秋浦歌十七首 其十四 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集 258/350
安禄山の叛乱に対し、冬にかけて洛陽に攻め上ろうということを詠ったものである。表向きの意味は、村の銅の精練作業とだぶらせている。
秋浦歌十七首其十四
爐火照天地。紅星亂紫煙。
赧郎明月夜。歌曲動寒川。
秋浦の歌十七首 其の十四
炉火(ろか) 天地を照らし、紅星(こうせい) 紫烟(しえん)を乱す。
赧郎(たんろう) 明月の夜、歌曲(かきょく) 寒川(かんせん)を動かす。
秋浦歌十七首 其十四現代語訳と訳註
(本文) 其十四
爐火照天地。 紅星亂紫煙。
赧郎明月夜。 歌曲動寒川。
(下し文) 其の十四
炉火(ろか) 天地を照らし、紅星(こうせい) 紫烟(しえん)を乱す。
赧郎(たんろう) 明月の夜、歌曲(かきょく) 寒川(かんせん)を動かす。
(現代語訳)
都や各地で烽火が夜空を焦がした、ここ秋浦の街では精錬所の溶鉱炉が赤々と燃える。大空に火星が不思議なきらめきを示し不吉な予感である。しばらくしたら安禄山が反乱を起こし、しばらくして天子の宮殿を攻め落としたそうだとわかった。
安禄山は洛陽で滅んだ周の赧王のようにまもなく滅びる運命をもっている、永王軍に参加した心配しおそれ顔の男が月に明るく照らされる静かな夜だ。ここに集結した永王水軍の兵たちは戦に向かう歌を唄って、凍えそうな川を進んでいく。
(訳注)其十四
爐火照天地。 紅星亂紫煙。
都や各地で烽火が夜空を焦がした、ここ秋浦の街では精錬所の溶鉱炉が赤々と燃える。大空に火星が不思議なきらめきを示し不吉な予感である。安禄山が反乱を起こし、しばらくして天子の宮殿を攻め落としたそうだとわかった。
○炉火 秋浦は唐代には銀と銅の産地であった。それらの原鉱をとかす熔鉱炉の火。ということと、都や各地で烽火があがること挿す。○紅星 五行思想では火星を示し、熒惑守心(熒惑心を守る)といい、不吉の前兆とされた。「心」とは、アンタレスが所属する星官(中国の星座)心宿のこと。
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五色 | 青(緑) | 紅 | 黄 | 白 | 玄(黒) |
五方 | 東 | 南 | 中 | 西 | 北 |
五時 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
五節句 | 人日 | 上巳 | 端午 | 七夕 | 重陽 |
五星 | 歳星(木星) | 螢惑(火星) | 填星(土星) | 太白(金星) | 辰星(水星) |
宣城のことを紅星と表現したとも考えられる。そうすると秋浦の近くで烽火があり夜空を焦がしてもおかしくない。○紫煙 天子の宮殿の厳かな香による霞。天子の宮殿。
赧郎明月夜。 歌曲動寒川。
安禄山は洛陽で滅んだ周の赧王のようにまもなく滅びる運命をもっている、永王軍に参加した心配しおそれ顔の男が月に明るく照らされる静かな夜だ。ここに集結した永王水軍の兵たちは戦に向かう歌を唄って、凍えそうな川を進んでいく。
○赧郎 心配し畏れながらの表情を顔に浮かべる男。 ・赧 心配しおそれる。赧は周朝の第37代の王最後の王を示し、洛陽で最後の王であった。
赧王(たんおう)は、周朝の第37代の王最後の王。慎靚王の子。在位期間は59年であり、周朝における最長在位の君主であった。在位中は周王室の影響力はわずかに王畿(現在の洛陽附近)に限定されるようになっていた。李白はこのことを「安禄山畏れるに足らず」とかんがえた。
愚訳(この訳では語句の働きが全くないこのような詩は子供の時でもない。物語性もない。)
炉の焔は 天地を焦がし
煙のなかで 火花がはじける
明月の夜に 火に照らされる男たち
その歌声が 冷たい川に轟きわたる
其十四
爐火照天地。 紅星亂紫煙。
赧郎明月夜。 歌曲動寒川。
解説
通常の解釈をしたのでは、面白くもなんともない愚作になってしまう。李白が、この秋浦の歌の時だけ、普通の歌人のようになってしまったのだろうか。20年も若い時の詩と同次元の解釈をしたのではおかしい。李白が永王鄰の幕下に入るまでの約2年杭州から九江、廬山の間を行き来している。756年12月永王軍に参加しているその間安全な連絡方法はこの秋浦の歌であるとしたら非常に興味深い詩がたくさん出てくる。このブログはその可能性を追求している。通常、李白の詩の中での秋浦の歌十七首は其十五の「白髪三千丈」とつけた詩みたいに其一、其二が紹介される程度である。其四から其十四までは、関連性が尻切れトンボのように解釈され、ぐさくあつかいがほとんだている。この詩は全体を756年の秋に作ったものか、加筆をされたものである。十三、十四は驚くような意味に展開したのである。
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