司馬相如 《上林賦 》(41)(亡是公がこのように話し終えると)ここに至って、子虚と烏有先生は、厳粛な面もちで、また茫然自失した様子で、あとすざりして席から下り、発言する、「私どもは田舎者で見識が狭く、恐れを知らない議論をしてしまいました。
司馬相如 《上林賦 》(41)―#13-5 文選 賦<110-#13-5>13分割41回 Ⅱ李白に影響を与えた詩946 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3278
(上林賦―最終回)
(39)―#13-3
於斯之時,天下大說,
この時に至って、万民は大いに喜び、
向風而聽,隨流而化;
風になびくように従い、流れにのるように感化される。
芔然興道而遷義,刑錯而不用;
盛んな勢いで、道に志し、義に向かったのであった。その結果、刑罰は捨て置かれて用いられず、
德隆於三皇,而功羨於五帝:
天子の徳は、三皇より高く、功業は、五帝よりも大きいものとなった。
若此,故獵乃可喜也。
こういう次第であるからこそ、はじめて、天子の狩猟は喜ばしいものといえるのである
(40)―#13-4
若夫終日馳騁,勞神苦形,
それにひきかえ、終日馬を走らせ、精神と肉体を疲れさせ、
疲車馬之用,抏士卒之精,
車馬を使いものにならなくさせ、兵士の気力を損ない、
費府庫之財,而無德厚之恩;
倉庫の財産を浪費し、一方、君主の厚い恩沢が下に及ぶわけでもなく、
務在獨樂,不顧衆庶。
もっぱら自分だけ楽しむことにつとめ、民衆のことなど頚になく、
忘國家之政,貪雉兔之獲,則仁者不由也。
国家の政務を忘れ、雉や兎を多く捕まえようとする、そういった狩りの在り方は、仁者の行わないものである。
(41)―#13-5
從此觀之,齊、楚之事,豈不哀哉!
以上のことから考えてみると、斉工・楚王の狩りの様子は、何とも悲しむべきではないか。
地方不過千里,而囿居九百,
国の土地が千里四方もないのに、狩り場は九百里四方を占めている。
是草木不得墾辟,而人無所食也。
これでは、野や林を開墾することができず、人々は、食べてゆくこともできないだろぅ。
夫以諸侯之細,而樂萬乘之侈,僕恐百姓被其尤也。」
そもそも、諸侯の分際で、天子の賛沢を楽しんでいるようでは、民衆がそのしわよせを受けるのではないかと、私には心配でならない。」と。
於是二子愀然改容,超若自失,
(亡是公がこのように話し終えると)ここに至って、子虚と烏有先生は、厳粛な面もちで、また茫然自失した様子で、
逡巡避席曰:「鄙人固陋,不知忌諱,
あとすざりして席から下り、発言する、「私どもは田舎者で見識が狭く、恐れを知らない議論をしてしまいました。
乃今日見教,謹受命矣。」
それを今日、教えさとしていただきました。謹んで先生のお教えに従いたいと思います。」と。
『上林賦』 現代語訳と訳註
(本文) (41)―#13-5
從此觀之,齊、楚之事,豈不哀哉!
地方不過千里,而囿居九百,
是草木不得墾辟,而人無所食也。
夫以諸侯之細,而樂萬乘之侈,僕恐百姓被其尤也。」
於是二子愀然改容,超若自失,
逡巡避席曰:「鄙人固陋,不知忌諱,
乃今日見教,謹受命矣。」
(下し文) (41)―#13-5
此れに從りて之を觀れば,齊、楚の事,豈に哀sじからず哉!
地方千里を過ぎずして,囿 九百に居る,
是れ草木 墾辟することを得ずして,人 食う所無し也。
夫れ諸侯の細を以て,而して萬乘の侈【おごり】を樂しむ,僕 恐るらくは百姓の其の尤【とが】を被らんことを。」と。
是に於いて二子 愀然【しゅうぜん】して容を改め,超若として自失し,
逡巡して席を避りて曰く:「鄙人【ひじん】固陋【ころう】にsぎて,忌諱【きき】することを知らず,
乃ち今日教へられぬ,謹しんで命を受けなん。」と。
(現代語訳)
以上のことから考えてみると、斉工・楚王の狩りの様子は、何とも悲しむべきではないか。
国の土地が千里四方もないのに、狩り場は九百里四方を占めている。
これでは、野や林を開墾することができず、人々は、食べてゆくこともできないだろぅ。
そもそも、諸侯の分際で、天子の賛沢を楽しんでいるようでは、民衆がそのしわよせを受けるのではないかと、私には心配でならない。」と。
(亡是公がこのように話し終えると)ここに至って、子虚と烏有先生は、厳粛な面もちで、また茫然自失した様子で、
あとすざりして席から下り、発言する、「私どもは田舎者で見識が狭く、恐れを知らない議論をしてしまいました。
それを今日、教えさとしていただきました。謹んで先生のお教えに従いたいと思います。」と。
(訳注) (41)―#13-5
從此觀之,齊、楚之事,豈不哀哉!
以上のことから考えてみると、斉工・楚王の狩りの様子は、何とも悲しむべきではないか。
地方不過千里,而囿居九百,
国の土地が千里四方もないのに、狩り場は九百里四方を占めている。
是草木不得墾辟,而人無所食也。
これでは、野や林を開墾することができず、人々は、食べてゆくこともできないだろぅ。
・墾辟 開墾
夫以諸侯之細,而樂萬乘之侈,僕恐百姓被其尤也。」
そもそも、諸侯の分際で、天子の賛沢を楽しんでいるようでは、民衆がそのしわよせを受けるのではないかと、私には心配でならない。」と。
・諸侯之細 諸侯の分際というほどの意。
於是二子愀然改容,超若自失,
(亡是公がこのように話し終えると)ここに至って、子虚と烏有先生は、厳粛な面もちで、また茫然自失した様子で、
・愀然 (1) (表情が)不快げな.(2) 厳粛な,重々しい.
・超若 がっかりして気が抜けた様子。
逡巡避席曰:「鄙人固陋,不知忌諱,
あとすざりして席から下り、発言する、「私どもは田舎者で見識が狭く、恐れを知らない議論をしてしまいました。
・忌諱 いやがって嫌うこと。いみはばかること。
乃今日見教,謹受命矣。」
それを今日、教えさとしていただきました。謹んで先生のお教えに従いたいと思います。」と。
此れに從りて之を觀れば,齊、楚の事,豈に哀しからず哉!
地方千里を過ぎずして,囿 九百に居る,
是れ草木 墾辟することを得ずして,人 食う所無し也。
夫れ諸侯の細を以て,而して萬乘の侈【おごり】を樂しむ,僕 恐るらくは百姓の其の尤【とが】を被らんことを。」と。
是に於いて二子 愀然【しゅうぜん】して容を改め,超若として自失し,
逡巡して席を避りて曰く:「鄙人【ひじん】固陋【ころう】にsぎて,忌諱【きき】することを知らず,
乃ち今日教へられぬ,謹しんで命を受けなん。」と。