為焦仲卿妻作 (まとめその1) 漢詩<32>古詩源 巻三 女性詩615 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1677

この詩は中国に於ては比較的に少ない叙事詩の傑作で、古今稀に見る長篇である。問答体の長篇であるから、便宜上、篇を十三場面に分けて解し、ここでの掲載は通し番号#によって細分してすすめ、場面は()-枝番としている。なお詩中の登場人物を表記しておく。



登場人物00



・建安 (196―220)後漢献帝の年号
・廬江府 廬江は漢の郡名、もと安徽省廬江県西にあったが、漢未には潜山県に治を

移した。




為焦仲卿妻作其(0)

序曰:漢末建安中,廬江府小吏焦仲卿妻劉氏,
為仲卿母所遣,自誓不嫁。其家逼之,乃投水而死。

仲卿聞之,亦自縊於庭樹。時人傷之,為詩雲爾。
(前夫の)焦仲卿は、このことを伝え聞き、自分もまた庭樹の東南の枝に首を吊って
果てた。時の人は、二人のことを傷(いた)んで詩にしたと云うことである。)

とそ
の経緯が述べられている。白居易の『長恨歌』の祖型になったとも謂える。


序文にいう:後漢末の建安年間に膳江府の小役人であった焦仲卿の妻に劉氏(名は蘭芝)というものがあった。蘭芝は仲卿の母におい出された。離縁された妻・劉氏(劉蘭芝)は更なる嫁入りはしないと心に誓った。(夫の方も、必ず呼び戻すと約束した。しかし実家の方は、劉蘭芝にとって玉の輿とも謂うべき再婚を逼り、嫁入り支度も整った後、前夫に出逢って、愚痴られた。夫婦ともあの世で添い遂げようということになった。その日の夕刻、終(つい)に水に入って死んだ。





為焦仲卿妻作-其一場面 (1)-1
孔雀東南飛,五裏一徘徊。十三能織素,十四學裁衣。
孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。

十五彈箜篌,十六誦詩書。十七為君婦,心中常苦悲。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。

君既為府吏,守節情不移。

あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。


#2(1)-2
賤妾留空房,相見常日稀。雞鳴入機織,夜夜不得息。
わたしはあなたがいないさびしい室に留守居して、ふだんはお目にかかることもめったにないでしょう。
にわとりか鳴くと機を織りはじめ、毎晩寝ることもままならないのです。

三日斷五疋,大人故嫌遲。非為織作遲,君家婦難為。
三日間に、五疋の絹を織りあげました、母さまは故意にゆっくり織っているといって嫌われます。
しかしそれは織り方が遅いためではなく、あなたの家の嫁としての勤めが難儀なのです。

妾不堪驅使,徒留無所施。便可白公姥,及時相遣歸。
わたくしはとてもこき使われるのに堪えかねます。ただとどまっていたとて、どうにもなりません。
おしゆうと様たちに申しあげたいのです。「今のうちに里方へ帰してくださいませ。」と。



#3為焦仲卿妻作-其二場面 (2)-1#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。兒已薄祿相,幸複得此婦。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」

結髮同枕席,黃泉共為友。共事二三年,始而未為久。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」

女行無偏斜,何意致不厚。
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」


#4(2)-2
阿母謂府潰何乃太區區。此婦無禮節,舉動自專由。
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」

吾意久懷忿,汝豈得自由。東家有賢女,自名秦羅敷。
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」

可憐體無比,阿母為汝求。
「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」


#5(2)-3
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。
「この嫁はすぐさま暇を出してしまいます。ここからおいかえしてしまうので決してとどめおいてはなりませんよ」
息子の府吏は膝まずいてうやうやしく答えるのである。「こうして謹んで母上に申しあげます。」

今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。
「今もしこの妻を出してしまうなら、わたしは生涯二度と妻をめとるということはいたしません。」
母はこれを聞きくなり、座牀をたたいてのたいへんな怒りようを示すのである。

小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。
「この子は親の意向を懼れる所を知らないのですか、嫁を助ける言葉ばかりをどうしていうのでしょう。
わたしはもうあの嫁に義理は持たぬばかりかお前にも恩義はない。これからはおまえに新たに添わせることなど許しはしませんよ。」



#6為焦仲卿妻作-其三場面 (3)-1
府吏默無聲,再拜還入戶。舉言謂新婦,哽咽不能語。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
やっと謂ったのは、

我自不驅卿,逼迫有阿母。卿但
暫還家,吾今且赴府。
「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」

#7(3)-2
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」

往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」

晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」


#8(3)-3
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。

妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。

箱簾六七十,綠碧青絲繩。
それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。


#9(3)-4
物物各具異,種種在其中。人賤物亦鄙,不足迎後人。
「わたしのそれぞれの物がそれぞれ異なっていますし、使い道も種々のものがその中に入っています。」
「子供じみた賎しい者が持つような物と思われるかもしれませんし、つまらぬ物とおおもいかもしれません、しかし、後から来られる方々にとっては不満足なものでしかないかもしれません。」

留待作遣施,於今無會因。時時為安慰,久久莫相忘。
それでも「わしの気持ちとして、そのまま残しおいて贈り物といたします。今となっては、あなたに会うためのよすがとなってはいけませんから。」
「ときどきはやすらぎと慰めになるとおもいます、いついつまでもお忘れないでくださいませ。」と。



#10為焦仲卿妻作-其四場面 (4)-1
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。



#11(4)-2
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。

本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。

今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


#12(4)-3
卻與小姑別,淚落連珠子。新婦初來時,小姑始扶床。
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。

今日被驅遣,小姑如我長。勤心養公姥,好自相扶將。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。

初七及下九,嬉戲莫相忘。出門登車去,涕落百餘行。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

為焦仲卿妻作-其十三(31) 漢詩<174>古詩源 巻三 女性詩614 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1673


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為焦仲卿妻作-其十三(31) 漢詩<174>古詩源 巻三 女性詩614 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1673


#31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
東西植松柏,左右種梧桐。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
枝枝相覆蓋,葉葉相交通。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。
仰頭相向鳴,夜夜達五更。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
行人駐足聽,寡婦起彷徨。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。
多謝後世人,戒之慎勿忘。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。

兩家 合葬を求め,華山の傍に合葬す。
東西に松柏を植え,左右に梧桐【ごとう】を種う。
枝枝 相い覆蓋【ふくがい】,葉葉 相い交通す。
中には雙の飛鳥有り,自ら名して鴛鴦【えんおう】と為す。
頭を仰いで相い向いて鳴き,夜夜 五更に達す。
行人 足を駐めて聽き,寡婦 起って彷徨【ぼうこう】す。
多謝するは後世の人なり,之を戒めて慎しんで忘るること勿れ。




『為焦仲卿妻作』-其十三(最終場面) 現代語訳と訳註
 (本文)
#31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。東西植松柏,左右種梧桐。枝枝相覆蓋,葉葉相交通。中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。仰頭相向鳴,夜夜達五更。行人駐足聽,寡婦起彷徨。多謝後世人,戒之慎勿忘。


(下し文) #31
兩家 合葬を求め,華山の傍に合葬す。
東西に松柏を植え,左右に梧桐【ごとう】を種う。
枝枝 相い覆蓋【ふくがい】,葉葉 相い交通す。
中には雙の飛鳥有り,自ら名して鴛鴦【えんおう】と為す。
頭を仰いで相い向いて鳴き,夜夜 五更に達す。
行人 足を駐めて聽き,寡婦 起って彷徨【ぼうこう】す。
多謝するは後世の人なり,之を戒めて慎しんで忘るること勿れ。


(現代語訳)
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれは鴛鳶といぅ名の鳥だと名づけた。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。


(訳注) #31為焦仲卿妻作-其十三(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。
焦・劉の両家は仲卿と蘭芝との合葬を希望し許され、両家の合葬は滞りなく華山の傍に葬られた。
・崋山 安徽省 安慶市 樅陽県南京と九江の中間点の白蘯湖の傍にある山で、五岳の崋山とは異なる。
近くには仏教聖地の九崋山もあるが時代としてそこに墳墓を設けるほどの家系ではないし、両家が仏教徒という感じも見受けられない。


東西植松柏,左右種梧桐。
墓の東には松を西にはや柏が植えられ、桟道の左右には梧桐が植えられていた。
松柏 五行思想にもとずく墳墓には植えられる木である。松は青松で東、西は白で柏。
梧桐 夫唱婦随の木である。李白は「古風 其三十九」において、玄宗と楊貴妃の生活を示している。また、元代の戯曲「梧桐雨」がある。また、『荘子』秋水篇の故事を用いる。荘子が梁の国の宰相恵子を訪れようとすると、それは宰相の地位を奪い取ろうとしているのだという重言があった。恐れる恵子に向かって荘子はたとえ話を持ち出す。南方に「鴛雛」という鳥がいて、梧桐にしか止まらず、練実(竹の実)しか食べず、清浄な水しか飲まない。鶴が「腐鼠」を食べていたところに鴛雛が通りかかると、鶴はにらみつけて「嚇」と叫んだ。今あなたは梁の国を取られはしないか恐れて威嚇するのか、と恵子に言った。猜疑心を抱きつつの後宮生活を示すものである。

枝枝相覆蓋,葉葉相交通。
やがて枝と枝とを互いにおおいかぶさり、かさなりあい、葉と葉とはまさに互いに入りまじりあっていった。
・この二句は夫婦の睦愛をあらわすものである。


中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。
その墓苑の中に一つがいの飛ぶ鳥がいて、人々はそれを鴛鳶という鳥だと名づけた。
・鴛鴦 オシドリ。仲むつまじい男女の象徴。


仰頭相向鳴,夜夜達五更。
頭を上に向けて互いに向かいあって鳴き、夜な夜な夜明け近くまで鳴きつづけるのである。
五更 日没から夜明けまでを5分割したその最後の時間、夜明けに近い4時ころ。杜甫「閣夜」李商隠「無題」「蝉」。

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無題(何處哀筝随急管) 李商隠21



行人駐足聽,寡婦起彷徨。
道行く人はその鳴き声に足をとめて耳を傾け、独り身になった女はそこへ来ると起ちあがってあたりをさまようになった。


多謝後世人,戒之慎勿忘。
こんなことがあるので後の世の人々に申しあげるが、よくこの物語の教訓にして、間違っても嫁いじめをされぬよう忘れないでいただき、又戒めてほしいということであります。



為焦仲卿妻作-其十二(30) 漢詩<173>古詩源 巻三 女性詩613 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1669

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為焦仲卿妻作-其十二(30) 漢詩<173>古詩源 巻三 女性詩613 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1669


#30為焦仲卿妻作-其十二(12)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暗暗黃昏後,寂寂人定初。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。
我命絕今日,魂去屍長留。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
攬裙脫絲履,舉身赴清池。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。
府吏聞此事,心知長別離。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
徘徊庭樹下,自掛東南枝。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。

其の日 牛馬嘶【いなな】き,新婦 青廬【せいろ】に入る。
暗暗たる黃昏の後,寂寂として人定まるの初め。
我が命は今日に絕ち,魂去りて屍のみ長く留まる。
裙【くん】を攬【と】りて絲履【しり】を脫し,身を舉げて清池に赴【おもむ】く。
府吏此の事を聞き,心に長き別離を知る。
徘徊して庭樹の下,自ら東南の枝に掛る。


『為焦仲卿妻作』-其十二 現代語訳と訳註
(本文)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。暗暗黃昏後,寂寂人定初。我命絕今日,魂去屍長留。攬裙脫絲履,舉身赴清池。府吏聞此事,心知長別離。徘徊庭樹下,自掛東南枝。


(下し文)
其の日 牛馬嘶【いなな】き,新婦 青廬【せいろ】に入る。
暗暗たる黃昏の後,寂寂として人定まるの初め。
我が命は今日に絕ち,魂去りて屍のみ長く留まる。
裙【くん】を攬【と】りて絲履【しり】を脫し,身を舉げて清池に赴【おもむ】く。
府吏此の事を聞き,心に長き別離を知る。
徘徊して庭樹の下,自ら東南の枝に掛る。


(現代語訳)
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。
襦袢のすそをつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。


(訳注)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。
その日折しも牛や馬がいなないた、蘭芝は婚姻の始りの禊ぎをする廬にはいった。
・青廬 五行思想で物事の始まりを示す青の幔幕をあずまやのようなところに張って庵をつくる。その部屋にいて体を清めた。


暗暗黃昏後,寂寂人定初。
暮色に包まれるたそがれ時が過ぎると、ひっそりとして人々の静まりかえったころである。


我命絕今日,魂去屍長留。
蘭芝は今日こそ自分の命の絶えるときとして、屍こそこの世にとどまるけれど、魂は黄泉の国に去るのだと思い定めるのであった。


攬裙脫絲履,舉身赴清池。
襦袢の裾をつまみ、絹の履をぬぎそろえ、身を跳らして池の中へと飛び込むにいたった。


府吏聞此事,心知長別離。
府吏もこの仔細を聞き、自分の心を長の別れだとさとるのであった。


徘徊庭樹下,自掛東南枝。
そして、庭をさまようように歩いて大樹のもとに立った。そして自らの手で枝ぶりのしっかりした東南の枝に首をつったのである。
徘徊庭樹下,自掛東南枝 若干のためらいを示すけれども、北向きの枝で折れてはいけないので、ためらわずにしっかりした枝ぶりの方に首を掻けたということで、府吏の意志をあらわすものである。

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”成都紀行(7)” 龍門閣 杜甫詩1000 <347>#2 


Ⅳ.
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Ⅴ.
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『菩薩蠻十三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-13-13-#13 花間集



為焦仲卿妻作-其十一(29) 漢詩<172>古詩源 巻三 女性詩612 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1665



#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。故作不良計,勿複怨鬼神。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。

命如南山石,四體康且直。阿母得聞之,零淚應聲落。

母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。

#29
汝是大家子,仕宦於台閣。
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
慎勿為婦死,貴賤情何薄。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。
東家有賢女,窈窕豔城郭。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
阿母為汝求,便複在旦夕。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。
府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。

#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。
#29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。



現代語訳と訳註
(本文)
#29
汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。


(下し文) #29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。


(現代語訳)
「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。


(訳注) #29
汝是大家子,仕宦於台閣。

「おまえは由緒ある名門の子です。ご先祖には台閣の大臣をお勤めしたものもあるのです。
・台閣 (1)高くて立派な建物。 (2)政治を行う官庁。中央政府。内閣。


慎勿為婦死,貴賤情何薄。
それがたかが戻した婦のために死ぬなどと軽はずみなことを口にする。身分の貴賎で判断し嫁に行くというのは、なんという軽薄な女ですか。


東家有賢女,窈窕豔城郭。
昔からいうように東の方の家に賢い娘がいます。そのしとやかさ、上品であでやかさは城郭の内でも評判だというのです。
・東家有賢女 美人といっても賢くて美人の東家の女です。西は、色気がある傾国の美女を云う。
為焦仲卿妻作#4(-其二)で「東家有賢女,自名秦羅敷。」「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」と母親が息子の府吏にいっている。
・東家有賢女  ・東家 楚の宋玉の『登徒子好色の賦』「臣が里の美しき者は、臣が東家の子に若くはなし。」とある。ここから美人のたとえを”東家之子”又は”東家之女”と。美女を称して”東隣”とした事例に唐の李白「自古有秀色、西施与東隣」(古来より秀でた容姿端麗美人、西施と東隣)白居易「感情」のもある 
李白『白紵辭其一』「揚清歌、發皓齒。 北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。」

李白81白紵辭其一  82白紵辭其二  83 巴女詞
無題(何處哀筝随急管) 李商隠21

・秦羅敷 秦氏羅敷。「陌上桑」その美貌をほこって自ら泰氏の羅敷と称したのである。秋胡詩 (1) 顔延之(延秋胡詩 (1) 顔延之(延年) 詩<2>Ⅱ李白に影響を与えた詩471 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1230

阿母為汝求,便複在旦夕。
母はそれをおまえのためにもらってあげる。たとえ午前中や晩と間をあけず、今すぐにでも。」と。


府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
府吏はこれはまた「東家」などとむるなこと言うと諦め再拝して、誰もいない自分の部屋に帰って長い時間なげき悲しんだが、暫くすると覚悟はできているので立ちあがったのである。


轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。
頭を戸口の方に向けてじっと見る。いらいらするほどの愁いにみちた心がしだいにせまり、もはやぐらぐらと煮えたぎり始めたのである。


為焦仲卿妻作-其十一(28) 漢詩<171>古詩源 巻三 女性詩611 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1661

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為焦仲卿妻作-其十一(28) 漢詩<171>古詩源 巻三 女性詩611 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1661


#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏還家去,上堂拜阿母。
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
兒今日冥冥,令母在後單。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
故作不良計,勿複怨鬼神。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
命如南山石,四體康且直。
母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
阿母得聞之,零淚應聲落。

母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。
#29
汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。
轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。

#28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。

#29
「汝は是れ大家の子にて,台閣に仕宦するなり。
慎しんで婦の為に死すること勿れ,貴賤の情 何んぞ薄からんや。
東家には賢女が有るもの,窈窕として城郭の豔なり。阿母 汝が為に求めん,便ち複【ふたた】び旦夕【たんせき】に在り。
府吏 再拜【して】還り,長歎して空房の中【うち】,計を作して乃ち爾として立つ。
頭を轉じて戶裏に向い,漸【ようや】く愁の煎迫【せんぱく】を見る 。


『為焦仲卿妻作』-其十一 現代語訳と訳註
(本文)

府吏還家去,上堂拜阿母。
今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
兒今日冥冥,令母在後單。
故作不良計,勿複怨鬼神。
命如南山石,四體康且直。
阿母得聞之,零淚應聲落。

(下し文) #28為焦仲卿妻作-其十一(11)
府吏家に還って去り,堂に上りて阿母に拜す。
「今日大いに風寒く,寒風 樹木を摧き,嚴霜 庭蘭を結ぶ。
兒は今日冥冥たり,母を令【し】て後單に在らしむ。
故【ことさら】に不良の計を作す,複【ふたた】び鬼神【きしん】を怨むこと勿れ。
命は南山の石の如く,四體は康くして且つ直なれ。」と。
阿母 之を聞くこと得て,零淚 聲に應じて落つ。


(現代語訳)
府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。


(訳注)
府吏還家去,上堂拜阿母。

府吏は家へ向き直し帰っていく、奥座敷にあがり母に挨拶した。


今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。
「今日はたいへん風が寒い日で、その寒風は樹木をくだくほどで、そのうえ厳しい霜が庭の蘭をいためています。


兒今日冥冥,令母在後單。
そんな日の今日、わたしは暗いくらい黄泉の国に参ります。母上をひとり後に残すことになります。


故作不良計,勿複怨鬼神。
わざわざとこんなよくない計画をしたのですが、ふたたび神さまを怨んではくださらないでください。
・不良計 府吏の自殺の計画をいう。


命如南山石,四體康且直。
母上のお命は南山の石のように堅固で、おからだは健やかで、お腰も曲がらぬようにいのります。」


阿母得聞之,零淚應聲落。
母はこのことを聞き得て、声と涙がいっしょに落ちるままで語るのである。

為焦仲卿妻作-其十(27) 漢詩<170>古詩源 巻三 女性詩610 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1657

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為焦仲卿妻作-其十(27) 漢詩<170>古詩源 巻三 女性詩610 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1657


#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。

莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。

移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。

府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。

新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。

門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。

果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。

以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。

そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」

卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。

思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
黃泉下相見,勿違今日言。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。
執手分道去,各各還家門。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生人作死別,恨恨那可論。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。
念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


『為焦仲卿妻作』 現代語訳と訳註
(本文)
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。
黃泉下相見,勿違今日言。
執手分道去,各各還家門。
生人作死別,恨恨那可論。
念與世間辭,千萬不復全。


(下し文)
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


(現代語訳)
わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。
思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。


(訳注) #27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。

わたしたち今度のことはあなたの母親に二人に無理なことを迫って引き離したからうなったのです。あなたの家はそうでしょうし、わたしの家も太守からの事でそうなったのです。


黃泉下相見,勿違今日言。
こうなれば黄泉の国に降ってお目にかかるということだけで、くれぐれも今日のおことばにはそむいてはいけません。」と


執手分道去,各各還家門。
二人は手をとりあい、やがて別々の道へと分かれ、そしてそれぞれの家門に帰っていった。


生人作死別,恨恨那可論。
生きていて死に別れの約束をするのだから、互いの恨めしい気持ちを言葉にしようもないのである。


念與世間辭,千萬不復全。
思うことは、この世に望みを捨ててしまうということだから、千や万ほど考えても生命を全うすることはできはしないのだ。



為焦仲卿妻作-其十(26) 漢詩<169>古詩源 巻三 女性詩609 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1653

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舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。
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果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
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以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」

#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
蒲葦一時韌,便作旦夕間。
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」
卿當日勝貴,吾獨向黃泉。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
新婦謂府吏,何意出此言。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。


現代語訳と訳註
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#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。


(下し文) #26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。


(現代語訳)
そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」


(訳注) #26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。

そして、「磐石の私は四角で筋を貫きそのうえ分厚く決意も堅いのです。だから千年でも筋を曲げずに保てるものです。」
#14で府吏に云っている
「君當作磐石,妾當作蒲葦。蒲葦韌如絲,磐石無轉移。」


蒲葦一時韌,便作旦夕間。
つづいていう「蒲や葦などは一時をつなぐ縄のようなもので、したがって午前中から晩までぐらいしかもたないのだ。」


卿當日勝貴,吾獨向黃泉。
「あなた(元妻の蘭芝)は日が経つのつれ、おえらくなるに違いない。わたしはただひとりで黄泉の国に行くことにしましょう」と。


新婦謂府吏,何意出此言。
蘭芝は府吏にいう。「必死で努力したこの私にどんなおつもりでそんなことをおっしゃるのです。」

為焦仲卿妻作-#25其十(10)-3 漢詩<168>古詩源 巻三 女性詩608 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1649

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為焦仲卿妻作-#25其十(10)-3 漢詩<168>古詩源 巻三 女性詩608 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1649


#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
自君別我後,人事不可量。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。
果不如先願,又非君所詳。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
我有親父母,逼迫兼弟兄。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。
以我應他人,君還何所望 。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏謂新婦,賀君得高遷。
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」
#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と


#25『為焦仲卿妻作』-其十 (10)-3 現代語訳と訳註
(本文)

#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。


(下し文)
#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と


(現代語訳)
馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」


(訳注)
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。

馬に手をあげて鞍を打たいて落ち着かせて、ああ、と悲しさをしめし、そして本当に心が痛んでいるのだ。


自君別我後,人事不可量。
「あなたとお別れしてからそのあとのわたしは、人とのからみということでは見通しがつかないのです。


果不如先願,又非君所詳。
お約束を果たそうとしたのですがそのようにはなりませんでした。しかし私が努力したことはとてもあなたにはわからないでしょう。


我有親父母,逼迫兼弟兄。
(ご承知の通り)わたしには肉親の父母があり、そのうえ兄弟までが無理にせまったのです。


以我應他人,君還何所望 。
そうして、わたしを一人ばかりか他の人からも申しこみがあり、それに応じるようになったのです。今あなたがお帰りになって前のお約束を所望されてもどうにもならないのです。」


府吏謂新婦,賀君得高遷。
府吏が蘭芝にいう。「君のこの玉の輿はとてもめでたいと思います。」

為焦仲卿妻作-其十(24) 漢詩<167>古詩源 巻三 女性詩607 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1645

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為焦仲卿妻作-其十(24) 漢詩<167>古詩源 巻三 女性詩607 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1645


#24『為焦仲卿妻作』-其十(10)-2 
独善的な三段論法は得意だが相手の気持ちになることが出来ない、相手の気持ちになっての三段論法が苦手のなのであることがよくわかる詩である。この考え方というのも中國の歴史書、詩歌、物語、尖閣問題、日本製品排斥などの根底にある発想法のひとつである。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。

莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。

移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
暗暗日欲暝,愁思出門啼。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。
府吏聞此變,因求假暫歸。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
未至二三裏,摧藏馬悲哀。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。
新婦識馬聲,躡履相逢迎。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
悵然遙相望,知是故人來。

#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


『為焦仲卿妻作』-其十 現代語訳と訳註
(本文)
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。


(下し文) #24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。


(現代語訳)
朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。


(訳注) #24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。

朝の間に刺繍の襦袢はかまを作り、晩方には単衣の薄絹の上着を作り上げたのだ。


暗暗日欲暝,愁思出門啼。
だんだんと日は落ち暮れてゆく。娘の蘭芝は愁いと思いがこみ上げ、門を出てしくしくと泣くのである。


府吏聞此變,因求假暫歸。
府吏は女が嫁入りするというこの変事を聞きつけ、急いで役所から仮休暇をもらって、帰宅することとなった。


未至二三裏,摧藏馬悲哀。
まだ家についていない二、三里手前のあたりで、馬が疲れてあわれな声を出して鳴いたのである。


新婦識馬聲,躡履相逢迎。
門を出て泣いていた娘の蘭芝が馬の声を聞き知って、履をふみしめ馬の声の方に迎えに出た。


悵然遙相望,知是故人來。
もしやと思い遙か先を眺めると、やっぱり、彼の夫が来ていることがわかったのである。

為焦仲卿妻作-其十(23) 漢詩<166>古詩源 巻三 女性詩606 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1641

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#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
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左手持刀尺,右手執綾羅。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。
#24其十(10)-2
朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。
#25其十(10)-3
舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。
#26其十(10)-4
磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。
#27其十(10)-5
同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。念與世間辭,千萬不復全。

#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。

#24其十(10)-2
朝に繡夾【しゅうきょう】裙【くん】を成し,晚には單羅【たんら】の衫【さん】を成す。
暗暗として日暝れなんと欲し,愁思して出でて門に啼く。
府吏 此の變を聞き,因りて假を求め暫く歸える。
未だ至ららざること二三里,摧藏【さいぞう】して馬悲哀す。
新婦 馬聲を識り,履【くつ】を躡【ふ】んで相い逢迎【ほうげい】す。
悵然として遙に相い望む,知る是れ故人の來るを。

#25其十(10)-3
手を舉げて馬鞍【ばあん】を拍【う】ち,嗟歎【さたん】して心を傷ま使む。
君の我にれ別し自【よ】り後,人事は量るべからず。
果して先に願うが如くにならず,又 君が詳【つまびらか】にする所に非らず。
我に親父母有り,逼迫【ひょくはく】するに兼ねて弟兄あり。
以って我 他人に應ぜしむ,君の還るも何の望む所ぞ 。
府吏 新婦に謂う,「君が高遷を得るを賀す。」と
#26其十(10)-4
磐石は方にして且つ厚なり,以って千年を卒【お】う可し。
蒲葦【ほい】は一時の韌【じん】なり,便ち旦夕【たんせき】の間を作す。
卿は當に日の勝【まさ】りて貴なり,吾は獨り黃泉に向わん。」と
新婦 府吏に謂う,「何の意か此の言を出す。」と。

#27其十(10)-5
同じく是れ逼迫せ被る,君 爾【しか】り妾 亦た然【しか】り。
黃泉の下 相い見【まみえ】ん,今日の言に違うこと勿れ。
手を執って道を分って去り,各各 家門に還る。
生人 死別を作す,恨恨 那んぞ論ず可けん。
念【おも】う世間と辭す,千萬 復た全うするをえざるを。


#23『為焦仲卿妻作』-其十(10)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。


(下し文)
阿母阿女に謂う,「適【まさ】に府君の書を得たり,明日來りて汝を迎えんと。
何んぞ衣裳を作らざる,事をして舉らざしむ莫れ。」と。
阿女默りて聲無し,手巾もて口を掩いて啼き,淚落ちて便ち瀉【そそ】ぐが如し。
我が琉璃の榻【とう】を移し,出して前廳【ぜんそう】の下に置く。
左手に刀尺を持ち,右手に綾羅【りょうら】を執【と】る。


(現代語訳)
母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。


(訳注) #23為焦仲卿妻作-其十(10)-1
阿母謂阿女,適得府君書,

母親が娘蘭芝にいう。「今まさに、太守のお手紙がとどいたところですよ。


明日來迎汝。何不作衣裳,
明日はおまえを迎えにくるといわれております。なぜ持参衣裳を作らないというのではないでしょうね。


莫令事不舉。阿女默無聲,
この婚儀が運ばぬようなことにしてはいけませんよ」と。可愛い娘は無言のままじっとしている。


手巾掩口啼,淚落便如瀉。
手にしたハンカチで口もとをおさえて泣いている。涙が落ちるるのは雨がふりしきるようである。


移我琉璃榻,出置前廳下。
やがて琉璃の椅子を引き出し移動させて、前窓の下の方におきひろくした


左手持刀尺,右手執綾羅。
左手で裁ち物の刀とものさしを持ち、右手に綾の羅をとってはじめたのである。

為焦仲卿妻作-其九(22) 漢詩<165>古詩源 巻三 女性詩605 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1637

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 Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(4)” 水會渡 杜甫詩1000 <343>#1 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1639 杜甫1500- 509 
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為焦仲卿妻作-其九(22) 漢詩<165>古詩源 巻三 女性詩605 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1637


#21為焦仲卿妻作-其九(9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。
#22 (9)-1
交語速裝束,絡繹如浮雲。
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
青雀白鵠舫,四角龍子幡。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。
婀娜隨風轉,金車玉作輪。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
齎錢三百萬,皆用青絲穿。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。
從人四五百,鬱鬱登郡門。

おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。


#21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。

#22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


現代語訳と訳註
(本文)
#22
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。從人四五百,鬱鬱登郡門。


(下し文) #22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


(現代語訳)
両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。
おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。

 
(訳注) #22
交語速裝束,絡繹如浮雲。

両家の間に交わされた約束が整ったので、取り急いで仕度をすることになった。仕度の舟や馬車がまるで浮き雲のようにいきかった。


青雀白鵠舫,四角龍子幡。
縁起物の五行思想の青雀や白鵠をかたどった舟は、四すみに竜の幡をおし立ている。


婀娜隨風轉,金車玉作輪。
それがひらひらと風のまにまにひるがえり、金色の車台、玉をちりばめた車輪もつづく。


躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。
行きて進まない靑毛の駿馬、金絲のひねり飾りの鞍には五色の飾りふさがはなやかに垂れている。
躑躅 行きて進まざるさま。
杜甫「醉歌行
春光潭沱秦東亭,渚蒲牙白水荇青。
風吹客衣日杲杲,樹攪離思花冥冥。
酒盡沙頭雙玉瓶,眾賓皆醉我獨醒。
乃知貧賤別更苦,吞聲躑躅涕淚零。』

醉歌行 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 94

蛇足だが、中国で毒性のあるツツジを羊が誤って食べたところ、足ぶみしてもがき、うずくまってしまったと伝えられていることから躑躅(てきちょく)と言う。


齎錢三百萬,皆用青絲穿。
支度金の銭は三百万、みな青い糸で穴を通してある。


雜彩三百疋,交廣市鮭珍。
このほかに色とりどりのあや絹三百疋、交広地方から求めためずらしい肴類も用意される。


從人四五百,鬱鬱登郡門。
おともの者は四、五百人。そのものたちが、さかんに続いて郡守邸宅の門前へと集まってくる。


為焦仲卿妻作-其九(21) 漢詩<164>古詩源 巻三 女性詩604 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1633

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為焦仲卿妻作-其九(21) 漢詩<164>古詩源 巻三 女性詩604 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1633


#21為焦仲卿妻作 -其九 (9)-1
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。

三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。
#22
交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。從人四五百,鬱鬱登郡門。


#21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。

#22
語を交えて速かに裝束【しょうぞく】す,絡繹として浮雲の如し。
青雀 白鵠【はくこく】の舫【ほう】,四角 龍子の幡【はん】。婀娜【あだ】風に隨って轉じ,金車 玉をもって輪と作す。
躑躅【てきちょく】たる青驄【せいそう】の馬,流蘇【りゅうそ】は金縷【きんろう】の鞍。
錢を齎【もた】らす三百萬,皆 青絲を用て穿つ。
雜彩【ざつさい】三百疋,交廣より鮭珍を市【か】う。從人 四五百,鬱鬱【うつうつ】として郡門に登【いた】る。


『為焦仲卿妻作』-其九 (9)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#21
媒人下床去,諾諾複爾爾。
還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
府君得聞之,心中大歡喜。
視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。


(下し文) #21焦仲卿妻の為に作る-其九(9)
媒人 床を下り去り,諾諾【だくだく】複た爾爾【じじ】。
部に還って府君に白【もう】す,「下官 使命を奉じ,言談 大いに緣有り。」と。
府君之を聞くを得て,心中大いに歡喜す。
曆を視 複た書を開き,「便ち此の月の內を利とす,六合 正に相應す。
良吉は三十日なり,今已【すで】に二十七,卿 去って婚を成す可し。」と。


(現代語訳)
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。


(訳注)
媒人下床去,諾諾複爾爾。
媒酌の使者は長椅子からおりて「すぐさま承知していただきそしてまた、そのようにお返事いただいた。」といって立ち去った。
・諾々 すぐさま承知すること。唯々諾々 ( いいだくだく ). 自分の意見を少しも主張せずに、他人の言いなりになって盲従する様。 事の良し悪しに関わらず、ただ人の意見に従って言いなりになること。 唯々は「はいはい」という返事。 「韓非子・八姦編」


還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。
そして、幕府に帰って太守に申しあげていう、「拙者はお使い役をうけたまわりやりとげてまいりました、話はうけいれられ、とても良い縁ということになりました。」
・還部 部は郡幕府の事務室。


府君得聞之,心中大歡喜。
太守はこれを聞くにおよんで、心の底から大いに喜ばれたのだ。
・府君 太守を指す。


視曆複開書,便利此月內,六合正相應。
暦を見て確かめ、書物をあけて調べている、そしていう。「今月のうちがよいとおもわれる。星のめぐりあわせも合っているようです。
・六合 吉祥をつかさどる星の名。陰陽家学説に従い、日・月と北斗(古代中国では六星)とによる六種の会合によって吉凶を判断する。


良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。
三十日が吉日で、今日はもう二十七日になります、緒卿のものはさっそく行って婚儀の仕度をととえてまいれ。」と。


為焦仲卿妻作-其八(20) 漢詩<163>古詩源 巻三 女性詩603 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1629

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 Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其八(20) 漢詩<163>古詩源 巻三 女性詩603 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1629 
 Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#3>Ⅱ中唐詩516 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1630 
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 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
為焦仲卿妻作-其八(20) 漢詩<163>古詩源 巻三 女性詩603 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1629


#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」

先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」

不嫁義郎體,其往欲何雲。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。
#20為焦仲卿妻作-其八(20) 
蘭芝仰頭答,理實如兄言。
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
謝家事夫君,中道還兄門。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
處分適兄意,那得自任專。
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」
雖與府吏約,後會永無緣。
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
登即相許和,便可作婚姻

「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」

媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。
#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『為焦仲卿妻作』-其八 (8)-3 現代語訳と訳註
(本文)
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。


(下し文)#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。
家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。
處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。
府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。
登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


(現代語訳)
蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」
「たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」
「すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」


(訳注) #20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。

蘭芝は頭を下げ、そして兄上を見あげながら答える。「にいさんのおことばはりにかなってもっともなことです。」


謝家事夫君,中道還兄門。
「わたしはこの家を謝して彼家の嫁になり、夫に仕えました。その中途にて兄上の家へ戻されてしまいました。」


處分適兄意,那得自任專。
「わたしの身のふり方は兄上の御意のままにいたします、どうして自分勝手なことなどいたすつもりはありません。」


雖與府吏約,後會永無緣。
たしかに府吏とは約束はいたしましたが、この後あの人と逢うということは永久に縁がないものとしています。」


登即相許和,便可作婚姻 。
すぐさまおだやかに承諾いたします、そしてさっそく結婚いたしましょう。」
・登即 すぐさま、当時の俗語か。
・許和 おだやかに承諾すること。


為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625

 
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Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625
Ⅱ中唐詩・晩唐詩月蝕詩效玉川子作 韓愈 韓退之(韓愈)詩<96-#2>Ⅱ中唐詩515 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1626
Ⅲ杜甫詩1000詩集”成都紀行(2)” 木皮嶺 杜甫詩1000 <342>#3 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1627 杜甫1500- 506
 Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集琴操十首 (4)越裳操 周公作 韓退之(韓愈)詩<70-(4)>Ⅱ中唐詩434  (12/03) 
 Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩『菩薩蠻 三』温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-3-3-# 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1628 
 
 ■今週の人気記事(漢詩の3部門ランキング)
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 謝靈運index謝靈運詩古詩index漢の無名氏  
孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
為焦仲卿妻作-其八(19) 漢詩<162>古詩源 巻三 女性詩602 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1625


#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。

雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。

直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
#19(8)-2
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。
處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。
登即相許和,便可作婚姻 。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
阿兄得聞之,悵然心中煩。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
舉言謂阿妹,作計何不量。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」
先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
否泰如天地,足以榮汝身。
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
不嫁義郎體,其往欲何雲。

#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。
#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『#19為焦仲卿妻作』-其八(8)-2 現代語訳と訳註
(本文)

阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。
先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。
不嫁義郎體,其往欲何雲。


(下し文)#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と


(現代語訳)
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。


(訳注)
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。
母親は妹人にお礼を述べる。「娘はさきごろから嫁に行かないと誓ったのだといっております。この婆のわたしからは何もいうことができないのです。」と。


阿兄得聞之,悵然心中煩。
しかし、蘭芝の兄はこれを聞き及んで、とてもくやしがり、心中に不満の気持ちをいだいているようである。


舉言謂阿妹,作計何不量。
それをことばに出して妹にいうのである。「なんという浅はかな考えをしているのだ。」


先嫁得府吏,後嫁得郎君。
「先には幕府の役人に嫁入りをしたというに、こんどは県令を越えて大守の若君というのではないか。」


否泰如天地,足以榮汝身。
「それは天と地というほどの違いがあることなのだ、おまえが一身のほまれになる良縁は一族にとってもよいというものだ。」


不嫁義郎體,其往欲何雲。
こんなよいお方に嫁がないということは、この先、その人生をどうして生きようというのか」と。

為焦仲卿妻作-其八(18) 漢詩<161>古詩源 巻三 女性詩601 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1621

 
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為焦仲卿妻作-其八(18) 漢詩<161>古詩源 巻三 女性詩601 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1621


#18為焦仲卿妻作-其八(8)-1
媒人去數日,尋遣丞請還。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
說有蘭家女,承籍有宦官。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。
雲有第五郎,嬌逸未有婚。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
遣丞為媒人,主簿通語言。
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。
直說太守家,有此令郎君。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
既欲結大義,故遣來貴門。

「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
#19
阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。不嫁義郎體,
其往欲何雲。
#20
蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。

#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。
直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。

#19
阿母 媒人に謝す,女子先に誓有り,老姥 豈に敢て言わんや。
阿兄 之を聞くことを得て,悵然として心中に煩う。言を舉げて阿妹に謂う,「計を作す何ぞ量らざる。
先に嫁ひて府吏を得,後に嫁して郎君を得る。
否泰 天地の如く,以って汝が身を榮えしむるに足らん。不義郎の體に嫁,其の往 何雲にせんと欲する。」と
#20
蘭芝 頭を仰ぎて答う,「理 實に兄の言の如し。家を謝して夫君に事へ,中道にして兄の門に還る。處分は兄が意に適せんのみ,那ぞ自ら任じて專らにするを得ん。府吏と約せりと雖も,後に會ず永く緣無からん。登即 相許和し,便ち婚姻を作す可し。


『為焦仲卿妻作』-其八 (8)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#18為焦仲卿妻作-其八(8)
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。


(下し文)
媒人去って數日,尋いで丞を遣わし還を請う。
「說く蘭家の女有り,承籍 宦官有り。」
雲う「第五郎有り,嬌逸にして未だ婚有らず。
丞を遣わして媒人と為し,主簿をして語言を通ぜむ。直 說く太守の家,此の令郎君有り。既に大義を結ばんと欲す,故に遣わして貴門に來らしむ。」と。


(現代語訳)
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。


(訳注) #18
媒人去數日,尋遣丞請還。
県令の中立人が去って数日たつと、こんどは郡の太守が属官をつかわして、太守の意向を聞くように申しこんできた
・請還 太守の方に向けることを請うという意味。・還 旋または回の意、県令の方から太守の方に向くようにいうこと。


說有蘭家女,承籍有宦官。
属官かいうのに、人の話では「蘭芝家の母親の実家について、代々高級官僚の家柄だ」ということをいっております
・蘭家女 蘭芝の家の母親の実家。
・承籍 継承官籍の義、官位ある人の戸籍を受けつぎ、家柄の貧賤でない意。


雲有第五郎,嬌逸未有婚。
つづけて謂うのに、「太守さまには第五男があります。いたって好青年でりっはな方で、まだ結婚をされておりません。」


遣丞為媒人,主簿通語言。
「それで下役のわたしを媒人とし、この書記役に婚姻の申しこみをさせる次第です」そこで二人がひたすらいう。


直說太守家,有此令郎君。
書記役も直接いうには、「太守さまには若君がおありになります。」


既欲結大義,故遣來貴門。
「前から、婚礼の大義を結ばれたいということで、わざわざこうして貴家の御門に伺わせられてきました。」と。
・主薄 書記の官。
・太守 盧江の大守、郡の長官、県の上位にある。

為焦仲卿妻作-其七(17) 漢詩<160>古詩源 巻三 女性詩600 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1617

 
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為焦仲卿妻作-其七(17) 漢詩<160>古詩源 巻三 女性詩600 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1617


#16為焦仲卿妻作-其七(7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
府吏見叮嚀,結誓不別離。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。
#17
今日違情義,恐此事非奇。
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
自可斷來信,徐徐更謂之。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。
阿母白媒人,貧賤有此女。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
始適還家門,不堪吏人婦。
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許

どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


#16為焦仲卿妻作-其七(7)-1
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。
#17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。


『為焦仲卿妻作』-其七 (7)-2 現代語訳と訳註
(本文)
#17
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。


(下し文) #17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。


(現代語訳)
今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。
どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


(訳注) #17
今日違情義,恐此事非奇。

今日の段階ではその申し出を受けては情義に違うことになります。これは県令に対しよろしくないと心配をいたします。
・今日違情義 前に「府吏見叮嚀,結誓不別離。」と府吏の情義があり、これの確認が済まないうちに県令の「縣令遣媒來」に対して返事をすることはできないという意味。


自可斷來信,徐徐更謂之。
媒酌人の来られての申し込みははっきりと自然にことわるのがよいのです。とそんなように話は徐々にさらにゆっくりとこの話を云ったのです。」


阿母白媒人,貧賤有此女。
娘の母親は媒人に申しあげるのである。「うちは貧乏ぐらしで、家柄も劣りるところのものなのです。」
・貧賤 貧は貧乏。賤は身分が賤しい、この時代は何にもまして、血縁、出自を問題にしたが、女性は美貌と才智は跡継ぎに好影響を与えるため評価されていた。


始適還家門,不堪吏人婦。
この娘はやっとお嫁に行ったとおもったら、またこの家に還されたのです。小役人の府吏の妻となるさえたえないものだったのです。


豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。
どうして県令の若君などにあいましょうか。どうか広くほかの方をおたずねになることが幸せでございます。ということでこのお申し出をお受けするわけにはいかないのです。」と。


為焦仲卿妻作-其七(16) 漢詩<159>古詩源 巻三 女性詩599 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1614

 
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杜甫詩1000詩集”成都紀行(1)” 發同穀縣 杜甫詩1000 <340>#2 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1616 杜甫1500- 503
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為焦仲卿妻作-其七(16) 漢詩<159>古詩源 巻三 女性詩599 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1614


#16為焦仲卿妻作-其七(7)
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
府吏見叮嚀,結誓不別離。

前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。
#17
今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。
阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。
豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。

#16為焦仲卿妻作-其七(7)
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。
#17
今日 情義【じょうぎ】に違うなり,恐らくは此の事奇に非らじ。
自ら來信を斷つ可し,徐徐に更に之を謂はん。」と。
阿母 媒人に白【もう】す,「貧賤 此の女【じょ】有り。
始めて適きて家門に還えれり,吏人の婦【つま】たるに堪えず。
豈に令郎君に合せんや?幸に廣く問訊にす可し,便ち相い許すことを得ず。」と。




『為焦仲卿妻作』-其七 現代語訳と訳註
(本文)
#16 (7)-1
還家十餘日,縣令遣媒來。雲有第三郎,窈窕世無雙。
年始十八九,便言多令才。阿母謂阿女,汝可去應之。
阿女含淚答,蘭芝初還時,府吏見叮嚀,結誓不別離。


(下し文)
#16為焦仲卿妻作-其七(7)
家に還って十餘日,縣令 媒を遣わし來らしむ。
云う「第三郎有り,窈窕【ようちょう】として世に雙び無し。
年始めて十八九,便言【べんげん】にて令才多し。
阿母は阿女に謂う,「汝 去りて之に應ず可し。」と
阿女 淚を含めて答う,「蘭芝 初め還りし時,府吏叮嚀【ていねい】に見【せ】られ,誓を結びて不別離せず。」と。


(現代語訳)
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。」と。


(訳注)
還家十餘日,縣令遣媒來。
蘭芝が実家に還ってから十日あまり経った、すると県令が媒酌人を遣わしてきたのだ。
遣媒 婚礼の申し込みをする使いのもの。その県のトップからの申し込みであるから前夫の上司であるから断れるものではない。


雲有第三郎,窈窕世無雙。
媒酌人が言うには「県令さまには第三男があります。美しくしとやかであり、世に二人とはないお方です。
・窈窕 美しくしとやかなさま。男として魅力のあることをいう。セックスアピールのこと。


年始十八九,便言多令才。
年はまだお若く十八、九になったばかりですが、弁舌もたっしゃで、文才も多彩でりっぱです。」


阿母謂阿女,汝可去應之。
娘の母はその娘にいう。「あなたはこの申し出を承知して嫁に行くとよいとおもうけどどうでしょう。」と。
・去應之 この申し出を承諾して嫁に行けというほどの意味。


阿女含淚答,蘭芝初還時,
可愛いい娘は涙ぐんで答える。「わたし蘭芝がはじめて帰えされるときでした。


府吏見叮嚀,結誓不別離。
前夫の府吏からとても親切にされ、決してこのまま別れはしないと約束して誓いました。

為焦仲卿妻作-其六(15) 漢詩<158>古詩源 巻三 女性詩598 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1611

 
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#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。
阿母大拊掌,不圖子自歸。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三教汝織,十四能裁衣。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五彈箜篌,十六知禮儀。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
十七遣汝嫁,謂言無誓違。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。汝今何罪過,不迎而自歸?
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」
蘭芝慚阿母,兒實無罪過。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
阿母大悲摧。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
門に入って家堂に上る,進むも退ぞくも顏儀無し。
阿母は大いに掌を拊【う】ち,圖らざりし子が自ら歸える。
十三で汝に織を教え,十四では能く衣を裁つ。
十五で箜篌【くうこう】を彈き,十六では禮儀を知る。十七で汝を遣わして嫁しす,謂【おも】うこと言【ここ】に 誓うこと違【たが】う無からんと。
汝 今 何の罪過ありてか,迎えざるに自ら歸る」と。
蘭芝は阿母に慚づ,兒 實に罪過【ざいか】無し。
阿母 大いに悲摧【ひさい】す


『為焦仲卿妻作』-其六(6)-1 現代語訳と訳註
(本文)
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。阿母大拊掌,不圖子自歸。十三教汝織,十四能裁衣。十五彈箜篌,十六知禮儀。十七遣汝嫁,謂言無誓違。汝今何罪過,不迎而自歸?蘭芝慚阿母,兒實無罪過。阿母大悲摧。


(下し文)
門に入って家堂に上る,進むも退ぞくも顏儀無し。
阿母は大いに掌を拊【う】ち,圖らざりし子が自ら歸える。
十三で汝に織を教え,十四では能く衣を裁つ。
十五で箜篌【くうこう】を彈き,十六では禮儀を知る。十七で汝を遣わして嫁しす,謂【おも】うこと言【ここ】に 誓うこと違【たが】う無からんと。
汝 今 何の罪過ありてか,迎えざるに自ら歸る」と。
蘭芝は阿母に慚づ,兒 實に罪過【ざいか】無し。
阿母 大いに悲摧【ひさい】す。


(現代語訳)
蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。

おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。


(訳注)
#15為焦仲卿妻作-其六(6)
入門上家堂,進退無顏儀。

蘭芝は実家の門をはいり奥座敷の母のもとにあがったが、その身のこなしは、顔つきからしてさえないようすであった。、
無顏儀 顏貌儀容がないという意。ふさぎこんで顔つきのさえぬさま。


阿母大拊掌,不圖子自歸。
母は手のひらを打たいて怒ったのだ、「おまえがこの家に自分から帰って来るなんて思いもしなかった。


十三教汝織,十四能裁衣。
十三のとき、あなたには女の勤めの機織を教え、十四になるともう裁縫することもうまくできました。
・織 税金の基礎であり、良い嫁の尺度となるものである。


十五彈箜篌,十六知禮儀。
十五で箜篌をひけるようにしました、十六では行儀作法をすべてわきまえさせたのです。
箜篌 古代東アジアで見られたハーブ琴のような弦楽器。癒しとなる女性の不可欠な嗜み。


十七遣汝嫁,謂言無誓違。
だから十七でおまえを嫁入りさせました。それがまさか誓いにたがうことはあるまいと思おもっておりました。


汝今何罪過,不迎而自歸?
おまえは今なんの不行き届きやダメなところがあったというのですか、どうしてこちらから迎えにもゆかぬのにひとりで帰って来るということになったのですか。(こんな屈辱なことはありません)」


蘭芝慚阿母,兒實無罪過。
蘭芝は恥入って母に答えていうのである。「わたしには実のところ何の落ち度も罪もありません」と。
・兒 蘭芝が自分のことを実の母に対して幼い時につかう言葉として使う。嫁ぎ先の義母に対しては、妾をつかう。我、吾は生意気とされる。


阿母大悲摧。
母はたいへん悲しんで心がくだけるのである。
・悲摧 悲しんで心がくだけること。

為焦仲卿妻作-其五(14) 漢詩<157>古詩源 巻三 女性詩597 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1608

 
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為焦仲卿妻作-其五(14) 漢詩<157>古詩源 巻三 女性詩597 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1608


#13為焦仲卿妻作-其五(5)
府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。

下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」

吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
#14
君既若見錄,不久望君來。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
我有親父兄,性行暴如雷。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。
恐不任我意,逆以煎我懷。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
舉手長勞勞,二情同依依。
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。

府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。
#14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


『為焦仲卿妻作』-其五 (5)-2 現代語訳と訳註
(本文) #14
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。


(下し文) #14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


(現代語訳)
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります。


(訳注) #14
君既若見錄,不久望君來。
あなたがほんとに見棄ててくださらぬなら、やがて迎えに来てくださる望みもあるということです。
・見錄 「録」は記録の意、心に記録すること、見棄てずに取りあげてくれること。


君當作磐石,妾當作蒲葦。
あなたは盤石のようにあってほしいし、わたしはきっと蒲や葦のようになります。


蒲葦韌如絲,磐石無轉移。
御存じのとおり蒲や葦はよりあわせると縄になり糸のように長く続きます、盤石は心動かぬことということであう。
韌如絲 韌はなわ、糸を合わせて縄とすること。よりあわせたなわが糸の如く続いて断絶することないことにたとえる。一本に籾を軌に作る。しなやかで丈夫なこと。これもまた通じる。


我有親父兄,性行暴如雷。
わたしには肉親の父と兄がおります、その性質はいったんおこると雷のように乱暴ものなのです。


恐不任我意,逆以煎我懷。
おそらくわたしの思いのままにことは任されないだろうと心配しています。それを思うと、今からこの身が煎られるような思いがいたします」と、


舉手長勞勞,二情同依依。
こうして別れに間際に手をあげていつまでもいたわり続け、二人の心は互いに依り添い、なごりを惜しむのであります
労労 反覆慰労する。
依依 よりそうこと。

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#13為焦仲卿妻作-其五(5)
府吏馬在前,新婦車在後。
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
下馬入車中,低頭共耳語。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
誓不相隔卿,且暫還家去。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。

あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
#14
君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。
蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。
恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依。

府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。
#14
君 既に若し錄せられなば,久しからずして君の來るを望まん。
君は當に磐石【ばんじゃく】と作【な】るべし,妾は當に蒲葦【ぼい】と作るべし。
蒲葦は韌【じん】となりて絲の如く,磐石は轉移無し。我には親父兄有り,性行 暴なること雷の如し。
恐らくは我が意に任ぜざらん,逆【あらかじ】め以って我が懷いを煎る。
手を舉げて長【とこしえ】に勞勞し,二情 同じく依依とす。


『為焦仲卿妻作』-其五 現代語訳と訳註
(本文) #13  (5)-1

府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。
下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。
吾今且赴府,不久當還歸。
誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。


(下し文)
府吏の馬は前に在り,新婦の車は後に在る。
隱隱として何ぞ甸甸【でんでん】たる,俱に大道の口に會す。
下馬して車中に入り,低頭して共に耳語す。
誓って卿を相い隔てず,且つ暫く家に還り去る。
吾 今且【まさ】に府に赴【おもむ】かんとす,久しからずして當に還歸すべし。
天に誓って相い負【そむ】かず,新婦 府吏に謂う,君が區區【くく】の懷いに感ず。


(現代語訳)
府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間、実家に帰っていてほしい。」
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」


(訳注) #13為焦仲卿妻作-其五 (5)-1
府吏馬在前,新婦車在後。

府吏の馬は前を進んでゆき、その嫁の車は後につづいていく。


隱隱何甸甸,俱會大道口。
ポコポコとひずめの音、ごろごろがらがらと車の音をひびかせている、二人は共に大道への出口に差し掛かったので会うことができる。
隠隠・甸甸 車馬の響。


下馬入車中,低頭共耳語。
府吏は馬からおりて車の中へはいり、頭をひくめ耳へ口よせてささやきかわした。


誓不相隔卿,且暫還家去。
「わたしは誓う、どんなことがあってもあなたをそのまま隔てたままにはしない。それは私の出張がおわるしばらくの間実家に帰っていてほしい。」


吾今且赴府,不久當還歸。
わたしはこれから役所の用で出張にいくけれども、永久に帰らないというのではないじきに帰ってきます。


誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。
あなたとの約束は天に誓ってたがうことはありません。」と。嫁は府吏にいう。「あなたのわたしに対する細かいお心づかいに感謝いたします。」
区区懐 区は小さいさま。転じておのれの心を謙 っていう。つまらぬ自分にこだわって下さるお心の意。


為焦仲卿妻作-其四(12) 漢詩<155>古詩源 巻三 女性詩595 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1602

 
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為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
其四(4)-#10~#12
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。

指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。

本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。

今日還家去,念母勞家裏 。

こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
新婦初來時,小姑始扶床。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。
今日被驅遣,小姑如我長。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
勤心養公姥,好自相扶將。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
出門登車去,涕落百餘行。
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


#12『為焦仲卿妻作』-其四 現代語訳と訳註
(本文)

卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。


(下し文)
卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


(現代語訳)
こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。


(訳注) #12
卻與小姑別,淚落連珠子。

こんどはまだあどけない小姑と別れをする。涙が連子の玉飾りのように落ちてくる。
小姑 夫の妹、まだ幼児であろう。
連珠子 連子の玉飾り。


新婦初來時,小姑始扶床。
「わたしがお嫁にはじめて来たときのこと、あなたはやっと寝台につかまり立ちし始めたころでした。


今日被驅遣,小姑如我長。
今日、わたしはお宅を出されて実家に帰ることになりました。あなたがやがてわたしほどになります。


勤心養公姥,好自相扶將。
そうしたら、心をこめて御両親につくしてください。ご自分の身はご自分で十分よくご大切にしてくださいね。


初七及下九,嬉戲莫相忘。
月初めの七の日や月の終わりの二十九日に楽しく遊びましたね、私も忘れないのでどうかあなたも忘れないでください。」


出門登車去,涕落百餘行。
こうしてこの家の門を出て車に乗って去ってゆくのだが、涙は雨のようはらはらと行列をなして落ちるのだ。

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為焦仲卿妻作-其四(11) 漢詩<154>古詩源 巻三 女性詩594 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1599


為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。

足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。

指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
昔作女兒時,生小出野裏。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
本自無教訓,兼愧貴家子。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
受母錢帛多,不堪母驅使。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。
今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


『為焦仲卿妻作』-其四 現代語訳と訳註
(本文)
#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
昔作女兒時,生小出野裏。
本自無教訓,兼愧貴家子。
受母錢帛多,不堪母驅使。
今日還家去,念母勞家裏 。


(下し文)
堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う。


(現代語訳)
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


(訳注) #11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
奥座敷にあがって母に別れの挨拶をすると、母上はとめどなく怒っている。
・阿母怒不止 母は何を怒っているのだろうか。①嫁が気に入らない。②母は家のことをうまくやらない嫁に起こっているのではなく、出世につながらない結婚であったことを生産し、息子が出世できるために別の結婚を画策したのでそれを息子が拒否したことで、新しい嫁の家に対して恥をかくことでおこっている。この頃の母に対して息子は、母が今より、裕福な生活をさせてあげることが一番なのである。母としては息子が離婚して新しい嫁をもらうことを拒否するとは思ってもみなかったのである。この頃は、嫁した嫁は、後継ぎの子供ができるまではその地位は確立しなかったのである。一夫多妻制の時代である。


昔作女兒時,生小出野裏。
「昔、わたしが子供娘であったときですが、生まれが田舎ものであるままに家を出たのです。
野裏 野暮、いなかもの。


本自無教訓,兼愧貴家子。
もとより教養、義訓を重ねていないもので、それなのに貴宅の嫁となることはなどとは恥入るものと思いました。
・教訓 教養、義訓。


受母錢帛多,不堪母驅使。
こちらに嫁して母上さまから金子銭や絹織物をたくさん頂戴しましたが、今にしてお役に立たないままというのは堪えられないことです。


今日還家去,念母勞家裏 。
こうして今日、実家に帰ります、後のこと、母上さまは家の裏方の事、労をかけることになりました。」と。


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為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。 指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。今日還家去,念母勞家裏 。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。新婦初來時,小姑始扶床。今日被驅遣,小姑如我長。勤心養公姥,好自相扶將。初七及下九,嬉戲莫相忘。出門登車去,涕落百餘行。


為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
著我繡夾裙,事事四五通。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
足下躡絲履,頭上玳瑁光。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰若流紈素,耳著明月璫。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
指如削蔥根,口如含珠丹。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
纖纖作細步,精妙世無雙。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。

#11
上堂謝阿母,阿母怒不止。
昔作女兒時,生小出野裏。
本自無教訓,兼愧貴家子。
受母錢帛多,不堪母驅使。
今日還家去,念母勞家裏 。

堂に上りて阿母に謝するに,阿母は怒って止まず。
昔 女兒に作りし時,生小 野裏に出。
本自ら教訓無く,兼ねて貴家の子たるに愧じる。
母にくる受錢帛は多けれど,母の驅使に堪えず。
今日家に還えり去るに,母の家裏に勞せんことを念う

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。
新婦初來時,小姑始扶床。
今日被驅遣,小姑如我長。
勤心養公姥,好自相扶將。
初七及下九,嬉戲莫相忘。
出門登車去,涕落百餘行。。

卻りて小姑と別るるに與りて,淚落ちて珠子を連ぬ。
新婦 初めて來りし時,小姑 始めて床に扶けらる。
今日驅遣 被らる,小姑 我が如く長す。
心を勤めて公姥を養い,好く自ら相扶將せよ。
初七に及び下九なり,嬉戲 相い忘るる莫れ。
門を出でて車に登り去り,涕落ちて百餘行。


現代語訳と訳註
(本文)
為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。 指如削蔥根,口如含珠丹。纖纖作細步,精妙世無雙。


(下し文)
雞鳴いて外 曙【あ】けんと欲す,新婦 起って嚴妝【げんしょう】す。
我が繡【しゅう】の夾裙【きょうくん】を著【つ】き,事事四五 通す。
足下に絲履【しり】を躡【ふ】み,頭上に玳瑁【たいまい】光【かがや】く。
腰は流るる紈素【がんそ】の若く,耳には明月の璫【とう】を著【つ】く。
指は蔥根【そうこん】を削るが如く,口は珠丹を含むが如し。
纖纖として細步を作し,精妙は世に雙び無し。


(現代語訳)
この嫁は、難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。


(訳注) 為焦仲卿妻作-其四(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。

この嫁は難が鳴いて、外は夜明けになろうとするころには、新嫁妻として早起きをしてきちんと身仕度をします。


著我繡夾裙,事事四五通。
刺繍のあわせ袴をきちんと着け、そのほかの服飾四、五種を一品ごとに身におびます。
・繡夾裙 あわせのもすそ。裏付きのスカー卜。腰巻。
事事 服飾の一品ごとにの意。
・四五通 四、五種類。


足下躡絲履,頭上玳瑁光。
足には絹糸の履をはき、頭にはべっこうのかんざしを光らせます。
玳瑁【たいまい】ウミガメ科のカメ。甲長約1メートル。背面の甲は黄褐色に黒褐色の斑紋があり、鱗板(りんばん)は瓦状に重なり合う。口の先端はくちばし状。熱帯・亜熱帯の海洋に分布。甲は鼈甲(べっこう)として装飾品の材料になるのでべっこう細工全般を云う。ここでは鼈甲の簪。.


腰若流紈素,耳著明月璫。
腰にまとうた細織りの白の練り絹は流れる水のようであり、耳には明月のような環をつけるのです。
若流紈素 紈素は自いねりぎぬ。粗厚のものを練といい、繊細のものを紈という。ここはその白絹が、ひだをなして下垂し、歩行につれて水の流れるように揺動するさま。艶婉な様子を云う。
明月環 真珠の耳飾りのたま


指如削蔥根,口如含珠丹。
指はねぎの根を削ったようにきれいにととのえ、口には丹ぬりの真珠を含んだようにするのです。
珠丹 珠の如くつやある丹紅の色をいう。


纖纖作細步,精妙世無雙。
しつけ通りになよなよと小また歩みを進めることにきをつけており、そのすぐれた美しさは世にまたとないほどであるのである。

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為焦仲卿妻作-其三(3)-#6
府吏默無聲,再拜還入戶。舉言謂新婦,哽咽不能語。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。

我自不驅卿,逼迫有阿母。卿但暫還家,吾今且赴府。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に行かねはならぬ用件がある。」

不久當歸還,還必相迎取。
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」
#7
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」

往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」

晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」
#8
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。

妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。

箱簾六七十,綠碧青絲繩。
それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。
#9
物物各具異,種種在其中。
「ときどきはやすらぎと慰めになるとおもいます、いついつまでもお忘れないでくださいませ。」と。
「わたしのそれぞれの物がそれぞれ異なっていますし、使い道も種々のものがその中に入っています。」
人賤物亦鄙,不足迎後人。
「子供じみた賎しい者が持つような物と思われるかもしれませんし、つまらぬ物とおおもいかもしれません、しかし、後から来られる方々にとっては不満足なものでしかないかもしれません。」
留待作遣施,於今無會因。
それでも「わしの気持ちとして、そのまま残しおいて贈り物といたします。今となっては、あなたに会うためのよすがとなってはいけませんから。」
時時為安慰,久久莫相忘。

#9
物物 各【おのお】の具【とも】に異なり,種種 其の中に在り。
人 賤【いやし】ければ物亦鄙【いやし】く,後人を迎えるに足らじ。
留待して遣施と作す,今に於て會因【かいいん】無し。
時時 安慰を為し,久久 相い忘るる莫れ。

(#9)『為焦仲卿妻作-其三』4 現代語訳と訳註
(本文)

物物各具異,種種在其中。
人賤物亦鄙,不足迎後人。
留待作遣施,於今無會因。
時時為安慰,久久莫相忘。


(下し文)
物物 各【おのお】の具【とも】に異なり,種種 其の中に在り。
人 賤【いやし】ければ物亦鄙【いやし】く,後人を迎えるに足らじ。
留待して遣施と作す,今に於て會因【かいいん】無し。
時時 安慰を為し,久久 相い忘るる莫れ。


(現代語訳)
「わたしのそれぞれの物がそれぞれ異なっていますし、使い道も種々のものがその中に入っています。」
「子供じみた賎しい者が持つような物と思われるかもしれませんし、つまらぬ物とおおもいかもしれません、しかし、後から来られる方々にとっては不満足なものでしかないかもしれません。」
それでも「わしの気持ちとして、そのまま残しおいて贈り物といたします。今となっては、あなたに会うためのよすがとなってはいけませんから。」
「ときどきはやすらぎと慰めになるとおもいます、いついつまでもお忘れないでくださいませ。」と。


(訳注)#9
物物各具異,種種在其中。

「わたしのそれぞれの物がそれぞれ異なっていますし、使い道も種々のものがその中に入っています。」


人賤物亦鄙,不足迎後人。
「子供じみた賎しい者が持つような物と思われるかもしれませんし、つまらぬ物とおおもいかもしれません、しかし、後から来られる方々にとっては不満足なものでしかないかもしれません。」
・人賤 卑しいものという意味ではなく子供じみたというほどの意味。
・鄙 つまらないもの。必要がないもの。


留待作遣施,於今無會因。
それでも「わしの気持ちとして、そのまま残しおいて贈り物といたします。今となっては、あなたに会うためのよすがとなってはいけませんから。」


時時為安慰,久久莫相忘。
「ときどきはやすらぎと慰めになるとおもいます、いついつまでもお忘れないでくださいませ。」と。

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孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
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李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
『為焦仲卿妻作』-其三(8) 漢詩<151>古詩源 巻三 女性詩591 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1590


為焦仲卿妻作-其三(3)-#6
府吏默無聲,再拜還入戶。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
舉言謂新婦,哽咽不能語。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
我自不驅卿,逼迫有阿母。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
卿但暫還家,吾今且赴府。
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に行かねはならぬ用件がある。」
不久當歸還,還必相迎取。
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」
#7
以此下心意,慎勿違吾語。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
新婦謂府吏,勿複重紛紜。
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」
往昔初陽歲,謝家來貴門。
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
奉事循公姥,進止敢自專?
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」
晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」
#8
謂言無罪過,供養卒大恩。
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
仍更被驅遣,何言複來還?
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。
妾有繡腰襦,葳蕤自生光。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
紅羅複鬥帳,四角垂香囊。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。
箱簾六七十,綠碧青絲繩。

それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。
#8
謂【おも】う言【われ】罪過【ざいか】無く,供養して大恩を卒【お】えんと。
仍【な】お更に驅遣【くけん】被【せ】らる,何んぞ複た來り還えるを言んや?
妾に繡【しゅう】腰襦【ようじゅ】有り,葳蕤【いすい】として自ら光を生ず。
紅羅の複鬥【ふくとう】の帳,四角 香囊【こうのう】を垂る。
箱簾【そうれん】六七十,綠碧【りょくへき】青絲【せいし】の繩【じょう】あり。
#9
物物各具異,種種在其中。人賤物亦鄙,不足迎後人。留待作遣施,於今無會因。時時為安慰,久久莫相忘。
#9
物物 各【おのお】の具【とも】に異なり,種種 其の中に在り。
人 賤【いやし】ければ物亦鄙【いやし】く,後人を迎えるに足らじ。
留待して遣施と作す,今に於て會因【かいいん】無し。
時時 安慰を為し,久久 相い忘るる莫れ。


『為焦仲卿妻作』-其三 現代語訳と訳註
(本文) #8
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。箱簾六七十,綠碧青絲繩。


(下し文) #8
謂【おも】う言【われ】罪過【ざいか】無く,供養して大恩を卒【お】えんと。
仍【な】お更に驅遣【くけん】被【せ】らる,何んぞ複た來り還えるを言んや?
妾に繡【しゅう】腰襦【ようじゅ】有り,葳蕤【いすい】として自ら光を生ず。
紅羅の複鬥【ふくとう】の帳,四角 香囊【こうのう】を垂る。
箱簾【そうれん】六七十,綠碧【りょくへき】青絲【せいし】の繩【じょう】あり。


(現代語訳) #8
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。
それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。


(訳注)#8
謂言無罪過,供養卒大恩。
わたしには別に言われるような間違いや罪などありはしません、先祖を大切にしてお舅姑さまにお仕えして大恩をまっとうしたいと思っていました。
謂言 言は、われ、または、ここになどと訓し、語調をととのえる語。


仍更被驅遣,何言複來還?
それなのに追い出されることになったのですから、どうしてまた戻ろうなどと申すことができましょうか。


妾有繡腰襦,葳蕤自生光。
わたしに刺繍の腰に巻く襦袢があります。それは女としてのはなやかな光沢のあるものです。
・繡腰襦 刺繍の腰に巻く襦袢。貞操感を示すもの。
・葳蕤 はなやかなさま。もと草の名で、その花や葉の盛んにして垂れさがれるをいうと。


紅羅複鬥帳,四角垂香囊。
また、紅のうすぎぬで作った二重の枡形のとばり、四隅に香の袋がさがっているものなどがあります。
・この二句は夫婦生活を意味するもの。
複斗帳 うらおもて二重にはった四角のとばり、寝台をおおうもの。


箱簾六七十,綠碧青絲繩。
それに箱の中に首飾りの六、七十の飾りの玉があり、それぞれ緑や碧や青色の飾りの紐がつけてあります。
箱簾 小物入れの箱の中に簾にする飾の玉が入っている。

為焦仲卿妻作-其三(7) 漢詩<150>古詩源 巻三 女性詩590 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1587

 
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為焦仲卿妻作-其三(7) 漢詩<150>古詩源 巻三 女性詩590 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1587


為焦仲卿妻作-其三(3)-#6
府吏默無聲,再拜還入戶。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
舉言謂新婦,哽咽不能語。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
我自不驅卿,逼迫有阿母。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
卿但暫還家,吾今且赴府。
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に行かねはならぬ用件がある。」
不久當歸還,還必相迎取。

「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」
#7
以此下心意,慎勿違吾語。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」
#7
此を以って心意を下し,慎んで吾が語に違う勿れ。
新婦 府吏に謂う,複た重ねて紛紜【ふんうん】する勿れ。
往昔【おうせき】初陽の歲,家を謝して貴門に來り。
事に奉じて公姥【こうぼ】に循【したが】い,進止して敢て自ら專【もっぱら】にせんや?
晝夜 作息を勤め,伶俜【れいへい】として苦辛に縈【まつわ】らる。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
新婦謂府吏,勿複重紛紜。
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」
往昔初陽歲,謝家來貴門。
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
奉事循公姥,進止敢自專?
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」
晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。


『為焦仲卿妻作』-其四 現代語訳と訳註
(本文)
 #7
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。


(下し文) #7
此を以って心意を下し,慎んで吾が語に違う勿れ。
新婦 府吏に謂う,複た重ねて紛紜【ふんうん】する勿れ。
往昔【おうせき】初陽の歲,家を謝して貴門に來り。
事に奉じて公姥【こうぼ】に循【したが】い,進止して敢て自ら專【もっぱら】にせんや?
晝夜 作息を勤め,伶俜【れいへい】として苦辛に縈【まつわ】らる。


(現代語訳)
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」


(訳注)#7
以此下心意,慎勿違吾語。
「心をおちつけて私の言うことを理解しくれ、よく気をつけてわたしのことばどおりにして違うことをしてはいけないよ」


新婦謂府吏,勿複重紛紜。
妻は府吏にいうのだ。「また呼び戻すなどと、そんなごたごたな面倒を重ねてはいけません。」
・紛転 ごたごたと面倒をひき起こすこと。


往昔初陽歲,謝家來貴門。
「昔のことになりますが、初春の候でございました、わが家を辞してあなた様のお宅にまいりました。」
・初陽 陽気の初め、二月頃。


奉事循公姥,進止敢自專?
「お舅姑さまの心にそうようにとおっかえして参りました。けっしてわがままな振舞などはいたしてはおりません。」
進止 進退、挙動。


晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。
「昼も夜も仕事にいそしみましたし、苦労辛苦にあけくれて、やつれはててしまいました。」
・作息 働いたり、休息Lたり、仕事の意。
・伶俜 さまようさま、またおちぶれるさま。母を恐れて暮らしやつれはてる意か。
 辛苦。あけくれ苦労になやまされること。

為焦仲卿妻作-其三(6) 漢詩<149>古詩源 巻三 女性詩589 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1584

 
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為焦仲卿妻作-其三(6) 漢詩<149>古詩源 巻三 女性詩589 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1584




為焦仲卿妻作-其三(6)
府吏默無聲,再拜還入戶。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
舉言謂新婦,哽咽不能語。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
我自不驅卿,逼迫有阿母。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
卿但暫還家,吾今且赴府。
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に行かねはならぬ用件がある。」
不久當歸還,還必相迎取。
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」
#7
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。

#8
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。箱簾六七十,綠碧青絲繩。
#9
物物各具異,種種在其中。人賤物亦鄙,不足迎後人。留待作遣施,於今無會因。時時為安慰,久久莫相忘。

-#6焦仲卿が妻の為の作-其三
府吏 默して聲無く,再拜して還って戶に入る。
言を舉げて新婦に謂う,哽咽して語る能わず。
我 自ら卿を驅らず,逼迫【ひっぱく】するに阿母【あぼ】有り。
卿 但だ暫く家に還れ,吾 今 且【まさ】に府に赴かんとす。
久しからずして當【まさ】に歸還すべし,還えらば必ず相い迎へ取らん。
#7
此を以って心意を下し,慎んで吾が語に違う勿れ。
新婦 府吏に謂う,複た重ねて紛紜【ふんうん】する勿れ。
往昔【おうせき】初陽の歲,家を謝して貴門に來り。
事に奉じて公姥【こうぼ】に循【したが】い,進止して敢て自ら專【もっぱら】にせんや?
晝夜 作息を勤め,伶俜【れいへい】として苦辛に縈【まつわ】らる。

#8
謂【おも】う言【われ】罪過【ざいか】無く,供養して大恩を卒【お】えんと。
仍【な】お更に驅遣【くけん】被【せ】らる,何んぞ複た來り還えるを言んや?
妾に繡【しゅう】腰襦【ようじゅ】有り,葳蕤【いすい】として自ら光を生ず。
紅羅の複鬥【ふくとう】帳,四角 香囊【こうのう】を垂る。
箱簾【そうれん】六七十,綠碧【りょくへき】青絲【せいし】の繩【じょう】あり。
#9
物物 各【おのお】の具【とも】に異なり,種種 其の中に在り。
人 賤【いやし】ければ物亦鄙【いやし】く,後人を迎えるに足らじ。
留待して遣施と作す,今に於て會因【かいいん】無し。
時時 安慰を為し,久久 相い忘るる莫れ。


現代語訳と訳註
(本文)
-#6
府吏默無聲,再拜還入戶。
舉言謂新婦,哽咽不能語。
我自不驅卿,逼迫有阿母。
卿但暫還家,吾今且赴府。
不久當歸還,還必相迎取。


(下し文) -#6焦仲卿が妻の為の作-其三
府吏 默して聲無く,再拜して還って戶に入る。
言を舉げて新婦に謂う,哽咽して語る能わず。
我 自ら卿を驅らず,逼迫【ひっぱく】するに阿母【あぼ】有り。
卿 但だ暫く家に還れ,吾 今 且【まさ】に府に赴かんとす。
久しからずして當【まさ】に歸還すべし,還えらば必ず相い迎へ取らん。


(現代語訳)
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から役所に行かねはならぬ用件がある。」
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」


(訳注) -#6
府吏默無聲,再拜還入戶。
府吏はだまり、無言を続けたままで、お辞儀をして自分の部屋にはいっていく。


舉言謂新婦,哽咽不能語。
事の仔細を妻に伝えようとするが、むせび入って語ることができない。
挙言 母の言葉の始終を伝えること。


我自不驅卿,逼迫有阿母。
やっと謂ったのは、「わたし自身がそなたをおい出すのではない。母にせまられたことでどうにもならないことのだ。」


卿但暫還家,吾今且赴府。
府吏卿は続けて謂う「そなたはしばらく家に帰っていなさい。わたしは今から蹔く役所に行きっぱなしになる用件があるのだ。」
赴府 役所の用事で泊まりがけで赴任する出張であろう。(出張は日本語)


不久當歸還,還必相迎取。
「そう長くはならずに帰宅できるはずだ。帰ればかならずそなたをよびかえす。」

為焦仲卿妻作-其三(5) 漢詩<148>古詩源 巻三 女性詩588 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1581

 
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 謝靈運index謝靈運詩古詩index漢の無名氏  
孟浩然index孟浩然の詩韓愈詩index韓愈詩集
杜甫詩index杜甫詩 李商隠index李商隠詩
李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
為焦仲卿妻作-其三(5) 漢詩<148>古詩源 巻三 女性詩588 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1581


為焦仲卿妻作-其二)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
兒已薄祿相,幸複得此婦。
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」
結髮同枕席,黃泉共為友。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
共事二三年,始而未為久。
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」
女行無偏斜,何意致不厚。
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」
#4
阿母謂府潰何乃太區區。
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」
此婦無禮節,舉動自專由。
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」
吾意久懷忿,汝豈得自由。
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
東家有賢女,自名秦羅敷。
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」
可憐體無比,阿母為汝求。
「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」
#5
便可速遣之,遣去慎莫留。
わたしはもうあの嫁に義理は持たぬばかりかお前にも恩義はない。これからはおまえに新たに添わせることなど許しはしませんよ。」
この嫁はすぐさま暇を出してしまいます。ここからおいかえしてしまうので決してとどめおいてはなりませんよ」
府吏長跪告,伏惟啟阿母。
息子の府吏は膝まずいてうやうやしく答えるのである。「こうして謹んで母上に申しあげます。」
今若遣此婦,終老不復娶。
「今もしこの妻を出してしまうなら、わたしは生涯二度と妻をめとるということはいたしません。」
阿母得聞之,槌床便大怒。
母はこれを聞きくなり、座牀をたたいてのたいへんな怒りようを示すのである。
小子無所畏,何敢助婦語。
「この子は親の意向を懼れる所を知らないのですか、嫁を助ける言葉ばかりをどうしていうのでしょう。
吾已失恩義,會不相從許。

-#3 焦仲卿妻の為に作る-其の二
府吏 之を聞くを得て,堂上にて阿母を啟【もう】す。「兒 已に薄祿【はくろく】の相【そう】あり,幸にして複た此の婦を得たり。
髮を結んで枕席【ちんせき】を同うし,黃泉【こうせん】まで共に友【ゆう】と為す。
共に事して二、三年,始めて而して未だ久しく為さず。
女行に偏斜無し,何の意りて不厚を致す」と。
#4
阿母 府潰に謂う「何ぞ乃【すなわち】太【はなはだ】區區たる。
此の婦は禮節無し,舉動は自ら專由【せんゆう】なり。
吾が意 久しく忿【いかり】を懷【いだ】く,汝 豈に自由を得んや。
東家に賢女有り,自ら秦の羅敷【らふ】を名のる。
可憐 體に比無し,阿母 汝が為に求めん。
#5
便ち速【すみやか】に之を遣る可し,遣り去って慎【つつし】んで留ること莫れ」と。
府吏 長跪【ちょうき】して告ぐ,「伏して惟【これ】阿母に啟【もう】す。
今 若し此の婦を遣らば,終老まで復た娶【めと】らじ」と。
阿母 之を聞くを得て,床を槌して便【すなわ】ち大いに怒る。
「小子 畏るる所無し,何ぞ敢えて婦の語を助くる。
吾 已に恩義を失えり,會【かなら】ず相從許【じゅうきょ】せず」と。


現代語訳と訳註
(本文)
#5
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。


(下し文) #5
便ち速【すみやか】に之を遣る可し,遣り去って慎【つつし】んで留ること莫れ」と。
府吏 長跪【ちょうき】して告ぐ,「伏して惟【これ】阿母に啟【もう】す。
今 若し此の婦を遣らば,終老まで復た娶【めと】らじ」と。
阿母 之を聞くを得て,床を槌して便【すなわ】ち大いに怒る。
「小子 畏るる所無し,何ぞ敢えて婦の語を助くる。
吾 已に恩義を失えり,會【かなら】ず相從許【じゅうきょ】せず」と。


(現代語訳)
「この嫁はすぐさま暇を出してしまいます。ここからおいかえしてしまうので決してとどめおいてはなりませんよ」
息子の府吏は膝まずいてうやうやしく答えるのである。「こうして謹んで母上に申しあげます。」
「今もしこの妻を出してしまうなら、わたしは生涯二度と妻をめとるということはいたしません。」
母はこれを聞きくなり、座牀をたたいてのたいへんな怒りようを示すのである。
「この子は親の意向を懼れる所を知らないのですか、嫁を助ける言葉ばかりをどうしていうのでしょう。
わたしはもうあの嫁に義理は持たぬばかりかお前にも恩義はない。これからはおまえに新たに添わせることなど許しはしませんよ。」


(訳注) #5
便可速遣之,遣去慎莫留。
「この嫁はすぐさま暇を出してしまいます。ここからおいかえしてしまうので決してとどめおいてはなりませんよ」


府吏長跪告,伏惟啟阿母。
息子の府吏は膝まずいてうやうやしく答えるのである。「こうして謹んで母上に申しあげます。」


今若遣此婦,終老不復娶。
「今もしこの妻を出してしまうなら、わたしは生涯二度と妻をめとるということはいたしません。」


阿母得聞之,槌床便大怒。
母はこれを聞きくなり、座牀をたたいてのたいへんな怒りようを示すのである。


小子無所畏,何敢助婦語。
「この子は親の意向を懼れる所を知らないのですか、嫁を助ける言葉ばかりをどうしていうのでしょう。


吾已失恩義,會不相從許。
わたしはもうあの嫁に義理は持たぬばかりかお前にも恩義はない。これからはおまえに新たに添わせることなど許しはしませんよ。」

為焦仲卿妻作-其二(4) 漢詩<147>古詩源 巻三 女性詩587 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1578

 
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李白詩index 李白350首女性詩index女性詩人 
 上代・後漢・三国・晉南北朝・隋初唐・盛唐・中唐・晩唐北宋の詩人  
 
為焦仲卿妻作-其二(4) 漢詩<147>古詩源 巻三 女性詩587 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1578


為焦仲卿妻作-其二)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
兒已薄祿相,幸複得此婦。
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」
結髮同枕席,黃泉共為友。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
共事二三年,始而未為久。
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」
女行無偏斜,何意致不厚。
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」
#4
阿母謂府潰・何乃太區區。
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」
此婦無禮節,舉動自專由。
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」
吾意久懷忿,汝豈得自由。
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
東家有賢女,自名秦羅敷。
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」
可憐體無比,阿母為汝求。

「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」
#5
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。

-#3 焦仲卿妻の為に作る-其の二
府吏 之を聞くを得て,堂上にて阿母を啟【もう】す。「兒 已に薄祿【はくろく】の相【そう】あり,幸にして複た此の婦を得たり。
髮を結んで枕席【ちんせき】を同うし,黃泉【こうせん】まで共に友【ゆう】と為す。
共に事して二、三年,始めて而して未だ久しく為さず。
女行に偏斜無し,何の意りて不厚を致す」と。
#4
阿母 府潰に謂う「何ぞ乃【すなわち】太【はなはだ】區區たる。
此の婦は禮節無し,舉動は自ら專由【せんゆう】なり。
吾が意 久しく忿【いかり】を懷【いだ】く,汝 豈に自由を得んや。
東家に賢女有り,自ら秦の羅敷【らふ】を名のる。
可憐 體に比無し,阿母 汝が為に求めん。

#5
便ち速【すみやか】に之を遣る可し,遣り去って慎【つつし】んで留ること莫れ」と。
府吏 長跪【ちょうき】して告ぐ,「伏して惟【これ】阿母に啟【もう】す。
今 若し此の婦を遣らば,終老まで復た娶【めと】らじ」と。
阿母 之を聞くを得て,床を槌して便【すなわ】ち大いに怒る。
「小子 畏るる所無し,何ぞ敢えて婦の語を助くる。
吾 已に恩義を失えり,會【かなら】ず相從許【じゅうきょ】せず」と。


現代語訳と訳註
(本文)
#4
阿母謂府潰何乃太區區。此婦無禮節,舉動自專由。吾意久懷忿,汝豈得自由。東家有賢女,自名秦羅敷。
可憐體無比,阿母為汝求。


(下し文) #4
阿母 府潰に謂う「何ぞ乃【すなわち】太【はなはだ】區區たる。
此の婦は禮節無し,舉動は自ら專由【せんゆう】なり。
吾が意 久しく忿【いかり】を懷【いだ】く,汝 豈に自由を得んや。
東家に賢女有り,自ら秦の羅敷【らふ】を名のる。
可憐 體に比無し,阿母 汝が為に求めん。


(現代語訳)
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」
「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」


(訳注) #4
阿母謂府潰何乃太區區。
母は府吏が言うのを止めて謂う。「おまえはなぜまあそんなにこせこせと妻をかばうのだ。」


此婦無禮節,舉動自專由。
「この嫁は礼儀も節度もわきまえず、作法に至るや勝手気ままな振る舞いではないか。」


吾意久懷忿,汝豈得自由。
「わたしは長らく心のなかに怒りをおもっていた。おまえらの自由勝手な振舞は許しません。」
自由 自分勝手な振舞。


東家有賢女,自名秦羅敷。
「でも、東隣には賢い女がいる。本人が自分でも秦の羅敷だというほどの器量よしなのだ。」
・東家有賢女  ・東家 楚の宋玉の『登徒子好色の賦』「臣が里の美しき者は、臣が東家の子に若くはなし。」とある。ここから美人のたとえを”東家之子”又は”東家之女”と。美女を称して”東隣”とした事例に唐の李白「自古有秀色、西施与東隣」(古来より秀でた容姿端麗美人、西施と東隣)白居易「感情」のもある 
李白『白紵辭其一』「揚清歌、發皓齒。 北方佳人東鄰子、且吟白紵停綠水。」李白81白紵辭其一  82白紵辭其二  83 巴女詞
無題(何處哀筝随急管) 李商隠21

秦羅敷 秦氏羅敷。「陌上桑」その美貌をほこって自ら泰氏の羅敷と称したのである。顔延之の秋胡詩 (1) 顔延之(延年) 詩<2>Ⅱ李白に影響を与えた詩471 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1230参照。


可憐體無比,阿母為汝求。
「その愛らしい姿は、世にもまれである。この母が、おまえのために、その娘を娶ってあげる。」
・可憐 かわいらしい、かわいそうの同意がある。共に情のひかれる意より転じたもの。

為焦仲卿妻作-其二(3) 漢詩<146>古詩源 巻三 女性詩586 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1575

 
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為焦仲卿妻作-其二(3) 漢詩<146>古詩源 巻三 女性詩586 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1575


為焦仲卿妻作-其二)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
兒已薄祿相,幸複得此婦。
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」
結髮同枕席,黃泉共為友。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
共事二三年,始而未為久。
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」
女行無偏斜,何意致不厚。

「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」
#4
阿母謂府潰何乃太區區。此婦無禮節,舉動自專由。吾意久懷忿,汝豈得自由。東家有賢女,自名秦羅敷。
可憐體無比,阿母為汝求。
#5
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。

-#3 焦仲卿妻の為に作る-其の二
府吏 之を聞くを得て,堂上にて阿母を啟【もう】す。「兒 已に薄祿【はくろく】の相【そう】あり,幸にして複た此の婦を得たり。
髮を結んで枕席【ちんせき】を同うし,黃泉【こうせん】まで共に友【ゆう】と為す。
共に事して二、三年,始めて而して未だ久しく為さず。
女行に偏斜無し,何の意りて不厚を致す」と。
#4
阿母 府潰に謂う「何ぞ乃【すなわち】太【はなはだ】區區たる。
此の婦は禮節無し,舉動は自ら專由【せんゆう】なり。
吾が意 久しく忿【いかり】を懷【いだ】く,汝 豈に自由を得んや。
東家に賢女有り,自ら秦の羅敷【らふ】を名のる。
可憐 體に比無し,阿母 汝が為に求めん。
#5
便ち速【すみやか】に之を遣る可し,遣り去って慎【つつし】んで留ること莫れ」と。
府吏 長跪【ちょうき】して告ぐ,「伏して惟【これ】阿母に啟【もう】す。
今 若し此の婦を遣らば,終老まで復た娶【めと】らじ」と。
阿母 之を聞くを得て,床を槌して便【すなわ】ち大いに怒る。
「小子 畏るる所無し,何ぞ敢えて婦の語を助くる。
吾 已に恩義を失えり,會【かなら】ず相從許【じゅうきょ】せず」と。

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前202-220

184~280
222-280
221~263


現代語訳と訳註
(本文) 為焦仲卿妻作-其二)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。兒已薄祿相,幸複得此婦。結髮同枕席,黃泉共為友。共事二三年,始而未為久。
女行無偏斜,何意致不厚。


(下し文)
-#3 焦仲卿妻の為に作る-其の二
府吏 之を聞くを得て,堂上にて阿母を啟【もう】す。「兒 已に薄祿【はくろく】の相【そう】あり,幸にして複た此の婦を得たり。
髮を結んで枕席【ちんせき】を同うし,黃泉【こうせん】まで共に友【ゆう】と為す。
共に事して二、三年,始めて而して未だ久しく為さず。
女行に偏斜無し,何の意りて不厚を致す」と。


(現代語訳)
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をした足かせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」


(訳注) 為焦仲卿妻作-其二)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。
府吏仲卿はこのことばを聞くことをえた、して、「奥座敷で母に申しあげたいことがあります。」


兒已薄祿相,幸複得此婦。
「わたしは不仕合せの人相をしているのでしょうが、幸いにもまたこの妻をめとることができました。」
・薄禄相 不幸の相貌。


結髮同枕席,黃泉共為友。
「髪を上に結い始めて仕官したことと同じくして枕席をともにする夫婦となって以来、黄泉のあの世までも添い遂げることにしたのです。」
・黄泉 死者のゆく所。よみじ、冥土。ここは来世の意。


共事二三年,始而未為久。
そして「仕事に仕えると共に一緒の生活をしたあしかせ三年というもの、まだ始めたばかりで日数もたっていないのです。」
・始爾 わずかに両三年にての意。足かせ三年。


女行無偏斜,何意致不厚。
「妻の行ないに曲がったこと間違ったことがあったわけでもないのです、どういう意図があって、そんな厚情のないあっかいをなさいますか。」
偏斜 曲がったこと間違ったこと。
・不厚 薄遇、なさけない待遇。

為焦仲卿妻作-其一(2) 漢詩<145>古詩源 巻三 女性詩585 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1572

 
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為焦仲卿妻作-其一(2) 漢詩<145>古詩源 巻三 女性詩585 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1572


為焦仲卿妻作-其(1)
孔雀東南飛,五裏一徘徊。
孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
十三能織素,十四學裁衣。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。
十五彈箜篌,十六誦詩書。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
十七為君婦,心中常苦悲。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。
君既為府吏,守節情不移。

あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。
#2
賤妾留空房,相見常日稀。
わたしはあなたがいないさびしい室に留守居して、ふだんはお目にかかることもめったにないでしょう。
雞鳴入機織,夜夜不得息。
にわとりか鳴くと機を織りはじめ、毎晩寝ることもままならないのです。
三日斷五疋,大人故嫌遲。
三日間に、五疋の絹を織りあげました、母さまは故意にゆっくり織っているといって嫌われます。
非為織作遲,君家婦難為。
しかしそれは織り方が遅いためではなく、あなたの家の嫁としての勤めが難儀なのです。
妾不堪驅使,徒留無所施。
わたくしはとてもこき使われるのに堪えかねます。ただとどまっていたとて、どうにもなりません。
便可白公姥,及時相遣歸 。

おしゆうと様たちに申しあげたいのです。「今のうちに里方へ帰してくださいませ。」と。

#1為焦仲卿妻作-其一
孔雀 東南に飛び,五里に 一たび 裴徊【はいかい】す。
「十三 能【よ】く 素【そ】を織り,十四 衣を 裁【た】つを學び,
十五 箜篌【くご】を彈【ひ】き,十六 『詩』『書』を 誦【しょう】し,
十七 君が婦【つま】と爲り,心中 常に苦悲す。
君 既に 府吏と為り,節を守って情移らず。
#2
賤妾【せんしょう】は空房に留り,相見ること常日【じょうじつ】稀なり。
雞鳴【けいめい】機に入りて織り,夜夜 息むを得ず。三日 五疋を斷ち,大人は故【ことさら】に遲きを嫌う。
織の遲きを作すが為に非らず,君が家の婦は為り難し。
妾は驅使に堪えず,徒【いたずら】に留まるも施す所無し。
便【すなわ】ち公姥に白【もう】して,時に及んで相 遣歸【けんき】す可し」 と 。


現代語訳と訳註
(本文)
#2
賤妾留空房,相見常日稀。雞鳴入機織,夜夜不得息。三日斷五疋,大人故嫌遲。非為織作遲,君家婦難為。妾不堪驅使,徒留無所施。便可白公姥,及時相遣歸 。


(下し文) #2
賤妾【せんしょう】は空房に留り,相見ること常日【じょうじつ】稀なり。
雞鳴【けいめい】機に入りて織り,夜夜 息むを得ず。三日 五疋を斷ち,大人は故【ことさら】に遲きを嫌う。
織の遲きを作すが為に非らず,君が家の婦は為り難し。
妾は驅使に堪えず,徒【いたずら】に留まるも施す所無し。
便【すなわ】ち公姥に白【もう】して,時に及んで相 遣歸【けんき】す可し」 と 。


(現代語訳)
わたしはあなたがいないさびしい室に留守居して、ふだんはお目にかかることもめったにないでしょう。
にわとりか鳴くと機を織りはじめ、毎晩寝ることもままならないのです。
三日間に、五疋の絹を織りあげました、母さまは故意にゆっくり織っているといって嫌われます。
しかしそれは織り方が遅いためではなく、あなたの家の嫁としての勤めが難儀なのです。
わたくしはとてもこき使われるのに堪えかねます。ただとどまっていたとて、どうにもなりません。
おしゆうと様たちに申しあげたいのです。「今のうちに里方へ帰してくださいませ。」と。


(訳注) #2
賤妾留空房,相見常日稀。

わたしはあなたがいないさびしい室に留守居して、ふだんはお目にかかることもめったにないでしょう。


雞鳴入機織,夜夜不得息。
にわとりか鳴くと機を織りはじめ、毎晩寝ることもままならないのです。


三日斷五疋,大人故嫌遲。
三日間に、五疋の絹を織りあげました、母さまは故意にゆっくり織っているといって嫌われます。
断五疋 五疋の絹布を織り成して断ち取ること。疋は匹に同じく布二反をいう。
大人 尊者の称。男女共に通じていう。ここは母を指すと見たが、父としてもよいが機織りの事は通常義母がいうものであろう。


非為織作遲,君家婦難為。
しかしそれは織り方が遅いためではなく、あなたの家の嫁としての勤めが難儀なのです。


妾不堪驅使,徒留無所施。
わたくしはとてもこき使われるのに堪えかねます。ただとどまっていたとて、どうにもなりません。
駆使 こきつかわれること。


便可白公姥,及時相遣歸 。
おしゆうと様たちに申しあげたいのです。「今のうちに里方へ帰してくださいませ。」と。
公姥 蘭芝の舅姑、すなわち仲卿の父母。
及時 時機を失せず、今のうちにの意。


為焦仲卿妻作-其一(1) 漢詩<144>古詩源 巻三 女性詩584 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1569

 
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為焦仲卿妻作-其一(1) 漢詩<144>古詩源 巻三 女性詩584 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1569


#1
為焦仲卿妻作-其(1)
孔雀東南飛,五裏一徘徊。
孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
十三能織素,十四學裁衣。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。
十五彈箜篌,十六誦詩書。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
十七為君婦,心中常苦悲。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。
君既為府吏,守節情不移。
あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。
#1為焦仲卿妻作-其一
孔雀 東南に飛び,五里に 一たび 裴徊【はいかい】す。
「十三 能【よ】く 素【そ】を織り,十四 衣を 裁【た】つを學び,
十五 箜篌【くご】を彈【ひ】き,十六 『詩』『書』を 誦【しょう】し,
十七 君が婦【つま】と爲り,心中 常に苦悲す。
君 既に 府吏と為り,節を守って情移らず。


現代語訳と訳註
(本文)
為焦仲卿妻作-其(1)
孔雀東南飛,五裏一徘徊。十三能織素,十四學裁衣。十五彈箜篌,十六誦詩書。十七為君婦,心中常苦悲。君既為府吏,守節情不移。


(下し文) #1為焦仲卿妻作-其一
孔雀 東南に飛び,五里に 一たび 裴徊【はいかい】す。
「十三 能【よ】く 素【そ】を織り,十四 衣を 裁【た】つを學び,
十五 箜篌【くご】を彈【ひ】き,十六 『詩』『書』を 誦【しょう】し,
十七 君が婦【つま】と爲り,心中 常に苦悲す。
君 既に 府吏と為り,節を守って情移らず。


(現代語訳)#1
孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。
あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。


(訳注)
#1為焦仲卿妻作-其(1)

孔雀東南飛,五裏一徘徊。

孔雀か東と南に向かって分かれ飛び、互いに心をひかれ、五里行って、ときにさまよいためらいの様子である。
・孔雀東南飛 夫妻別れ去るに忍びず、ためらう様子をたとえた句で、この詩の総序をなしている。・孔雀 クジャク。孤独な魂、単独で天翔る女性・劉蘭芝を指す。 ・東南:東南方向。当時の感覚から云えば、温暖な方向。夫(焦仲卿)が首を吊った木の枝は、東南側の枝で、夫の霊が向かった方向。 ・飛:飛翔する。天翔る。女性としての教養を積んでいく劉蘭芝の描写との関係が極めて不自然なものになる。この「孔雀東南飛,五里一裴徊。」の聯は全篇を概括した序章になり、孤独な女性・劉蘭芝の魂の徘徊のことをいっていよう。


十三能織素,十四學裁衣。
「わたしは十三の歳に、自絹が織れましたし、十四では着物の裁ち万も学びました。
十三 十三歳。以下、数字は年齢。・能 よく。…できる。
織素 彩色を施してない生絹を織(お)る。素 白絹。生絹。
 まなぶ。習いまねをする。 
裁衣 裁縫する。


十五彈箜篌,十六誦詩書。
十五歳では、箜篌(くご)を演奏することができ、十六歳では、『詩経』や『書経』の学問をして章句を諳(そら)んじることができました。
 (絃楽器を)弾(ひ)く。 
箜篌 〔くご(こうこう)絃楽器の名。くだら琴。ハープ(竪琴)のように竪てたものや、琴のように臥したものがある。・誦となえる。節を附けて大きな声で読む。空読みする。 
詩書 『詩経』と『書経』。儒学の聖典。


十七為君婦,心中常苦悲。
十七のときにあなたの妻となって、心の中ではいつも苦労がたえませんでした。
 あなた。男性を尊んでいう。ここでは焦仲卿のことになる。 
 妻。 ・心中 心の中は。胸の内では。
苦悲 ひどく悲しむ。悩み悲しむ。苦しみ悲しむ。


君既為府吏,守節情不移。
あなたが廬江府の役人になられてからはお勤め第一にはげまれて夫婦の情にほだされることなどはありませんでした。
府吏 廬江府の役人。
守節情不移 官司の事に専心して、夫婦の情に移らぬ意。夫についていう。

為焦仲卿妻作 序 漢詩<143>古詩源 巻三 女性詩583 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1566

 
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為焦仲卿妻作 序 漢詩<143>古詩源 巻三 女性詩583 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1566


この詩は中国に於てほ比較的に少ない叙事詩の傑作で、古今稀に見る長篇である。問答体の長篇であるから、便宜上、篇を十三段に分けて解し、ここでの掲載は”#で示す”によって細分してすすめる。なお詩中の登場人物を表記しておく。
         3.父:公   7. 妹
(夫側:焦氏)         1.仲卿(廬江府吏)
         4.母:姥

         5.父
(妻側:劉氏)         2.蘭芝
         6.母      8. 兄

9. 県令・10.太守・11.丞・12.主薄。など。

・建安 (196―220)後漢献帝の年号
・廬江府 廬江は巣湖の西南西40里(約23km)にあった漢の郡名、もと安徽省廬江県西にあったが、漢未には潜山県に治を移した。

為焦仲卿妻作其(0)
序曰:漢末建安中,廬江府小吏焦仲卿妻劉氏,為仲卿母所遣,自誓不嫁。其家逼之,乃投水而死。仲卿聞之,亦自縊於庭樹。時人傷之,為詩雲爾。


為焦仲卿妻作-其(1)
孔雀東南飛,五裏一徘徊。十三能織素,十四學裁衣。十五彈箜篌,十六誦詩書。十七為君婦,心中常苦悲。君既為府吏,守節情不移。
#2
賤妾留空房,相見常日稀。雞鳴入機織,夜夜不得息。三日斷五疋,大人故嫌遲。非為織作遲,君家婦難為。妾不堪驅使,徒留無所施。便可白公姥,及時相遣歸 。

為焦仲卿妻作-其(2)-#3
府吏得聞之,堂上啟阿母。兒已薄祿相,幸複得此婦。結髮同枕席,黃泉共為友。共事二三年,始而未為久。
女行無偏斜,何意致不厚。
#4
阿母謂府潰何乃太區區。此婦無禮節,舉動自專由。吾意久懷忿,汝豈得自由。東家有賢女,自名秦羅敷。
可憐體無比,阿母為汝求。
#5
便可速遣之,遣去慎莫留。府吏長跪告,伏惟啟阿母。今若遣此婦,終老不復娶。阿母得聞之,槌床便大怒。小子無所畏,何敢助婦語。吾已失恩義,會不相從許。

為焦仲卿妻作-其(3)-#6
府吏默無聲,再拜還入戶。舉言謂新婦,哽咽不能語。我自不驅卿,逼迫有阿母。卿但暫還家,吾今且赴府。不久當歸還,還必相迎取。
#7
以此下心意,慎勿違吾語。新婦謂府吏,勿複重紛紜。往昔初陽歲,謝家來貴門。奉事循公姥,進止敢自專?晝夜勤作息,伶俜縈苦辛。

#8
謂言無罪過,供養卒大恩。仍更被驅遣,何言複來還?妾有繡腰襦,葳蕤自生光。紅羅複鬥帳,四角垂香囊。箱簾六七十,綠碧青絲繩。
#9
物物各具異,種種在其中。人賤物亦鄙,不足迎後人。留待作遣施,於今無會因。時時為安慰,久久莫相忘。

為焦仲卿妻作-其(4)-#10
雞鳴外欲曙,新婦起嚴妝。著我繡夾裙,事事四五通。足下躡絲履,頭上玳瑁光。腰若流紈素,耳著明月璫。 指如削蔥根,口如含珠丹。

#11
纖纖作細步,精妙世無雙。上堂謝阿母,阿母怒不止。昔作女兒時,生小出野裏。本自無教訓,兼愧貴家子。受母錢帛多,不堪母驅使。今日還家去,念母勞家裏 。

#12
卻與小姑別,淚落連珠子。新婦初來時,小姑始扶床。今日被驅遣,小姑如我長。勤心養公姥,好自相扶將。初七及下九,嬉戲莫相忘。出門登車去,涕落百餘行。

為焦仲卿妻作-其(5)
府吏馬在前,新婦車在後。隱隱何甸甸,俱會大道口。下馬入車中,低頭共耳語。誓不相隔卿,且暫還家去。吾今且赴府,不久當還歸。誓天不相負,新婦謂府吏,感君區區懷。君既若見錄,不久望君來。君當作磐石,妾當作蒲葦。蒲葦韌如絲,磐石無轉移。我有親父兄,性行暴如雷。恐不任我意,逆以煎我懷。舉手長勞勞,二情同依依 。

為焦仲卿妻作-其(6)
入門上家堂,進退無顏儀。阿母大拊掌,不圖子自歸。十三教汝織,十四能裁衣。十五彈箜篌,十六知禮儀。十七遣汝嫁,謂言無誓違。汝今何罪過,不迎而自歸?蘭芝慚阿母,兒實無罪過。阿母大悲摧。

為焦仲卿妻作-其(7)
還家十餘日,縣令遣媒來。雲有第三郎,窈窕世無雙。年始十八九,便言多令才。阿母謂阿女,汝可去應之。阿女含淚答,蘭芝初還時,府吏見叮嚀,結誓不別離。今日違情義,恐此事非奇。自可斷來信,徐徐更謂之。阿母白媒人,貧賤有此女。始適還家門,不堪吏人婦。豈合令郎君?幸可廣問訊,不得便相許。

為焦仲卿妻作-其(8)
媒人去數日,尋遣丞請還。說有蘭家女,承籍有宦官。雲有第五郎,嬌逸未有婚。遣丞為媒人,主簿通語言。直說太守家,有此令郎君。既欲結大義,故遣來貴門。阿母謝媒人,女子先有誓,老姥豈敢言。阿兄得聞之,悵然心中煩。舉言謂阿妹,作計何不量。先嫁得府吏,後嫁得郎君。否泰如天地,足以榮汝身。不嫁義郎體,其往欲何雲。蘭芝仰頭答,理實如兄言。謝家事夫君,中道還兄門。處分適兄意,那得自任專。雖與府吏約,後會永無緣。登即相許和,便可作婚姻 。

為焦仲卿妻作-其(9)
媒人下床去,諾諾複爾爾。還部白府君,下官奉使命,言談大有緣 。府君得聞之,心中大歡喜。視曆複開書,便利此月內,六合正相應。良吉三十日,今已二十七,卿可去成婚。交語速裝束,絡繹如浮雲。青雀白鵠舫,四角龍子幡。婀娜隨風轉,金車玉作輪。躑躅青驄馬,流蘇金縷鞍。齎錢三百萬,皆用青絲穿。雜彩三百疋,交廣市鮭珍。從人四五百,鬱鬱登郡門。

為焦仲卿妻作-其(10)
阿母謂阿女,適得府君書,明日來迎汝。何不作衣裳,莫令事不舉。阿女默無聲,手巾掩口啼,淚落便如瀉。移我琉璃榻,出置前廳下。左手持刀尺,右手執綾羅。朝成繡夾裙,晚成單羅衫。暗暗日欲暝,愁思出門啼。府吏聞此變,因求假暫歸。未至二三裏,摧藏馬悲哀。新婦識馬聲,躡履相逢迎。悵然遙相望,知是故人來。舉手拍馬鞍,嗟歎使心傷。自君別我後,人事不可量。果不如先願,又非君所詳。我有親父母,逼迫兼弟兄。以我應他人,君還何所望 。府吏謂新婦,賀君得高遷。磐石方且厚,可以卒千年。蒲葦一時韌,便作旦夕間。卿當日勝貴,吾獨向黃泉。新婦謂府吏,何意出此言。同是被逼迫,君爾妾亦然。黃泉下相見,勿違今日言。執手分道去,各各還家門。生人作死別,恨恨那可論。念與世間辭,千萬不復全。

為焦仲卿妻作-其(11)
府吏還家去,上堂拜阿母。今日大風寒,寒風摧樹木,嚴霜結庭蘭。兒今日冥冥,令母在後單。故作不良計,勿複怨鬼神。命如南山石,四體康且直。阿母得聞之,零淚應聲落。汝是大家子,仕宦於台閣。慎勿為婦死,貴賤情何薄。東家有賢女,窈窕豔城郭。阿母為汝求,便複在旦夕。府吏再拜還,長歎空房中,作計乃爾立。轉頭向戶裏,漸見愁煎迫 。

為焦仲卿妻作-其(12)
其日牛馬嘶,新婦入青廬。暗暗黃昏後,寂寂人定初。我命絕今日,魂去屍長留。攬裙脫絲履,舉身赴清池。府吏聞此事,心知長別離。徘徊庭樹下,自掛東南枝。

為焦仲卿妻作-其(13)
兩家求合葬,合葬華山傍。東西植松柏,左右種梧桐。枝枝相覆蓋,葉葉相交通。中有雙飛鳥,自名為鴛鴦。仰頭相向鳴,夜夜達五更。行人駐足聽,寡婦起彷徨。多謝後世人,戒之慎勿忘。


為焦仲卿妻作其(0)
序曰:漢末建安中,廬江府小吏焦仲卿妻劉氏,為仲卿母所遣,自誓不嫁。
其家逼之,乃投水而死。
仲卿聞之,亦自縊於庭樹。
時人傷之,為詩雲爾。


為焦仲卿妻作-其(1)
孔雀東南飛,五裏一徘徊。十三能織素,十四學裁衣。十五彈箜篌,十六誦詩書。十七為君婦,心中常苦悲。君既為府吏,守節情不移。
#2
賤妾留空房,相見常日稀。雞鳴入機織,夜夜不得息。三日斷五疋,大人故嫌遲。非為織作遲,君家婦難為。妾不堪驅使,徒留無所施。便可白公姥,及時相遣歸 。


#0 焦仲卿【しょうちゅうけい】が妻の為にの作
序に曰く
漢末の建安中に,廬江府【ろこうふ】の小吏 焦仲卿が妻の劉氏,仲卿の母の遣る所と為り,自ら誓って嫁せず。
其の家之に逼【せま】るや,乃ち水に投じて死す。
仲卿 之を聞き,亦 自ら庭樹に縊【くびくく】る。
時に人 之を傷み,詩を為【つく】ると爾【しか】雲【い】う。

#1為焦仲卿妻作-其一
孔雀 東南に飛び,五里に 一たび 裴徊【はいかい】す。
「十三 能【よ】く 素【そ】を織り,十四 衣を 裁【た】つを學び,
十五 箜篌【くご】を彈【ひ】き,十六 『詩』『書』を 誦【しょう】し,
十七 君が婦【つま】と爲り,心中 常に苦悲す。
君 既に 府吏と為り,節を守って情移らず。

#2
賤妾【せんしょう】は空房に留り,相見ること常日【じょうじつ】稀なり。
雞鳴【けいめい】機に入りて織り,夜夜 息むを得ず。三日 五疋を斷ち,大人は故【ことさら】に遲きを嫌う。
織の遲きを作すが為に非らず,君が家の婦は為り難し。
妾は驅使に堪えず,徒【いたずら】に留まるも施す所無し。
便【すなわ】ち公姥に白【もう】して,時に及んで相 遣歸【けんき】す可し」 と 。



#0
序文にいう:後漢末の建安年間に膳江府の小役人であった焦仲卿の妻に劉氏(名は蘭芝)というものがあった。蘭芝は仲卿の母におい出された。離縁された妻・劉氏(劉蘭芝)は更なる嫁入りはしないと心に誓った。(夫の方も、必ず呼び戻すと約束した。しかし実家の方は、劉蘭芝にとって玉の輿とも謂うべき再婚を逼り、嫁入り支度も整った後、前夫に出逢って、愚痴られた。夫婦ともあの世で添い遂げようということになった。その日の夕刻、終(つい)に水に入って死んだ。
(前夫の)焦仲卿は、このことを伝え聞き、自分もまた庭樹の東南の枝に首を吊って果てた。時の人は、二人のことを傷(いた)んで詩にしたと云うことである。)とその経緯が述べられている。

後世に影響を与えた詩で、初唐、劉希夷はじめ数多くの詩人に、特に白居易の『長恨歌』の祖型になったともいわれているのである。。

古怨歌 竇玄妻 漢詩<142>古詩源 巻三 女性詩581 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1560

 
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古怨歌 竇玄妻 漢詩<142>古詩源 巻三 女性詩581 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1560
竇玄妻『古詩源』


古怨歌
煢煢白兎,東走西顧。
こんなにもほおっておかれている白兎はけいけいと寂しいものであります。東に向かって走っていく、こんどは西を振り返ってみたりするのです。
衣不如新,人不如故。
肌着は新しいものがよく、古いものはとても及ばないものでしょう。でも、人というものは古くから知り合った者のほうがよいというものでしょう。
 
古怨歌
煢煢【けいけい】たる  白兎,東に 走り  西に 顧【かへり】る。
衣は  新しきに 不如【しか】ず,人は  故【ふる】きに 不如【しか】ず。


現代語訳と訳註
(本文)
古怨歌
煢煢白兎,東走西顧。
衣不如新,人不如故。


(下し文)
古怨歌【こえんか】
煢煢【けいけい】たる  白兎,東に 走り  西に 顧【かへり】る。
衣は  新しきに 不如【しか】ず,人は  故【ふる】きに 不如【しか】ず。


(現代語訳)
こんなにもほおっておかれている白兎はけいけいと寂しいものであります。東に向かって走っていく、こんどは西を振り返ってみたりするのです。
肌着は新しいものがよく、古いものはとても及ばないものでしょう。でも、人というものは古くから知り合った者のほうがよいというものでしょう。


(訳注)
古怨歌

竇玄妻 『古詩源』。
古註に「玄状貌絶異,天子使出其妻,妻以公主。妻悲怨寄書及歌玄。時人憐之。」
(玄状 貌は絶異にして,天子 使して 其の妻を出でしむ,妻するに公主を以てす。(古くからの)妻 悲しみ怨みて 書及び歌を玄に寄す。時の人 之を憐む。)
古怨歌 棄てられた妻の怨みのうた。竇玄は容貌が優れ、時の帝は(皇女を竇玄の嫁とするため)、竇玄の(古くからの)妻を離縁させた。これはその離縁された妻の怨みの歌。なお、『後漢書』で調べているが、まだ見つけていない。


煢煢白兎,東走西顧。
こんなにもほおっておかれている白兎はけいけいと寂しいものであります。東に向かって走っていく、こんどは西を振り返ってみたりするのです。
煢煢 孤独なさま。 
白兎 白い兎。離縁された妻を謂う。基本となる詩は以下である。
『詩経、国風、周南』兔罝
肅肅兔罝、椓之丁丁。
赳赳武夫、公侯干城。
肅肅(しゅくしゅく)たる兔罝(としゃ) 、之を椓(たく)すること丁丁たり。
赳赳(きゅうきゅう)たる武夫(もののふ)は、公侯の干城(かんじょう)。
・東…西… あちらこちらへ行くさま。うろうろするさま。 ・東走:東の方へにげる。 ・西顧:西の方をふり返る。妻の未練がましさを表現する。


衣不如新,人不如故。
肌着は新しいものがよく、古いものはとても及ばないものでしょう。でも、人というものは古くから知り合った者のほうがよいというものでしょう。
衣 ころも。衣服。
人不如故 人は古くから知り合った者のほうがい。・人 ここでは人であり妻のことでもある。・不如 …に及ばない。…にしかず。
A不如B AはBに及ばない。Bの方が優れているということ。


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盤中詩 蘇伯玉妻 漢詩<141-#3>古詩源 巻三 女性詩580 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1557

 
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盤中詩 蘇伯玉妻 漢詩<141-#3>古詩源 巻三 女性詩580 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1557


盤中詩
山樹高,鳥鳴悲。泉水深,鯉魚肥。
山の樹木はさびしく高くしている。鳥鳴いて悲しみをしめす。
私の思いの泉の水は深くして、文が入っているはずの鯉魚は肥え太っていくばかりだ。

空倉雀,常苦飢。吏人婦,會夫稀。
からっぽの倉に棲みつく雀はいつも飢餓に苦しんでいるものだ。
わたしは役人の妻となっているが、夫と会う日はまれなのである。

出門望,見白衣。謂當是,而更非。
門を出てはるか西の空を望み、白衣の人を見るのである。てっきり夫にまちがいないと思っても、しかし、また当てがはずれてしまう。
還入門,中心悲。
そしてまた門に引きかえして、心に悲しみをもって毎日の生活の真っ只中にいるのである。
#2
北上堂,西入階。急機絞,杼聲催。
北側にある奥座敷にあがったり、西の階をのぼって閨の室に入ったりする。せっかちに機織り機の軸を転じて糸をしめ、杼の音もせおしく動かすのです。
長嘆息,當語誰。
長いため息をもらしても、誰に語るべき相手もないのです。
君有行,妾念之。出有日,還無期。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
結巾帶,長相思。君忘妾,未知之。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
妾忘君,罪當治。妾有行,宜知之。
わたしがあなたを忘れることはありませんが、もしそんなことがあったとしたら、わたしの罪をせめてください。わたしの清廉な行ないをしていることはあなたはご承知ですよね。

#3
黃者金,白者玉。高者山,下者谷。
黄色く光るものは金であり、白く輝くものは宝玉です。
高くそびえるものは山であり、ひくいところにあるものは谷底です。

姓者蘇,字伯玉。人才多,智謀足。
わたしの夫の姓名は、姓は蘇であり、字は伯玉です。
才能は多くもっており、知謀は十分です。

家居長安身在蜀,何惜馬蹄歸不數。
家は長安にあり、その身は蜀においています。長安には馬が蹄を鳴らしてたびたび帰ってきますが、なんで夫の馬でないといってくやみましょう。
羊肉千斤酒百斛,令君馬肥麥與粟。
家には羊肉を千斤ほど用意し、酒は百斛、何も不足はないのです。こちらにいるあなたの馬は麦と粟とでふとらしておきます。
今時人,智不足。與其書,不能讀。
今、ここでいう時の人は、この盤中詩文にどんな意があるかご承知のはずです。
盤中に記してさしあげる詩文が、読みにくいということはないでしょう。

當從中央周四角。
中央から読み始めて四すみにむかってまわしてお読みくださればよいのです。


盤中の詩 #1
山樹高うして、鳥鳴き悲しみ、泉水探うして、鯉魚肥ゆ。
空倉の雀は、常に飢に苦しみ、吏人の婦は、夫に合うこと希なり。
門を出でて望み、白衣を見て、謂へらく皆に是なるべしと、而も更非なり。
還って門に入り、中心悲しむ。
#2
北のかた堂に上り、西のかた階に入る。
急に機を絞し、抒聾を催し、長く歎息して、皆に誰にか語るべき。
君に行有り、妾之を念ふ。出づるに日有るも、還るに期無し。
巾符を結んで、長く相思ふ。君の妾を忘るるは、未だ之を知らず。
妾が君を忘るれは、罪常に治すべし。妾に行有り、宜しく之を知るべし。

#3
黄なる者は金、白き者は玉、高き者は山、下き者は谷、
姓は蘇、字は伯玉、人才多く、知謀足る。家は長安に居り身は蜀に在り。
何ぞ惜まん馬蹄締ること敬二ならざるを。羊肉千斤酒百科、
君が馬をして秦と粟とに肥えしめん。今時の人は四足を知る、其の書を興へて讃むこと能はずんは、
蕾に中央より四角に周るべし。

盤中詩00

現代語訳と訳註
(本文)
 黃者金,白者玉。高者山,下者谷。
姓者蘇,字伯玉。人才多,智謀足。
家居長安身在蜀,何惜馬蹄歸不數。
羊肉千斤酒百斛,令君馬肥麥與粟。
今時人,智不足。與其書,不能讀。
當從中央周四角。


(下し文) #3
黄なる者は金、白き者は玉、高き者は山、下き者は谷、
姓は蘇、字は伯玉、人才多く、知謀足る。家は長安に居り身は蜀に在り。
何ぞ惜まん馬蹄締ること敬二ならざるを。羊肉千斤酒百科、
君が馬をして秦と粟とに肥えしめん。今時の人は四足を知る、其の書を興へて讃むこと能はずんは、
蕾に中央より四角に周るべし。


(現代語訳)
黄色く光るものは金であり、白く輝くものは宝玉です。
高くそびえるものは山であり、ひくいところにあるものは谷底です。
わたしの夫の姓名は、姓は蘇であり、字は伯玉です。
才能は多くもっており、知謀は十分です。
家は長安にあり、その身は蜀においています。長安には馬が蹄を鳴らしてたびたび帰ってきますが、なんで夫の馬でないといってくやみましょう。
家には羊肉を千斤ほど用意し、酒は百斛、何も不足はないのです。こちらにいるあなたの馬は麦と粟とでふとらしておきます。
今、ここでいう時の人は、この盤中詩文にどんな意があるかご承知のはずです。
盤中に記してさしあげる詩文が、読みにくいということはないでしょう。
中央から読み始めて四すみにむかってまわしてお読みくださればよいのです。


(訳注)#3
黃者金,白者玉。
黄色く光るものは金であり、白く輝くものは宝玉です。


高者山,下者谷。
高くそびえるものは山であり、ひくいところにあるものは谷底です。


姓者蘇,字伯玉。
わたしの夫の姓名は、姓は蘇であり、字は伯玉です。


人才多,智謀足。
才能は多くもっており、知謀は十分です。


家居長安身在蜀,何惜馬蹄歸不數。
家は長安にあり、その身は蜀においています。長安には馬が蹄を鳴らしてたびたび帰ってきますが、なんで夫の馬でないといってくやみましょう。
・何惜馬蹄歸不數 この句あらわには夫が帰家しなくていいといって行っているのではなく、謙譲・自謙、反語の語である。


羊肉千斤酒百斛,令君馬肥麥與粟。
家には羊肉を千斤ほど用意し、酒は百斛、何も不足はないのです。こちらにいるあなたの馬は麦と粟とでふとらしておきます。
・百斛 斛は石に同じ。


今時人,智不足。
今、ここでいう時の人は、この盤中詩文にどんな意があるかご承知のはずです。
知不足 盤に盤旋回帰の義があることを知るの意。


與其書,不能讀。
盤中に記してさしあげる詩文が、読みにくいということはないでしょう。


當從中央周四角。
中央から読み始めて四すみにむかってまわしてお読みくださればよいのです。


盤中詩
山樹高,鳥鳴悲。泉水深,鯉魚肥。
空倉雀,常苦飢。吏人婦,會夫稀。
出門望,見白衣。謂當是,而更非。
還入門,中心悲。
北上堂,西入階。急機絞,杼聲催。
長嘆息,當語誰。
君有行,妾念之。出有日,還無期。
結巾帶,長相思。君忘妾,未知之。
妾忘君,罪當治。妾有行,宜知之。
黃者金,白者玉。高者山,下者谷。
姓者蘇,字伯玉。人才多,智謀足。
家居長安身在蜀,何惜馬蹄歸不數。
羊肉千斤酒百斛,令君馬肥麥與粟。
今時人,智不足。與其書,不能讀。
當從中央周四角。
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盤中詩 蘇伯玉妻 漢詩<141-#2>古詩源 巻二 女性詩579 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1554

盤中詩 蘇伯玉妻 漢詩<141-#2>古詩源 巻二 女性詩579 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1554


盤中詩 蘇伯玉妻
・蘇伯玉妻 詩の本文によって姓は蘇、字は伯玉とあるも、その人の伝は明らかでない。
・盤中詩 遠行の夫に与えて、家に帰るを勧める妻の詩である。盤は大皿の類。字義に回旋の意があるから、その意を仮り、この詩を盤中に書して贈ったのである。
還入門,中心悲。
そしてまた門に引きかえして、心に悲しみをもって毎日の生活の真只中にいるのです。
#2
北上堂,西入階。急機絞,杼聲催。
北側にある奥座敷にあがったり、西の階をのぼって閨の室に入ったりする。せっかちに機織り機の軸を転じて糸をしめ、杼の音もせおしく動かすのです。
長嘆息,當語誰。
長いため息をもらしても、誰に語るべき相手もないのです。
君有行,妾念之。出有日,還無期。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
結巾帶,長相思。君忘妾,未知之。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
妾忘君,罪當治。妾有行,宜知之。
わたしがあなたを忘れることはありませんが、もしそんなことがあったとしたら、わたしの罪をせめてください。わたしの清廉な行ないをしていることはあなたはご承知ですよね。


盤中詩
山樹高,鳥鳴悲。泉水深,鯉魚肥。
夫の影を寫す山の樹木はさびしく高くしているのです。鳥鳴いて悲しみをしめす。私の思いの泉の水は深くして、文が入っているはずの鯉魚は肥え太っていくばかりです。
空倉雀,常苦飢。吏人婦,會夫稀。
からっぽの倉に棲みつく雀はいつも飢餓に苦しんでいるものです。わたしは役人の妻となっているが、夫と会う日はまれなのです
出門望,見白衣。謂當是,而更非。
門を出てはるか西の空を望み、白衣の人を見るのです。てっきり夫にまちがいないと思っても、しかし、また当てがはずれてしまう。

#3
黃者金,白者玉。高者山,下者谷。
姓者蘇,字伯玉。人才多,智謀足。
家居長安身在蜀,何惜馬蹄歸不數。
羊肉千斤酒百斛,令君馬肥麥與粟。
今時人,智不足。與其書,不能讀。
當從中央周四角。


盤中の詩 #1
山樹高うして、鳥鳴き悲しみ、泉水探うして、鯉魚肥ゆ。
空倉の雀は、常に飢に苦しみ、吏人の婦は、夫に合うこと希なり。
門を出でて望み、白衣を見て、謂へらく皆に是なるべしと、而も更非なり。
還って門に入り、中心悲しむ。
#2
北のかた堂に上り、西のかた階に入る。
急に機を絞し、抒聾を催し、長く歎息して、皆に誰にか語るべき。
君に行有り、妾之を念ふ。出づるに日有るも、還るに期無し。
巾符を結んで、長く相思ふ。君の妾を忘るるは、未だ之を知らず。
妾が君を忘るれは、罪常に治すべし。妾に行有り、宜しく之を知るべし。

#3
黄なる者は金、白き者は玉、高き者は山、下き者は谷、
姓は蘇、字は伯玉、人才多く、知謀足る。家は長安に居り身は蜀に在り。
何ぞ惜まん馬蹄締ること敬二ならざるを。羊肉千斤酒百科、
君が馬をして秦と粟とに肥えしめん。今時の人は四足を知る、其の書を興へて讃むこと能はずんは、
蕾に中央より四角に周るべし。


現代語訳と訳註
(本文)
北上堂,
西入階。急機絞,杼聲催。
長嘆息,當語誰。
君有行,妾念之。出有日,還無期。
結巾帶,長相思。君忘妾,未知之。
妾忘君,罪當治。妾有行,宜知之。


(下し文) #2
北のかた堂に上り、西のかた階に入る。
急に機を絞し、抒聾を催し、長く歎息して、皆に誰にか語るべき。
君に行有り、妾之を念ふ。出づるに日有るも、還るに期無し。
巾符を結んで、長く相思ふ。君の妾を忘るるは、未だ之を知らず。
妾が君を忘るれは、罪常に治すべし。妾に行有り、宜しく之を知るべし。


(現代語訳)
北側にある奥座敷にあがったり、西の階をのぼって閨の室に入ったりする。せっかちに機織り機の軸を転じて糸をしめ、杼の音もせおしく動かすのです。
長いため息をもらしても、誰に語るべき相手もないのです。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。
わたしがあなたを忘れることはありませんが、もしそんなことがあったとしたら、わたしの罪をせめてください。わたしの清廉な行ないをしていることはあなたはご承知ですよね。


(訳注) 盤中詩 #2
北上堂,西入階。急機絞,杼聲催。
北側にある奥座敷にあがったり、西の階をのぼって閨の室に入ったりする。せっかちに機織り機の軸を転じて糸をしめ、杼の音もせおしく動かすのです。


長嘆息,當語誰。
長いため息をもらしても、誰に語るべき相手もないのです。


君有行,妾念之。出有日,還無期。
今はあなたが旅の空にあるのです、わたしはこのことをいつも思いなやむのです。出発の日は決まってあるのですが、お帰りの約束、予定はないのです。


結巾帶,長相思。君忘妾,未知之。
その間、帯をむすぶときにはずっといつも思っています。あなたはわたしを忘れるかも知れませんが、いまだにそのことが分からないのです。


妾忘君,罪當治。妾有行,宜知之。
わたしがあなたを忘れることはありませんが、もしそんなことがあったとしたら、わたしの罪をせめてください。わたしの清廉な行ないをしていることはあなたはご承知ですよね。


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紀 頌之

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