李白 詠鄰女東窗海石榴
魯女東窗下,海榴世所稀。珊瑚映綠水,未足比光輝。
清香隨風發,落日好鳥歸。願為東南枝,低舉拂羅衣。
無由共攀折,引領望金扉。
(国一番の美女が隣に住んでいて、その窓下の椿の花を見て詠う。)
隣の家にいる魯女の住む部屋の東窓のもとに植えたツバキの花は世にもまれなものである。サンゴが東海の緑水に映えるも、いまだその花の光輝ある姿に比しがたいというものである。そして、この花の清香は、したがって発し、夕日が沈むころには、珍しい小鳥がその花に宿せんがために帰ってくる。我、願わくば、その木の東南の枝となり、低く挙がって、魯女が木のほとりに来た時には、おもむろに羅衣を払いたいと思うのである。何はともあれ、隣家ではあるものの、余人して、その枝を攀折することもできず、ただ首をのばして、その東隣の女の住んでいる部屋の金色の門扉を望むのみである。
302 《卷23-43詠鄰女東窗海石榴》Index-21Ⅱ― 16-741年開元二十九年41歳 <302> Ⅰ李白詩1590 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ6498
年: 開元二十九年
寫作時間: 741年
寫作年紀: 41歲
卷別: 卷一八三 文體: 五言古詩
詩題: 詠鄰女東窗海石榴
詠鄰女東窗海石榴
魯女東窗下,海榴世所稀。
珊瑚映綠水,未足比光輝。
清香隨風發,落日好鳥歸。
願為東南枝,低舉拂羅衣。
無由共攀折,引領望金扉。
(国一番の美女が隣に住んでいて、その窓下の椿の花を見て詠う。)
隣の家にいる魯女の住む部屋の東窓のもとに植えたツバキの花は世にもまれなものである。
サンゴが東海の緑水に映えるも、いまだその花の光輝ある姿に比しがたいというものである。
そして、この花の清香は、したがって発し、夕日が沈むころには、珍しい小鳥がその花に宿せんがために帰ってくる。
我、願わくば、その木の東南の枝となり、低く挙がって、魯女が木のほとりに来た時には、おもむろに羅衣を払いたいと思うのである。
何はともあれ、隣家ではあるものの、余人して、その枝を攀折することもできず、ただ首をのばして、その東隣の女の住んでいる部屋の金色の門扉を望むのみである。
(鄰女東窗の海石榴を詠ず)
魯女 東窗の下,海榴 世の稀なる所。
珊瑚 綠水に映じ,未だ光輝を比する足らず。
清香 風に隨って發し,落日 好鳥歸る。
願わくば 東南の枝と為り,低く舉って 羅衣を拂わん。
共に攀折する由無く,領を引いて 金扉を望む。
『詠鄰女東窗海石榴』 現代語訳と訳註解説
(本文)
詠鄰女東窗海石榴
魯女東窗下,海榴世所稀。
珊瑚映綠水,未足比光輝。
清香隨風發,落日好鳥歸。
願為東南枝,低舉拂羅衣。
無由共攀折,引領望金扉。
(下し文)
(鄰女東窗の海石榴を詠ず)
魯女 東窗の下,海榴 世の稀なる所。
珊瑚 綠水に映じ,未だ光輝を比する足らず。
清香 風に隨って發し,落日 好鳥歸る。
願わくば 東南の枝と為り,低く舉って 羅衣を拂わん。
共に攀折する由無く,領を引いて 金扉を望む。
(現代語訳)
(国一番の美女が隣に住んでいて、その窓下の椿の花を見て詠う。)
隣の家にいる魯女の住む部屋の東窓のもとに植えたツバキの花は世にもまれなものである。
サンゴが東海の緑水に映えるも、いまだその花の光輝ある姿に比しがたいというものである。
そして、この花の清香は、したがって発し、夕日が沈むころには、珍しい小鳥がその花に宿せんがために帰ってくる。
我、願わくば、その木の東南の枝となり、低く挙がって、魯女が木のほとりに来た時には、おもむろに羅衣を払いたいと思うのである。
何はともあれ、隣家ではあるものの、余人して、その枝を攀折することもできず、ただ首をのばして、その東隣の女の住んでいる部屋の金色の門扉を望むのみである。
(訳注)
詠鄰女東窗海石榴
(国一番の美女が隣に住んでいて、その窓下の椿の花を見て詠う。)
○鄰女東窗 『文選』巻19に載る「登徒子好色賦」に記されているよく知られた逸話で、美男として有名な中国の文人・宋玉が「自分は決して好色ではない、隣に住んでいた国一番の美女が牆(かき)からその姿を見せ、3年間のぞき込まれ誘惑され続けたが心を動かした事は一度も無かった、私のことを好色と称する登徒子(とうとし)こそ好色である」と王の前で反論した故事(宋玉東牆)を引いているもので、塀(墻・牆)からのぞき込んでいる姿をその故事中の美女に比しており、石燕はこれをもって「倩兮女」を多くの人を弄んだ淫婦の霊ではなかろうかと述べている。
○海石榴 ツバキ科ツバキ属の常緑樹の総称。
園芸品種が多く、庭木として重用される。
花は赤・白の他、桃色の品種もある。
果実は球形で、黒い種子からは椿油(つばきあぶら)をとる。
魯女東窗下,海榴世所稀。
隣の家にいる魯女の住む部屋の東窓のもとに植えたツバキの花は世にもまれなものである。
珊瑚映綠水,未足比光輝。
サンゴが東海の緑水に映えるも、いまだその花の光輝ある姿に比しがたいというものである。
○珊瑚映綠水 潘岳 《河陽庭前安石榴賦序》「似琉璃之棲鄧林,若珊瑚之映綠。」とある。
清香隨風發,落日好鳥歸。
そして、この花の清香は、したがって発し、夕日が沈むころには、珍しい小鳥がその花に宿せんがために帰ってくる。
○清香隨風發 《古詩十九首之五》「清商隨風發,中曲正徘徊。」(琴と笛の和調で澄んだ音調で秋のもの悲しい声調の曲が風にのってひびいてくるが、曲の中ほどで、正規の引きであったり、ためらいかけた音階であったりする。)に基づいている。
古詩十九首 (5) 漢詩<92>Ⅱ李白に影響を与えた詩524 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1389
願為東南枝,低舉拂羅衣。
我、願わくば、その木の東南の枝となり、低く挙がって、魯女が木のほとりに来た時には、おもむろに羅衣を払いたいと思うのである。
無由共攀折,引領望金扉。
何はともあれ、隣家ではあるものの、余人して、その枝を攀折することもできず、ただ首をのばして、その東隣の女の住んでいる部屋の金色の門扉を望むのみである。
○引領望金扉 《文選‧王延壽<魯靈光殿賦>》「遂排金扉而北入,
宵藹藹而晻曖。」
張銑注:扉門扉也。