班固《東都賦》(33) (靈臺の詩)そもそも文王の霊台はその仁徳を以ていとなまれるものであり、雲台ははやくも高くそびえる。明帝はつとめて時にあたってここに登られ、敬きめでたきしるしを問いただす。日月星の三光は、くまなくかがやきわたり、水火金木土の五行は、順序のとおりめぐりゆく。やんごとなきさいわいの風はそよそよとふきわたり、いつくしみの雨はひろく静かに降る。
班孟堅(班固)《東都賦》(33) 文選 賦 賦<113―33>18分割35回 Ⅱ李白に影響を与えた詩1035 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3723
(31) #16
明堂詩
於昭明堂,明堂孔陽。
聖皇宗祀,穆穆煌煌。
上帝宴饗,五位時序。
誰其配之,世祖光武。
普天率土,各以其職。
猗歟緝熙,允懷多福。
ああ、明堂というものはけがれなき、政教を明らかにされるところであり、明堂は国をとても鮮明にしていくところである。
聖徳なる天子は祖先を最も大切なものとしてまつり、これほどに威儀多く、つつましくして美しく立派なこととされる。
地上の主宰者である天子も郊祀楽,儀礼の宴饗楽をおこなう、東西南北と中央の五方に分け、それぞれ五神とさだめられた席にならびたまう。
神に配されし人は誰であろうか、それは世祖光武の帝その人である。
大地をあまねくおおっている広大な天が陸地と海との接する果てまでの国土、その天下国土より、その職司をもって祭りに当たる。
ああ、徳があり広く知れわたることとなり、まことにこれほどの多福が来るのである。
(32) #17
辟雍詩
乃流辟雍,辟雍湯湯。
聖皇蒞止,造舟為梁。
皤皤國老,乃父乃兄。
抑抑威儀,孝友光明。
於赫太上,示我漢行。
洪化惟神,永觀厥成。
(天子が建てられた大学、辟雍の詩)
天子が建てられた辟雍は水面に浮んでいるようだ、辟雍をめぐって水はゆたかに滔滔と流れている。
聖徳の天子はその場に儀礼、作法にのっとったふるまいされ、舟を造りて浮き橋となれた。
髪白き国老をうやまい、父とし兄として仕えるように教えられる。
注意深く細心な起ち居振舞いをしなければいけないとし、孝悌の情についてもあきらかにし、かくすところなどあってはならない。
ああ、かがやける天子よ、我が漢の国の歩む道を示すものである。
天子の大いなる徳化は神のわざのようである、そして、それはとこしえにその成功、盛栄を見せられるのである。
(33) #18
靈臺詩
(靈臺の詩)
乃經靈臺,靈臺既崇。
そもそも文王の霊台はその仁徳を以ていとなまれるものであり、雲台ははやくも高くそびえる。
帝勤時登,爰考休徵。
明帝はつとめて時にあたってここに登られ、敬きめでたきしるしを問いただす。
三光宣精,五行布序。
日月星の三光は、くまなくかがやきわたり、水火金木土の五行は、順序のとおりめぐりゆく。
習習祥風,祁祁甘雨。
やんごとなきさいわいの風はそよそよとふきわたり、いつくしみの雨はひろく静かに降る。
百穀蓁蓁,庶草蕃廡。
百穀はのびそだち豊穣となり、もろもろの草木はしげりにしげる。
屢惟豊年,於皇樂胥。
豊穣の年はたびかさなり、ああ、いとも楽しきことにあふれる。
『東都賦』 現代語訳と訳註
(本文)
靈臺詩
乃經靈臺,靈臺既崇。
帝勤時登,爰考休徵。
三光宣精,五行布序。
習習祥風,祁祁甘雨。
百穀蓁蓁,庶草蕃廡。
屢惟豊年,於皇樂胥。
(下し文)
(靈臺の詩)
乃れ靈臺【れいだい】を経【いとな】みて、靈臺既に崇し。
帝 勤めて時に登り、爰【ここ】に休徴を考ふ。
三光 精を宣べ、五行 布き序【つい】づ。
習習たる祥風、祁祁【きき】たる甘雨。
百穀 蓁蓁【しんしん】として、庶草 蕃廡【はんぶ】す。
屢【しばし】ば惟れ豊年、於【ああ】皇【おおい】に楽し。
(現代語訳)
(靈臺の詩)
そもそも文王の霊台はその仁徳を以ていとなまれるものであり、雲台ははやくも高くそびえる。
明帝はつとめて時にあたってここに登られ、敬きめでたきしるしを問いただす。
日月星の三光は、くまなくかがやきわたり、水火金木土の五行は、順序のとおりめぐりゆく。
やんごとなきさいわいの風はそよそよとふきわたり、いつくしみの雨はひろく静かに降る。
百穀はのびそだち豊穣となり、もろもろの草木はしげりにしげる。
豊穣の年はたびかさなり、ああ、いとも楽しきことにあふれる。
(訳注)
靈臺詩
詩經‧大雅‧文王之什‧靈臺. 毛詩序:《靈臺》「經始靈臺、經之營之。 庶民攻之、不日成之。
經始勿亟、庶民子來。」靈臺とは文王が密を討じて後に豊邑を作って、此の台を築いたのである。名称は人民が文王の死後、その仁徳に対し、その善霊の徳を仰いで、霊台と称した。
〇韻 前二聯と、次の三聯、すべて偶数句にあり換韻する。崇・徵は各々冬部、通韻。序・雨・廡・胥は古音の魚部に属する。
乃經靈臺,靈臺既崇。
そもそも文王の霊台はその仁徳を以ていとなまれるものであり、雲台ははやくも高くそびえる。
〇経霊台 「霊台を経始し、之を経し之を営む」(『詩経』大雅、文王之什の霊台篇)。
〇既崇 前記詩篇の句に続いて「庶民之を攻(紬)め、日ならずして之を成す」とある。嵩は上へ高くするの意。
帝勤時登,爰考休徵。
明帝はつとめて時にあたってここに登られ、敬きめでたきしるしを問いただす。
〇帝 明帝
〇勤 足しげく…するの意。
三光宣精,五行布序。
日月星の三光は、くまなくかがやきわたり、水火金木土の五行は、順序のとおりめぐりゆく。
〇三光 日月星をいう。霊台は天文現象を見て、政治の善悪を正す。永平二年の詔に「霊台に登り、儀度を正す」(明帝紀、『東観漢記』など)。
〇宣精 光明。宣輪はくもりなく三つともかがやきわたることで、善政の吉兆。
〇五行 水火金木土(『尚書』洪範)。万物を生ずる五元素。この元素が始めて生じた順序に並ぶ。この順序がみだれないと、万物はそだち、太平の世となる。
習習祥風,祁祁甘雨。
やんごとなきさいわいの風はそよそよとふきわたり、いつくしみの雨はひろく静かに降る。
〇習習 そよそよ吹く風。「習習たる谷風」(『詩経』邶風)。
〇祁祁 しずかなさま。風雨がおだやかだと、祥風甘雨が万物をそだてる。天文とも関係あり、たとえば「熒惑(星)順行は、廿雨の時」(『尚書』考霊耀)という。
百穀蓁蓁,庶草蕃廡。
百穀はのびそだち豊穣となり、もろもろの草木はしげりにしげる。
〇蓁蓁・蕃廡 前者は茂るで、しげるでものびていく。後者は繁るで広がりふえる。
屢惟豊年,於皇樂胥。
豊穣の年はたびかさなり、ああ、いとも楽しきことにあふれる。