秋浦歌十七首 注目すべき秋浦の歌
李白が秋浦を歌うなかで、人生二度目の転換期、自分の人生について深く顧みている詩集である。
秋浦歌十七首 其四 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集248/350
秋浦歌十七首其四
兩鬢入秋浦。 一朝颯已衰。
安禄山が乱を起こしてから秋浦に来きたが、洛陽、長安の二つの都が敵の手に落ち私の左右の鬢も一度にさっと衰えたのだ。
猿聲催白發。 長短盡成絲。
猿の哀しい啼き声は悲愴感漂うように、安禄山に寝返った諸公達も煩く鳴いて、わたしの白髪は増え、髪はことごとく糸のように細くなる。このまま安禄山の天下になってしまうのか
両鬢(りょうびん) 秋浦に入りて、一朝(いっちょう) 颯(さつ)として已(すで)に衰う。
猿声(えんせい) 白髪(はくはつ)を催(うなが)し、長短(ちょうたん) 尽(ことごと)く糸と成る。
現代語訳と訳註
(本文) 秋浦歌十七首 其四
兩鬢入秋浦。 一朝颯已衰。
猿聲催白發。 長短盡成絲。
(下し文) 秋浦の歌 十七首 其の四
両鬢(りょうびん) 秋浦に入りて、一朝(いっちょう) 颯(さつ)として已(すで)に衰う。
猿声(えんせい) 白髪(はくはつ)を催(うなが)し、長短(ちょうたん) 尽(ことごと)く糸と成る。
(現代語訳)
安禄山が乱を起こしてから秋浦に来きたが、洛陽、長安の二つの都が敵の手に落ち私の左右の鬢も一度にさっと衰えたのだ。
猿の哀しい啼き声は悲愴感漂うように、安禄山に寝返った諸公達も煩く鳴いて、わたしの白髪は増え、髪はことごとく糸のように細くなる。このまま安禄山の天下になってしまうのか
(訳注)
兩鬢入秋浦。 一朝颯已衰。
安禄山が乱を起こしてから秋浦に来きたが、洛陽、長安の二つの都が敵の手に落ち私の左右の鬢も一度にさっと衰えたのだ。
○兩鬢 左右のおでこ生え際、もみあげ。洛陽と長安を比喩している。○入 入城する。陥落させる。○秋浦 銭塘江最上流の盆地のようなところ。今の安徽省貴池県。唐代では池州と呼ばれた。李白のこの秋浦歌十七首のはじめの詩、ほとんど各詩に必ず秋浦の語が挿入されている。(はいらないのは、7,9、10,11,12,13,14,15,17で安禄山の乱を感じ取れるもの) 、入っているのは、この詩のようにそう鬢を長安と洛陽と思わなければ、ただの抒情詩なのである。秋浦にはそのものの場所を示すことと、秋に叛乱した、秋は西を示すということで、安禄山の動向を心配している詩と考えて、抒情詩であると同時に李白は、乱の行くすえを案じている詩といえるのである。○一朝 ある朝。○颯已衰 一気におとろえた。両鬢に白髪が一気に増えてしまったように洛陽長安が一気に陥落して、国中大混乱であるという意味である。
猿聲催白發。 長短盡成絲。
猿の哀しい啼き声は悲愴感漂うように、安禄山に寝返った諸公達も煩く鳴いて、わたしの白髪は増え、髪はことごとく糸のように細くなる。このまま安禄山の天下になってしまうのか
○猿聲 この猿は日本猿と違い手長猿で、啼き方に悲哀が籠って長く引っ張るように鳴く。悲しいこと寂しいことの代名詞である。と同時に、安禄山に媚を売って追随している諸侯を示す。○長短 白髪の長短。別に、安禄山への寝返りの強弱を示す。
(解説)
其の四の詩では「猿声」、中國の南辺に棲む手長猿の哀しい啼き声を歌うのは安禄山に迎合して、略奪をして行った潘鎮、諸侯が多くいたことを比喩したのである。叛乱後わずか1カ月足らずで洛陽が落ち、兵の数は数倍で圧倒的に王朝軍が強いはずで、早晩、おさまるものと誰もが思っていた。ところが半年後には、長安が落ちたのである。中國の二つの都が叛乱軍の手に落ちたので、情勢は一変し安禄山の側に寝返るものが増えたのである。日頃不満を持っていた者たちに多く見られた。そして大殺戮に加担したのである。。
もし、李白が安禄山を支持するならこの詩に「秋浦」という語はなかったはずである。私は秋浦にいる。国家存亡のこの危機を心配している。李白はそう発信したかったのだ。