2018年04月24日

『さらば夏の光よ』(76年)フィルム上映42年ぶり@アテネフランセ文化センター

(自分の備忘録のため)長文レポートになってます。
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「脚本で観る日本映画史」という試みをアテネフランセ文化センターにてシナリオ作家協会が佐伯俊道さん中心でやっているので、3回目となる21日は山根成之監督・20歳の郷ひろみ映画初出演『さらば夏の光よ』(76年)フィルム上映を42年ぶりに観に行き、お元気そうなジェームス三木さんと井土紀州さんとの対談を楽しんだ。


隣の席には伴一彦さんも来ていて「忘れてないもんだな」と言っていたが、僕は結構忘れていて、最初にチンピラもいいとろころの郷が夜の車のアベックに因縁つけて逆に男に殴り倒されてしまう導入は、当時としても「なんか古臭いな」と思ったのは覚えていたが、次のシーンでそれが商売で「女と上手くやったんだろう二万円は安過ぎだろ」と文句つけて今度はその相手を殴り倒すデパート屋上のシーンを忘れていたのを思い出し、なるほど工夫があったんだなと引き込まれた。
この殴られた男がその後も要所に現れて、郷の暴力沙汰を引き起こして物語を展開させる。
郷は予備校で知り合って安アパートで同居している早稲田を目指す野呂ちゃんという愚図なガリ勉タイプの浪人(川口厚:映画は殆どこれのみの川口家末っ子・大麻で逮捕、引退、早逝)と一緒に、ロッテリアのバイトをやってる秋吉久美子に目を付けてルックスが良い自分だけ面接に受かるが、秋吉と初デートの時、例の男と出会って喧嘩して怪我してしまい、野呂を替わりに行かせた事から絶妙な三角関係のドラマになってゆく。
郷も秋吉もお互い好きなのに、野呂を秋吉にくっつけようとする郷の必死さがバカだなコイツはとじれったく思いながらも切なくなる。
秋吉も郷にキスしてとか言いながらも郷に傷つけられ、泣いた勢いで野呂に抱かれて妊娠、遂に結婚することになってロッテリアを退職した秋吉を、いきなり強姦未遂した店長にキレた郷が雨の中仕返しに行くと、後から野呂が加勢して店長を殴って殺したと早合点して郷は野呂の身代わりになって自首、未成年なので少年院で坊主刈りになるが、後に嘘はバレて野呂本人が逮捕され、野呂は成人なので刑務所に入り、この時初めて郷と秋吉はアパートで抱き合ってキスするが、お腹の子が動いてセックスは出来ず、200万という野呂の保釈金が立ちはだかる。
その金を郷がやっと作ったのに保釈の前日に野呂は獄中で死んでしまうのは、ずっと咳していて分かりやすい伏線を張っていた。保釈金を作るため郷は実の父親の仲谷昇の医者に半分脅しで訴えに行くのが、それまで生い立ちを語ったり異母妹を自分の偽のガールフレンドに仕立てて秋吉に見せつけたりしていて使っていたので、登場人物の役割に無駄が無い。そういう意味で「脚本で見る映画史」に選出されたのか、と納得した。
野呂の子を孕んでいた秋吉は、故郷に帰る間際、郷に「子供も面倒見るから一緒になろう」とすがられるが「私たちは3人の関係で、一人欠けたら終わりなのよ」と言われてしまい、ラスト、屋上で飼っている小鳥を空に放つ郷の激しい喪失感・・・
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これが10本目の映画脚本だったジェームス三木さんも42年ぶりに見て「全く忘れていた、残念なのは郷がちゃんと坊主刈りになっていないこと」と言われたが、確かに中途半端な短髪で坊主刈りとは言えないが、公開当時は郷が「ナンバーワンアイドルなのにちゃんと映画の為に髪を切った」という事が評価されていた。郷と同じ歳の僕は当時大学生、高校から何本か8ミリ映画を撮った後で、この時代唯一の若手で、劇画原作をちゃんと撮れる商業監督という存在だった山根成之に生意気にも対抗心があって、『愛と誠』で鈴木清順の真似のような突然空が赤くなるような演出を失笑したりしていたので、この映画は「山根が初めてマトモな映画をとった」とかノートに書いていたのを思い出して心の中で謝ったが、当時は何でこれがキネ旬のベストテンに入賞したんだろう、と映研の先輩の押井守さんに話したら、押井さんは「評論家はみんな久美子ファンなんだ」と言っていた。井土さんは、郷の方が秋吉より綺麗に撮れていると言っていたが、確かに今見ると郷が懸命に役立たずのチンピラを演じているのが新鮮で、懸命な芝居に胸を打たれる。だが、やはり秋吉は可愛くエロくリアルな存在感がある。遠藤周作の原作はこの為に読んだ井土さんによると、野呂が主人公になっていて、郷の役割の方が死んでしまい、殆ど改変されているとのことで、それで遠藤周作が怒ってビデオにもなっていない、という噂があったが、トークではそこまでの話にはならず、郷ひろみに合わせて改変したのだろうと纏められた。ジェームスさんは、元々歌手で、生きるためにいろいろなバイトを経験した話をしてくれたが、それが映画の郷の行動と重なっていると思えた。

kaneko_power009 at 01:35│Comments(0)見た映画 | 思い出

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