陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<56>
2013年3月14日 | 同じ日の紀頌之5つのブログ |
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陌上桑行 古詩・漢の無名氏 魏詩<56>古詩源 巻五 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2063
陌上桑は道のほとりの桑の意である。別の題名を「艶歌羅敷行」ともいい、王台新詠(巻二 には「日出東南隅行」とある。長詩なので5分割して掲載する。
陌上桑 #1
日出東南隅,照我秦氏樓。秦氏有好女,自名為羅敷。
東南の隅から出た朝日が昇る晩春のことである。まずわが秦氏の高殿を照らしている。
その秦氏に美しいむすめがいる。その名を自ら羅敷という。
羅敷喜蠶桑,採桑城南隅。青絲為籠係,桂枝為籠鉤。
羅敷ほ養蚕が上手である、城郭の南隅の桑畑で桑つみをする。
その時の彼女の格好は青い糸を籠のひもにし、桂の枝を寵のさげ柄にしている。
頭上倭墮髻,耳中明月珠。
頭の上に髪のまげをむすびのこりのかみをそのしたに垂れている。耳には明月の珠をかざり、
#2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
行者見羅敷,下擔捋髭須。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
少年見羅敷,脫帽著帩頭。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
來歸相怨怒,但坐觀羅敷。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
#3
使君從南來,五馬立踟躕。使君遣吏往,問是誰家姝。
“秦氏有好女,自名為羅敷。”
“羅敷年幾何?”
“二十尚不足,十五頗有餘。”
“使君謝羅敷,寧可共載不?”
#4
羅敷前置辭:“使君一何愚!使君自有婦,羅敷自有夫。”
“東方千餘騎,夫婿居上頭。何用識夫婿?白馬從驪駒;
青絲係馬尾,黃金絡馬頭;
#5
腰中鹿盧劍,可直千萬餘。十五府小吏,二十朝大夫,
三十侍中郎,四十專城居。為人潔白晰,鬑鬑頗有須。
盈盈公府步,冉冉府中趨。坐中數千人,皆言夫婿殊。”
#1
日は東南隅に出でて、我が案氏の榎を照らす。
秦氏に好女有り、自ら名つけて羅敦と為す。
羅敷荒桑を善くし、桑を城の南隅に探る。
青緑をは籠系と為し、桂枝をば寵鈎と為す。
頭上には倭堕の磐、耳中には明月の珠。
#2
純綿を下裾と為し、紫緒を上宿と為す。
行く者は羅敦を見て、標を下して髭麦を括り、
少年は羅敷を見て、帽を睨して略頭を著はす、
耕す者は其の梁を忘れ、鋤く者は其の鋤を忘る。
来り節って相怨怒するは、但羅数を観るに坐するのみ。
#3
使君南より来り、五馬立って蜘踊す。
使君束をして徒かしめ、間ふ 「是れ誰が家の妹ぞ」 と。
「秦氏に好女有り、自ら名いうて羅数と為す」。
「羅敷は年幾何ぞ」。
「二十には筒は足らず、十五頗る飴り有り」 と。
使君羅敦に謝す、「寧ろ共に載る可きゃ不」 と。
#4
羅敷前んで詞を致す、「使君一に何ぞ愚なる。
使君自ら婦有り、羅敷は自ら夫有り。
東方の千絵騎、夫巧は上頭に居る。
何を用てか夫靖を識る、白馬磯駒を徒へ、
青練を馬屋に繋け、黄金を番頭に絡ふ。
#5
腰中の鹿底の鉱は、千萬徐に値す可し。
十五に心て府の小史、二十にして朝の大夫。
三十にして侍中部、四十にして城を専らにして居る。
人と為り潔自習、孝養として頗る裏有り。
盈盈として公府に歩み、再再として府中に趨る。
坐中の数千人、皆言ふ 『夫巧は殊なり』 と。
『陌上桑』 現代語訳と訳註
(本文) #2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。行者見羅敷,下擔捋髭須。
少年見羅敷,脫帽著帩頭。耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
來歸相怨怒,但坐觀羅敷。
(下し文) #2
純綿を下裾と為し、紫緒を上宿と為す。
行く者は羅敦を見て、標を下して髭麦を括り、
少年は羅敷を見て、帽を睨して略頭を著はす、
耕す者は其の梁を忘れ、鋤く者は其の鋤を忘る。
来り節って相怨怒するは、但羅数を観るに坐するのみ。
(現代語訳)
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
(訳注) #2
緗綺為下裙,紫綺為上襦。
浅黄色のあやぎぬを裳にし、紫の紋織物を上衣としている。
・緗綺 緗は、浅黄色。綺は綾の古名で,単色の紋織物をさす。中国では古く戦国時代にすでに〈綺〉の名称があり,《戦国策》鮑彪の注には〈綺は文様のある繒(かとり,上質の平絹)〉とある。また《漢書》地理志の顔師古の注に〈綺は今日いう細かい綾〉とあり,元の《六書故》に,綺は彩糸で文様を織りだした錦に対し,単色で文様をあらわした織物であることが記されている。現存する作例,例えば馬王堆1号漢墓その他の出土例から古代の綺の特色を見ると,ほとんどが平地の経の浮紋織,あるいは平地の経綾の紋織になっている。
・上襦 襦は短い上衣、袖無しの羽織。
行者見羅敷,下擔捋髭須。
その美しい羅敷の姿に道行く男はみつめる。しかも荷物をおろして見とれ、ひげをひねって体裁をととのえる。
・擔 肩にになった荷物。
・髭須 口ひげと頬ひげ。
少年見羅敷,脫帽著帩頭。
若者の場合は羅敷を見ると髷を包んだ帽をぬいで、髪をつつんだ頭をあらわして大人びて見せる。
・帩頭 元服をして結ぶ髻を巾で包む。
かしらつつみ。また単に帽の下にかぶる頭巾の一種ともいう。これを取って髪を見せるのは一人前の男らしく気取って見せる。
耕者忘其犁,鋤者忘其鋤。
田を耕す人は持っていた犁を忘れ、畑をすく人は鋤を休めて見とれる。
・犁・鋤 犁はからすき、柄の曲がったもの、鋤は柄のまっすぐなもの。
來歸相怨怒,但坐觀羅敷。
家に帰ってからそれがもとで怨んだり怒ったり、夫婦喧嘩をするのも、じつはただ羅敷を見てしまうことがもとなのだ。
・怨怒 垂は夫が羅敷に見とれて仕事を怠ったことを怨み、夫は妻が羅敷ほどの美しさのないことを怒る。
・坐 そのおかげ、原因をいう。