漢詩李白 219 經亂離後天恩流夜郎 、憶舊游書懷贈江夏韋太守良宰 安史の乱と李白(5) Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350- 219
(乱を経て離れて後、天恩により夜郎に流さる、旧游を憶い懐を書す、江夏の韋太守良宰に贈る)
安禄山によって長安が陥れられた悲惨な情況は、洛陽の陥落よりさらに悲惨で、李白の胸をえぐるものがある。
のちに李白が、永王璘に荷担した罪に問われ、夜郎に流されたとき、十年くらい前、その当時を思い出して作った大長篇の詩があるが、李白詩中最長篇で、五言、百六十六句から成る超大作で、李白の経歴を述べた自叙伝的詩でもある。
「經亂離後天恩流夜郎 、憶舊游書懷贈江夏韋太守良宰」(乱離を経て後、天恩ありて夜郎に流さる。旧遊を憶いて懐いを害し、江夏の葦太守良宰に贈る)である。その中に、長安の陥落を歌っている。(この詩をもってブログ李白詩350の最終回にする予定なのだが、ここでは詩のちょうど中ごろ、安禄山の部分だけをここで取り上げる)
經亂離後天恩流夜郎 、憶舊游書懷贈江夏韋太守良宰
(安禄山の乱関係個所)
漢甲連胡兵、沙塵暗云海。
王朝軍の甲冑をつけた兵士は叛乱軍と入交り、連らなったのだ、そのため、国中が沙塵のため暗くなるほどであった
草木搖殺氣、星辰無光彩。
草木だが、これは普通に人まで内通や、裏切りにより殺し合いが起こる雰囲気がただよい、揺れているのだ、星は砂塵で見えなくなり光彩を放っておらず、生きる希望までなくなってしまうのだ。
白骨成丘山、蒼生竟何罪。
大殺戮がなされたのでおびただしい白骨は丘山ほどの高さになった、青々とした草原であり人民に何の罪かあるというのか。
函關壯帝居、國命懸哥舒。
函谷関、潼関は長安、王朝を守る生命線であるため勇壮に戦ってほしい、天下国家の命運は哥舒翰総司令官に懸かっているのだ。
長戟三十萬、開門納凶渠。
長戟(ちょうげき)の三十万、門を開いて凶暴、虐殺、殺戮、略奪の限りを尽くした兇渠(かしら)を長安にまで入場させてしまった。
公卿如犬羊、忠讜醢輿菹。
役に立たない公卿は犬羊のように追い詰められ、為すところがない。召使のようにされている。忠義のもの、朝臣だったものはことごとく塩辛、塩漬物にされてしまったのである。
(乱を経て離れて後、天恩により夜郎に流さる、旧游を憶い懐を書す、江夏の韋太守良宰に贈る)
漢の甲は胡兵に連なり、沙塵のため雲海は暗し。
草木には殺気揺らぎ、星辰には光彩無し。
白骨は丘山と成る、蒼生は竟に何の罪かあらん。
函関は帝居を壮んならしめ、国命は哥舒(かじょ)に懸かる。
長戟(ちょうげき)の三十万、門を開いて兇渠(かしら)を納(い)る
公卿は犬羊を奴(つかう)うがごとくされ、忠讜(ただ)しきものは醢(かい)と菹(しょ)にせらる。
經亂離後天恩流夜郎 、憶舊游書懷贈江夏韋太守良宰
(安禄山の謀叛) 現代語訳と訳註 解説
(本文)
漢甲連胡兵、沙塵暗云海。
草木搖殺氣、星辰無光彩。
白骨成丘山、蒼生竟何罪。
函關壯帝居、國命懸哥舒。
長戟三十萬、開門納凶渠。
公卿如犬羊、忠讜醢輿菹。
(下し文)
漢の甲は胡兵に連なり、沙塵のため雲海は暗し。
草木には殺気揺らぎ、星辰には光彩無し。
白骨は丘山と成る、蒼生は竟に何の罪かあらん。
函関は帝居を壮んならしめ、国命は哥舒(かじょ)に懸かる。
長戟(ちょうげき)の三十万、門を開いて兇渠(かしら)を納(い)る
公卿は犬羊を奴(つかう)うがごとくされ、忠讜(ただ)しきものは醢(かい)と菹(しょ)にせらる。
(現代語訳)
王朝軍の甲冑をつけた兵士は叛乱軍と入交り、連らなったのだ、そのため、国中が沙塵のため暗くなるほどであった
草木だが、これは普通に人まで内通や、裏切りにより殺し合いが起こる雰囲気がただよい、揺れているのだ、星は砂塵で見えなくなり光彩を放っておらず、生きる希望までなくなってしまうのだ。
大殺戮がなされたのでおびただしい白骨は丘山ほどの高さになった、青々とした草原であり人民に何の罪かあるというのか。
函谷関、潼関は長安、王朝を守る生命線であるため勇壮に戦ってほしい、天下国家の命運は哥舒翰総司令官に懸かっているのだ。
長戟(ちょうげき)の三十万、門を開いて凶暴、虐殺、殺戮、略奪の限りを尽くした兇渠(かしら)を長安にまで入場させてしまった。
役に立たない公卿は犬羊のように追い詰められ、為すところがない。召使のようにされている。忠義のもの、朝臣だったものはことごとく塩辛、塩漬物にされてしまったのである。
(訳註)
漢甲連胡兵、沙塵暗云海。
王朝軍の甲冑をつけた兵士は叛乱軍と入交り、連らなったのだ、そのため、国中が沙塵のため暗くなるほどであった。
○漢甲 王朝軍の甲冑をつけた兵士。○胡兵 安禄山はトルコ人との混血5か国語を話した。その兵士の中には、税逃れや、異国、異民族の兵士がたくさんいたので、胡といったもの。○沙塵 戦いの際の巻き起こる砂塵。両軍合わせると40万を超え、人馬でいえば100万位かもしれない○暗云海 ここでの雲海は、世の中、国中という意味。
草木搖殺氣、星辰無光彩。
草木だが、これは普通に人まで内通や、裏切りにより殺し合いが起こる雰囲気がただよい、揺れているのだ、星は砂塵で見えなくなり光彩を放っておらず、生きる希望までなくなってしまうのだ。
○草木 草木だが、これは普通に人のことも意味する。○搖殺氣 内通や、裏切りにより殺し合いが起こる雰囲気を言う。○星辰 大空の星。○無光彩 実際に砂塵により見えなくなったのであろうが、ここには希望の星まで見合なくなったという意味が込められている。
白骨成丘山、蒼生竟何罪。
大殺戮がなされたのでおびただしい白骨は丘山ほどの高さになった、青々とした草原であり人民に何の罪かあるというのか。
○白骨 この反乱によって殺された人のこと。○成丘山 世界史上最高の最大の大殺戮がなされたのでおびただしい数であった。○蒼生 青々とした草原であり人民という意味。
函關壯帝居、國命懸哥舒。
函谷関、潼関は長安、王朝を守る生命線であるため勇壮に戦ってほしい、天下国家の命運は哥舒翰総司令官に懸かっているのだ。
○函關 函谷関、潼関。○壯帝居、長安、王朝を守る生命線であるということ。○國命 天下国家の命運。○懸哥舒 総司令官の哥舒翰。この前に洛陽を守りきらなかった高之仙を処刑している。高仙之は743年タラスの戦いでは成果を上げている。
長戟三十萬、開門納凶渠。
長戟(ちょうげき)の三十万、門を開いて凶暴、虐殺、殺戮、略奪の限りを尽くした兇渠(かしら)を長安にまで入場させてしまった。
○長戟 長い戟を持った兵士。○三十萬 唐の国軍、三十萬。○開門 国の命運をかけた函谷関、潼関より入れてしまった。○納凶渠 反乱軍のかしらというだけでなく、凶暴、虐殺、殺戮、略奪の限りを尽くしたかしらということ。
公卿如犬羊、忠讜醢輿菹。
役に立たない公卿は犬羊のように追い詰められ、為すところがない。召使のようにされている。忠義のもの、朝臣だったものはことごとく塩辛、塩漬物にされてしまったのである。
○公卿 貴族官僚諸侯。○忠讜 忠義のもの、朝臣。○醢輿菹 塩辛、塩漬物。
唐と安禄山の軍隊と入りまじった戦いのため、兵馬の挙げる砂塵は天をも暗くし、草木には殺気がただよい、空の星も輝きが薄れる、戦死者の白骨は山と積まれる悲惨な状態である。戦乱のために苦しむのは民草である。いったい人民に何の罪があるというのか。
李白はおそらく為政者の楊国忠・高力士たちを思い浮かべて歌っているのであろう。政治がよくなければ迷惑するのは民草、人民である。
「函谷関が堅固であることが天子のいる長安を支えることになるし、天下の運命はひとみかん潼関を守る総司令官の哥舒翰にかかっている。長き戟を持った唐の軍隊三十万もおりながら、戦い敗れて、関門を開いて叛乱軍安禄山を潼関より入れてしまった。情けないことだ。一挙に長安は占領され、役にたたぬ公卿たちは犬羊のごとく追いまわされ、なすところを知らず。忠義の者は塩辛や塩漬けにされてしまった。叛乱軍の横暴略奪は悲惨を極めた」と、当時の乱離の様を追憶している。杜甫もしきりに安禄山の乱を歌い、その悲惨さを多く歌っているが、詩人ならずとも、当時の人々に特技た衝撃は大きかった。この時、玄宗の周りには、楊貴妃一族、奸臣、高力士などの宦官勢力だけであった。
經亂離後天恩流夜郎 、憶舊游書懷贈江夏韋太守良宰
天上白玉京。 十二樓五城。 仙人撫我頂。 結發受長生。
誤逐世間樂。 頗窮理亂情。 九十六聖君。 浮云挂空名。
天地睹一擲。 未能忘戰爭。 試涉霸王略。 將期軒冕榮。
時命乃大謬。 棄之海上行。 學劍翻自哂。 為文竟何成。
劍非萬人敵。 文竊四海聲。 兒戲不足道。 五噫出西京。
臨當欲去時。 慷慨淚沾纓。 嘆君倜儻才。 標舉冠群英。
開筵引祖帳。 慰此遠徂征。 鞍馬若浮云。 送余驃騎亭。
歌鐘不盡意。 白日落昆明。 十月到幽州。 戈(鋋)若羅星。
君王棄北海。 掃地借長鯨。 呼吸走百川。 燕然可摧傾。
心知不得語。 卻欲棲蓬瀛。 彎弧懼天狼。 挾矢不敢張。
攬涕黃金台。 呼天哭昭王。 無人貴駿骨。 (騄)耳空騰驤。
樂毅儻再生。 于今亦奔亡。 蹉跎不得意。 驅馬還貴鄉。
逢君聽弦歌。 肅穆坐華堂。 百里獨太古。 陶然臥羲皇。
徵樂昌樂館。 開筵列壺觴。 賢豪問青娥。 對燭儼成行。
醉舞紛綺席。 清歌繞飛梁。 歡娛未終朝。 秩滿歸咸陽。
祖道擁萬人。 供帳遙相望。 一別隔千里。 榮枯異炎涼。
炎涼几度改。 九土中橫潰。
漢甲連胡兵。 沙塵暗云海。 草木搖殺氣。 星辰無光彩。
白骨成丘山。 蒼生竟何罪。 函關壯帝居。 國命懸哥舒。
長戟三十萬。 開門納凶渠。 公卿如犬羊。 忠讜醢輿菹。
二聖出游豫。 兩京遂丘墟。 帝子許專征。 秉旄控強楚。
節制非桓文。 軍師擁熊虎。 人心失去就。 賊勢騰風雨。
惟君固房陵。 誠節冠終古。 仆臥香爐頂。 餐霞漱瑤泉。
門開九江轉。 枕下五湖連。 半夜水軍來。 潯陽滿旌旃。
空名適自誤。 迫脅上樓船。 徒賜五百金。 棄之若浮煙。
辭官不受賞。 翻謫夜郎天。 夜郎萬里道。 西上令人老。
掃蕩六合清。 仍為負霜草。 日月無偏照。 何由訴蒼昊。
良牧稱神明。 深仁恤交道。 一忝青云客。 三登黃鶴樓。
顧慚檷處士。 虛對鸚鵡洲。 樊山霸氣盡。 寥落天地秋。
江帶峨嵋雪。 川橫三峽流。 萬舸此中來。 連帆過揚州。
送此萬里目。 曠然散我愁。 紗窗倚天開。 水樹綠如發。
窺日畏銜山。 促酒喜得月。 吳娃與越艷。 窈窕夸鉛紅。
呼來上云梯。 合笑出帘櫳。 對客小垂手。 羅衣舞春風。
賓跪請休息。 主人情未極。 覽君荊山作。 江鮑堪動色。
清水出芙蓉。 天然去雕飾。 逸興橫素襟。 無時不招尋。
朱門擁虎士。 列戟何森森。 剪鑿竹石開。 縈流漲清深。
登台坐水閣。 吐論多英音。 片辭貴白璧。 一諾輕黃金。
謂我不愧君。 青鳥明丹心。 五色云間鵲。 飛鳴天上來。
傳聞赦書至。 卻放夜郎回。 暖氣變寒谷。 炎煙生死灰。
君登鳳池去。 忽棄賈生才。 桀犬尚吠堯。 匈奴笑千秋。
中夜四五嘆。 常為大國憂。 旌旆夾兩山。 黃河當中流。
連雞不得進。 飲馬空夷猶。 安得羿善射。 一箭落旌頭。