ご報告が遅れましたが、『戦前の少年犯罪』はめでたく増刷できました。
12/23の「たかじんのそこまで言って委員会」で、宮崎哲弥氏と一水会の鈴木邦男氏が掛け合いで「いい本だ」と云っていただいたために、アマゾンランキングで総合7位まで上がって、そのあと急落するかと思いきや結構上位でねばっていたということもあったのですが、そんなたかじんバブル以前からそこそこ健闘しておりまして、放映前にすでに増刷ができあがっていたのでした。
この出版不況と出版洪水が同時に襲っているという何がなにやらハルマゲドンのごとき壊滅的な状況下で、無名著者の地味な本が増刷されるなどということはほとんどありえないことでして、これはもう全面的に皆様方の口コミの威力のおかげとしか云いようがなく、厚く御礼申し上げます。

たかじん放映後すぐにアマゾンなどへの補充手配はされましたので、すでにご注文いただいている方へは概ね正月明けにも届くはずですが、これからお求めいただく場合はたかじんバブルを受けて急遽刷っている3刷が出回る1月後半までネット書店では品薄になるかと思われます。お近くの書店で探していただいたほうが入手しやすいかと思いますので、お手数ながらよろしくお願いいたします。
紀伊國屋書店ジュンク堂なら間違いなくあります。それぞれのリンク先で通販もやっているので、お近くに大型書店がない方はこちらのほうが確実です。紀伊國屋のページでは各店舖の在庫状況も見ることができますが、梅田店など西方面では売り切れていて、たかじんの大阪以西での影響力恐るべしです。

ちなみに「たかじんのそこまで言って委員会」は映像をアップするとすぐに削除されてしまうんだそうで、ニコニコ動画で音声だけアップされています。33分あたりから拙書への言及があります。
右翼だか元右翼だかの鈴木氏はこの本によって戦前についての考え方が変わったと仰っておりましてはたしてそれでいいのか、ご自分の一生を全否定するようなことにならないのかとかいろいろ心配にもなったりもしますが、ありがたいことです。みなさんもお暇なら聴いてみてください。

増刷では多少書き換えた箇所などありまして、すでに初版をご購入いただいた方のために変更点を記しておきます。店頭では初刷と増刷がまだ混在しておりますので、これからお求めの方もあらかじめご諒承ください。
まず、多大のご迷惑をお掛けした巻末付録の統計の2005年の間違いは訂正いたしました。さらにその表題が「少年刑法犯比率。」と「娘。」か「藤岡弘、」みたいになっていたので取りました。
また、冒頭の「ビシバシ」「クソガキ」を削りました。思った以上にまじめな方々に読まれているようなので、最初だけでも猫をかぶろうという戦略転換です。この変更によって、人に勧めていただくことがやりやすくなったのではないかと存じます。
参考文献のページで、一番肝心な『大審院刑事判例集』法曹会編が抜けておりましたので追加しました。『戦前の少年犯罪』は新聞記事だけではなく、この書と『法律新聞』によって読むことのできる裁判記録はすべて目を通して執筆しております。『法律新聞』というのは、判決文と解説をずらずら並べて月に12回発行していた戦前の新聞で、いまの『判例タイムズ』みたいなもんです。現在発行されている法律新聞とは別物だそうです。
あとはp32の「ウサギを生きたまま」の頭に最初から入ってるはずだったのになぜか抜けてた「なにせ、」を追加したり、p38の「五年も六年」を正しく「五年も六年も」にしたりといった細かい修正2ヶ所だけです。
増刷がなったと云えども、初版はあまりに部数が少なくほとんど同人誌かというような具合だったのが、ようやくまともな出版の初版レベルになったということでもありまして、初版はじつに数が少なく貴重ですので、いくぶんおとなしくなってしまった増刷とは違った「ビシバシ版」として珍重していただければ幸いです。

事実関係の間違いなどは上記の統計以外にいまのところ見つかってはいないのですが、この事件についてご指摘をいただきました。


昭和10年(1935).4.21〔18歳(満16〜17歳)が主人一家3人惨殺〕
 岩手県九戸郡の雑貨店で深夜2時、雇人(18)が侵入して主人(45)、妻(29)、長女(7)を殺害、逃走したがすぐに逮捕された。日頃から妻に虐待されているのを恨み、斧で頭をめった打ちにしたもの。

昭和34年発行の『岩手の重要犯罪』という本では、小学校でずっと主席を通していた頭のいい少年を姉は女給をしながら高等小学校に通わせてやったが、卒業後に励ますために「お前を学校にやるため多大の借金をして女給をやめることができない。奮発して立派になってくれ」と、実際には借金はないのにウソを云ったため、純真な少年は姉を救うために金を盗ろうとしたので、「性質は温和実直で主家からも近隣からも可愛がられていた」ともあって、恨みとは考えにくいということでした。
この事件については新聞の短い第一報だけを元にしていまして、この本は読んでおりませんでした。『岩手の重要犯罪』は岩手県警察本部が古い資料を集めたり実際に捜査に当たった当事者に話を聞いたり当時の捜査メモまで収集して総力をあげて編纂されたもので、この事件についても詳細を極めており、信頼性はかなり高いです。
しかし、問題の動機についてはいささか疑問もあります。なにせ、盗みを見つかったので弾みでとかいうのではなく、最初から主人夫婦を殺す計画を立てていたというのです。金の入ったタンスはカギが掛かっていて簡単には開けることができないからという理由は一応あるのですが、可愛がってもらっていた主人を殺す要因としてどうももうひとつ釈然としません。マサカリでそれぞれ4回と7回と滅多打ちにして無惨な殺し方をしていますし、この本では4歳となっている娘も騒いだからではなく騒いだら困ると目を覚ましたところをいきなり4回もマサカリで顔を殴って殺しており、たんなる盗みのためと云えるのかどうか。吉川英治の『鳴門秘帖』からヒントを得た殺し方ではあるのですが。
極めて成績のよい優等生で文学少年だったというのも、この手の大量虐殺事件にありがちのパターンで、掘り下げてみる価値がありそうです。書き換えるのは、もうちょっと私なりに調べてからにしたいと思います。
もっとも、動機などというものは掘り下げても本人でさえはっきりわかっていかどうかは疑わしいもので、あくまで私なりの納得という自己満足の世界ではありますが、自分自身がなんか引っかかったままの文章をみなさまに提示するというのも気が咎めるものですから。
ちなみにこの本は「努めて資料収集し、正こうを期しているがしかし不備なものなどがあり、充分意をつくせないものもある」と序文に記されておりまして、私がほかの資料で調べた確かなことが載っていない事件記事なども見受けられますからもちろん完璧というわけではありません。「正こう」とは正鵠のことですかね。
ただ私のまったく知らなかった事件も多数掲載されていて、ご教示いただき感謝しております。

以上のような塩梅です。正月早々、めでたさと陰惨さが錯綜した渾沌たる年の幕明けにふさわしいお話でありました。今後ともみなさまよろしくお願いいたします。