古風 其三十七 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白177
宮廷に入り一年が過ぎ、政事の現実がどのようなものであるか何もかもすぐに分かった李白、うかつに発言できないもどかしさ、それは日に日に増していくのであった。李白は宮廷詩人として、芸人のような接遇、李白の矜持はボロボロにされていくのである。しかも、その思いは天子に全く伝わらないのである。
古来、慟哭し、号泣すれば、天は答えてくれた。しかし、今はどうなっているのだ。袖も、着物もぐっしょりと濡れるほどに泣くのに何の返事もないのだ。これまで飲んだ酒は涙につながるお酒はなかった。しかし、今は、なんなのだ。どうすればいいのだ。李白の胸の内を詠いあげている「古風其の三十七」と「古風其の三十九」である。
古風 其三十七
其三十七
燕臣昔慟哭。 五月飛秋霜。
戦国時代の燕の鄒衍は、燕の恵王に忠誠を尽くしたが讒言のため捕えられた。鄒衍は天を仰いで慟哭したところ、天もその誠心に感じ、夏五月にかかわらず、秋の霜を降らせ風に飛んだ。
庶女號蒼天。 震風擊齊堂。
また、斉の娘が嫁して寡婦となったが、無実の罪を着せられたため、悲しみのため天に向かって号泣したところ、天が感じて雷を起こし、そのため斉の景公の高殿に雷撃があった、景公も傷ついたのだ。
精誠有所感。 造化為悲傷。
つまり、天を感じさせる誠さえあれば、天も悲しんでくれるものだ」。誠実に生きることがたいせつだ、自分も誠実に生きてきた。姦物どもの非難・中傷はあろうが、天も知って悲しんでくれるであろうというのがそれである。
而我竟何辜。 遠身金殿旁。
ところで、「誠実に生きた自分には何の罪があるのか、天子のおられる金堂殿から遠ざけられてしまった」。
浮云蔽紫闥。 白日難回光。
陰険な者たちにより、この朝廷は暗闇のように被われている。真昼の太陽の輝きが照らすことさえ難しくなっている。それほど正当なことが天子に届かないものになっているのだ。
群沙穢明珠。 眾草凌孤芳。
思えは宮中には誠実ならざる姦物が多くけがれてしまっている。こうした何の考えのしないただの草の集まりみたいな朝廷の現状を嘆き、なさけなくなるのだ。
古來共嘆息。 流淚空沾裳。
それは昔から嘆かわしいことはおなじようにあった。これを思うと、ただ涙が流れて着物をぬらせてしまう。
戦国時代の燕の鄒衍は、燕の恵王に忠誠を尽くしたが讒言のため捕えられた。鄒衍は天を仰いで慟哭したところ、天もその誠心に感じ、夏五月にかかわらず、秋の霜を降らせ風に飛んだ。
また、斉の娘が嫁して寡婦となったが、無実の罪を着せられたため、悲しみのため天に向かって号泣したところ、天が感じて雷を起こし、そのため斉の景公の高殿に雷撃があった、景公も傷ついたのだ。
つまり、天を感じさせる誠さえあれば、天も悲しんでくれるものだ」。誠実に生きることがたいせつだ、自分も誠実に生きてきた。姦物どもの非難・中傷はあろうが、天も知って悲しんでくれるであろうというのがそれである。
ところで、「誠実に生きた自分には何の罪があるのか、天子のおられる金堂殿から遠ざけられてしまった」。
陰険な者たちにより、この朝廷は暗闇のように被われている。真昼の太陽の輝きが照らすことさえ難しくなっている。それほど正当なことが天子に届かないものになっているのだ。
思えは宮中には誠実ならざる姦物が多くけがれてしまっている。こうした何の考えのしないただの草の集まりみたいな朝廷の現状を嘆き、なさけなくなるのだ。
それは昔から嘆かわしいことはおなじようにあった。これを思うと、ただ涙が流れて着物をぬらせてしまう。
燕臣 昔 慟哭す。 五月にして 秋霜飛ぶ。
庶女 蒼天 號。 震風 齊堂を擊つ。
精誠 感ずる所有り。 造化 悲傷を為す。
而我 竟に何んぞ辜す。 遠身 金殿の旁。
浮云 紫闥を蔽う。 白日 光 回り難し。
群沙 明珠を穢れ。 眾草 孤芳 凌す。
古來 共に嘆息す。 流淚 沾裳 空し。
燕臣昔慟哭。 五月飛秋霜。
戦国時代の燕の鄒衍は、燕の恵王に忠誠を尽くしたが讒言のため捕えられた。鄒衍は天を仰いで慟哭したところ、天もその誠心に感じ、夏五月にかかわらず、秋の霜を降らせ風に飛んだ。
○燕臣 鄒衍(前305-前240)天地万物は陰陽二つの性質を持ち、その消長によって変化する(日・春・南・男などが陽、月・秋・夜・女・北などが陰)とする陰陽説と、万物組成の元素を土・木・金・火・水とする五行説とをまとめ、自然現象から世の中の動き、男女の仲まであらゆることをこの陰陽五行説によって説明。彼の説は占いや呪術とも結びついて後世に多大な影響を与えた。どれほど影響があるかは「陽気」「陰気」という言葉や、曜日の名前を思い浮かべればすぐわかる。○飛秋霜 秋に降りる霜が降り、風に飛んだ。
庶女號蒼天。 震風擊齊堂。
また、斉の娘が嫁して寡婦となったが、無実の罪を着せられたため、悲しみのため天に向かって号泣したところ、天が感じて雷を起こし、そのため斉の景公の高殿に雷撃があった、景公も傷ついたのだ。
○庶女 斉の娘が嫁して寡婦となったが、無実の罪を着せられた。
精誠有所感。 造化為悲傷。
つまり、天を感じさせる誠さえあれば、天も悲しんでくれるものだ」。誠実に生きることがたいせつだ、自分も誠実に生きてきた。姦物どもの非難・中傷はあろうが、天も知って悲しんでくれるであろうというのがそれである。
而我竟何辜。 遠身金殿旁。
ところで、「誠実に生きている自分には何の罪があるのか、天子のおられる金堂殿から遠ざけられてしまうのだ」。
浮云蔽紫闥。 白日難回光。
陰険な者たちにより、この朝廷は暗闇のように被われている。真昼の太陽の輝きが照らすことさえ難しくなっている。それほど正当なことが天子に届かないものになっているのだ。
群沙穢明珠。 眾草凌孤芳。
思えは宮中には誠実ならざる姦物が多くけがれてしまっている。こうした何の考えのしないただの草の集まりみたいな朝廷の現状を嘆き、なさけなくなるのだ。
○群沙 ただ集まっている砂。誠実ならざる姦物が多い ○穢 けがれている。荒れ果てる。
古來共嘆息。 流淚空沾裳。
それは昔から嘆かわしいことはおなじようにあった。これを思うと、ただ涙が流れて着物をぬらせてしまう。
○韻 霜、堂、傷、傍、光、芳、裳。
この涙は、李林甫の横暴、加えて宦官たちの陰険・陰謀、正論が上に全く上がらない朝廷の現状を嘆く悲しみの涙であり、思う仕事を何一つさせてもらえない無念の涙、こんなところに長居はできないとおもったにちがいない。