送内尋廬山女道士李騰空二首 其一 李白 Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -230
金陵から江をさかのぼって廬山に入り、五老峰の下の屏風畳にしばらく隠棲することにした。
756年至徳元年五十六歳のときである。安禄山が天下を二分してしまった危機を打開したいとは思うが、いまはなにもできない。まずは屏風畳に隠れ住むよりしかたがないと李白は考え、廬山の諸名勝を眺めながら、世俗を超越して無心に塵山の自然に融けこんだ。ここで生涯を送ろうと考えたのである。(「贈王判官、時余帰隠居廬山屏風畳」(王判官に贈る。時に余は帰隠して廬山の屏風畳に居る)廬山を詠んだ詩は多いが、そのすべてがこのとき詠んだかどうかは明らかではない。廬山の名勝の瀑布を望む詩「廬山の瀑布を望む」二首があるが、若き時代、蜀より長江を下ってここを過ぎたとき立ち寄ったとも考えられるが、746年の作として掲載した。
望廬山瀑布 二首其二
日照香炉生紫煙、遥看瀑布挂前川。
飛流直下三千尺、疑是銀河落九天。
李白は、廬山屏風畳には妻宗氏と棲んでいた。宗氏は李白の三人目の妻で、魏顥の『李翰林集』序に、「終に宗に娶る」とあるの。梁園にいるとき結婚した妻である。この妻が廬山の女道士李騰空(宰相李林甫の娘)を尋ねるのを送った「内の廬山の女道士 李騰空を尋ぬる を送る」二首がある。李騰空は屏風畳の辺に住んでいた。
この詩は李白が屏風畳に行く前らしく、妻のほうが先に行って、李白があとから行ったものである。夫婦二人でしばらく鷹山に住んでいたのだ。
送内尋廬山女道士李騰空二首 其一
君尋騰空子 応到碧山家。
君が 女道士の騰空子を尋ねてゆこうとしている、そこには間違いなく仙界の緑あふれた家に到るだろうとおもう。
水舂雲母碓 風掃石楠花。
そこの景色は、水車がまわり臼で雲母を搗く音が絶え間なく聞こえている、春風が石楠花の花を揺らせ、のどかな様子だろう。
若恋幽居好 相邀弄紫霞。
もしそのまま静かで奥深い趣のある生活をしたいなら、彼女は共に朝の光に照らされて紫色に映え霞をあつめ、万物を細やかに大切にする生活ができると大歓迎してくれるだろう。
内の廬山の女道士 李騰空を尋ぬる を送る 二首其の一
君は尋ぬ 騰空子(とうくうし)、応(まさ)に碧山(へきざん)の家に到るべし。
水は舂(うすづ)く 雲母(うんも)の碓(うす)、風は掃(はら)う 石楠(せきなん)の花。
若(も)し幽居(ゆうきょ)の好(よ)さを恋わば、相邀(あいむか)えて紫霞(しか)を弄(ろう)せん。
送内尋廬山女道士李騰空二首 其一 現代語訳と訳註
(本文)
君尋騰空子 応到碧山家。
水舂雲母碓 風掃石楠花。
若恋幽居好 相邀弄紫霞。
(下し文)
内の廬山の女道士 李騰空を尋ぬる を送る 二首其の一
君は尋ぬ 騰空子(とうくうし)、応(まさ)に碧山(へきざん)の家に到るべし。
水は舂(うすつ)く 雲母(うんも)の碓(うす)、風は掃(はら)う 石楠(せきなん)の花。
若(も)し幽居(ゆうきょ)の好(よ)さを恋わば、相邀(あいむか)えて紫霞(しか)を弄(ろう)せん。
(現代語下し文)
君が 騰空子を尋ねてゆくなら、たぶん緑の山中の家に到るだろう
水車の臼で雲母を搗き、風が石楠花の花を散らす
もし静かで奥深い生活を恋(した)いなら、迎えて共に紫霞などとあそぶだろう。
(現代語訳)
君が 女道士の騰空子を尋ねてゆこうとしている、そこには間違いなく仙界の緑あふれた家に到るだろうとおもう。
そこの景色は、水車がまわり臼で雲母を搗く音が絶え間なく聞こえている、春風が石楠花の花を揺らせ、のどかな様子だろう。
もしそのまま静かで奥深い趣のある生活をしたいなら、彼女は共に朝の光に照らされて紫色に映え霞をあつめ、万物を細やかに大切にする生活ができると大歓迎してくれるだろう。
(訳注)
君尋騰空子 応到碧山家。
君が 女道士の騰空子を尋ねてゆこうとしている、そこには間違いなく仙界の緑あふれた家に到るだろうとおもう。
○騰空子 752年まで宰相をしていた李林甫二人の娘の内の一人、李騰空。女道士道士で、屏風畳の辺に住んでいた。歿直前から権威は奈落に落ち、死後も鄭重には扱われなかった。娘としては肩身の狭い生活を送っていた。 ○碧山家 緑豊かな山の中の家であるが、李白は憧れを込めて、仙人の里という意味で「碧」を使っている。
水舂雲母碓 風掃石楠花。
そこの景色は、水車がまわり臼で雲母を搗く音が絶え間なく聞こえている、春風が石楠花の花を揺らせ、のどかな様子だろう。
○舂 うすづ・く 臼、搗くとおなじ。○雲母 道教に欠かせない金丹を作る原材料の一つ。 ○風掃石楠花 シャクナゲ(石南花)は、ツツジ科日本ではその多くのものがツツジと称される。低木花の総称である。低い位置で咲き誇っている、つつじを思い浮かべると、いっぱいに咲いている花を風が散らしたら趣は半減する。春ののどかな風が花びらを揺らせていくと見たほうが味わいが深い。
若恋幽居好 相邀弄紫霞。
もしそのまま静かで奥深い趣のある生活をしたいなら、彼女は共に朝の光に照らされて紫色に映え霞をあつめ、万物を細やかに大切にする生活ができると大歓迎してくれるだろう。
○若恋 もし~をしたいなら。○幽居 奥まった静かなたたずまいを言う。竹林の奥の方。○好 趣向 ○弄 女同士繊細なものに目を向け万物を愛する気持ちで取り扱うこと。○紫霞 朝の光に照らされて紫色に映えて見えるもやのこと。道教では万物はすべて塵の様なものの集まりである。特に朝の紫霞を集めると不老長寿の薬になるといわれている。
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