北上行 #2 李白Kanbuniinkai紀頌之の漢詩李白特集350 -304
北上行 #1
北上何所苦,北上緣太行。
磴道盤且峻,巉岩凌穹蒼。
馬足蹶側石,車輪摧高岡。
沙塵接幽州,烽火連朔方。
殺氣毒劍戟,嚴風裂衣裳。
奔鯨夾黄河,鑿齒屯洛陽。
前行無歸日,返顧思舊鄉。」
#2
慘戚冰雪里,悲號絕中腸。
真冬の逃行で氷雪の中で悲惨を極めるひどい悲しみの中に有る、泣き叫ぶこと胸も腹も張り裂けんばかりに追い詰められたのである。
尺布不掩體,皮膚劇枯桑。
着の身着のままで逃げだしたのでわずかな布きれでは体を覆うこともできない、寒空の中皮膚は寒さに痛いほどになり、まるで枯葉のようになった。
汲水澗穀阻,采薪隴坂長。
谷沿いの道とはいえ水を汲むには谷川が深いのだ、薪を採るにも岡や 山坂は長いのだ。
猛虎又掉尾,磨牙皓秋霜。
猛虎は勢いよく襲いかかろうと 尾を振り立てている、牙は磨かれていて秋の白い霜よりも白いのだ。
草木不可餐,饑飲零露漿。
あたりの草木も尽きてしってもう食べるものさえなくなった、飲むもの無く飢えてしまいこぼれる露のしずくを啜ってのんだのだ。
歎此北上苦,停驂爲之傷。
この艱難辛苦しても北上したのだ、あまりに悲惨で馬車をとめてこの痛み苦しみを記しておくのである。
何日王道平,開顏睹天光。
いつになったら天子が正道の道を平穏に取り戻してくれるのか、安心して顔を出して歩ける日になり、晴々として 天光を受けることができるのだろうか。
#2
惨戚(さんせき)たり 冰雪の裏、悲しみ号(さけ)びて中腸を絶たつ。
尺布(せきふ)は体を掩(おお)わず、皮膚は枯れし桑よりも劇(はげ)し。
水を汲むには 澗谷(かんこく)に阻(へだ)てられ、薪を采るには 隴坂 長し。
猛虎は 又 尾を掉(ふる)い、牙を磨きて 秋霜よりも皓(しろ)し。
草木 餐(くら)う可からざれば、飢えて零(こぼ)れし露の漿(しる)を飲む。
此の北上の苦しみを嘆き、驂(さん)を停(とど)めて 之が為に傷む。
何れの日か 王道平らかにして、開顔 天光を覩みん。
現代語訳と訳註
(本文) #2
慘戚冰雪里,悲號絕中腸。
尺布不掩體,皮膚劇枯桑。
汲水澗穀阻,采薪隴坂長。
猛虎又掉尾,磨牙皓秋霜。
草木不可餐,饑飲零露漿。
歎此北上苦,停驂爲之傷。
何日王道平,開顏睹天光。
(下し文) #2
惨戚(さんせき)たり 冰雪の裏、悲しみ号(さけ)びて中腸を絶たつ。
尺布(せきふ)は体を掩(おお)わず、皮膚は枯れし桑よりも劇(はげ)し。
水を汲むには 澗谷(かんこく)に阻(へだ)てられ、薪を采るには 隴坂 長し。
猛虎は 又 尾を掉(ふる)い、牙を磨きて 秋霜よりも皓(しろ)し。
草木 餐(くら)う可からざれば、飢えて零(こぼ)れし露の漿(しる)を飲む。
此の北上の苦しみを嘆き、驂(さん)を停(とど)めて 之が為に傷む。
何れの日か 王道平らかにして、開顔 天光を覩みん。
(現代語訳)
真冬の逃行で氷雪の中で悲惨を極めるひどい悲しみの中に有る、泣き叫ぶこと胸も腹も張り裂けんばかりに追い詰められたのである。
着の身着のままで逃げだしたのでわずかな布きれでは体を覆うこともできない、寒空の中皮膚は寒さに痛いほどになり、まるで枯葉のようになった。
谷沿いの道とはいえ水を汲むには谷川が深いのだ、薪を採るにも岡や 山坂は長いのだ。
猛虎は勢いよく襲いかかろうと 尾を振り立てている、牙は磨かれていて秋の白い霜よりも白いのだ。
あたりの草木も尽きてしってもう食べるものさえなくなった、飲むもの無く飢えてしまいこぼれる露のしずくを啜ってのんだのだ。
この艱難辛苦しても北上したのだ、あまりに悲惨で馬車をとめてこの痛み苦しみを記しておくのである。
いつになったら天子が正道の道を平穏に取り戻してくれるのか、安心して顔を出して歩ける日になり、晴々として 天光を受けることができるのだろうか。
(訳注) #2
慘戚冰雪里,悲號絕中腸。
惨戚(さんせき)たり 冰雪の裏、悲しみ号(さけ)びて中腸を絶たつ。
真冬の逃行で氷雪の中で悲惨を極めるひどい悲しみの中に有る、泣き叫ぶこと胸も腹も張り裂けんばかりに追い詰められたのである。
○惨戚 惨と戚のどちらも、ひどく悲しむいみをもっている。悲惨を極めるひどい悲しみという意味。
尺布不掩體,皮膚劇枯桑。
尺布(せきふ)は体を掩(おお)わず、皮膚は枯れし桑よりも劇(はげ)し。
着の身着のままで逃げだしたのでわずかな布きれでは体を覆うこともできない、寒空の中皮膚は寒さに痛いほどになり、まるで枯葉のようになった。
○尺 わずか。六尺。ものさし。
汲水澗穀阻,采薪隴坂長。
水を汲むには 澗谷(かんこく)に阻(へだ)てられ、薪を采るには 隴坂 長し。
谷沿いの道とはいえ水を汲むには谷川が深いのだ、薪を採るにも岡や 山坂は長いのだ。
○澗穀 谷川沿いのこと。・穀は谷。○阻 地形が険しい。「険阻」 2 遮り止める。はばむ。○隴 おか。あぜ。隴山。
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猛虎又掉尾,磨牙皓秋霜。
猛虎は 又 尾を掉(ふる)い、牙を磨きて 秋霜よりも皓(しろ)し。
猛虎は勢いよく襲いかかろうと 尾を振り立てている、牙は磨かれていて秋の白い霜よりも白いのだ。
【掉尾】ちょうび 《尾を振る意。慣用読みで「とうび」とも》物事が、最後になって勢いの盛んになること。
草木不可餐,饑飲零露漿。
草木 餐(くら)う可からざれば、飢えて零(こぼ)れし露の漿(しる)を飲む。
あたりの草木も尽きてしってもう食べるものさえなくなった、飲むもの無く飢えてしまいこぼれる露のしずくを啜ってのんだのだ。
○饑 飢える。 ○零露 しずく。つゆ。○漿 みずをのむこと。
歎此北上苦,停驂爲之傷。
此の北上の苦しみを嘆き、驂(さん)を停(とど)めて 之が為に傷む。
この艱難辛苦しても北上したのだ、あまりに悲惨で馬車をとめてこの痛み苦しみを記しておくのである。
○爲之傷 このことについて傷をつけることと為す。
何日王道平,開顏睹天光。
何れの日か 王道平らかにして、開顔 天光を覩みん。
いつになったら天子が正道の道を平穏に取り戻してくれるのか、安心して顔を出して歩ける日になり、晴々として 天光を受けることができるのだろうか
○叛乱軍のために、各地で、武者狩りをしていたし、略奪、盗賊が横行したのである。安禄山の軍には1/4ぐらい異民族の兵がいた。
李白の安禄山の叛乱について情報が少なかったのか、他の詩人の叛乱をとらえた詩とは違っている。特に杜甫の詩と違うのは、杜甫は蘆子関や長安の叛乱軍にとらえられ、拘束されたこと、自分の目で見て確認したことを詩にしていることが違うのである。
李白は叛乱軍に掴まっていたら、まともではおれなかったであろう。この詩「北上行」は聞いた話を詩にしているのである。李白らしい詩である。
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