皆さんは、学生時代、日本が幕末期に列強諸国から
不平等条約を押し付けられた歴史や、
明治期に日本がそれらの条約の改正に向けて苦労した歴史を
学んだかと思います。
不平等条約といえば、アメリカとの間で締結した日米和親条約や
日米修好通商条約などが挙げられますね。
このときの不平等条約は、相手国へ治外法権(領事裁判権)を
認めることや、関税自主権を喪失することを内容としたものでした。
しかも、これらの不平等条約の多くは、
片務的最恵国待遇(第三国に対してより有利な条約を締結した場合、
自動的に相手国へ同じ待遇を与えなければならないこと)
まで与えるものでした。
このような不平等条約は、明治期に撤廃されたと習いますね。
しかし、実はなんと現在でも生きている不平等条約があるのです。
それが1912年に日本とオランダとの間で締結された
日蘭通商航海条約です。この条約は両国間で締結された不平等条約であり、
しかも日本に対して片務的最恵国待遇を与えることを
内容とする条約なのです。
不平等条約というと、日本に不利な条約というイメージがありますが、
この条約は日本に有利な条約です。この当時に日本にとって
有利な条約を締結するのはとても意外なことです。
第二次世界大戦後のどさくさもあり、
両国間で長らくこの条約の存在が忘れられていましたが、
21世紀に入ってから、オランダにおいてこの条約を巡って争いになり、
突如この条約が意識されるようになりました。
オランダはスイスに対し、スイス人が労働許可なく
オランダ国内で就労できることを内容とする条約を締結していました。
そうしたところ、2014年、オランダの裁判所により、
日蘭通商航海条約の片務的最恵国待遇条項によって
スイスとの条約内容が日本にも及び、日本人も労働許可なく
オランダ国内で就労できるとの判断がなされたのです。
このような判断が出た後、さすがに、
この条約に対する不平等や不都合な部分は是正されることになりました。
しかし、その是正の方法も、「特権」の元となった
オランダ・スイス間の条約の内容が見直されることによって
なされたものであり、日蘭通商航海条約が破棄されたわけではありません。
そのため、日蘭通商航海条約の片務的最恵国待遇条項自体は、
現在も有効なものとして生き続けているのです。
就労許可以外の点で、仮にオランダが第三国に対して
何らかの「特権」を付与していたら、今後もひょっとしたら
この条約を巡って争いになることがあるかもしれません。
歴史の勉強というと、「暗記もの」だったり
「無味乾燥」というイメージが先行しがちですが、
こうやって現在にもつながっているものだと思うと、
少しは歴史を学ぶ意義を感じることができますね。
#名古屋 #弁護士 #相談 #離婚 #事故 #養育費 #浮気 #労働 #慰謝料
金国法律事務所
愛知県名古屋市中村区名駅四丁目2番28号 名古屋第二埼玉ビル8階
弁護士法人 金国法律事務所
https://kanekuni-law.jp/
052-446-6331