「峠」
越後長岡の小藩に生まれたが故に類まれな才覚を持ちながら不幸な最後を迎えたと言われる河井継之助を主人公に据えた作品です。

峠(上) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社
2003-10-25


作品は上下巻で刊行されているのですが、上巻はそのほとんどが余談のような感じです。
たぶん今年の映画化された作品でも描かれないと思うのですが、この前半があればこそ後半の人が変わったかのような怒涛の人生が映えると思うのですが、映像としては面白くないと判断されたのでしょうかね。



「最後の侍」とも評される河井継之助ですが、そんな彼の残した言葉のひとつに「民は国のもと吏は民のやとい」というものがあります。

国民が国家の主であり、役人は国民に仕える存在である」ということを明確にしています。

封建時代の侍であったことを考えると先見の明とも言えますし、国家の成り立ちをしっかりした視点で見ていたことがみてとれます。

それだけに明治の時代にいればどれほどの働きをしたかと思うと無念の情が尽きない思いです。

短編「英雄児」という作品で河井継之助を描ききれなかった思いが「峠」を書かせたのでしょうか。
きっとそれだけではなく時代の徒花となってしまった越後長岡の悲運にせめて一輪の花でも手向けるような気持ちだったのかもしれません。

個人的には役所広司さんよりも竹中直人さんだったらなって思います、ハイ。