望廬山瀑布水二首 其一#2とまとめ 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -228
望廬山瀑布水二首 其一
#1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
而我樂名山。對之心益閑。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
仙人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る。
且諧宿所好。永愿辭人間。』
これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。
西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として飛電(ひでん)の 来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の 起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く 河漢(かかん)の 落ちて、半(なか)ば 雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。
仰ぎ観(み)れば 勢い転(うた)た 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉 造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう) 吹けども断(た)たず、江月(こうげつ) 照らすも還(ま)た 空(くう)なり。』
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう) 青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ) 軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ) 穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。
而(しこう)して 我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ 瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは得たり 塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは諧(かなう) 宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う 人間(じんかん)を辞する を。
望廬山瀑布水二首 其一 #2 現代語訳と訳註
(本文)#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』
(下し文)
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう) 青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ) 軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ) 穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。
而(しこう)して 我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ 瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは得たり 塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは諧(かなう) 宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う 人間(じんかん)を辞する を。
(現代語訳)
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。
仙人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る。
これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。
(訳注)
空中亂潀射。左右洗青壁。
水のかたまりがどっと流れ落る、空中でぶつかり、いりみだれ、打ち合っている、そして左右に砕けて、青苔のむす岩壁に降りかかり洗う。
○潀 水があつまること。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
とびちる水玉はうすい霞にかわってゆく、水泡まじりのながれは大岩の中から沸騰して湧き出ているようだ。
○穹 大岩。
而我樂名山。對之心益閑。
これほどの景色の中でわたしは名山をこころから楽しむことができる、山とむかいあっていると心が落ち着きのびのびするのである。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
仙人の玉の薬液で口をそそいるのではない、ここにある滝のしぶき、水で俗世界の塵にまみれた顔を洗うことが出来る。
○護 仙人の薬。○塵頗 俗讐まみれた顔。
且諧宿所好。永愿辭人間。』
これはともかく、自分の元から一番気に入った場所なのだ。永久に人のすむ世界にわかれをつげ隠遁したいと思うのだ。
○諧 1 調和する。やわらぐ。「諧声・諧調・諧和/和諧」 2 冗談。ユーモア。「諧謔(かいぎゃく)/俳諧」 [名のり]なリ・ゆき。3.気に入る。○愿 つつしむ。ひかえる。隠遁する意味に使う。○人間 俗人のすむ世界。
まとめ
望廬山瀑布水二首 其一
#1
西登香爐峰。南見瀑布水。』
挂流三百丈。噴壑數十里。
欻如飛電來。隱若白虹起。
初驚河漢落。半洒云天里。』
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
#2
空中亂潀射。左右洗青壁。
飛珠散輕霞。流沫沸穹石。』
而我樂名山。對之心益閑。
無論漱瓊液。且得洗塵顏。
且諧宿所好。永愿辭人間。』
(一般下し文)
西のかた香炉峰(こうろほう)に登り、南のかた瀑布(ばくふ)の水を見る。』
流れを掛くること三百丈、壑(たに)に噴(ふ)くこと数十里。
歘(くつ)として 飛電(ひでん)の 来(きた)るが如く、隠(いん)として白虹(はくこう)の 起(た)つが若(ごと)し。
初めは驚く 河漢(かかん)の 落ちて、半(なかば) 雲天(うんてん)の裏(うち)より灑(そそ)ぐかと。』
仰ぎ観(み)れば 勢い転(うたた) 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉 造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう) 吹けども断(た)たず、江月(こうげつ) 照らすも還(また) 空(くう)なり。』
#2
空中に乱れて潨射(そうせき)し、左右(さゆう) 青壁(せいへき)を洗う。
飛珠(ひしゅ) 軽霞(けいか)を散じ、流沫(りゅうまつ) 穹石(きゅうせき)に沸(わ)く。』
而(しこう)して 我(われ)は名山を楽しみ、之に対して心益々閑(のびやか)なり。
論ずる無かれ 瓊液(けいえき)に漱(すす)ぐを、且つは 得 たり 塵顔(じんがん)を洗う を。
且つは 諧(かなう) 宿(もとよ)り好む所、永(ひさし)く願う 人間(じんかん)を辞する を。』
(現代語下し文)廬山の瀑布を望む 二首其の一
西のかた 香炉峰に登ると、南に瀧の落ちるのが見える。』
岸壁にかかる高さは三百丈、谷間のしぶきは数十里にわたる。
稲妻のように落ちるかと思えば、朦朧として白い虹が立つようだ。
はじめは 銀河が落ちるかと驚き、雲海から注ぐかと息をのむ。』
仰ぎ見れば 勢いはますます強く、大自然の壮大な力に圧倒される。
海からの風にも 吹きちぎられることはなく、江上の月の光は なすところなく照っている。』
水は乱れて 空中でぶつかり合い、苔むすあたりの岩肌を洗う。
飛び散る水は 軽やかな霞となって広がり、流れる飛沫は 岩にあたって舞いあがる。』
かくて私は 名山に遊び、山と向かい合って 心はますますのどかである。
清らかな水で 口を漱ぐのは当然のこと、俗塵にまみれた顔を 洗うこともできるのだ。
かねてからの私の好みに合っているところだ、俗世から辞してつつましくすることが 永い間の願いであるからだ。』
(解説)
この詩は瀧に注目し、瀧の雄大さを長江の雄大さを交えて描いている。「河漢」(銀河)が落ちるかと驚き、「雲天」(雲海)から注ぐか、と、非常に斬新な表現であらわしている。
瀧は自然の壮大な力の象徴としてさらに細かく描写し、流れ落ちる瀧の水は空中でぶつかり合い、飛沫となって舞い上がる。李白詩の強烈な表現力は、この次に集約される。
仰觀勢轉雄。壯哉造化功。
海風吹不斷。江月照還空。』
仰ぎ観(み)れば 勢い転(うたた) 雄(ゆう)なり、壮(さかん)なる哉 造化(ぞうか)の功(こう)。
海風(かいふう) 吹けども断(た)たず、江月(こうげつ) 照らすも還(また) 空(くう)なり。』
天を仰ぎ見てみると、見れば見るほど勢いは雄大である。なんとすばらしいものだろう、天の造化のたくみには感心させられる。
はるばると海辺から風がたえまなく吹きよせてくる。
この雄大な長江を照らした月のひかりは、水に反射してその光を大空にかえしている。』
「江月照還空」「飛珠散輕霞。流沫沸穹石。」李白ならではの感覚である。
安禄山の叛乱軍が各地で好き勝手なことをしていても、李白一人でできることは、叛乱軍に捕まらないことであった。「謫仙人」と都での有名人であったため、下手な動きはできなかった。李白の知っている武将たちも次々と叛乱軍に降伏していた時期である。
名山をこよなく愛した李白の感想は、山と向かい「心益々閑」となった李白は、清らかな水で口をすすぎ、俗世の塵にまみれた顔を洗い清め、「人間を辞」し、隠遁したいと願うのである。
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