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金子勝ブログ

慶應義塾大学経済学部教授金子勝のオフィシャルブログです。

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東電には事業継続の体力はありません ――私の原子力日記その5

年が明けました。1月18日は私にとって5回目の原子力委員会新大綱策定会議でした。
会議は、被災地の除染や避難区域の見直し、核燃料サイクル技術等検討小委委員会の今後の進め方、新大綱策定会議の論点整理でした。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei11/index.htm

以下は私の提出した意見書です。東京電力の料金値上げも、やらせ3兄弟による安全性無視の原発再稼働も、巨大な失敗公共事業=六カ所村の再処理工場の継続も、ゾンビ企業=東電の救済のためであることは明らかです。

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【1】現状の除染事業の問題点
(1) 原子力災害対策本部「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」(2012年12月26日)について、問題のある記述は訂正し、除染事業を地域住民の期待に応えるものにするように求めます。
  1. 「除染特別地域」に関して、従来の放射性同位元素による障害防止法や平成12年度科学技術庁長官告示など、政府が事故前に設定してきた安全基準(妊娠中の女性内部被ばく1ミリ以下、妊娠可能な女性の腹部外部被ばく2ミリ以下など)に準拠し予防原則に徹するべきであります。原子力災害対策本部は、地震後の初動対応に失敗し、SPEEDI データを隠蔽して「さしあたり健康に問題ない」と強弁して被災者の被ばくを増すなどの数々の失敗に責任ある立場でありながら、20ミリシーベルト╱年を「健康リスクは喫煙や飲酒、肥満、野菜不足など他の発ガン要因によるリスクと比較して十分に低いものである」として当面の目標とし、住民に強要しています。このため、福島県からは子どもや若い夫婦の流出が拡大しつつあり地域社会の崩壊の危機が深刻化しています。この20ミリシーベルト╱年なる基準は、根拠のあるものでなく、原子力推進機関が中心になって資金を出して運営しているNPOであるICRPの議論によるものであり、到底国民が容認できるものではありません。しかも放射線障害による発がんは、喫煙などと相乗的に働くことが知られており、「喫煙など他のリスクと比較し」などと言えるものでないことは明白です。チェルノブイリ事故による長期にわたる低線量被曝については、さまざまな調査結果が出てきており、なおも未解明の部分があります。これらの事実をあえて無視するのは、現実的ではないと思います。実際、自ら「事故による被ばくリスクを自発的に選択できる他のリスク要因と単純に比較することは必ずしも適切でないものの」と書いているように、そもそも自分でコントロールできるリスクと放射能のように自分では意識的にコントロールできないリスクを一緒にするような記述は、原発事故に対する政府と東京電力の責任を回避させるような印象を与え、国の機関がこうした不適切な比喩を使うのは非常に問題があります。削除を求めます。
  2. 2年後に10ミリシーベルト╱年,次の段階は5ミリシーベルト╱年を目指すと書いていますが、住民が現実に復帰できるのには何年かかると考えているのでしょうか。その間に、若い世代を中心にして、町を捨てていく傾向が顕著になっています。井戸川双葉町長が言うように、長い期間がかかるのであれば、双葉町民に対して新たな生活が可能になる新しい町を提供するのが、国および東京電力の責任であると考えます。
  3. 「年間20ミリシーベルトは、除染や食品の安全管理の継続的な実施など適切な放射線防護措置を講ずることにより十分リスクを回避出来る水準である」と書かれていますが、この間の杜撰な「除染や食品の安全管理」が破綻しているのは誰の目にも明らかです。福島県が「安全宣言」を出した後に、二本松市、福島市、伊達市などから次々とコメから暫定基準値を超えるセシウムが検出されました。国民の食に対する不安を増幅させ、福島県および隣接する地域の農業に甚大な被害を与えました。急いで現状のサンプル調査を止めてコメの全量検査を行い、基準値を超えるコメは国と東京電力で買い取るべきです。
  4. 「信なくばたたず」といいますが、原子力安全行政全体の危機の大きな原因は、「安全神話」を振りまいてきた経緯から、適切な予防対策を講じず、初動からの一連の事態の失敗に責任ある現在の原子力安全委員会にあります。現在の原子力安全委員会は被災地住民の信頼を全く失っています。政府はただちに清新でベストかつブライテストな専門家委員会を選任し、被災地住民の信頼を取り戻す努力を行うべきです。
  5. 福島県の面積の約7割は森林です。この森林に関する除染の方針がないのは非常に問題です。バイオマス発電を利用した森林除染を考えるなど、早急に方針を出すべきです。

2.2012年施行の放射性物質汚染対処特措法で想定されている「本格除染」は、決して「本格的」とは言えないと考えます。
  1. 現状では、洗浄が中心の除染事業は線量低下の効果が上がりません。線量を細かく測り、放射線が染み込んだ屋根の張り替えや部材の交換、コンクリートや道路舗装の上部を削る必要がありますが、一軒当たり500~600万円近くかかります。
  2. 除染に関して、昨年度の第三次補正予算の2,459億円、2012年度予算の4,513億円、合計6,972億円しか費用が見込まれていません。飯舘村だけで3000億円近くかかるとされています。この予算では制約が大きすぎて、実効性ある除染はできません。
  3. 仮置き場と中間処分場を設ける方式は、当該地の住民の同意を得ることは難しく、住民同士を対立させてしまいます。いたずらに除染を遅らせて住民の健康被害の恐れを放置して、自然減衰を待って費用を「節減」しようとしているとしか思えません。当該地で人工バリア付きの保管場所を作り、住民参加のもとに住民自身が決定する仕組みを作らないと、除染は進まないと考えます。
 
【2】賠償費用と除染費用は捻出可能か
(1)こうした杜撰な「除染」が行われている問題の根源には,東京電力に、もはや賠償費用・事故処理費用はもちろんのこと、除染費用を負担する体力がなくなっている現実があります。「東京電力に関する経営・財務委員会」の報告書からも、そのことは明らかです。
(2)東京電力は巨額の債務を抱えています。2012年3月末時点でみると、

  1. 3.11以前に発生した短期借入金:4040億円
  2. 震災前の長期借入金:1兆5837億円―1306億円(返済済み)=1兆4531億円
  3. 震災後に実施された緊急融資:1兆9650億円➝合計:3兆4181億円
  4. 2011年7月末段階で、国内社債の未償還残高:4兆4657億円
(3)電力債の償還や銀行借入れの返済や借換えがつぎつぎとやってきますが、深刻な原発事故を引き起こした東電は、電力債の発行や銀行借入れができなくなっており、その他の電力会社も社債の発行ができず、資金繰りが非常に困難になっています。
当面の4年間だけで発生する東電の債務返済額をあげると以下の通りです。

         社債償還額  短期借入金 長期借入金
  2012年3月末  2,000億円  4,000億円*    2,000億円
  2013年3月末       7,500億円                     3,500億円
  2014年3月末       5,857億円                     4,900億円
  2015年3月末       4,464億円                     3,200億円
          累計        19,821億円     4,000億円*   13,600億円

(4)経営・財務委員会が、原発再稼働も料金引き上げもナシの場合に,東電に発生する赤字を以下のように試算しています。安全性が極めて怪しい原発は一種の「不良債権(不良資産)」になっています。当面の債務超過を避けるために、借入れ能力のなくなっている東京電力が、「燃料費上昇」を理由に企業向け(50kW以上の契約企業)電力料金を2.6kW/h引き上げを決めましたが、自らが引き起こした事故費用を利用者に負担を負わせるものです。なお、以下の数字には不動産の含み益3400億円が入っており、また核燃料サイクルの政策変更は予定されていません。

2011年 ▲5,179億円
2012年 ▲10,594億円
2013年 ▲5,899億円
2014年 ▲3,845億円

2011年9月末における東電の自己資本は、連結で9,215億円、単体で6,187億円です。 このままだと、2012年度に10,594億円が減り、東電は債務超過の状況に陥ります。(ここから1兆円の公的資金注入と1兆円の借り入れという話が出てきています)。

(5)当会議の議論にとって大きく問題となるのは、経営・財務委員会の試算には、原子力損害賠償費用が含まれていないことです。一応、現時点での賠償費用をあげると、
  1. 潜在賠償見込額(当初)は45,402億円
  2. その後、12月以降の潜在特別損失:年7,900億円(賠償対象が8万人➝150万人に)
    内訳)賠償地域拡大分   4,300億円
       自主避難賠償額   2,100億円
       精神的被害基準変更分 500億円
       追加福島処理費用  1,000億円
  3. 2.の2年分(追加福島処理費用除く6,900億円×2年)を入れると、潜在賠償見込額は6兆円近くに膨らむと考えられます。
  4. しかし、このうち引当等が行われているのは1年目(第1四半期)の10,248億円のみです。結局、そのうちの1,200億円を原発保険の代わりとして供託で拠出せざるをえないので実際の賠償引当は8,909億円しか積めていません。その後、2011年12月末に6,894億円の追加申請を行いましたが、未だ認可を受けておらず、現状でも約5兆円弱が未引当ということです。
(6)当初、経営・財務委員会は、昨年5月の「東電を債務超過にしない」という閣議決定を前提にしておりました。東電は、まず賠償費用の引当金を計上し、つぎに支援機構に交付金を申請し、当面「未収金」扱いとして、交付金がおりた時点で相殺される仕組みとなっておりました。しかし、国会の附帯決議でこの閣議決定を解消するとした結果、東電は賠償費用の引当金を計上すれば、その分赤字となります。したがって、申請しても、スムーズに交付金が得られず、あるいは先に引き当てても満額もらえる保証がなくなっており、賠償金支払いが進まなくなっています。

(7)しかも、現時点の廃炉費用見込みは1兆2000億円とされています(廃炉費用として十分かどうか疑いが強い)が、原発の廃炉費用は1基あたり600億円が積まれているはずです。しかし、福島第1第2原発10基すべて合わせても6000億円です。福島県知事が要求している全機廃炉にすると、相当額の資金不足が予想されます。

(8)このように賠償費用や事故処理費用も支払いがままならない状況で、これらには含まれていない除染費用を捻出することは不可能に近いと思われます。1兆円の公的資金注入と1兆円の融資を得たとしても、当座しのぎにすぎません。深刻な被害にあっている福島県および隣接地域の住民を救うために、賠償費用や除染費用を捻出できるように東京電力の経営形態の変更や資産売却、原子力予算の組み替え等を緊急に行う必要があります。そうしないと、福島県民が被った被害を放置し、住民の命や健康を著しく脅かす事態は改善されません。

【3】六カ所村の再処理工場のコストについて
(1)日本原燃は2011年以降、有価証券報告書の公表を止めました。電力会社が株式の90%近くを所有しているために公開義務がないとはいえ、3.11福島第1原発事故を契機にして、有価証券報告書の公開を止めるのは由々しき問題を含んでいます。六カ所村の再処理工場は1989年の建設申請から20年以上経過しても操業できず、建設費も申請時の約7600億円から現在では約2兆2000億円にまで膨れあがっています。典型的な失敗公共事業の様相を呈しており、国民負担に深くかかわる重大な問題だと思われます。
  1.  この建設費の膨張にともなって、日本政策投資銀行や市中銀行などから1兆252億円の借り入れを行っており、ほぼ全てについて電力会社が債務保証をつけています(最大の債務保証は東京電力で2810.5億円)。
  2. さらに1997~2005年まで、日本原燃は電力各社から再処理料金の一部を前受金として1兆1000億円を受け取っており、それをアクティブ試験などに使用しています。
このまま六カ所村の再処理工場が動かなければ傷が深くなるばかりです。これらは電力料金に上乗せされる再処理料金に含まれていない「持ち出し分」だと考えられます。これらはバックエンド費用にカウントされているのでしょうか。

(2)2003年11月11日の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会小委員会で,電気事業連合会が出したバックエンド事業の総費用は18.8兆円とされています。これが経産省の試算のもとになっていると考えられます。しかし、2004年10月22日の原子力委員会の新計画策定会議での試算では、全量再処理した場合は42.9兆円、直接処分は30~38.6兆円と試算しています。この大きな違いはどういう理由なのでしょうか。もし後者が真実であるとすれば、大幅な引当金不足が生じていることになります。

(3) 大島堅一氏の「原子力政策大綱見直しの必要性について――費用論からの問題提起――」(2010年9月7日 第48回原子力委員会資料第1-1号)によれば、バックエンド費用推計にあたって、①再処理工場の稼働率を100%と想定しているが、アレバ社の実績は56%(2007年)である、②高レベル放射性廃棄物の管理費用はガラス固化体1本当たり3530万6千円としているが、実績値は1億2300万円である、などの問題点をすでに指摘しています。今回の計算ではどう活かされたのでしょうか。

(4)仮に、バックエンド費用をもとの18.8兆円と考えたとしても引当金不足が生じていると考えられます。電力各社の有価証券報告書から、「使用済み核燃料再処理引当金」を抜き出し合計すると、2005年までに15年間に3兆1359億円を積み立てています(引当必要額は7.5兆円)。2005年の新制度では(旧引当金は再処理費用の60%を引き当てるルールだった)、新たに将来発電分2.4兆円、既発電分2.7兆円が引当対象となり(上記と合わせると、合計12.6兆円の引当が必要となります)、2011年3月末では「再処理等引当金」は3兆1098億円、「積立金」は再処理分が2兆4415.9億円になっています。高レベル放射性廃棄物の処分費用として「最終処分積立金」を8,200億円(必要金額は3.6兆円)積み立てています。一見すると順調に積み上がっているように見えますが、いくつかの問題が生じています。
  1. 引当金は、使用済み核燃料が発生するとともに生ずる部分があるので、原発の稼働率が低下すれば、自動的に収入が低下していきます。実際、2007年3月末には4325.3億円あった「使用済燃料再処理等費」は、2011年3月末には2574.3億円になっています。つまり原発稼働率が落ちれば、六カ所村の再処理工場は経営的に成り立たなくなり、引当金不足が発生する構造となっています(仮に再処理施設が稼働して電気料金で徴収可能になったとしても、使わない再処理燃料が積み上がっていくことになります)。とくに問題なのは、日本原燃の取引先のうち東京電力が37%、関西電力が20%、九州電力が10%(合計で77%)を占めている点です。福島第1第2原発を全て廃炉、さらに老朽原発や危険な原発を廃炉にしていけば、日本原燃の収入が減少して引当金不足に陥り、六カ所村の核燃料サイクル政策は成り立たなくなるからです。事業の見直しが不可欠です。
  2. 上記12.6兆円の積立金の他に、MOX燃料加工費用3.7兆円がかかりますが、電力料金に含まれないことになっています。いまの電力会社の体力でこれらの費用が賄えるとは思われません。この分も将来、電力料金に上乗せせざるをえないのではないかと推測できます。国民負担を考えると、重大な問題です。
(5)深刻なのは、日本原燃と東京電力がもたれあいの関係にありながら、両者とも手元のキャッシュフローが決定的に不足している点です。
 日本原燃の手元現金はわずか452億円、有価証券(譲渡性預金等)の4003億円を合わせても4455億円しかありません。他方で、東京電力は原燃への出資が1716億円、債務保証が2810億円、前受金は2854億円と計7381億円もの資金を原燃に提供しています。どちらが経営破綻しても、連鎖する可能性があると言えます。

(6)以上を勘案すると、六カ所村の再処理工場は一種の「不良債権(不良資産」)であると言えます。できるかぎり早い段階で、資金管理センターの積立金を使ってでも事業の再編整理を行わないと,取り返しのつかない事態になる危険性があると考えます。
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まるで不良債権問題そっくりです ――私の原子力日記その4(2/2)――

2011.12.22原子力委員会・新大綱策定会議メモ

                             金子 勝

 

「今後の原子力発電とそれに関連する事項に対する重要課題とその基本方針に関する論点(案)」について、再開後の議論を踏まえておらず、問題が多い。

 

1.番号1がつけられている「原子力発電の意義について」において、脱原発も含めて議論すべきとの意見があるにもかかわらず、今後、「原発をどうするのか」についての基本的な選択肢を提示しつつ、それらを丹念に議論しないのであれば、この会議の意味はほとんどない。この問題について、総合資源エネルギー調査会およびエネルギー環境会議が決定すべきであるなら、この委員会の独立性が疑われるだろう。また番号5の「研究開発と人材育成について」は、すでに原発維持を前提としたものになっている。前提になる「原発政策の選択」を議論にしていないのに、こうした議題だけが出てくるのはどうみてもおかしい。

 

2.この観点から、どれだけの原発が必要なのか、国民に選択肢を明示するのが本会議の責務である。

 (1)まず入り口段階の電力需要全体からみた原発の必要数を明らかにすべきである。  2011年夏における節電を「前提にした場合」と「前提にしない場合」、さらに「一層の節電・省エネが進んだ場合」に分けて、現状における電力会社、民間の一般事業会社などの電力供給能力を示したうえで、必要原発数を出すべきである。

(2)さらに、「東京電力に関する経営・財務調査委員会」も明らかにしているように、東京電力が原発を再稼働しない場合、深刻な債務超過に陥っていく。原発再稼働がないと、電力料金が上がるといわれるのは、電力会社の経営に問題があるからである。それゆえ、東京電力だけでなく、他の電力会社も同様の問題を抱えている。原発が停止し、電力料金を引き上げない場合、各電力会社はどれほど赤字が生じるのか、情報を開示すべきである。

(3)つぎに、出口段階における原発維持可能数を明らかにすべきである。六カ所の再処理工場を「稼働しない場合」、「稼働した場合」、「直接処分の場合(最終処分場が確保されることが前提)」、「直接処分が実現しない場合」に分けて、具体数を出すべきである。

(4)入り口段階と出口段階における、それぞれの場合を組み合わせた選択肢を国民に情報を提示することが、税金を使ってやっている本会議の使命であろう。

 

3.東京電力は2012年3月期(単体)決算で税引き後利益が5763億円の赤字となる見通しで、政府による約1兆円の公的資金投入と実質国有化が検討されていると報じられている。事故処理費用および賠償費用に関して、あるいは発送電分離改革について事態の推移を見て再度議論をすることを明示すべきである。

 

4.注記にあるが、核燃料サイクル政策について、大きな失敗を続けている高速増殖炉「もんじゅ」の存続について、なぜ当面の議論の対象から外すのか、理由を明らかにすべきである。

 

5.番号3~4について六カ所村の再処理工場の継続を前提とした議題になっている。再処理工場については放射能漏れなど事故やトラブルが多く、また放射能の環境汚染が問題になっている。イギリスのセラフィールドも止めていく。改めて、きちんと議論すべきである。

 六カ所村の再処理工場は、一種の「不良債権」問題だと考えられる。もし六カ所村の再処理工場を閉鎖すると、これまで投じた日本原燃および電力会社の資金が焦げ付くことになる。工事をいったん開始してしまった以上、ずるずると止められないダムなどの公共工事と似ていると思われる。除染費用を十分に出さず、福島県民をはじめ多くの国民が福島原発事故によって放射性物質に不安と恐れを抱いている状況のもとで、このような事業に巨額の資金を投入し続けることは許されないと考える。

 

6,日本原燃株式会社の簡易財務諸表はWebに公表されているが、以下の点についてより詳細な財務会計情報の開示を求める。

 (1)20113月末のB/S(貸借対照表)で「建設仮勘定」に14010億円が計上されているが、契約価額の全体、契約解除の場合の返還金などについて。

  (2)同じくB/Sにある「再処理料金前渡金」として7272億円が計上されているが、これは電力会社からのものなのか、その具体的内容について。

 (3)P/L(損益計算書)上の「売上高」2855億円、「売上原価」と2524億円の具体的内容について。

(4)B/S上の「長期借入金」8713億円、「短期借入金」1164億円について、借入先など具体的な内容について。

(5)同じくB/S上、固定負債の部にある「資産除却債務」5133億円について、これがいかなる資産に対して計上されているのか、その具体的な内容について。

 

7.番号6の「国際社会で果たすべき役割について」は、福島第1原発事故に関する2つの事故調査委員会の報告書が出ておらず、また会議においても原発の安全性について議論を尽くしたとはいえず、ましてや原発輸出の是非についても議論していない状況で、原発輸出を前提とした議論は不適切である。したがって議題から外すべきである。

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まるで不良債権問題そっくりです ――私の原子力日記その4(1/2)――

 1222日の原子力委員会の新大綱策定会議は、私にとって4回目の会議でした。

会議資料のURLは、以下です。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei10/index.htm

 

最初に、東京電力と資源エネルギー庁から、福島第一原発事故に対する新たな事故処理の中長期ロードマップの説明がありました。例の最大40年というものです。

 

私は、つぎのような疑問を出しました。

 

(1)10年で溶けた燃料を取り出すとされているが、確たる根拠はあるのか。

スリーマイルと違って、格納容器にひび割れか配管が壊れるか、格納容器に損傷が起きて放射能が漏れています。水を注入しないと核燃料を冷却状態にできませんが、そうすると、建屋内は高い放射線量になるというジレンマを抱えています。

 

(2)もし10年でメドが立たないと、見直すこともありうるのか。たとえば、石棺方式に変えるとかの選択もありうるのか。

 

(3)事故処理費用は当面1兆円あるいは13千億円とも言われ、原子力委員会の原発コスト計算では1兆円を前提として計算されていますが、それはこの工程表のどこまでをカバーしているか。もし不足するのなら、今年度末に単体で5000億円を超える赤字を出すと報じられている東電はどのようにして資金を調達するつもりなのか。

仮に、事故費用が40年間で13千億円だとすると、割引率を無視しても、年平均300億円です。そんな低い費用で済むとは考えられません。これで計算した原発コストに基づいて、エネルギー基本計画の前提としていいのでしょうか。

 

(1)と(2)の疑問に対しては、理想的なケースで努力目標であり、見直しもありうるという趣旨の回答がありました。つまり、根拠が曖昧だということです。

 

(3)の疑問に対しては、原子力委員長が外国の事例などを参考にして事故処理費用を出したもので、うまくいけば、ただ冷やす状態になるのでコストはかからないとの回答がありました。しかし、それは取らぬ狸の皮算用です。当然、何人かの委員から、この事故処理コストを前提とすべきではない、今の原発コストが一人歩きするのはおかしいとの意見が相次ぎました。見直しがあった場合、それをコスト計算に反映するのかとの疑問に対しては、コスト等検証委員会から見直すとの回答がありました。

 

こうした問題の本質は、ある意味で原発が事実上の「不良債権」だという現実です。

「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の報告書(これ自体は財務省の賠償スキームを前提としていて問題点が多い)でも、原発が再稼働せず、固定費を割り込んでいけば、東電は電力料金を上げないかぎり、赤字が膨らんで行きます。こうした状態が何年か続けば、電力会社は債務超過に陥っていきます。これは他の電力会社でも同様です。また安全投資が巨額に膨らめば同じことです。

 

こうした背景から、電力各社はもはや電力債さえ発行できず、市場から資金を調達できない状況に陥っています。だからこそ、安全軽視で「やらせ3兄弟」の仲間内のストレステストで強引に原発を動かそうとするのです。すでに、原発はさまざまな「公的資金」でかろうじて支えている「不良債権」なのです。

 

*ちなみに、経営・財務調査委員会の報告書概要(8 ~13頁参照)については、以下です。

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou2.pdf

 

しかし「不良債権」は原発本体だけではありません。核燃料サイクル政策の中心となっている六カ所村の再処理工場は、もっとひどい「不良債権」です。

 

六カ所村の再処理工場は、89年の建設申請時の建設費用は約7600億円でしたが、20年たった今では建設費用は22千億円と3倍近くに上っており、しかも放射能漏れや事故で稼働していません。アレバ社が撤退して以降、高速増殖炉もんじゅで大失敗をしている、あの日本原子力研究開発機構が担当しているせいなのか、全然駄目なのです。まるで八ッ場ダムとそっくり。

 

この六カ所村の再処理工場を潰すと、日本原燃は経営破綻する可能性が非常に高く、原燃が破綻すれば、一部の電力会社もまた経営が危うくなるという構造なのです。というのは、日本原燃に出資している株主は電力各社であり、彼らは電力料金に再処理費用を乗せて、ここに巨額の資金を突っ込んでいるのです。六カ所の再処理工場が潰れてそれがパーになれば、電力各社の株主責任を問われるだけでなく、私たちの電力料金を無駄使いした挙げ句に、自らの経営も破綻の可能性が出てきてしまうのです。

 

これまで日本の原発は使用済み核燃料を自ら処理できず、英仏に頼ってきました。そして処理できない使用済み核燃料を、原発建屋内のプールなどにため込んできました。しかし、イギリスのセラフィールドでも放射能漏れは深刻で、たとえば、最近でも子どもの歯からプルトニウムが検出されて問題になっています(以下のURLを参照)。そしてセラフィールドは停止が予定されているのです。そうなると、原発はますます「便所のないマンション」状態になります。そこで六カ所村の再処理工場が大事になるのですが、上のような有り様なのです。

http://www.guardian.co.uk/uk/2003/nov/30/greenpolitics.health

 

ここをきちんと処理しないと、「不良債権」の原発を動かし続け、見通しのない「不良債権」の六カ所村の再処理工場に無駄カネを投じ続けていれば、日本のエネルギー政策は「失われた20年」になってしまいます。まさに銀行の不良債権処理問題とそっくりです。

 

成功する見込みのない事業に巨額のカネを注ぎ込むほど、福島原発事故は軽微なものではありません。原子力関連予算を徹底的に見直し、福島の除染費用を捻出しなければなりません。きちんとした財務諸表、営業報告などの情報公開が不可欠です。

 

 

つぎに、新策定会議において、エネルギー環境会議とコスト等検証委員会からの中間報告がありました(最初のURLを参照)。

 

ところが、これに対して、なんと原子力ムラの方々から、「なぜ原発を減らす必要があるのか」「原発の意義を議論しよう」と、「脱原発依存」でさえ否定する主張が相次いだのです。

 

私は、今も放射能汚染に脅え、農業もできなくなっているのに、除染費用が0.6兆円などということは、本来ならありえない、我々は国民の付託を受けて議論をしているはずだと述べました。そして、原発の意義を話し合うのはいいですが、その会議を福島で開こうと提案しました。何人かの委員から賛成の意見が出ましたが、委員長からも事務局からも何の答えもありませんでした。

 

 

最後に、事務局から「今後の原子力発電とそれに関連する事項に対する重要課題とその基本方針に関する論点(案)」の説明がありました。

 

伴委員、浅岡委員から、このまとめ自体が「原発推進」を前提したものになっていると批判がありました。伴委員は、会議の議論を反映したまとめとするために、会議から委員を選ぶべきだとの意見が出されました。しかし、十分な答えはありませんでした。

 

私は、以下に提出したメモの2に基づいて、現状でどれだけ原発が必要なのか、維持可能なのか、数値に基づいて議論をしようと提案しました。もちろん、その際には、原発ゼロの選択肢を排除しないことは当然です。

 

現状において原発の必要数、維持可能数を出すには、入口、途中、出口の3段階に分けて考えて客観的な数字から始める必要があります。

 

まず入口段階では、今夏の節電・省エネを前提とした場合、それを前提しない場合、さらに節電・省エネを進めた場合に分けて、必要原発数を出す。電力会社の経営的観点から、原発稼働数に応じて、電力会社にどれだけ赤字が発生し、電力料金値上げが必要かを出す。そして出口段階で、六カ所が将来稼働した場合、そうでない場合、最終処分場が決まって直接処分をした場合、直接処分ができない場合に分けて、維持可能な原発数を出す。

とりあえずは、原発が置かれている現状について国民に情報を開示することが必要です。

 

委員長は、それを受けて国民に選択肢(あるいは選択肢のベースになる数値)を提示する作業を約束しました。

 

もちろん私は、時間のタームについては議論の余地は残りますが、自らコントロールできない原発は止めるべきだという立場であることは言うまでもありません。

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