秋浦歌十七首 注目すべき秋浦の歌
李白が秋浦を歌うなかで、人生二度目の転換期、自分の人生について深く顧みている詩集である。
秋浦歌十七首 其十一 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集-255/350
秋浦歌十七首其十一
邏人橫鳥道、江祖出魚梁。
水急客舟疾、山花拂面香。
秋浦の歌十七首 其の十一
邏人(らじん) 鳥道(ちょうどう)に横たわり、
江祖(こうそ) 魚梁(ぎょりょう)に出(い)ず。
水急にして客舟(かくしゅう)疾(はや)く、
山花(さんか) 面(おもて)を払って香(かんば)し。
秋浦歌十七首 其十一 現代語訳と訳註
(本文) 其十一
邏人橫鳥道、江祖出魚梁。
水急客舟疾、山花拂面香。
(下し文) 其の十一
邏人(らじん) 鳥道(ちょうどう)に横たわり、江祖(こうそ) 魚梁(ぎょりょう)に出(い)ず。
水急にして客舟(かくしゅう)疾(はや)く、山花(さんか) 面(おもて)を払って香(かんば)し。
(現代語訳)
叛乱軍の憲兵は鳥道と呼ばれるようなところまで検門している。雄々しく流れる長江にヤナ猟のように出没して検問している。
水の流れの急なうちに旅人は船を疾風のように走らせるのだ。憲兵たちは山椒の様なものを顔に付け香を放っていた。
(訳注)
邏人橫鳥道、江祖出魚梁。
叛乱軍の憲兵は鳥道と呼ばれるようなところまで検門している。雄々しく流れる長江にヤナ猟のように出没して検問している。
○邏人(らじん) 安禄山の叛乱軍の憲兵・邏 見まわる。巡察する。「邏卒/警邏・巡邏 羅叉とする訳本がある「人」が「叉」の写し間違いだという、そして無理やり羅叉石としている。それは間違い。○鳥道 大空の鳥のとぶ道。○魚梁 やな。川で魚をとる仕掛け。川での検問。反乱軍の検問は盗賊のような検問だったという。
水急客舟疾、山花拂面香。
水の流れの急なうちに旅人は船を疾風のように走らせるのだ。憲兵たちは山椒の様なものを顔に付け香を放っていた。
○山花 木の実の山椒のこと。刺激臭のある木の実を指すから、やはり元来中国語の輸入されたもの。昔の日本人もまさか山椒魚が魚で無い事はわかっていた
ここまでの秋浦の歌其五から其十一 五言古詩として見ていくと物語性が出てくる。
秋浦多白猿。超騰若飛雪。
牽引條上兒。飲弄水中月。」
愁作秋浦客。強看秋浦花。
山川如剡縣。風日似長沙。」
醉上山公馬。寒歌寧戚牛。
空吟白石爛。淚滿黑貂裘。」
秋浦千重嶺。水車嶺最奇。
天傾欲墮石。水拂寄生枝。」
江祖一片石。青天掃畫屏。
題詩留萬古。綠字錦苔生。」
千千石楠樹。萬萬女貞林。
山山白鷺滿。澗澗白猿吟。
君莫向秋浦。猿聲碎客心。」
邏人橫鳥道。江祖出魚梁。
水急客舟疾。山花拂面香。」
#5
秋浦のこんなところ伝説の盗賊白猿みたいなものが多くいる、突然大暴れをして略奪していく、それは雪が舞っているかのように襲っているのだ。
木の枝の上から子猿を引っぱるように、女こともを連れ去っていく、持って行った酒を喰らって、月影に美女相手にしてじゃれついている。ひどい秋になったものだ。
#6
国の危機に対して愁をいだきながら旅人となって秋浦に来た、そこに尋ねてきてくれた人がいる。二人は話し合い秋浦の花を見たのである。
山と川のように立ち上がり行動する、隠遁していた剡県地方から立ち上がった謝霊運、王羲之。風と日の光のように悔しい思いを胸に秘めて命を絶った屈原の長沙での生き方を選ぶべきなのか。どちらにするか思案している。
#7
酔った時には、山簡のように馬に乗ってふざけてみるのは賢人であることを示している。寒い時には、甯戚のように、牛の角をたたいて貧乏をうたうと名君が見出してくれるかもしれない。
しかし、「白い石があざやかなりー」と歌ってみても、自分を用いてくれる度量の君王がいない。蘇秦のようにボロボロになった黒貂の皮ごろもに、涙がいっぱいになる。
#8
秋浦にきてからはるかに連なる峰の道よりいろんな異民族の部隊が出た。水軍と兵車を要した永王の軍が最も期待されるのだ。
天下はこのため不穏になり、王朝も転覆させようとして反乱を起こし、唐王朝は傾いた。永王の軍でもって、天下を揺るがす叛乱軍を追っ払っていくのだ。
#9
その石は大空に届くかのように大きな画屏風のようであっても、長江の流れは昔も今も大きな河川として流れていることは天の理であり、変わることのないものだ、どんなにりっぱな人格者といわれても一片の石は石なのだ。
石に詩をかきつけて万古に留めようとするのだが、字が緑色になり錦の苔が生えてしまう。
(ここで其七の「醉上山公馬、寒歌甯戚牛。 空吟白石爛、淚滿黑貂裘。」
とつながってくるのである。山公のように普段は飲んだくれていてもここはやるときなのだ)
派手な色をした千本のシャクナゲが植えられてそれが千か所続いている。地味だが守り抜く万本のネズミモチの木が植えられ、それが万か所続いているという。
#10
山は連綿と続き白鷺があふれている、谷という谷にまでここ秋浦には安禄山叛乱軍の異民族の兵士の白猿が民謡を吟じているのだ。
永王の君はこの秋浦に向かってきてはいけない、野蛮な猿がせっかくの旅心を砕いてしまうことだろう。
叛乱軍の憲兵は鳥道と呼ばれるようなところまで検門している。雄々しく流れる長江に箭な量のように出没して検問している。
水の流れの急なうちに旅人は船を疾風のように走らせるのだ。憲兵たちは山椒の様なものを顔に付け香を放っていた。
#11
叛乱軍の憲兵は鳥道と呼ばれるようなところまで検門している。雄々しく流れる長江にヤナ猟のように出没して検問している。
水の流れの急なうちに旅人は船を疾風のように走らせるのだ。憲兵たちは山椒の様なものを顔に付け香を放っていた。
秋浦の歌 其十二につづく。