曹植 種葛篇
2013年4月4日 | 同じ日の紀頌之5つのブログ |
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種葛篇 曹植 魏詩<62-#3> 女性詩724 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2168
種葛篇 #1
種葛南山下,葛藟自成陰。
葛を南の山のふもとにうえると、葛はつるをのばして、ひとりでに、かげをつくるようになった。
與君初婚時,結髮恩義深。
私とあなたとがはじめて結婚したのは、成年に達して結髪したての頃で、夫婦の情愛も深かった。
歡愛在枕席,宿昔同衣衾。
二人の愛情の歓喜は枕の寝台とふとんにあり、夜ごと、かいまきをともにして、仲むつまじくしたものです。
竊慕《棠棣》篇,好樂和瑟琴。
また心ひそかに『詩経、小雅、棠棣』の詩をしたって思いつづけ、むつみ楽しみあうこと、琴家の和するようでありました。
#2
行年將晚暮,佳人懷異心。
だが、すぎゆく年というものは季節は暮れていくものであり私も女盛りをすぎる歳はくれていくものである。そんな恩紀曠不接,我情遂抑沈。
時にあなたの前に美人が出現したら、やがてと、あなたは他に心をうつされるだろう。
もはや、恵愛の筋道も、久しく接点すらなくなっている。私の心はとうとうおもくるしく沈みこんでしまうのです。
出門當何顧?徘徊步北林。
心中憂鬱で気が重いままに北門を出る、どこへ行くあてもないのだ。ただあてもなく北の方の林をさまよい歩く。
下有交頸獸,仰見雙棲禽。
地上には、首を寄せ合って親愛の情をあらわしている獣がおり、あおぎ見れば、二つ仲良くならんだ鳥が巣住まいをしている。
#3
攀枝長嘆息,淚下沾羅衿。
上を見たまま思わず、枝につかまって、長いためいきをついた。涙が流れてとまらずうす絹のえりをぬらす。
良馬知我悲,延頸代我吟。
良馬は私の悲しみを知り、くびをのばし、私にむかっていなないている。
昔為同池魚,今為商與參。
昔は、同じ池の魚のようにすごしたものでしたが、今では、西の方のなかご星と東のからすき星のように、めぐりあうこともなかなかできないのだ。
往古皆歡遇,我獨困於今。
その昔は、二人とも楽しんで相いに会うことができたのに、今では、私はただひとり、今のこの時をすごすことにくるしめられているのだ。
棄置委天命,悠悠安可任?
このようなことでは、天命にまかせるよりないのだが、はてしなくひろがるあてもない状態なのにどこにまかせられるというのだ。
種葛篇 #1
葛を種う 南山の下、葛は蔓のばして自から陰を成す。
君と初めて婚せし時、結髪 恩義探し。
歓愛 枕席に在り、宿昔 衣衾を同じくす。
窃かに《棠棣》の篇を慕い、好楽 瑟琴和せり。
#2
行年【こうねん】将に晩暮【ばんぼ】ならんとして、佳人【かじん】異心を懐く。
恩紀【おんき】曠【ひさ】しく接せず、我が情 遂に抑沈【よくちん】す。
門を出でて当に何をか顧みるべき、排禍【はいか】して北かぶ林に歩む。
下に 頸を交うる獣有り、仰ぎて 双び棲む禽を見る。
#3
枝に攣【よ】じて長嘆息し、涙下り 羅衿【らきん】を沾す。
良馬 我が悲しみを知り、頸を延べ 我に対して吟ず。
昔は 池を同じくする魚為り、今は 商【しょう】と参【しん】為り。
往古 皆な遇うを歓びたるに、我は独り 今に困しむ。
棄置して 天命に委ねんとするも、悠悠として安んぞ任【と】う可き。
『種葛篇』 現代語訳と訳註(本文) #3
攀枝長嘆息,淚下沾羅衿。
良馬知我悲,延頸代我吟。
昔為同池魚,今為商與參。
往古皆歡遇,我獨困於今。
棄置委天命,悠悠安可任?
(下し文)
#3
枝に攣【よ】じて長嘆息し、涙下り 羅衿【らきん】を沾す。
良馬 我が悲しみを知り、頸を延べ 我に対して吟ず。
昔は 池を同じくする魚為り、今は 商【しょう】と参【しん】為り。
往古 皆な遇うを歓びたるに、我は独り 今に困しむ。
棄置して 天命に委ねんとするも、悠悠として安んぞ任【と】う可き。
(現代語訳)
上を見たまま思わず、枝につかまって、長いためいきをついた。涙が流れてとまらずうす絹のえりをぬらす。
良馬は私の悲しみを知り、くびをのばし、私にむかっていなないている。
昔は、同じ池の魚のようにすごしたものでしたが、今では、西の方のなかご星と東のからすき星のように、めぐりあうこともなかなかできないのだ。
その昔は、二人とも楽しんで相いに会うことができたのに、今では、私はただひとり、今のこの時をすごすことにくるしめられているのだ。
このようなことでは、天命にまかせるよりないのだが、はてしなくひろがるあてもない状態なのにどこにまかせられるというのだ。
(訳注)#3
攀枝長嘆息,淚下沾羅衿。
上を見たまま思わず、枝につかまって、長いためいきをついた。涙が流れてとまらずうす絹のえりをぬらす。
〇涙下沾羅衿 羅衿はうす絹のえり。沾はうるおす。ぬらす。
良馬知我悲,延頸代我吟。
良馬は私の悲しみを知り、くびをのばし、私にむかっていなないている。
○良馬 良馬、自分を理解してくれるもの。。
○対我吟 互いにむきあっていななく。互いにわかるように互いに理解し合う。
昔為同池魚,今為商與參。
昔は、同じ池の魚のようにすごしたものでしたが、今では、西の方のなかご星と東のからすき星のように、めぐりあうこともなかなかできないのだ。
○同池魚 古人は魚をば男女相愛をあらわすものである、意見、主張が理解できるもの同士。
〇今為商与参 商・参とも星の名。商星は辰星に同じ、なかごぼし。参宿(しんしゅく)、和名は唐鋤星(からすきぼし)、二十八宿の一つで西方白虎七宿の第7宿。オリオン座の中央に位置する。古来めったにあえぬことのたとえとして用いられ、また商星は東方、参星は西方に位遭するが故に、互に遠くへだたっていることにもたとえられる。
往古皆歡遇,我獨困於今。
その昔は、二人とも楽しんで相いに会うことができたのに、今では、私はただひとり、今のこの時をすごすことにくるしめられているのだ。
棄置委天命,悠悠安可任?
このようなことでは、天命にまかせるよりないのだが、はてしなくひろがるあてもない状態なのにどこにまかせられるというのだ。