2013年06月21日

リトル・ミス・サンシャイン

リトル・ミス・サンシャイン [DVD]

泣いて笑って楽しい映画、では絶対ないです、これ。


梅雨の湿気で、心も体も鬱鬱と逃げ場がない時は、見る映画も選んでしまう。
大好きな香港おバカ映画やカンフーやゾンビ映画は、気力が充実していないと見ることができない。

しばらく戦争映画ばかり見ていました。(この一本というのに出会ってしまった)

合間にハリウッドお気楽映画で息抜き、って感じで、この映画もそのつもりだったのです。

ドタバタなロードムービーだと気楽に見ていたら、大間違いでした。
こんなに気持ち良く予想を裏切られたのは久しぶりです。


リトル・ミス・サンシャインというのは、美少女コンテストのことで、
その地区予選に出る娘のために、家族が奮闘するお話。

家族構成は、父と母と祖父(父の親)と兄妹の5人。
はじまりは、母の兄が自殺未遂して、母が迎えに行くところから始まります。

スピーディーな展開で、この家族が結構悲惨な状態であるのに気付く。
でも観てるものがうんざりしないのは、かわりにうんざりしてくれる伯父や兄の存在があるから。

みんなが問題を抱えていて、しかも、ますます状況は悪くなっていくのね。

前向きで明るい、それがキーワードなのかな、お父さんが、勝ち組になるための法則を考えて
それを出版してひと山当てるつもりなんだけど、これがことごとく、いちいちうざくて、
普段前向きで明るい私でさえ(笑)、反発を感じてしまう。

どんどん悲惨になるが、このひとたちはそれを面白く感じちゃってるのではないか、
と思ったりする。それがDVDの表紙のバスで、このバスは、クラッチがおかしくなって
自力でスタートできないのです。
みんなで押して、走りだしたら順番に飛び乗る。最後の方はスピードも付いているから必死。
誰も、楽しいな面白いなとは言わないんだけど。

父のダメっぷりとか、兄が空軍に入りたいとか、家族構成が「トウキョウソナタ」に似てるかとも
思いました。家族の再生物語としては同じです。
トウキョウソナタには、救いとなる奇跡や弟の才能もありましたが、この映画には、それも最後までない。
最後まで奇跡は起こらない。すごいです。それでも再生しちゃう。

私は、この映画を見て、泣きも笑いもハートウォーミングにもなりませんでしたが、
あとからじわじわとキテいます。

見ながら感心したのは、キャスティングの見事さ。

母親が、大好きなト二・コレットで、父親がめちゃくちゃぴったりやなあ誰?と思ったら
「ふたりにクギづけ」(ナイスなナイスな映画!)の片割れでした。
妹役は、「私の中のあなた」の女の子で、こちらはもう言うことなし。

で、兄役の少年(15歳という難しいお年ごろ)がよくて、調べてみたらポール・ダノという人。
同じ監督の「ルビー・スパークス」って映画にも出ていて、こちらは主演とプロデュースも。
同じく主演プロデュース(そして脚本も)をしているのが、ゾーイ・カザンで、「恋するベーカリー」の娘役だ。
なんとエリア・カザンの孫で、このふたりは実際でもパートナーだそうだ。すごいなあ。しっかりしてるなあ。

主役のみならず、病院の職員や、ミスコンの役員やミスカリフォルニアや、
ミスコン出演の少女たち親たちにいたるまで、全てのキャスティングが見事。

久々に良きハリウッド映画を堪能できたって気持ちでいっぱいです。

脚本がなんと「トイストーりー3」の人で、この映画私は未見ですが、
息子たちが観てきて、号泣も号泣。大変だったとか。

つい、底が浅そうに見えるハリウッド映画界の才能は、底知れずですね。  

2013年06月04日

「囁く谺(うごめくこだま)」 ミネット・ウォルターズ

3冊同時に読む、なんてこと書いちゃいましたが、ミネット・ウォルターズが入ると
比重が傾いてしまう。

囁く谺 (創元推理文庫)

またも素晴らしいです。この人の才能はとどまるところを知らない。

ある女性の家のガレージで、ホームレスが餓死している。
横に冷凍庫があるにもかかわらず。まるで自ら飢え死にを選んだかのように。

その取材をすることになったジャーナリスト、裕福な中年女性を想像していたら、
ワケアリそうな美人で、餓死したホームレスにも興味をひかれる。

冒頭、女性が死体を発見するところから始まるし、ジャーナリストはいけ好かないし、
(女性との対比に、若くてセクシーなカメラマンを持ってくるところなど何気に秀逸すぎ)
この女性が主人公だと思っていたら、すかっと足をすくわれました。くー、悔しい。いいなあ。

このジャーナリストが、ミネット・ウォルターズ初めての男性主人公。

しかし、初っ端から行方不明者の文献が出てきて、どうかかわってくるのか、
それどころか、主人公も間違えてしまうぐらい設定もストーリーも複雑に入り組んでいる。

何度も前に戻って見直しながら(ミネット・ウォルターを読むときはいつもそうだが、この本は特に)、
なおかつ、次がどうなるかと、読み進むスピードも速くなる。

この作家のテーマである小児愛への嫌悪も相変わらずだが、今回は恋愛が出てこず、
そのかわり、奇妙な友情があって、すこぶる面白い。

ジャーナリストと、その同僚で小太りの童貞30男(写真顔の記憶力が抜群)、
スキンヘッドのストリートキッズ(ホームレスの保護者であり被保護者でもあった)。

この三人に、引退したユダヤ人の弁護士も加わり、
それぞれ孤独だった男たちが、クリスマスを一緒に祝い、ホームレスの餓死と
付随する横領失踪事件の謎を解くべく、大活躍・・・

と楽しい方向に向かえそうなのに、それをしないミネット・ウォルターズって憎いあんちきしょーです。

安易な感動チックは、ほんの一瞬で、そのあたり、PDジェイムズを彷彿とさせますが、
もっと体力があるので、ぐいぐいと読ませます。

男たちと母親との関係も語られます。
小太りのオタクチックな同僚が、人との付き合いがダメダメに反して、
スキンヘッドの少年の言葉巧みなこと。
ジャーナリストと母親との間にあった溶けない氷をも溶かしていく。

あら、ミネット・ウォルターズ。
(男には手厳しいけど)少年には甘い?と思ってたら、やはり足をすくわれます。

最初ヒロインだと思って、つい肩入れしていた女性にも、いつの間にか違う感情を抱くようになるし、
作者に鼻面持って引き回されてしまう。まあそれが嬉しいと言えば嬉しい。嬉しすぎる。

死の影があちらこちらに張り巡らされているし、もちろん物語から登場人物まで複雑すぎるほど複雑で、
運命論や宗教、詩や絵画までもが網羅されていて、おなかいっぱいになるはずが、
皮肉が効いているから、奇妙にすがすがしい。

また次が読みたくなる。麻薬のようです。



  
Posted by kani16 at 11:39Comments(5)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年05月30日

「昏(くら)い部屋」   「感謝祭は邪魔だらけ」

読むのはほとんど海外ミステリばかりですが、パターンとして、
3冊(以上)同時読み、が多いです。

すでに読んであるものが1冊必ず入っていて、ロス・トーマスや金庸など。
今は、ヒルの「ベウラの頂」で、胸がくーーーーっ!!となります。
相変わらずの面白さもさることながら、もう新作が読めないのだと思うと余計に。

そして「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(もうなんでか、めちゃくちゃ好きな映画)の原作
「死のサハラを脱出せよ」 ミステリではなく冒険小説ですが、すこぶる面白いです。
これ読んでから映画見たら、情けない気持ちになると思う。先に映画見てあってよかった。
映画も楽しめ、本も楽しめる。

それと、「大人養成講座」 これはまた違った意味で面白い。
電車内、イヤホンで音楽聴きながら、軽く読んでると、声出して笑ってる自分に気付かず、
大人にあるまじき恥ずかしい行為をしてしまった。

そして、いよいよミステリ(前置きが長くなってしまいました)

ご存じ ミネット・ウォルターズ第4弾「昏(くら)い部屋」

昏(くら)い部屋 (創元推理文庫)

交通事故にあったヒロインが、病室で目覚めるが、その前後の記憶がない。
その間に、婚約者と自分の親友が婚約をしていて、しかも惨殺されている。

自分が犯人かも、という怖さだけでなく、身近な人が犯人かもしれない。
なにより、婚約者がどうして親友と。。

警察から容疑者として疑われ、心理的にも追いつめられるヒロイン。
読んでいるこちらも、もしかして、このヒロインが?なんて思ったりもするし(すっかり作者の意のまま)

しかしそこは、ミネット・ウォルターズ。一筋縄ではいかないのですよ。
重要人物であるヒロインの父が、最後の最後まで出てこない(声だけ少し出演)。

あるいは元婚約者。これが良い家柄の鼻もちならない男性である、というのが
周りのみんなの話で、少しずつ明かされる。
しかし、それを横取りした親友。この親友の造形が見事で、でもやっぱり、くっきりとはわからないわけ。
 
隔靴掻痒とはこのこと。靴越しに足を掻いてる感じね。
でも、イライラしないのです。小手先の技巧じゃないから。

読みながら、もう誰が犯人なのか、と久々に、推理小説頭脳(@犯人探し)を使っちゃいましたよ。
アガサクリスティを読んでた頃の純な私に戻った感じ?(滅)

で、やっぱりナイスな犯人が用意されているのですけど、最後にひとひねり。
これを余韻と言うか、もやもやと言うか。


すっきりしないまま、一緒に借りた「感謝祭は邪魔だらけ」で気分転換を、と。

感謝祭は邪魔だらけ (創元推理文庫)

表紙から、いかにもなコージーミステリ。

ヒロインは家事アドバイザー、というので、尻込みしちゃいましたが、
訳が島村浩子なので、絶対ハズレない、と確信を持って読みましたら、
全く予想どおり。すごく楽しかったです。

家事アドバイザーって、マーサ・スチュワート(名前しか知らない)みたいなの?
よくわかんないけど、テーブルセッティングだとかルームアロマだとか、飾りつけとか。
バスルームにゲストバスケット。キャンドルに、小枝を編んだお手製のリース。

わんこ2頭と息子たちと家の中パンツ一丁の夫がいる身には、遠すぎる存在。

洗面台には「そったおひげはきちんと流すこと!」と書いた付箋を貼っています。
我が家は男子寮か(泣)

ともあれ。ヒロインの親友(これまたヒロインの元夫と同居中)は、完璧な家事アドバイザーで、
家事に手抜き一切なし。見た目もエレガントで美人だが、性格悪い。

ヒロインは、親友と言うよりライバルで、適当に楽しくしましょうというタイプ。
(そして、ダイエットが必要な身体の持ち主)

そのヒロインが、2度続けて殺人の第一発見者になり、しかも感謝祭の招待客がどんどん増えていく。
適当に、とは言うものの、みんなに朝食からディナー、夜中のおつまみおやつまで
大量にかつ、おいしそうなお料理がふんだんに披露されます。
(もちろん、センスのいいテーブルセッティングもしているし、コーヒーも何種類か立てて、ケーキも色々と自家製)

ああ、アメリカに生まれなくてよかった!と心から思いましたよ。

こういう家事の努力って、自分や家族を気持ちよく、てんじゃなくて、お客様向けなんですよねあくまで。
おうちをパーティー会場にしちゃうお国柄ですもの。

せいぜい親類が集まる、お正月や法事ぐらいしかない日本は、なんていい国なの!^^

家はくつろぎの場だと思っている私には、別世界のようで楽しめました。

ミステリ自体は、にわか素人探偵の、明るい2時間サスペンスって感じですが、
なんといっても、訳が島村浩子様(様付け)ですもの。

これがもし、
あらら、サンドウィッチを作らなくちゃ、ええと何がいいかしら。いやだ七面鳥があるじゃない。
みたいな、もう、女性を前面に出しました、って感じの、いかにもな訳なら、絶対読めなかった。

島村浩子訳なので、ヒロインは、あっけらかんとした知的な女性になり、
その探偵ぶりも、ハラハラドキドキ楽しめても、イライラすることが皆無。

すごく楽しめました。  
Posted by kani16 at 18:10Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年05月17日

鉄の枷

鉄の枷

やはり、どうしてもミネット・ウォルターズが読みたいと、今度は創元推理文庫ではなく、
東京創元社、つまり単行本を借りてみた。(しかし、単行本にも解説があった笑)(読んでいない)

ひゃあ、もう、全く。期待はずれは皆無。面白さはいや増しています。
ゴールドダガー賞の本作もまた、素晴らしすぎる出来栄え。ああ出会えてよかった!

老婦人の日記の断片から始まり、その日記は、折々にはさまれています。
冒頭の引用文といい、ヒルの名作「骨と沈黙」(同じくゴールドダガー賞。こちらは日記ではなく手紙)を思い起こされましたが、ヒルほど老練でなく、完成度は高いまま、あくまでフレッシュです。

ヒロインは医者で、患者である老婦人が奇妙な様子で自殺しているシーンから始まります。
シェークスピアがふんだんに引用されていて、ヒルと同じく、著者の非常な読書家ぶりがしのばれますが、
本を読まない刑事が、読んでみようかと、勧められた書名をメモするなど
本好きには嬉しい場面もあります。

自殺が疑わしい中で遺言が発表され、そこにはヒロインの医者に財産を譲るとある。
娘と孫娘がいるにもかかわらず。このふたりが邪悪なのかどうなのかあいまいだし、
ヒロインの夫が売れない画家で、彼の好色さも不安。
なにより、死んだ老女を嫌いだという人が後を絶たない。

ミネット・ウォルターズは、猟奇的要素を帯びながら、サイコな心理をわかったふうに描かないように、
たとえば人物造形にしても、エッジが効いていないというか、あやふやとまではいかないけども、
表層的だという印象を持っています。

つまり、良い映画のように、説明過多ではなくて、あくまでも見えたままなのです。

ヒルほど心理描写にはたけてないでしょうが(すみません、どうしてもヒルと比べてしまって)、
登場人物がものすごく魅力的で、説明不足な分、後で驚きが待っていて、
主流のミステリだけでない楽しみがあります。
(軽い例を挙げるなら、読者は中年刑事がどんどん好きになっていくのではないでしょうか)

そのあたり、ブロンテやオースティンから連なる、イギリス女性作家の味わいがあると思います。
ともあれ、次も読みたい。まだまだ読みたいです。  
Posted by kani16 at 13:55Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年05月08日

女彫刻家

レヘインの「運命の日」を読んでいて、もうすぐ上巻が終わるって時に、
たまたま手に取ったら。。。

もう、読まなきゃ読み進めなきゃ読み終わらねば、と夢中になった「女彫刻家」

作者は「氷の家」のミネット・ウォルターズです。素晴らしい。

女彫刻家 (創元推理文庫)

「氷の家」ではCWA新人賞を、そしてこの作品ではエドガー賞、なんと次作でゴールドダガー賞と。

【彼女は最初の3冊で3つの主要な賞を勝ち取った初めての推理小説家となった。】(ウィキペディアより)

賞を取って、それに恥じないというか、読者の期待にも押しつぶされないというか、
まだ2作目しか読んでいませんが、その力量や恐るべし、いや、喜ばしい、めちゃくちゃ嬉しい。
またも好きになれる作家に出会えた喜び。


この「女彫刻家」は、ヒロインのフリーライターが、自分自身の母と妹を惨殺した囚人に
会いに行くところから始まります。

その最初からすごいです。
印象が二転三転し、ああこれは、じっくり読み進めなくては、という気分と、早く早く次はどうなる、の気分がせめぎあい、それはもう、読みながら物狂おしくなるのですよ。一瞬で作家の手中に落ちる。

囚人は、女彫刻家と呼ばれ、まずその容貌が奇怪。
恐ろしく太っているのです。身長180cm、体重は165kg以上。

そのグロテスクな身体で、妹と母を殺した罪で無期懲役。しかも殺した二人を切り刻み、パーツを変えて元に並び変え、殺人現場は凄惨で、ベテラン刑事も嘔吐を繰り返した、と。

などとあると、猟奇的な内容かと思われるけど、そういう気持ち悪さは読んでいて感じられません。
それ以上に物語が面白いからです。

ヒロインは過去を抱え、ロマンスに出会うも、相手もわけありです。
フリーライターとしての手腕もあるし、囚人が無罪ではないかと疑問を晴らしていくのですが、
ラッキーな冒険譚ではなく、謎ときとハードボイルドが交差する複雑な内容。

全く一筋縄ではいかなくて、作家の思う壺の中でおぼれながら、至福のひと時でした。

しかし、この作品、余韻を持って終われるはずが、解説があまりにひどすぎでした。

いきなり、PDジェイムズ「女には向かない職業」の文体でトマスハリス「羊たちの沈黙」の世界を描いたら、とあり、的外れな二番煎じに唖然となったのですが、読み進むうちにあほらしくなってすぐ読むのをやめたので、文句を言う資格もないのですが、やはりamazonのレビューにも同じ感想があって、やっぱりなあと思いました。

確か、創元推理文庫は、表紙と解説がいまいちだったんじゃないかと、認識を新たにしました(笑)

  
Posted by kani16 at 14:51Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年04月24日

「毒の目覚め」  「氷の家」  

「三つの秘文字」が面白かったので、「毒の目覚め」にも期待しましたが、
うーん。。。(すみません)

毒の目覚め 上 (創元推理文庫)

またも同じようなヒロインで、今度は顔に醜い傷がある、しかしやはり自意識超過剰。
うんざりでした。

結局、他人(特に男性、独身笑)に、傷はあっても美人と言われて、やっと落ち着くというか。
いい仕事してるんだから、それに誇りを持てばいいのに。

若い女性だから、仕方ないのだとは思うものの、私自身が自意識過剰だった若い頃の
デフォルメされた姿を見せられているような気もしないでもないのが、くやしいところ(笑)

最初は面白かったのですが、読み進むにつれて、「三つの秘文字」と同じような構成、
おどろおどろに、どんどんしらけてしまったのですすみませんです。

「三つの〜」は、クールな美女が相棒で、それが痛快だったけど、今回は全部男性で
ヒロインがこっそりヒートアップするばかり。

傷の真相が明らかになるところも、作者の技巧が感じられて、驚きもなかった。

amazonでは、レビューもいいし、この本のあとがきでも前作よりいいようなことが
書いてあったけど、私には悲しいほどダメでした。


で、たまたま一緒に借りていた「氷の家」を読みました。

氷の家 (創元推理文庫)

カバーイラストが、ハーレクインふうで、どうなの、と思うものの、CWA最優秀新人賞受賞ですからね。

ついでながら、「毒の目覚め」もMWA受賞とあって期待したわけですが、後で調べたら
エドガー賞ではなく、メアリ・ヒギンズ・クラーク賞でした。そんなのってありか。ていうか納得。

いやあ、「毒の目覚め」に対して、ここまで皮肉るって、なんでやと思うが、
この「氷の家」を読んでもらえれば、わかると思う。

すごすぎる。

宣伝文句が「ポーとオースティンが協力して書いたら」と、大きく出たみたいですが、
過言ではないと思ってしまう。

三人の女たちが暮らすイギリスの屋敷。そこの庭番が走るのを見て、
あらあらと、女たちがクールに反応するシーンから始まります。

人物描写が単純明快でないので、最初からややこしく、でもそれは、嬉しい複雑さ。なのです。

主役脇役、すべてがヒトクセあるといってもいいほどで、しかも視点が次々変わる。
(いや、主人公自体、誰とも特定できない、最後まで)

死体が屋敷の氷室で発見され、過去の行方不明事件との関連に偏狭な警察。
女三人で住んでいる、ということで、レズビアンだの魔女だのと噂する田舎の住人達。

その女三人も、なかなか実態が見えてこなくて、そのあたりが、もう、うまい。

最初戸惑いながらも、ひきつけられ、読み進むと、もっとずっと面白くなり、
最後に、ぴたりと着地する、その気持ちよさ。

フェミニズムの女性が、痛快に浴びせる男への言葉。そのあとに、きちんと応酬する男もまた見事。
忌まわしい記憶の癒され方が、声高でなく、深く納得させられる。

華々しさだけが女の喜びではない、そんなオースティンの静かな笑いと、
ポーへのオマージュもまた、私には確かに感じられました。  
Posted by kani16 at 12:13Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年04月11日

「三つの秘文字」  /  「死せる魂」

(私にとって)新しい著者の、2作

S・J・ボルトン 「三つの秘文字」

三つの秘文字 上 (創元推理文庫)

S・J・とくれば、スーザンですが、ボルトン、やはり、女性作家です。

女性が主人公。産科医で、結婚しているが子供はいない。
子供を渇望しているが、なかなかできず、患者に対しては、医者として誠意を尽くすし、
有能だけれど、心の中で、(子供できるんやから、ちょっとは我慢しろよ?)みたいに思っている。

夫はハンサムで、その夫がほかの女性に微笑むと苦しくなったり、
上司に色気のある男がいて、ちょっと心が揺れたり、
なにより、自意識過剰なのか、同僚など他人と気軽なおしゃべりができず、
下手な冗談が上滑ったり、冷静なのが冷酷と思われていないかと気に病んだり、
クールな女医ながら、非常にイタイ女性なのだ。

自分の大事な馬が死んで、それを埋葬しようと庭に穴を掘る。ショベルカーで。
そこで死体を発見する、という、大胆なプロローグが見事。

ぐいぐいとひきつけられますが、一人称で語られるヒロインの産婦人科医が
上に述べたように、性格的にイタすぎて、読みながら、イライラしてくる。

パトリシア・コーンウェルのケイ・スカーペッタシリーズも、最初は、アメリカの進んだ法医学が面白かったり、スカーペッタが昇進していき、貫録がつくかと期待してたけど、その神経質ぶりがもうたまらなくなって、とうに読むのをやめてしまっている、それと同じならどうしよう、と、一瞬危惧したが、
全然大丈夫。

話が、こちらが心配するほど、複雑怪奇になっていくにつれ、
美貌の刑事(最初ヒロインは、この刑事にいわれなき反発を抱き、刑事と比べて自分が醜い大女に思えてしまったりする)と、タッグを組んで、事件の真相に迫っていくあたりから、加速度的に面白くなるのだ。

舞台がいい。英国のシェトランド諸島。(読後、グーグルアースで確かめましたとも)
陰鬱で美しい島々。バイキングの子孫的男たち。島に残る伝説。

男たちで盛り上がる伝統的クラブに紛れ込んだかのような、孤軍奮闘する二人が、
実に魅力的です。明かされていく秘密も、恐ろしくてぞくぞくするし。

とにかく、作者の力量はたいしたもので、もっと読みたいと思うものの、
まだ2作品しか翻訳されていない。さっそく次の「毒の目覚め」を読み始めていますが、
主人公女性、こんどは野生動物の獣医で、またも他人との距離感がダメダメな人です(笑)
でも、絶対面白い、という確信を持ちながら、読むことができるのが、嬉しい。



この2作品の合間に

「死せる魂」を読みました。

死せる魂―リーバス警部シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

実は、初イアン・ランキンです。

英国ミステリで警部シリーズ、となれば、読みたくなって当たり前なのに、なぜか食指が動かず、
図書館で見るたび、手にとっては、書棚に戻していました。

想像通りの重さはあったものの、びっくりするほど複雑に絡み合った事件が、
収斂されていく終盤に、うまいなあ、とびっくりさせられました。

キャラクター重視の読者である私には、このリーバス刑事の魅力が
いまひとつ感じられないので、次々読みたい!という気持ちにはなれませんでしたが、
イアン・ランキンの、ミステリとしての質の高さは、十分感じることができましたし、
やはり、舞台もよく(英国エジンバラです)、一つの作品に入れるのはもったいないと思えるほどの
たくさんの事件が同時に進みます。
それぞれが、みなうまい。うますぎ。読後感もいいですし。

イギリスミステリはやはりいいなあ、と思ってましたら、
なんと、PDジェイムズが、新作を出したそうです!

1920年生まれですよ?90歳過ぎての新作。
しかも、「高慢と偏見、そして殺人」と、なんとオースティンの続編だそうです。
くー。読みたい。

新人、中堅、大老人、と、なんとイギリスは、魅力に満ちているのでしょう。  
Posted by kani16 at 12:58Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年03月13日

「恋するベーカリー」 「そんな彼なら捨てちゃえば?」   

ワンコのことで、あまり眠られず、風邪も長引き、
味覚と嗅覚がなくなってしまいましたよ。一時的なものだと楽観していますが、
すごく不思議な感覚です。

食べても味がわからないのだけど、味気なくてつまらない、というのではなく、
やはり食べると嬉しいし、満足感はある。でも、味付けは不安だし(家族に対して)、
なにより、腐敗やガス漏れなど全く分からないだろうから、生命的な危機感があります。

ともあれ、精神的に弱いときは、やっぱりハリウッド映画に限るね、と
バーティカルリミットや、バイオハザードシリーズとか、軽く見て楽しんでいます。

そんな中、掘り出し物、2作品。

こういうときじゃなきゃ、絶対録画してなかっただろう、ラブコメ満載な邦題。

しかし、これが予想を裏切る、ナイスな映画でした。


「恋するベーカリー」

恋するベーカリー  /別れた夫と恋愛する場合 [DVD]



まず、ベーカリーは、ほとんど出てきません。
ヒロインのメリル・ストリープは、ベーカリーの経営者ですけど、小さなパン屋さんてのじゃなく、
何人も人を雇って運営している、イートインというより、レストランがある、大きくて清潔なベーカリー。
非常に繁盛していて、メリルの自宅も大きくて、庭には自家菜園もあって、そりゃまあ、夢のような環境。

別れた夫は弁護士で、若い女性と浮気して再婚してるし、子供たちは大きくなって
独立して出て行き、大きな家に一人住むことになる、ってはじまり。

スペイン風のお屋敷。白い壁、瓦屋根で、ほんとにほんとに素敵な家なんですよ。
犬とか猫とか、いっぱい飼って、楽しく暮らせばいいのに。。。なんて思ったら映画にはならないのよね。

なんでアメリカって、おひとりさまを認めないのか、不思議ですが、
セックスアンドシティといい、お金や仕事や友人に恵まれてこその、
贅沢な恋の悩み。

中高年の女性たちが、ガールズトークしちゃってるのがすごい。

(私も中高年で、ガールズトークもしてますけど笑、恋愛セックスは皆無で、塩麹をどう使うかとか、どこのパンがおいしいとか、ベーカリーに恋してる仲間が多い@人気なのはポールのパンです)

ともあれ、メリル・ストリープ、元夫のアレック・ボールドウィン(また太って素敵〜♪)と
不倫しちゃう、って展開になる。

並行して、家の増築を頼んだ建築家(スティーヴ・マーティンが魅力的です)とも
上手くいきそうな予感。

このあたりの複雑さは、「恋愛適齢期」と同じで、ナンシー・マイヤーズ監督の真骨頂。

中年女性が、すごく魅力的に描かれているけど、若さとの対比じゃないのがいいのよね。

恋愛適齢期では、ジャック・ニコルソンが、もうはじめから若い女性が大っ好き☆と宣言してるし。
(でもだからといって、ばばあは気持ち悪い、どっか行けって男じゃないんですよ?ちゃんと礼儀正しい)

この映画では、若い子どもたちが素敵で、長女長男次女の三人。すくすくとうまく育っていい感じ。
特に長女の婚約者がいい味出しています。

全てに恵まれてこその、リッチな恋の悩み。
それが夢物語みたいで、すごくすごく素直に楽しかったです。

(同じワスプでも、サムメンデスとは大違い)

「ホリデー」といい、ナンシー・マイヤーズ監督、大好きかも^^


「そんな彼なら捨てちゃえば?」こちらもひどい邦題

でもこれが、出てくる俳優、とくに女優がゴージャスで、びっくりでした。

そんな彼なら捨てちゃえば? [DVD]

ジェニファー・アニストン(好きですけど、テレビ女優のイメージが強い)が一応ヒロインですが、
群像劇になっています。

初期のセックスアンドシティのように、お題があって、それをめぐるお話。
すなわち、男から電話がなかったとしても、「それはあなたを大事に思っているからよ」などという
女友達の慰めって、どうなん、て感じの。

何組ものカップルが複雑に交差していて、そこにはジャニファー・コネリーやスカーレット・ヨハンソンや
ベンアフレックもいて、それぞれ、友人に見せる顔、恋人との態度が、微妙に違っていて、
納得できて、面白いんです。

監督は、これもよかったなあ「恋するジーンズと16歳の夏」のケン・クワピス。

絡みあった人間関係を、うまくまとめてあげていて、
でも、オールハッピーに終わらせてないのがすごくいい。

メインの恋する病チックなはっちゃきな女の子のお話は、面倒くさかったけど、
他の女性たちのエピソードは、感情移入して、上の「恋するベーカリー」もそうでしたけど、
私は「男の身勝手」が、ちょっと身につまされてました(笑)

過去の恋愛遍歴^^においても、「男の身勝手」的身勝手を感じたら、即、熱がさめたというか。
父が身勝手だったので、それには敏感だったのかも。

また観るには力が要りそうだけど、好きな映画です。

エンドロールで、製作総指揮にドリュー・バリモアの名を見つけて、ああなるほど、と思いました。
  

2013年03月10日

サトリ

サトリ (上) (ハヤカワ文庫NV)

ドン・ウィンズロウに関しては、勝手に見切りをつけてしまって(@傲慢な勘違い読者)、
読むのをやめていましたが、「シブミ」の続編なら、妙なお遊びなどないだろうと思い、
読みました。

いや、やはりすごいです。
ドン・ウィンズロウは、まさしく稀代の名手ですね。

トレヴェニアンへのリスペクトにあふれていて、「シブミ」を称えつつ、越えようとする野心作。
最初から最後まで、気持ちよく読むことができました。

設定もうまく、「シブミ」をすでに読んである人には、時代的に絶対死なないとわかっているし、
「シブミ」への布石というか、目くばせみたいなお楽しみもある。

なんといっても、フーダニットのミステリーの喜びがあって、
冒険スパイ小説で終わっていないのが嬉しい。

ドン・ウィンズロウ、また読んでみたいなとは思うものの。最近のは
上下巻の渾身の力作物が多くて。

介護な私生活(人間のみならず、ワンコが病気になった。実はこちらの方が衝撃的で苦しい)に疲れている身には、ハードルが高いです。

  
Posted by kani16 at 13:47Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年02月22日

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日

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「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」を観てきています。
普通で観た息子,あまりにいいから、と勧めるので、
彼と3Dで、観ることにしましたの。

3Dといえば、同じく感動して2度目の息子△抜僂拭屮▲丱拭次

息子△砲楼いけど、全く印象に残っていないです。
今一生懸命思い出そうとしてますが、先住民のヒロインが
「センターステージ」でバレエがうまい黒人女性だったのを
後で知って納得したのだけ、覚えています。あの優美な動き!

ですので、3D眼鏡も2度目だから、不安はありませんでした。
と同時に、3Dに対しても、(アバターの例があるから)期待を持っていませんでしたし。

先に観てある息子が、やたら「感動巨編」と繰り返しているので、
感動巨編の苦手な私は、息子の趣味に疑問すら抱きつつ、
しかし、映画が始まった時点で、心を持っていかれましたよ。

オープニングから素晴らしいです。見事な映像。

動物園の光景なのですが、ああ、これは、3Dで観てこそ値打ちがある!と。

動物たちの動きがなんとも可愛いし、その色彩、その3Dならではの構成。
うわあ☆と嬉しくなりました。


アン・リー監督
「ある晴れた日に」も好きだけど、どうしても台湾時代の映画が好きな私は、
「ハルク」みたいだとどうしよう、とか雑念を抱えたまま、つい見てしまうのです。

いや、映画が始まって、もう、そういうのすっかり飛んでいって、
ただただ映画世界に浸ることができました。

これは、3Dということもあるのかもしれない。
3D眼鏡をとおしてのみの映像は、直接脳内に入ってくる感が強く、
自分自身が映画の中に入り込んだようでした。


そして、その物語は。

感動巨編と息子が何度も言ってたのは、私を陥れようとした罠だったそうな。息子もヒマな。

いや、感動巨編を期待して行った人は、ものすごく辛かった映画になるでしょうね。

こういうどんでん返し(?)が待っているとは、思いもしなかったです。

それでいて、そのどんでん返しは、思い切りさりげなく、足早に過ぎていくから、
アン・リー恐るべし。

観終わって、エンドロールの間、頭の中で映画を構築しなおさねばならなかったです。
そして、ああそうだったのか、そうだったのか、と何度も納得の波が押し寄せました。

泣くことも、いや、胸が震えるような感動もなく、不思議な感覚です。
ミハエル・ハネケを見終わった後に近いかなあ。そこまで突き放されてもいないけど。

実は観てから、かなりの日にちが経っています。

あとからあとから、じわじわ来る映画です。

日本人が結局粋な采配をしていたんだなあ、と嬉しかったし。

ジェラール・ドパルデューに似た人なんで?しかも一瞬で。なんで?と思ってたら本人で、
それが見終わってしばらくして、その意味(これだけの俳優を持ってくる)がわかるんですよね。

インドの神様は、ヨガを学んでいるので、結構知ってますが、ギリシャ神話のように
人間臭いんですよね。いやもっとインパクトがあるというか。

八百万の神々の「千と千尋の神隠し」が名作であるように、
しかし、宗教観においては、この映画はもっと広く、深い。
その深淵をのぞき見るのは、怖かったです。


この映像が作られるのに、凄まじい労力が費やされたことは容易に想像がつくけれど、
感動巨編に仕立て上げてなくて、本当に良かった。

アン・リーが素晴らしくて本当に良かった。

なにより、こういう作品を少しのお金を出すだけで観られる、というありがたさ。

映画って素晴らしいです。



  
Posted by kani16 at 17:19Comments(0)TrackBack(0)アジア映画

2013年02月01日

ローラーガールズ・ダイアリー

映画館で観る機会が、すっかりなくなってしまいましたが、
映画はやはり好きです。なくてはならないもの。

csなどで放映してくれたのを、録りためていて (ああ、なんていい世の中になったのだろう)、
暇があれば見ていますが、最近見たうちで、もう素晴らしすぎたのが、これ。

ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]

「ローラーガールズ・ダイアリー」 ドリュー・バリモア監督です。

ずっと見たくて、録画してたのですが、ドリュー・バリモアへの期待が大きすぎ、
見るのが怖い、って気持ちもあったの。

主演は、エレン・ペイジ。
すごいですよね、最近の活躍。

「インセプション」で初めて見たのですが、どうも子供っぽくて。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットがいたせいか。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット、「恋のからさわぎ」で、ヒース・レジャーと比べてしまうまでもなく
おっそろしく子役ぽく。「インセプション」でがんばっていても
(あ、あのときの子役やんか)としか思えなかった。

関係ないけど(ってずっと関係ない話が続いてるけど)
ジョセフ・ゴードン=レヴィットを「インセプション」で初めて観た息子,蓮
そのスーツ姿に見惚れてしまい、理想の着こなしだと言う。ふうん。

で、表紙だった雑誌を買ったのを、見せてもらった。

Safari (サファリ) 2013年 02月号 [雑誌]

あら、すっかり大きくなって。

雑誌の中身もなかなかナイスで、西洋男性セレブ達のおしゃれスナップがいっぱい。
うわ、この人良いわあ♪と、思った3つの着こなしのお写真、
なんと全てが、ジェイミー・ベル(リトルダンサー)だったのよ。
うーん、その青年ぶりにもびっくりしたし、やはりイギリス男性はおしゃれがうまいわ。

どんどん離れているごめんね。

「恋のからさわぎ」は、これも絶対お勧めです。

ヒース・レジャーの老けた高校生もいいし、彼の歌もいいし、
そういえば、「センターステージ」でバレエのうまい役だった女の子が結構オタクの役で出てる。
でもなにより、「阪急電車」に驚いてしまう。驚くけど、映画へのいい印象は変わりません。


そう。エレン・ペイジの話だった。

「JUNO」は、すごく期待して見たんです。
女の子が妊娠しちゃって、でも前向きに、養子にしてくれる人を探すっていう。

面白かったのよ。でも、ちょっと期待しすぎたかな、ってのが正直な感想です。
前向きってのが、自分への過度の自信から来てる感じ。しかもその自信は、不安の裏返しなのね。
そのあたりが、うまいけども、見ていてつらかった。

「ローラーガールズ・ダイアリー」は、最初から、ちゃんと自分の気持ちに正直な、
つまり、青春期の自信のなさがあって。

などという、うんぬんかんぬんは、どうでもいいです。

ともかくも、ドリュー・バリモアのセンスのいいこと!!
すごい監督が現れました。

チャーリーズエンジェルでも、そのプロデュース力に驚きましたが、
監督としての力量は、もっと上です。素晴らしいですよ。

私は、女の子映画ってジャンルも大好きで
「リンダリンダリンダ」「ロミーとミッシェルの場合」とか。

この「ローラーガールズ・ダイヤリー」、母親(マーシャ・ゲイ・ハーデンですよ^^)との
葛藤も、なんていうか、不快感なしに描かれているのもいいし、
友人との友情もいいし、ローラーゲームの女性たち(仲間やライバル)とのかかわりも、
もう、何もかもいいですよ。

ドリュー・バリモア、たいしたセンスの良さです。

ちなみにドリュー・バリモアもローラーガールズ仲間で出てるし、
ライバルがなんと、ジュリエット・ルイスです。めっちゃいい。顔が似てると思った。あの人に。
カート・ラッセルに。ごめん。でもカート・ラッセル大好きなのよ。えとニューヨーク1997のスネーク・プリスキン(メタルギアソリッドのモデル!)のカート・ラッセルです。

どんどん話が変わってごめんなさい。
映画があまりに安心して良い映画なので、次々連想しても映画の良さが動かない。

色々勉強してたんだろうな、ドリューバリモア。苦労や努力や才能が
みな良い方向に向かって、しかも肩の力が抜けている。見事な人です。

期待して見て、期待以上の映画でした。  

2013年01月23日

シブミ

トレヴェニアン「シブミ」

トレヴェニアンは、「アイガー・サンクション」「ワイオミングの惨劇」などの作者で、
読むのは初めてです。

シブミ〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)


シブミとは、なんぞやと思っていましたが、まさかの「渋み」でした。

空港でのテロからはじまり、最初出てくるのは、いやな人物ばかりで、
読み進むのがためらわれましたが、菊池光の(いつもの淡々とした)名訳が冴えわたり、
いつの間にか夢中でした。

主人公の暗殺者ニコライは、なかなか登場せず、まず彼の生い立ちから語られます。
この語り口、そして構成も巧妙、なによりも、「シブミ」が示す通り、彼は日本で青年期を迎えるのです。

思いっきり日本びいきで語られるので、読んでいて気持ちがいいです。本当に^^

反面、アメリカのことはボロカスで、ここまで言わなくても・・と思いましたが、
ひいきする日本は、戦前の美しい日本で、その後の日本はアメリカ化していると
けんもほろろなのです。

ともあれ、テロに始まる一連の出来事(つまり本筋)より、
この日本の描写、若き主人公と彼を取り巻く日本の人々が、素晴らしく胸を打ちます。

上下巻ですが、上巻はほとんど彼の生い立ちに費やされます。

そして現在、中年となったニコライは、バスク地方に、日本庭園を自分で造園した屋敷に
美しい妾と住んでいるのです。

下巻がはじまると、まず、ケイビングの描写が延々と続きます。
ケイビング、すなわち洞窟探検ですが、これがまた、素晴らしいのですよ。

微細に綴られるケイビングシーン、伏線として必要なのかもしれませんが、
妾とのゴージャスなラブシーンとともに、物語にはなくてもいいものだと思います(笑)

しかし、日本の描写といい、ケイビングといい、それらがあったからこそ、
この「シブミ」は、名作となったのだと、心から思います。

物語そのものより、日本の囲碁(ニコライは囲碁を学んでいます)、あるいはバスクの人々、
そういったサブストーリーが魅力的な、なんとも不思議な物語でした。

一読に値します。

  
Posted by kani16 at 19:33Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2013年01月22日

「シャッター・アイランド」 「ミスティック・リバー」

すっかりご無沙汰でした。

相変わらず、海外ミステリは読み漁っていますが、
ほら、チェーンスモーカーの煙草と同じで、読み終えるやいなや、次の本に移って、
それがまた面白かったりするから、ここに書こうと思いつつ、読むことに没頭してしまいました。

この2冊は去年読んだものですが、昨日「シャッター・アイランド」の映画を見たので、
レヘインを読んでる時の、興奮と切なさがよみがえってきたのです。

シャッター・アイランド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

精神病院が舞台。しかも患者は犯罪者。島一つが病院で、嵐が起こり、閉じ込められる。

絵にかいたような設定ですが、さすがはレヘイン。見事に読者を翻弄させる内容です。

前半の、本格推理的な謎とサスペンスが素晴らしい。

密室からの失踪、残されたメッセージ、暗号文、不可思議な院長。
尋問する患者たちは、恐ろしい罪を犯していて、精神を病んでいる。

精神病院が舞台というのは、ミステリとして描きやすいと思うし、
事実、その前に読んだ「迷走パズル」は、懐かしい古典の味わいたっぷりで、楽しめました。

迷走パズル (創元推理文庫)

しかし、古典ミステリと違い、今のミステリは、ひねりが必要なのか、
素直に終わらない。
読んでいるうち、まさか映画「アイデンティティー」落ちになるのでは、と危惧してたら、
その通りになって、ちょっとショックだった。

しかし、そこはレヘイン。最後の最後にものすごく切ない。
切なくて胸がいっぱいになったのです。

映画は、ひろさんに以前コメントで教えていただいて、ディカプリオが主演だとしか知らずに見ました。

シャッター アイランド  [DVD]

キャストに驚愕でした。
あまりにイメージ通りなので。
(女性のイメージは違いましたが、ディカプリオの妻役と言えば、「インセプション」の妻の人が全然好きでないので(おかげで「パトリックエネミーズ」も楽しめなかった)、イメージが違うくらいどうもないです長々とすみません)

原作読んでから映画を見るのは、裏切られるのが多いのですけど
(ゆえに私は「見てから読む」派です^^)
この映画は、非常に面白かったです。いやむしろ、落ちがわかっている分、よけいに面白かったのかも。

こんなキャスティングや、地味な所にふんだんにお金を使った映画誰が撮ったのよ、と
思ったら、マーティン・スコセッシ監督でした。なるほど〜・がってん〜。

スコセッシ監督は、「デパーテッド」もあまりに見事で、アンソニー・ウォン命の私でさえ、
ちくしょーうまいなあ、と悔しかったのですが、「シャッター・アイランド」でもオリジナルに忠実な
なんかもう「ワザ」としか言えないような、すごい監督ぶりです。

原作、映画とも楽しめるいい作品でした。

しかし、映画と言えば、やはり クリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」

こちらは、「見てから読」んだので、映画で圧倒され、原作読んで、さらに圧倒されました。

ミスティック・リバー (ハヤカワ・ミステリ文庫)

幼馴染だった少年三人が、大人になり、
被害者の父、容疑者、警察官、となる。

少年の日々の導入部分から、胸を打ちます。
遊び友達である、その描写がすでに容赦なく、しかし、どこにも陳腐さがない。

映画とはまた違って、じっくりとその物語世界に浸れますが、
その分、読んでいる間中、心が苦しく、でもそれもまた喜び、希有な作品に出会えた喜びなのです。

デニス・レヘイン(この2作とも「ルヘイン」です)は、すごすぎます。

ドン・ウィンズロウも、ジェフリー・ディーヴァーも、シリーズ物で好きになって、
でも、他を読んで、(たまたまの巡り合わせだろうけど)なんだかなあと思ってしまって、悲しかったのですが、
レヘインは、いまのところ、全てが素晴らしいです。  
Posted by kani16 at 14:21Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2012年12月02日

ミラーズ・クロッシング

ミラーズ・クロッシング (スペシャル・エディション) [DVD]

コーエン兄弟監督ですが、いつものメンバーが顔を出しているにせよ、
イメージとは違いました。

もっと皮肉な演出なのかと思ってましたら、
素晴らしく真っ当なハードボイルドです。

それも、映画的ハードボイルドというより、むしろ、活字のハードボイルドが匂い立つような。

ハメットの世界そのままなのです。
(「マルタの鷹」よりも、ずっとずっとハメットの物語世界があったと思う。)

ガブリエル・バーン扮する主人公は、ボスの女に手を出し、敵対する組織に寝返る。しかし・・
禁酒法時代のアメリカが舞台。

主人公は、寡黙で頭がよく、博打が弱く(女にも弱く)、常に殴られながら、きちんと筋は通す。

これはもう、ハードボイルドの探偵そのままで、それを演じるガブリエル・バーンの
なんとまあ色気のあること、美しいこと。ゾクゾクしますよ。

ただ、個人的に、色気のある男が苦手な私は、
コンチネンタルオプを彷彿とさせるもっと太った男の方がいいのに、とか、
このガブリエル・バーンってトニー・レオンを彷彿とさせるで、
とか、、、色々勝手に彷彿とさせられてましたが、映画はすごくいいんですよ。

特に殺し方。

古き良き殺し方なんですよね。
銃撃戦も古式豊かというか。機関銃の鎗火^^が素晴らしい

でも古くささはなくて、バキューン、うっ(血もぬ出ずに死ぬ)という形式美ではなく
ちゃんと血は出るし、殴られたら顔も腫れる。でもことさら痛々しくないのね。

死体を発見する犬と少年のシーンや、一瞬だけ出るスティーブ・ブシューミにコーエンらしさもありましたが、
やはりこの映画は、(トニーレオン彷彿であっても)ガブリエル・バーンの魅力に尽きると思います。

キャスティングがいいのね。

ジョン・タートゥーロもよかったけど、その姉(ボスの女、つまりガブリエル・バーンと好い仲になる)がいい。
キャサリンゼタジョーンズをファニーフェイスにしたような、あるいはミラジョボビッチのような、
粋な粋な女性で、現代的な美貌も併せ持ってる。

誰だろうと、あとで調べたら、なんとマーシャ・ゲイ・ハーデン!
信じられない。ごめん。失礼か。

「ミスト」のあの狂信的なおばはん(失礼ないい方でごめん、でもめちゃムカツク人だったのよ)ですよ?

それに、「ミスティック・リバー」のデイブの妻。

すごくうまい女優さんだなあとは思っていたけど、すごくきれいな女優さんだったのね。
それを知ったのも嬉しい驚きでした。

「ミスティック・リバー」といえば、今原作を読んでるのですが、
あまりに良くて、読み進めるのがもったいなくて、
だから、違うのを読んでいます。レヘインすごいです。




  

2012年11月12日

「黄昏に眠る秋」  「青と赤の死」

このところ、立て続けにいい本に出会っています。

「黄昏に眠る秋」は、またもamazonのお勧めです。

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

スウェーデンのミステリー。相変わらず、スウェーデンは、いいミステリが多いなあ。

本国の賞だけでなく、CWA(英国推理作家協会賞)の最優秀新人賞も獲得しています。

ある島で少年が深い霧の中に迷い、行方不明になるプロローグから、
怖いけれど、いいミステリだと確信できる。

二十数年後、少年の履いていた靴が祖父のもとに送られてきたところから、
物語は大きく動いていく。

その祖父が、友人たちと謎を解いていく・・・・・・。という形式だが、
そこから想像される楽しい老人ミステリなんてのは、微塵もない。

舞台である、さびれた島の村のように、陰鬱なのです。

少年の母は、自分を責め、責めながらも自己憐憫に過ごしている。
彼女を通して語られていく話は、子を亡くし、父とうまく疎通できない中年女の
かたくなな心情と相まって、ともかく息苦しい。

読みながら、ルース・レンデルを思い出していました。

ルース・レンデル。
その昔、「ロウフィールド館の惨劇」を読んだ時の衝撃は、いまだに忘れられない。
読後感が思いっきり苦しいにもかかわらず、語り口も内容もうますぎて、
その後何作か読みましたが、やはり後味の悪さにギブアップしてしまいました。

(ちなみに、ルース・レンデルは、イギリスのミステリ作家ですが、スウェーデン生まれとのこと)

ともあれ、こちらは、ルース・レンデルほど苦いイメージはないものの、
その陰鬱さから逃れたい気持ちもあり、焦燥感に駆られて読み続けました。

過去と現在が交錯していく構成も、「ページをめくるのももどかしく」も
同じでありながら、「解錠師」とは正反対。
(でも「解錠師」とどちらが好きかと言われたら、こっちを選ぶ。^^)

結末近くで、見事なミステリが展開して、さすがダガー賞だけのことはあります。
うまいなあ。

この同じ島を舞台にした第二弾もamazonでしつこく勧められていますが、
ちょっと読むのに力が要りそうです。



amazon頼りばかりなのもアレなので、図書館で見つけた
「青と赤の死」

青と赤の死 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

こちらは、MWA(アメリカ探偵作家クラブ賞)の最優秀新人賞です。

スペイン内戦後が舞台

(アメリカ人がスペイン内戦を描いた、といえば、ヘミングウェイが有名です。
恥ずかしながら、ヘミングウェイは、どれを読んでも、いったい何が面白いのか良いのか
さっぱりわからなかったですすみません)

こちらも、少女が殺人を目撃するプロローグが素晴らしい。

銃声が聞こえ、少女は、

制服が汚れるかもしれないと少しうんざりしたものの、本のはいった鞄を下におろすと、地面に体を伏せて、いつものように反射的に頭をかばう。

わずか7歳の少女の、市民戦を日常に体験してきた、その怖さ。

しかし主人公は、人民戦線側ではなく、人民に恐れられている治安警備隊の軍曹だ。
殺されたのは彼の親友で、近くにいた若い女性を有無を言わさず、容疑者として撃ち殺す。

そんな冷徹な始まりから、女性の恋人、目撃者の少女、治安警備隊員たち。
さまざまな人間が交錯して、実に面白い展開です。

どう収集をつけるのかとハラハラしましたが、ロルカの詩を持ってきて、
うまくまとまっています。
詩に(も)疎い私ですが、「ロルカ、暗殺の丘」という映画で、ロルカのことは知っていましたよ。


またも良いミステリに出会えて、嬉しかったです。

  
Posted by kani16 at 22:56Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2012年11月01日

「解錠師」 「謝ったって許さない」

相変わらず読書の毎日です。

ミステリが多いですが、ちょこっとSFとかファンタジーにも挑戦したり。
色々読み返したり。
この前は、三駅過ぎてから気がついたり。またも必死の形相を知人に見られてたり。

いやはやもう。でも、読書は楽し、です。

で、最近読んで、めちゃくちゃよかった2冊をご紹介。

amazonは、ほら、好みを把握されちゃってるシステムみたいなのがあるでしょ。
で、そこで、常に出てくるのが、この「解錠師」

解錠師〔ハヤカワ・ミステリ1854〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

図書館で予約して、やっと借りることができました。

すごいね。amazonの目に狂いはない。
素晴らしく良かったですよ。楽しめました。

「卵をめぐる祖父の戦争」を少し彷彿とさせられました。
つまり、ミステリの要素もあるにはあるけども、どちらかというと青春譚。

鮮烈な過去を持つ少年は、そのせいで口がきけず、しかし絵と、鍵を開けるという才能を持つ。
いやその二つの才能だけでなくて、もうひとつ、彼は非常に美少年なのです。

少年の回想で描かれているので、僕は美少年だ、なんて書いてはいないけど、
相手のセリフなんかで、そうとわかるのね。

ともあれ、過去が交互に語られて、その語り口が驚くほどうまい。
構成の見事さ。

少しずつ明かされていく、少年の過去。そして、それがどう今と繋がるか。
ページを繰るのももどかしい系ミステリです。
読後感もすがすがしく、いい気持ちで読み終わることができました。

綺麗な男の子なので、ちゃあんと恋愛シーンもあるけど、やはり圧巻は
金庫破りの場面でしょう。

もちろん犯罪なので、悠長に開けている時間はないのですが、
そっちのドキドキハラハラよりも、金庫を開ける感覚を緻密に描いていてるのが嬉しい。
そして、若い彼がクールになりきれないところもあるから、やはり手に汗握る。

この作者もっと読みたい、と思いました。


もうひとつ。

「謝ったって許さない」

謝ったって許さない (ハヤカワ・ミステリ文庫)

こちらは、訳者つながりで出会った一冊。

美少年どころか、主人公は、美貌とはいえない中年女(50代ですよ)。

彼女がDV男をやっつけるという、痛快なお話。と言ってしまえるほど単純じゃないのが、
すごくいい。

コージーミステリな紹介のされ方ですが、私にはハードボイルドに思えました。

ヒロインは、自身もDVの被害者で、それゆえ、法が裁いてくれないひどい男を
結構過激にやっつける。それが尾ひれをつけて、男たちに伝わっているから、
割とスムーズに鉄拳下せてたりする。

とにかく、横暴な男たちを、どこから見てもハードボイルドじゃない中年女が
自分の噂をちゃんと利用しながら、色々計算して
コテンパンにやっつける。それが胸のすくような気持のよさ。

その気持ちよさのあとに、恐ろしい話が待っているのだから、面白い。

ウォーショースキーのような、どこをとってもハードボイルドな、苦み走ったタフさは、
このヒロインにはないんです。
かといって、コージミステリによくある、ドジであららどうしましょうてな女でもないのは、大変嬉しい。

そして、ハードボイルドな中年男のように、金も取らず、ぼこぼこにやっつけられている。
そこに哀愁があるのかないのか、そういうところも、とってもいいのです。

うう。この続きがあるなら、ぜひぜひ読みたい。(今のところ日本ではまだ出てないようです)

上の2冊。すごくお勧めですが、どちらか選べと言われたら、後者を取りますね^^  
Posted by kani16 at 15:24Comments(2)TrackBack(0)海外ミステリ

2012年10月23日

エマニエル夫人

先日、シルビア・クリステルが亡くなりました。

シルビア・クリステルといえば、もう、これ。
「エマニエル夫人」です。

エマニエル夫人 無修正版 [DVD]

公開された当時、思春期だった私は、ずいぶんお世話になりました。

って、お世話って意味は、男の子たちがお世話になった11PMやプレイボーイやGORO(ゴロー。うっ!まさに、書いてる今、突如思い出しました、あったよねゴロー。小綺麗なお姉さんぽい女性がメインだったなあ。)的ないわゆるオカズじゃなくて、なんというか、性というものを自分の中に位置づけたって意味で。

大人になったら、あんなことしよう、こんなことしようと、見ながら思いましたね。
女性との絡みが多くて、きれいだったので、私が女性を好きなのも、この影響があったのかもしれません。

ただ、エマニエル夫人の第一作を初めて見たときは、気持ち悪かったです。男性とのシーンが気持ち悪かった。
そして、「さよならエマニエル」は、本当の愛を見つけてしまったようで、愛し合う二人のセックスシーンはつまらないな、と思って、だからそれ以来見てないです。あはは。

エマニエル夫人は、昔TV放映されたのとは違い、カットされた部分に、タイの少女たちの見世物的シーンがあり、それを初めて見た時はショックでした。ってそれから何度見てるねん。

いや、何度見ても面白いんですよ、エマニエル夫人。

ああ、エマニエルって、こんなに若かったんだ(歌では、二十歳となっている)って。今はそう思う。
で、初めて見たときからいまだにわからないのが、マリオ(エマニエルに性の手ほどきをする男性)で、
全然魅力ないし、説得力もないし、最近やっと、マリオにはお金と地位があったんだ、てのがわかったけど、それでもなあ。

ともあれ、ビーの存在が大きくて、ビーと言うのは、エマニエルが好きになる考古学者の女性です。
私も一目惚れ。このタイプの顔が好きで好きで。

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で、彼女が、エマニエルを可愛がって、でも、そういう「感情」は、何日も持たないもんだって、言っちゃうのね。
初めて見たときは、エマニエルが可哀想で、自分も一緒に振られた気分になってたけど、見れば見るほど、好きになります、ビー。こういう生き方。

出てくる女たちも、みな綺麗なのですが、やはりおフランスと言うお国柄でしょうか、あるいは、金と暇を持ち余した外交官の妻という立場もあるのでしょうが、他に楽しみないんかい、話すことと言えば、愛とセックスに関することばかり。エマニエルがビーに惹かれたのもわかります。

そういえば、この原作読みましたよ。またも突如思い出しましたけど、クラスのおませな女の子が貸してくれたんだったなあ。
原作は飛行機のシーンから始まったように記憶してます。飛行機の中でやっちゃう、ってのが、インパクトあって、私は映画より、活字でのほうが楽しめました(詳しく書いてあったからか笑)

ともあれ、映画は全然古びず、映画の中でシルビア・クリステルは、ますます若く幼くなっていく。

ご冥福をお祈りいたします。  
Posted by kani16 at 14:24Comments(0)TrackBack(0)映画

2012年09月09日

「ムーンライトマイル」    「渇いた季節」

「雨に祈りを」で、少しばかりレヘインから離れようと、読んだのが
ピーター・ロビンスン「渇いた季節」

アンソニー賞受賞ということで、期待して読みました。

渇いた季節 (講談社文庫)

非常に牧歌的なミステリーというか、作品自体はとてもいいと思います。

殺人といっても、何十年も前の白骨死体だし、他に何の事件も起こらず、
警部の恋愛がらみの私生活が語られていますが、それも悪くない。

戦時中の手記が交互にあって、長い作品になっていますが、
冗長ではなく、読ませます。

しかし。ただ、ただもう。

なんというか、、、訳が悪すぎ。

戦時中の原稿はいいのですが、警部編が。今の気分を出そうとしているのか、
特に会話文がひどい。ひどいというか、恥ずかしい。

適当に脳内翻訳して読んでいましたが、ふと、「イシダイラみたい」と
思ってしまったら、もうそこから読めなくなってしまった。

そう思ったのは、最後の方だったので、ともかく読みとおしましたが、
肝心のミステリも余韻もあったもんじゃなかったです。


いや、ほんとのことをいうと、この本を読んでいるときに、
「ムーンライト・マイル」も読み始めたのです。軽い気持ちで。

そしたら、やめられなくなって。素晴らしくて。

そうなってくると、もう、「渇いた季節」を読んでも、アラしか見えないのですよね。

それほど、よかったです。「ムーンライト・マイル」

ムーンライト・マイル (角川文庫)

シリーズ物の最後は、著者が亡くなって、完結できてないのが多いし、
私自身も、あまり多くのシリーズを読んでいないので、えらそうなことは言えないのですが、
それでも言わせてもらうと、見事な終わり方だと思う。最高でした。

エラリー・クイーンのXYZシリーズの完結「レーン最後の事件」に匹敵すると思います。
「レーン最後の事件」は、転げまわって泣くという、フランダースの犬を読んだ時と同じになったのですけど、
「ムーンライト・マイル」は、そんな大げさなこともなく、読み終えて、ほろほろと、ただもうレヘインに感謝したくなりました。

読み始めて、パトリックとアンジーのハードボイルドな生き方に、胸が痛くなりました。
名作「愛しき者はすべて去りゆく」の続編となっており、その間に12年の月日が経っています。

老いとまではいかなくても、やはりもう若くはない。パトリックは生活のために働き、
それが、なんとも、苦いのです。

「愛しき者〜」で、パトリックの最後の決断が、道徳的にはどうであれ、
作品においては素晴らしい余韻となりましたが、それがうまく生かされている。

誘拐された子供が、16歳の少女となり、ロシアマフィア(血も涙もなく、ブッバでさえかかわるなと言う)も加わって、またも壮絶な展開となるのですが、
物語自体もよかったけれど、やはり、終わり方でしょう。どのように終りと折り合いをつけるのか。。
期待以上の締めくくりとなりました。

そして、レーンの事件と同じく、この本も、シリーズを最初から全部読んでいないと、
良さが半減すると思います。

XYZと読み進むと、最後の事件での見事な大団円とともに、レーンをいつしか心から尊敬している自分があって、それで、完結を迎えるわけです。

同じように、パトリックやアンジー、なによりブッバを、心から愛するようになって迎えた
この完結作。

レヘインの手中に落ちてしまい、胸が震え、終りの方は、静かな展開ながらドキドキし、
ページをめくる手も震えました。

「訳者あとがき」も素晴らしいです。  
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2012年09月04日

雨に祈りを

雨に祈りを (角川文庫)


アンジーと別れたパトリックが、女性からの依頼を引き受ける。
それは、ストーカーに関することで、ブッバとともに、あっという間に、小気味よく解決しちゃう。

もちろん、ブッバがいる限り、暴力的解決なのです。
(ブッバは最初、男の車に爆弾を仕掛け、もろともこっぱみじんにしたがった)

ストーカー男は、ブッバを見て、息を呑む。

ブッバは、発狂した二歳児の顔をしている。そしてその顔が、手足のついた鋼鉄の貨車を思わせる胴体の上に乗っているのだ。

素晴らしいでしょう。ブッバ。

ブッバともう一人、陰のヒーロー。パトリックに義理のある敏腕弁護士がいて、
その彼は、ちらっと出てきて、あっという間に難問を解決してさっと退場する。

別れたアンジーは、髪をバッサリ切って登場だ。

パトリックの、レイプ犯への対応も、おぞましくもすがすがしく、
「ミシシッピー・バーニング」という映画があるのですが、その中で一番好きなシーン
(黒人の男性が出てきて話をする、それだけなのですが)を思い出しました。

それはもう、シーンシーンが素晴らしいのです。

特に、ブッバの次のセリフに、私は泣けましたし、
恥ずかしながら、読んでしばらくは、会う人ごとに話したのですが
みんな、うっとなってました。

パトリックの目の前で、犬が毒殺されます。それをブッバに伝えると、ブッバは
「くそっ!犬だと?」と言った後、パトリックが今まで聞いた中で最高に愛情のこもった声で言う。

「きちんと世話してもらってさえいれば、あいつらがやるのは相手を愛することだけだ」

その、殺された犬の飼い主と、ブッバが、いい関係になるのですけど、
ブッバの大活躍は、それだけでなく、彼の過去が見え隠れします。

パトリックの人脈は、アンジーの祖父も含め、夢のような人物ばかりで、
ピロピロピーと笛を吹くとやってきてくれるマグマ大使のような(たとえ、古過ぎでごめん)。
それを、レヘインの筆さばきで、ご都合主義にならずに、読者に夢を見せてくれていたのに、
妙な現実味を与えないでほしかったな。
ブッバがなぜ強いか、なんて理由は必要ないのだ。ブッバはブッバだから。

そのあたりに、私は不満を覚え(笑)、ハーランコーベンの素晴らしきヒーローの過去を知って
ばたっと読まなくなったように、レヘインに対しても、ふと、不信が生まれてしまいました。

うーん。若かりし頃、ちょっとしたことで彼氏に飽きて、男をとっかえひっかえしてた、あの性格は
治ってないのかもしれぬ。

この本を読み終え、ヒルや違うのを読んで、レヘインから、離れたのかなあと思ったのですが、
今、これを書こうと、ちらちら読み直したら、やっぱり素晴らしいんですよね。

一時の熱情は失われたかもしれないけど、その分、落ち着いて、やはりレヘインと
別れたくないワ、おつきあいしたいの、と、amazonで、レヘイン(中古本を)、いろいろ買いました。

「特捜部Q」の新刊も出ていたので、これも注文(中古と値段は変わらないので新刊を)。
しかし、2,205円ですよ。早川ポケミスとはいえ、なんて強気なお値段。

あぁ、話ずれました。

ともかく、レヘイン、あとがきを読むと、著者自身、このシリーズに飽きたのか、
少しアンジーとパトリックを休ませたい、と。
なるほど、私の感じたものも、あながち間違いではなかったのかなあと、少し自負しています。あはは。

ともあれ、読み返したい。何度も読みたい、と思える作家に(また)出会えたのは、
人生の喜びです。



  
Posted by kani16 at 13:54Comments(0)TrackBack(0)海外ミステリ

2012年08月10日

「穢れしものに祝福を」 「愛しき者はすべて去りゆく」

デニス・レヘイン2作

そのまえに・・

「サイレント・ジョー」が好きだったので、同じ作者(&訳者)で、
2冊(「ラグナヒート」「コールドロード」)を読んだのですが、
デニス・レヘインとデニス・レヘインのの間に読んだからか、
全く印象に残りませんでした。

恐るべしデニス・レヘイン

ただ訳者つながりで読んだ「女検事補サム・キンケイド」は
面白かったし、非常に興味深かったです。

女検事補サム・キンケイド (文春文庫)

ハードボイルドでも感動系ミステリでもなく、法廷劇ですが、
ペリー・メイスンをちょうど反対側からみている感じ。

レイプ事件を扱いながら、事件そのものの怖さなどにはおかまいなしに、
法律でどれだけ有利に立てるかを、戦略的に扱っていて、
アメリカ法廷の非人間的なクールさに、ある種の感動すら覚えました。

女性検事補なので、恋愛などの感情部分もあるものの、
結末の雰囲気もペリー・メイスンに近く、すっきりとうまく、まとまっています。

シリーズなので続きも読みたいけど、やはり、デニス・レヘインを
味わい尽くさねば、次に進めない、今はそういう気持ち。


で、まず、第三弾「穢れしものに祝福を」

穢れしものに祝福を (角川文庫)

こちらは、正直、トーンダウンした感じでした。

我が愛すべきブッバが刑務所に入ってしまう、という設定で、つまり、超人的な守護神がいなくなり、
パトリックとアンジーだけで、立ち向かわねばならない。

(でも、前半に見せ場があり、それはもう、胸がすくような、おぞましくも
素晴らしい素晴らしいシーンでした。作者はブッバの使い方を本当に心得てると思います)

しかし、肝心の中心人物たちには、あまり魅力を感じなかったです。
大富豪の美貌の娘を探すというストーリー、
恐ろしく魅力的な美人ですけど、こちらには、アンジーがおりますからね。
完ぺきな美貌は、アンジーの前では、薄れてしまう。

そういう意味で、インターバルな作品でした。

ただ、驚くべきことに。第一作第二作の内容を
平気のへっちゃらで、ネタばらししているのです。すごい!
名前から、最後はどうなったかまで。

デニス・レヘイン、自信家なんだなあ。

ともかく、もし読まれるのでしたら、ぜひぜひ、というより、絶対、第一作から
順番に読んでいってください。


そして、第四作「愛しき者はすべて去りゆく」

愛しき者はすべて去りゆく (角川文庫)

邦題がもはやネタばらし。

しかし、それにもめげず、素晴らしいです。

ブッバはやはり活躍していませんが、それゆえか、ふたりの活躍が目覚ましく、
特にアンジーの躊躇ない行動に、胸が震えました。

採石場跡。そこは岩壁があり、深い穴には水がたまり、水中には不法投棄された古い冷蔵庫や、
丸太があり、沈殿物で視界も悪い。

そこに誘拐された女の子の人形が浮いているのを見つけ、
アンジーは、寒さの中で、服を脱ぎ、パトリックが振り向いたときには、
飛び込んでいた。

ヘリコプターの光の中で、
彼女はミサイルのように落ちていった。
両手をぴたりと腿につけ、ほっそりとした彫像のような姿で、まっすぐ下をめざしていた。


なんというシーンでしょう。

いや、デニス・レヘインのこの作品には、随所に名シーンがあり、
こういう大掛かりなシーンだけではなく、ちょっとした場面でも、
そのうまさに感動されられてしまう。

第一作からそうですが、非常に映像的で、うまく映画にしたら、
素晴らしいだろうな、と。
事実、ベン・アフレックが映画化しているようです。
「ゴーン・ベイビー・ゴーン」という原題と同じ映画。これはぜひ見たいです。

小説の中でも、音楽には特にうるさいのですが、映画のこともよく話されていて、
デニス・レヘインの趣味の良さがしのばれます。

銃で撃たれた刑事とパトリックの二人だけのシーンで、刑事は言う。

「いきなりジョン・ウーの映画のなかに入ってしまったような気がしないか」
「ジョン・ウーの映画は大嫌いだ」

「情感に裏打ちされていないサム・ペキンパーの焼き直しじゃないか」
「あんたは何だ、映画評論家か」


ジョン・ウーもサム・ペキンパーも大好きな私は、
(もちろん、ジョン・ウーの情感のなさが好きなので)
嬉しくて嬉しくてたまらなかったです。

(邦題通りの)結末も素晴らしい。見事な余韻。エピローグがあり、それを読んで
またプロローグを読むと、涙が出ました。

しばらく、デニス・レヘインから離れられないです。






  
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