いま福島は史上最悪の環境汚染問題に直面しています。

 

町々には、最大2800万トンとも言われる汚染廃棄物がフレコンパック(化学繊維でできた袋)に詰められ野積みになっています。すべてが土ではなく、また土の比重によって若干異なりますが、およそ3000万トンに及ぶ汚染土がすでに出ていると考えられます。

 

もし、それを10トントラックで「中間貯蔵施設」に運び込むとしたら、実にのべ300万台の10トントラックが必要になります。これを3年間で運ぶとして、900日で割ると、1日のべ3000台以上の10トントラックで運ぶことになります。あまりに非現実的な計画です。

 

そのうち、5年の寿命とされるフレコンパックはあちこちで破れ、福島中が再び汚染土であふれてしまうでしょう。実際に、フレコンパックが破れている地域も出ています。

 

また、この間の事故対策がそうだったように、安かろう悪かろうの対策をとれば、集中豪雨などで「中間貯蔵施設」はいずれ第2の地下水汚染問題を生むことになります。

 

では、この巨大な環境汚染問題は克服できないのでしょうか。否です。

公害問題を通じて蓄積されてきた先端の環境技術を利用すれば、福島の環境回復は可能なのです。

 

まず、これまでプルサーマルを導入しspeediを隠した佐藤雄平知事は、政府と一緒になって放射線ムラを重用し、福島の環境回復を事実上放棄して、全てを「風評被害」のせいにしてきました。

 

もし本当に「風評被害」を防ぐのなら、何よりも農産物・海産物の全量検査が不可欠です。それまでのゲルマニウム検査器は食物をすりつぶし30分もかかりましたが、BGO検査機が開発され、30キロ袋の米をベルトコンベアで流して約400倍のスピードの5秒で図れるようになりました。今や福島県の米は全袋検査が実施されています。

 

同じく魚の全量検査機もできています。GAGGシンチレータを使ったもので、シイタケの原木の検知機にもなっています。

米の全袋検査機(
従来の400倍のスピードでできる)

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(以下の写真提供:児玉龍彦氏)

 

つぎに、環境汚染問題を解決し、地域を再生するための基本原則とは何でしょうか。それは、汚染物質を濃縮・隔離して減容し、残る土などをリサイクルすることです。日本は、公害問題を克服していく過程において、そうした技術を集積してきています。いわゆるリサイクル施設ですが、セシウム回収型焼却炉はそのひとつです。

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普通の焼却炉は、燃えかすの灰に高線量のセシウムがたまり、それを処分する形になります。これに対して、1500度のガラス化防止剤を用いてセシウムを気化させ、それをバグフィルターで回収するのがセシウム回収型焼却炉です。これだと、ほとんどセシウムを濃縮して回収でき、残る土や廃棄物をリサイクルできます。

 

すでに下水汚泥を対象に、郡山で実証実験が実施されています。その結果を見ると、5万6千ベクレル~6万7千ベクレルの汚染土壌が、実に45ベクレルまで下がっています。

 

福島第一原発事故後に、放射性廃棄物処分場に封じ込める安全基準が8000ベクレルまで引き上げられてしまいましたが、これだと、安全に再利用できる旧来からの安全基準100ベクレルを下回ることになります。つまり、セシウム回収型焼却炉を使えば、セシウムを大幅に濃縮でき、土を再利用できるのです。

 

いま飯館村で、汚染土についてセシウム回収型焼却炉の実証実験施設が建設されています。

http://tohoku.env.go.jp/fukushima/pre_2013/data/1216aa.pdf

 

膨大な面積の森林除染はできないように見えますが、これも無人ロボットによる伐採や腐葉土の除去が可能です。すでに南相馬で実証実験が行われています。これを使って森林バイオマス発電を行い、セシウム回収型焼却炉を組み合わせる方式をとれば、汚染土のリサイクルを行いながら、30年くらいかけて森林除染事業をやっていくことができます。

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では濃縮されたセシウムは、どうしたらよいのでしょうか。病院の放射線科の横を平気で通れるように、しっかりした保管施設を作る必要があります。濃縮・減容したセシウムをコンテナに詰めて3層のコンクリでできたバリアの中にしっかり閉じ込めることが必要です。そのためには、地域住民が計画段階から参加して、地域ごとに分散して小規模の隔離施設を作り、減衰を待つのです。

 

 

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さらに、ダムの湖底に濃縮されたセシウムが貯まっているので、飲み水や農業用水などへの中長期的な影響を考えると、これを除去することが環境回復に必須です。

 

では、なぜこうした先端の環境技術を利用しないのでしょうか。

あるいは、何が障害になっているのでしょうか。

 

それは問題解決の順序が逆になっているからです。いまや1兆円の公的資金に、原子力損害賠償支援機構からの9兆円の交付金枠を抱えて、事実上「国有化」状態にある東京電力の救済を優先して、これらの技術を使おうとしていないのです。

 

何より子どもの世代に恥ずかしくない福島を取り戻すために、全力をあげて福島の環境回復に取り組むことが最優先の課題です。

そのうえで、最も国民負担が軽くなる方法を選ぶというのが正しい手順です。

もちろん、それには東電の経営再建計画の見直しも含みます。

 

東電救済のために、決して福島を犠牲にしてはなりません。今日に至るも解決していない水俣病問題の現状をみれば、同じ過ちは許されないはずです。

 

今度の福島県知事選は、福島の環境回復に本格的に取り組むかどうかが問われなければなりません。