2006年11月25日

「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す/ジョセフ・E・スティグリッツ」


「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す/ジョセフ・E.スティグリッツ」



内容(「MARC」データベースより)
グローバル化はすべての国と人に恩恵をもたらすはずだった。ところが、訪れたのは世界規模の格差社会だった。これはなぜなのか? アメリカのエゴに歪められたグローバル化のからくりを暴き、新システムを提言する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
スティグリッツ,ジョセフ・E.
2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、ブリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。行動する経済学者として、世界を巡りながら経済の現状を取材し、市場万能の考え方を強く批判。現行のグローバル化がもたらす様々な弊害に警鐘を鳴らす。2002年の著書『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(小社刊)は、世界38カ国で翻訳刊行され、世界的ベストセラーとなった。続いて2003年『人間が幸福になる経済とは何か』(小社刊)では、アメリカの狂騒の90年代を分析した。現在はコロンビア大学教授

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「経営戦略」に、優れた紹介文がありましたので、転載して掲載します。

世界に格差をばら撒いたグローバリズムを正す

1.不平等を軽視して経済効率を重視する人々

「昨今、日本では「格差社会」という言葉が声高に喧伝されている。格差の拡大は、何より社会基盤そのものを揺るがせる結果につながる。格差は国民の結束を蝕み、ひいては社会的な対立を誘発する。社会全体で格差を埋めていく努力をするということは、極めて重要なことだ」「実際、わたしが本書の中で主張しているひとつの大きなテーマは、「グローバル化が進むと、富めるものと貧しい者との格差が拡大せざるをえない」ということである。だからこそ現実世界で進行する不公正なグローバル化を、われわれは阻止しなければならない」本書(ジョセフ・E・スティグリッツ著、徳間書店発行)の著者が「日本の読者へ」で強調している言葉である。
スティグリッツは、95年よりクリントン政権の大統領経済顧問委員会委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを努めた。2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル賞を受賞した。グローバル化には、先進国と途上国の双方に巨大な利益をもたらす潜在力があると著者は信じているが、その潜在力は発揮されるに至っていないとし、本書では、問題がグローバル化自体にあるのではなく、グローバル化の進め方にあることを示している。
本書は、序と、第1章から第10章からなっている。序「不平等を軽視して経済効率を重視する人々」では、著者は本書執筆の基礎となった経験と本書の関係について語っている。第1章「不公平なルールが生み出す「勝者」と「敗者」」では「アメリカモデルの押しつけ」を取り上げ、第2章「発展の約束―ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ」では、ワシントン・コンセンサスの処方箋として、アジア、アフリカなど各国のグローバル化への対応の経緯を論じている。
この序と1章、第2章が全体的な問題を扱っており、第3章から第9章では、「アメリカを利する不公平な貿易システム」、「汚染大国アメリカと地球温暖化」などのタイトルで、それぞれ個別テーマを取り上げている。そして最後の10章「民主的なグローバリズム」で、グローバル化の改革の鍵となる政治的な論点を論じている。
著者によれば、所得の不平等にあまり重きをおかないエコノミストたちは、政府の格差是正の試みはコストがかかりすぎて割に合わないと考えがちで、政府の介入がなくても市場は充分に効率的である、という信念をもっている場合が多い。そして、彼らにとって最善の貧困対策とは、経済全体を成長させることで、成長によって得られた利益は、おこぼれ(トリクルダウン)効果によって最下層の貧困者までしたたり落ちていく、と信じこんでいる。また、不平等と貧困の解消に重きをおく人々は、おしなべてその根源を“運”に求めるが、軽視する人々は、富を勤勉さのご褒美とみなす。そこで、所得の再分配は労働と貯蓄のインセンティブをそぐだけでなく、個人から正当な報酬を奪うという点で非道徳的でさえあるのだ。こうした人々は、社会正義、環境、文化の多様性、医療分野でのユニバーサルアクセス、消費者保護などを軽視する傾向があると批判している。

第1章「不公平なルールが生み出す「勝者」と「敗者」」では、「アメリカモデルの押しつけ」を取り上げている。アメリカモデルの開発戦略は、政府の役割の最小化に主眼をおき、民営化(政府系企業を民間セクターへ売却する)と、貿易の自由化(輸出入と資本の流出入にたいする障壁を取り除く)を重要視した。実際、ワシントン・コンセンサスは公平性に重きをおいていなかった。アメリカモデルの推進者には、トリクルダウン理論を信奉する者もいれば、公平性は経済でなく政治の領分だと主張する者もいた。
筆者が支持している別の立場では、開発促進の面でも、貧困層保護の面でも、より大きな役割を政府にあてがっている。繁栄している経済の中心には必ず市場が存在するが、産業界を成長させて雇用を創出するには、そのための環境を政府が整えてやらなければならない。必要なのは、物理的なインフラと、制度的なインフラだ。

2.ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ

第2章「発展の約束―ワシントン・コンセンサスの失敗から学ぶ」では、「東アジアが学んだ教訓」、「ラテンアメリカの幻滅」、「旧共産諸国のショック療法」、「アフリカの誤った道のり」、「教育に投資しつづけるインド」、「GDPが上がっても、貧しくなる生活」、などのテーマでワシントン・コンセンサスの問題点を指摘している。
「東アジアが学んだ教訓」では、「東アジア諸国の政府は、経済成長の恩恵を少数だけにふりむけず、国民全体に広くいきわたるよう手段を講じた。彼らはグローバル化をゆっくりと、自国の実情に合わせて進める一方、慎重ながら毅然とした態度で経済に介入した。最先端技術を吸収できる熟練労働者集団を養成するため、初等教育と高等教育を同時に拡充した。また、計画立案と技術進歩の面では決定権を市場に丸投げせず、重点的に育成する分野をみずから選択した」
また、資本市場の自由化に関しては、「アジアの二大巨頭、インドと中国は、長期投資向けに市場を開放しても、短期の資本移動には制限を掛け続けた。貯蓄率の高い東アジア諸国には、さらなる資本調達の必要はほとんどなかった」。「しかし1980年代になると、おそらくはIMFとアメリカ財務省の圧力に屈して、(タイ、インドネシア、韓国などの)多くの国が市場を開放し、自由な資本移動を認めてしまった」。このように述べて、その後に起こった通貨危機、銀行危機と、(不安定な投機マネーの流れに生身をさらす形のグローバル化は経済の荒廃をもたらすという教訓を学び)、各国は公平性と貧困救済策にさらに重きをおくようになったことを指摘している。
一方、中国以外の途上国では、過去20年間に貧困は悪化した。世界人口65億のうち、およそ40パーセントが貧困状態にあり、8億7700万人、すなわち6人にひとりが極貧状態におかれている。アメリカモデルはGDP値でみればうまく機能したが、国民の寿命の延びや、貧困の縮小度や、生活水準を保っている中流層の割合など、ほかの指標では検討したとは言いがたいと指摘している。
具体的には、「世界の最貧国の一部は、世界銀行やIMFや日米欧からの援助を得るために、さまざまな条件を無理やり押し付けられており、たとえ東アジアの成功を見習いたくても、経済政策を選択する自由さえない」「例えば、貿易協定はときとして約束どおりの機会拡大をもたらさず、不公平な競争の場をつくり出してきた。世界中の国々から天然資源を奪い、環境破壊の爪痕を残して去っていく企業と、このような行為を野放しにする世界共通の法的枠組み、地球温暖化への対応をこばむ富裕国と、破滅的な影響をまともにかぶりそうな最貧国」。このように述べて、途上国の貧困や格差拡大の原因を指摘している。

本書の最終章では、「本書であつかうのはグローバル化の経済的な側面だが、問題のかなりの部分は、経済のグローバル化が政治のグローバル化に先行してしまっていることにある。グローバル化の改革は、政治の領域に属することなのだ」。このように論じて、鍵となるいくつかの政治的な論点を取り上げている。具体的には、非熟練労働者の将来とグローバル化による不公平の拡大、先進国の運営に対する国際経済機関における民主制の欠如、急速にグローバル化する経済の中にあってもなお根強い局地的な考えかたの壁などである。
非熟練労働者の将来については、「完全に統合されたグローバル経済のもとでは、世界はひとつの国のようになり、非熟練労働の賃金は世界中どこでも同じ額になる」と著者は指摘している。過去を振り返ると、発展途上国における資本不足や先進国と途上国のあいだの知識の差が、賃金格差の存続に大きな役割をはたしてきたが、賃金均一化へのこれらの障害が、いま消えつつある。グローバル化と貿易の自由化は総所得を増大させるが、平均所得がふえて、賃金、特に最下層の賃金が停滞もしくは下降すれば、所得格差は拡大することになるのだ。
著者は、このような難題に、先進工業国としては三つの対応のしかたがあるとしている。ひとつは、問題点を無視して、不公平の拡大を受け入れるやりかただ。二つ目の対応のしかたは、公正なグローバル化を阻止するというものだ。すなわちゲームのルールを永遠に自分たちに有利なものにするということだ。
しかし上記の二つの対応は受け入れられないので、「のこる選択肢はひとつしかない。グローバル化と正面から向き合い、その軌道を修正することだ」。このように述べて、グローバル化のあるべき姿を著者は次のように論じている。先進工業国は、ひきつづき自国の労働者の技術向上をはかる必要があるが、その一方で、労働者たちの安全ネットを強化し、所得税の累進性を増大させなくてはならない。また、研究への投資もまた重要だ。
また民主制の欠如では、「ゲームのルール作りとグローバル経済の運営を託された国際機関(IMF,世界銀行、WTO)は、先進工業国の利益のために、もっと正確に言うなら先進国内の特定の利権のために動いている」と指摘して、アメリカとその他の先進国の政策を批判し、グローバルな協調行動と世界の準備金制度を提案している。

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「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す/ジョセフ・E.スティグリッツ」


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