安期生さがして首をのばして遠くを望んでみたが、それまで聞こえてきた天上の調が、流れ星が消えていくように聞こえてこなくなった。わたしの願いは、安期生から神仙草をいただいて食べることであり、共に不老長寿となって生命は天とならび帰服することにあるのである。
Index-21
古風,五十九首之七 a-#1
客有鶴上仙,飛飛凌太清。
揚言碧雲裡,自道安期名。
兩兩白玉童,雙吹紫鸞笙。
(不老長寿の仙人の安期生にいただいた神仙草を食べ、不老長寿となって生命は天とならび帰服したという思いを詠う。)
五種の鶴の背にのった各仙人がそろって、大空を飛びまわって老子を神とする太清境までおりこえて行こうとしている。
東のあおい空に湧き立つように浮かぶ雲の中から名のりをあげて、わたしは安期生と呼ばれているものであると言われる。
左右の両脇にに、白玉のように美しいお顔の童子をお伴にして、ともに紫檀で鸞のかたちの笙を合奏している。
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去影忽不見,回風送天聲。
舉首遠望之,飄然若流星。
願餐金光草,壽與天齊傾。
ところが安期生はで傳説の通りたちまち、姿は見えなくなり、向かい風が吹いてくると今度は手紙ではなく、天上の音楽を送ってきた。
安期生さがして首をのばして遠くを望んでみたが、それまで聞こえてきた天上の調が、流れ星が消えていくように聞こえてこなくなった。
わたしの願いは、安期生から神仙草をいただいて食べることであり、共に不老長寿となって生命は天とならび帰服することにあるのである。
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古風,五十九首の七 a-#1
客に鶴上の仙有り、飛飛として 太清を凌ぐ。
揚言す 碧雲の裏、自ら道う 安期の名。
両両 白玉の童、雙んで吹く 紫鸞の笙。
a-#2
去影 忽ち見えず、回風 天声を送る。
首を挙げて 遠く之を望めば、諷然として 流星の若し。
願わくは金光 草を餐し、寿 天と斉しく傾かん。
(異文): b-#1
五鶴西北來,飛飛凌太清。
仙人綠雲上,自道安期名。
兩兩白玉童,雙吹紫鸞笙。
B-#2
去影忽不見,回風送天聲。
我欲一問之,飄然若流星。
願餐金光草,壽與天齊傾。
b-#1
五鶴 西北より來り,飛飛として 太清を凌ぐ。
仙人 綠雲に上り,自ら道う 安期の名。
両両 白玉の童、雙んで吹く 紫鸞の笙。
b-#2
去影 忽ち見えず、回風 天声を送る。
我 一たび之を問わんと欲し,諷然として 流星の若し。
願わくは金光 草を餐し、寿 天と斉しく傾かん。
(異文): c-#1
客有鶴上仙,飛飛凌太清。
揚言碧雲裡,自道安期名。
兩兩白玉童,雙吹紫鸞笙。
c-#2
飄然下倒影,倏忽無留形。
遺我金光草,服之四體輕。
將隨赤松去,對博坐蓬瀛。
c-#1
客に鶴上の仙有り、飛飛として 太清を凌ぐ。
揚言す 碧雲の裏、自ら道う 安期の名。
両両 白玉の童、雙んで吹く 紫鸞の笙。
c-#2
飄然として 倒影下り、倏 忽ち留まる形無く。
我 金光 草を遺し、之を服して 四體輕し。
將て 赤松去るに隨わん,博に對し 蓬瀛に坐す。
『古風,五十九首之七』 現代語訳と訳註
(本文)
去影忽不見,回風送天聲。
舉首遠望之,飄然若流星。
願餐金光草,壽與天齊傾。
(下し文) a-#2
去影 忽ち見えず、回風 天声を送る。
首を挙げて 遠く之を望めば、諷然として 流星の若し。
願わくは金光 草を餐し、寿 天と斉しく傾かん。
(現代語訳)
(不老長寿の仙人の安期生にいただいた神仙草を食べ、不老長寿となって生命は天とならび帰服したという思いを詠う。)
ところが安期生はで傳説の通りたちまち、姿は見えなくなり、向かい風が吹いてくると今度は手紙ではなく、天上の音楽を送ってきた。
安期生さがして首をのばして遠くを望んでみたが、それまで聞こえてきた天上の調が、流れ星が消えていくように聞こえてこなくなった。
わたしの願いは、安期生から神仙草をいただいて食べることであり、共に不老長寿となって生命は天とならび帰服することにあるのである。
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(訳注)
古風,五十九首之七 a-#2
(不老長寿の仙人の安期生にいただいた神仙草を食べ、不老長寿となって生命は天とならび帰服したという思いを詠う。)
去影忽不見、囘風迭天聾。
ところが安期生はで傳説の通りたちまち、姿は見えなくなり、向かい風が吹いてくると今度は手紙ではなく、天上の音楽を送ってきた。
〇囘風 向かい風。上句の「去」の対語としての「囘」は帰ることで天からこちらへ送ってくれた調べとなる。回風はつむじ風。『楚辞、九章、囘風』「悲囘風之揺蕙兮,心冤結而内傷。 物有微而隕性兮、声有隠而先倡。 終長夜之曼曼兮、掩此哀而不去。 寧溘死而流亡兮、不忍此心之常愁。」の 「囘風」「聾有」に基づくものである。
○天声 天上の音楽。道教音楽・舞踏・建築・彫塑・文学芸術が全面的に発展した。南北朝の時代には、道観の建設に伴って、道像を彫塑して奉じるようになった。隋・唐の時代には、宮観建築芸術の発展に伴って、道教の彫塑・絵画芸術も盛んになった。唐の玄宗は全国の道観に老子像を造ることを命じ、敦煌の道教の壁画は今に至るまで伝わっている。唐の玄宗の作った道教音楽《霓裳羽衣曲》などは非常に高い芸術性を備えていた。唐代には道士や仙人を題材にした伝奇小説が書かれ、詩人は仙を求め、道を慕って詩を編み、道教文学というジャンルが成立した。道教の文学芸術が盛んになったことは道教の宗教性を少なからず向上させ、中国伝統の思想文化を道教の精神と融合させた。
拳首遠望之、諷然若流星。
安期生さがして首をのばして遠くを望んでみたが、それまで聞こえてきた天上の調が、流れ星が消えていくように聞こえてこなくなった。
○諷 そらんじる。天上の音楽のこと。
○然若 しかり・・・・ごとく
願餐金光草、壽興天斉傾。
わたしの願いは、安期生から神仙草をいただいて食べることであり、共に不老長寿となって生命は天とならび帰服することにあるのである。
○金光草 金明草ともいい、葉は芭蕉のようであり、花は正黄色、光を放っているという。神仙草。これを食べると長寿になるとされる。《廣異記》謝元卿東岳夫人の棲んでいた所にあったという。「叶如芭蕉,花光可以鑒。」曰:「此金光草也。食之化形靈,元寿与天齊。」
○斉 せい齊 ととのえる。ならべる。 ・さい齋つつしむ。神仏へのそなえもの。学問をするところ。(1) (程度や形が)よくそろった,ばらつきのない.(2) (あるべきものが)そろった,漏れのない
○傾 心を傾ける。帰服する。