秋浦歌十七首 注目すべき秋浦の歌
李白が秋浦を歌うなかで、人生二度目の転換期、自分の人生について深く顧みている詩集である。
秋浦歌十七首 其十二 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集 -256/350
秋浦歌十七首其十二
水如一匹練。此地即平天。
耐可乘明月。看花上酒船。
秋浦の歌十七首 其の十二
水は一匹の練(れん)の如し、
此の地 即ち 平天(へいてん)なり。
耐(よ)く 明月に乗じて、
花を看るには 酒船(しゅせん)に上る可し。
秋浦歌十七首 其十二 現代語訳と訳註
(本文) 其十二
水如一匹練。 此地即平天。
耐可乘明月。 看花上酒船。
(下し文) 其の十二
水は一匹の練(れん)の如し、此の地 即ち 平天(へいてん)なり。
耐(よ)く 明月に乗じて、花を看るには 酒船(しゅせん)に上る可し。
(現代語訳)
永王軍により、蜀からこの地、すなわち平天湖あたりまで平定されたので、長江は、ゆっくりとはるか遠くまで流れゆく水面一疋の練り絹のように穏やかである。
戦いを進めて長安奪還するには今夜の明月にのっていくことべきであろう、そうすれば花のさくころには都で花見ができるだろう、そして攻め入った戦艦は酒の宴の船になることだろう。
(訳注)
水如一匹練。 此地即平天。
永王軍により、蜀からこの地、すなわち平天湖あたりまで平定されたので、長江は、ゆっくりとはるか遠くまで流れゆく水面一疋の練り絹のように穏やかである。
○疋 織物二反を単位として数えることば。○練 ねりぎぬ。灰汁などで煮てやわらかくした絹。白く光沢がある。○平天 天に平らかに連なっているという意味と、平天湖という湖をしめす。この湖は池州の西南3kmほどのところにあり、斉山の麓にあって清渓に通じていたのではないだろうか。
耐可乘明月。 看花上酒船。
戦いを進めて長安奪還するには今夜の明月にのっていくことべきであろう、そうすれば花のさくころには都で花見ができるだろう、そして攻め入った戦艦は酒の宴の船になることだろう。
○耐可 当時の口語。「能可」「寧可」とおなじ。むしろ……すべし。長江に映る明月にのる、つまり船団に乗り込み攻め入ったらよいのではないか。長江の支配権は永王銀が抑えたのだ夏から秋にかけ、安禄山討伐の募集をかけて集結してきた諸侯により、数万の軍団になったのである。
(解説)
長江にあった叛乱軍を詩題に追い詰め、蜀から金陵あたりまで、永王軍が一気に抑えた。実際には、玄宗皇帝が長江中流域の荊州、江陵から金陵付近の潘鎮諸公が永王軍に集結して恭順をあらわしたため闘う前で、平定されていったのである。
粛宗は北の霊武から南下して長安洛陽を奪還する。永王は水路、蜀から東征し、金陵から北上して運河を都まで攻め入ること、この作戦を詩にしたものではないだろうか。李白は、この詩の段階ではまだ永王軍に参加しているわけではないので、漠然とした様子を詠ったのである。
通常の解釈
川の水はちょうど一疋のねりぎぬのように、良くのびて、白く光っている。ここは天に平らかに連なっている。
いっそのこと、明月にのぼって、花をながめ酒の船にのりたいものだ。
(多くの本、WEBでも大方上のような解釈である、これは大きなパズルの一個を取り出して、そのなかにあがかれているものだけを見ているから、意味不明になる。この秋浦の歌十七首、こじつけか意味不明の解釈ばかりである。)