おもしろくない漢詩、とっつきにくい漢詩、漢詩に触れている人口は増加しているのか、減少しているのか、と考える前に、漢詩を紹介しているサイトが少なすぎるし、漢詩数も少ない。ブログをたたき台にしてほしいと考える。

 このブログは、漢詩を紹介してくサイト「漢文委員会kanbun-iinkai」に掲載するものの一部をブログで李白の場合は時系列で紹介できないができるだけ時系列も尊重しつつ進めていこうと考えている。漢文委員会のサイトもこのブログも今、公開開始して間もない、したがってできるだけ漢詩の数を紹介し、一定程度の量になったら、整理し、中身も充実さて行きたいと思っている。

 一定の量と質が蓄積して初めて次の段階に進もうと考えている。それは、このサイトでほとんどの漢詩を掲載すること、そのレベルも初心者から研究者の段階までを網羅したい。掲載した漢詩をさらに充実した内容のものにしたい。杜甫も、李白も王維も、白楽天、杜牧、蘇東坡も一首残らず掲載していくこと、を目指している。


李白36 楊叛兒

楊叛兒

君歌楊叛兒、妾勸新豐酒。
何許最關人、烏啼白門柳。
烏啼隱楊花、君醉留妾家。
博山爐中沈香火、雙煙一氣凌紫霞。

あなたが、『楊叛兒』の歌を歌えば、わたしは、新豊のお酒を勧めましょう。
一番気にかかるのはどこなのですか、カラスが鳴いている金陵の西門の柳になるだろう。
烏はハコヤナギの花に隠れて鳴いており、あなたは、酔っぱらってわたしの家に泊まる。
博山香炉の沈香の香煙は、二筋の煙が一つとなって、夕焼雲をはるかにしのぐ高さになる。

 もともとが恋歌。柳は男女の絡み合いを暗示している。「『楊叛兒』の歌を歌えば」は女性に今日はオッケーかと聞き、女性が飛び切りのお酒を注ぐことは、「お待ちしていました。オッケーよ」と答える。続いて女性が「酔っぱらても浮気心を起さず、私のところへ来るのですよ」高炉の煙はわかれて出てきてもひとつにむすばれる、情熱は最高峰に。
 これ以上は書きづらいがおおよそ以上である。


君は歌う 楊叛兒,妾は勸む 新豐の酒。
何許いずこか 最も 人に 關する,烏は啼く 白門の柳。
烏は啼いて楊花に 隱れ,君は醉ひて 妾の家に 留まる。
博山爐中 沈香じんこうの火,雙煙 一氣に  紫霞を 凌しのがん。


楊叛兒とはもと童謡で宮中の巫女のむすこ、楊旻ようびんにちなんだ歌詞「楊婆児」がなまって楊叛兒となった、と「叛」は「伴」の意。恋歌。

君歌楊叛兒
あなたが、『楊叛兒』の歌を歌えば。 ・君歌:あなた(男性を指す)は、(大きな声に出して)歌う。 ・楊叛兒:男女の愛情を表す歌。

『楽府詩集』現存八首の古辞の第二首に
 暫出白門前,楊柳可藏烏。
 歡作沈水香,儂作博山爐。
暫く白門の前に出るに,楊柳 烏を蔵すべし。。
きみは沈水の香となり,儂われは博山の爐となる

妾勸新豐酒
わたしは、新豊のお酒を勧めましょう。 ・妾:〔しょう〕わたし。わらわ。女性の一人称の謙称。 ・勸:すすめる。 ・新豐:陝西省驪山華清宮近くにある酒の名産地。長安東北郊20kmの地名。

 王維の『少年行』に新豐美酒斗十千,咸陽遊侠多少年。相逢意氣爲君飮,繋馬高樓垂柳邊。
 (紀 頌之のブログ6月11日参照

何許最關人
一番気にかかるのはどこなのですか。
 ・何許:どこ。いづこ。どんな。 ・最:もっとも。 ・關人:気にかかる。心配する。(人の)気になる。

烏啼白門柳
カラスが鳴いている金陵の西門の柳になるだろう。
 ・烏啼:カラスが鳴く。「烏」は人称代詞や疑問詞ともみられる。 ・白門:金陵の別称。五陵関係図参照長安西門の東南に花街があった。 ・柳:シダレヤナギ。前出楽府の「暫出白門前,楊柳可藏烏。」を蹈まえている。
五陵関係図
  五陵関係図   西門付近に花街があった。

烏啼隱楊花
烏はハコヤナギの花に隠れて鳴いており。
 ・隱:かくれる。かくす。前出「暫出白門前,楊柳可藏烏。」 ・楊花:ハコヤナギの花。風に吹かれてゆく、浮気っぽい女性を暗示する。

君醉留妾家
あなたは、酔っぱらってわたしの家に泊まる。
 ・醉:酔う。 ・留:とどまる。とどめる。 ・妾家:わたし(女性)の家。

博山爐中沈香火
博山香炉の沈香の香煙は。 
 ・博山:男女の情愛を暗示する。 ・博山爐:香炉の名。彝器(儀式用の鼎等の道具)の上に山の形を刻して装飾とした香炉。
 ・博山:山東省博山県の東南の峡谷名。 ・沈香:〔じんこう〕熱帯や広東省に産する香木の名で、水に沈むからこう呼ばれる。香の名。

雙煙一氣凌紫霞
二筋の煙が一つとなって、夕焼雲をはるかにしのぐ高さになる。
 ・雙煙:二筋の煙。 ・一氣:一つとなる。男女の意気が一つとなったさまをいう。 ・凌:しのぐ。おかす。越える。わたる。 ・紫霞:紫雲 夕焼雲よりはるかに高い。


博山炉について一番わかりやすいページがあったので。

前漢・錯金銅博山炉 :世界の秘宝 大集合_人民中国)参照

 

博山爐は香炉の一種で、古代貴族の贅沢品の1つ。高さは26センチ、錯金という入念な造りはほかにあまり例がない。錯金とは器の表面に溝を造り、同じ幅の金糸や金片を使って装飾を施した後に、磨いてつやを出すという製作方法で、針金象嵌ともいう。博山炉は、金糸や金片の違いを生かし、山にかかる折り重なった雲の形につくられ、空を行く雲や流れる水のように渋りがない芸術効果をおさめた。金糸は細いものもあれば太いものもあるが、細いものは髪の毛ほどの細さ。


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