あおあおとした雑草は、かさなった丘におおいかぶさり、うつくしい王に似た香草は、ふかい谷間にかくれている。鳳凰は西の海に鳴いているが、とまろうと思っても、とまるべき珍しい木がない。ところが、からすは、わがもの顔にのさばっており、よもぎの下に大勢のなかまがいっぱいいる。
54 《古風五十九首之五十四》Index-32Ⅳ-7 753年天寶十二年53歳592古風,五十九首之五十三戰國何紛紛, <54> Ⅰ李白詩1217 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ4633
作年: 753年天寶十二年53歲
卷別: 卷一六一 文體: 五言古詩
詩題: 古風,五十九首之五十四
作地點: 長安(京畿道 / 京兆府 / 長安)
古風,五十九首之五十四
〔この詩は、朝廷から下って随分経つが、悪風頽俗、日に甚だしく、殊に小人の跋扈しているのを謗ったものである。〕
倚劍登高臺,悠悠送春目。
剣をぶらさげて高台にのぼり、はるかに、はるかに、春のながめに目をあそばせる。
蒼榛蔽層丘,瓊草隱深谷。
あおあおとした雑草は、かさなった丘におおいかぶさり、うつくしい王に似た香草は、ふかい谷間にかくれている。
鳳鳥鳴西海,欲集無珍木。
鳳凰は西の海に鳴いているが、とまろうと思っても、とまるべき珍しい木がない。
鸒斯得所居,蒿下盈萬族。
ところが、からすは、わがもの顔にのさばっており、よもぎの下に大勢のなかまがいっぱいいる。
晉風日已頹,窮途方慟哭。
わたしは阮籍の悲しみを知ることができる。晋朝の風俗は、太陽がすでにくずれかたむいてゆくようであった。だからこそ、どんづまりの道で、大声をあげて泣いたのだ。
(古風,五十九首の五十四)
剣に劍って 高台に登り、悠悠として 春日を送る。
蒼榛は 層邸を蔽い、瓊草は 深谷に隠る。
鳳鳥は 西海に鳴き、集まらんと欲するも 珍木無し。
鸒斯は 居る所を得、蒿下に 万族を盈たす。
晋風 日は己に頹る、窮途 方に働突す。

『古風,五十九首之五十四』 現代語訳と訳註
(本文)
古風,五十九首之五十四
倚劍登高臺,悠悠送春目。
蒼榛蔽層丘,瓊草隱深谷。
鳳鳥鳴西海,欲集無珍木。
鸒斯得所居,蒿下盈萬族。
晉風日已頹,窮途方慟哭。
倚劍登高臺,悠悠送春目。
蒼榛蔽層丘,瓊草隱深谷。
鳳鳥鳴西海,欲集無珍木。
鸒斯得所居,蒿下盈萬族。
晉風日已頹,窮途方慟哭。
【翩翩眾鳥飛,翱翔在珍木。群花亦便娟,榮耀非一族。歸來愴途窮,日暮還慟哭】
(下し文)
(古風,五十九首の五十四)
剣に劍って 高台に登り、悠悠として 春日を送る。
蒼榛は 層邸を蔽い、瓊草は 深谷に隠る。
鳳鳥は 西海に鳴き、集まらんと欲するも 珍木無し。
鸒斯は 居る所を得、蒿下に 万族を盈たす。
晋風 日は己に頹る、窮途 方に働突す。
(現代語訳)
〔この詩は、朝廷から下って随分経つが、悪風頽俗、日に甚だしく、殊に小人の跋扈しているのを謗ったものである。〕
剣をぶらさげて高台にのぼり、はるかに、はるかに、春のながめに目をあそばせる。
あおあおとした雑草は、かさなった丘におおいかぶさり、うつくしい王に似た香草は、ふかい谷間にかくれている。
鳳凰は西の海に鳴いているが、とまろうと思っても、とまるべき珍しい木がない。
ところが、からすは、わがもの顔にのさばっており、よもぎの下に大勢のなかまがいっぱいいる。
わたしは阮籍のの悲しみを知ることができる。晋朝の風俗は、太陽がすでにくずれかたむいてゆくようであった。だからこそ、どんづまりの道で、大声をあげて泣いたのだ。
(訳注)
古風,五十九首之五十四
〔この詩は、朝廷から下って随分経つが、悪風頽俗、日に甚だしく、殊に小人の跋扈しているのを謗ったものである。〕
古風とは古体の詩というほどのことで、漢魏の間に完成した五言古詩の継承を目指すものである。諸篇は一時の作でなく、折にふれて作られた無題の詩を後から編集し、李白の生き方を述べたものである。
倚劍登高臺,悠悠送春目。
剣をぶらさげて高台にのぼり、はるかに、はるかに、春のながめに目をあそばせる。
〇倚劍 六朝の江掩の詩に「倍剣臨八荒」とあり、李周翰の注によると、倍は佩、剣を腰にさげること。
○悠悠 遠くはるかなさま。
○送春目 謝朓の詩「遠近送春目」とあるのにもとづく。春の景色をながめわたす。
蒼榛蔽層丘,瓊草隱深谷。
あおあおとした雑草は、かさなった丘におおいかぶさり、うつくしい王に似た香草は、ふかい谷間にかくれている。
○蒼榛 あおあおと茂った雑草。
○瓊草 美しい玉のような香草。
鳳鳥鳴西海,欲集無珍木。
鳳凰は西の海に鳴いているが、とまろうと思っても、とまるべき珍しい木がない。
○鳳鳥 ほうおう。瑞鳥であり、掌にたとえる。
○珍木 珍しい木。鳳は、崑崙山上の珍木にとまるといわれている。
鸒斯得所居,蒿下盈萬族。
ところが、からすは、わがもの顔にのさばっており、よもぎの下に大勢のなかまがいっぱいいる。
○鸒斯 「爾雅」によると、鵯(ひよどり)ここでは小人にたとえる。
○蔦 よもぎ。
〇万族 たくさんのなかま。
晉風日已頹,窮途方慟哭。
わたしは阮籍の悲しみを知ることができる。晋朝の風俗は、太陽がすでにくずれかたむいてゆくようであった。だからこそ、どんづまりの道で、大声をあげて泣いたのだ。
○晋風 晋朝の風俗。
〇日已頹 阮籍の詠懐詩に「灼灼西頽日、余光照我衣」とある。
○窮途 「晋書」の阮籍伝にみえる話。阮籍は、時に気が向くと、ひとりで馬軍にのって出かけたが、車が通れないところにぶっつかると、大声をあげて慟哭しながら引返したという。
○慟哭 悲しみのあまり、声をあげて泣くこと。