2010年05月28日

俺の後輩がこんなに可愛いわけがない(俺妹SS)

このお話は、5巻の桐乃が帰ってくる前、かおすくりえいとの一件が終わった後あたりを想定して書いています。

物事は企画段階が面白いって、よく言うけど、今の俺に言わせてもらうと、それは大きな間違いだ。俺は今まで、こんなにも埒の明かない企画会議はしたことが無い。まぁ、そもそも企画会議なんてやったこと自体が少ないのだが。
「あなたって前回の反省を生かそうっていう発想は欠如しているのかしら?」
瀬菜のゲームの企画書を眺めながら、不機嫌そうな声で黒猫は言った。
ああ、やっぱり、こうなるよなと、俺はため息をつかざるをえなかった。俺もこの企画書に対して突っ込みたい気持ちでいっぱいであるから、黒猫の不機嫌そうな雰囲気には大いに同意である。
「何のことですか?五更さん、聞き捨てなりませんね。」
それに対して、不満を隠そうともせずに瀬菜が応じる。
お前のその自信はどこから来るのか、俺はとても不思議だ。
「あなたは、前回の失敗から何を学んだのかしらと訊いているのよ。同じ過ちをまた繰り返そうとしているようにしか見えないわ。」
「私のこの企画に何か問題があるとでもいうのですか!」
瀬菜が間髪いれずに反発する。
今、俺たちは新しいゲームを作るため、企画会議をしている。別に、次のコンテストが近づいていると言うわけではないのだが、何事も経験と言うことで、次回作の作成へと乗り出したのだ。しかし、会議は俺の思った通りに、暗礁に乗り上げ、そこから上手く脱出する目途が立ってない。
大体の原因が分かってきた。この二人まったくもって、作りたいゲームの方向性と言うものが違いすぎる。
黒猫は、膨大なテキスト、細かいTIPS,サブルートを入れたがり、中身の濃い作品を作ろうとする傾向がある。いわば、分かるやつだけ分かれ。評価する奴だけ評価してくれといった、開き直ったような作品を作る。
瀬菜のほうはそれに比べると、ライトで、シンプルで操作の簡単な分かりやすいゲームを作ろうとする傾向がある。だれでも入りやすく、かつ、やりこみ要素を作ることによって、ディープな層も取り入れようとしているように見える。そして何より…
「また、こんなホモゲーの企画を通そうとするとは思っていなかったわ。」
そのライトな層を設定している割には、ホモゲーというジャンルを作ると言う姿勢はあくまで崩さないという矛盾した行動に出ているのだ。まったく、どうして、こいつの病はこんなにも強力なのだろうか。
「五更さん、これが私の開き直りなのですよ。」
瀬菜は胸を張って答える。これは黒猫の言葉の引用だろう。
前に、黒猫と瀬菜が作るゲームを決めるプレゼンで黒猫が言った言葉は、瀬菜に少なからず、影響を与えたようである。
しかしだ、俺は俺の為にも、この企画は通すわけにはいかない。
「瀬菜。そうはいっても、このサンプルイラストの主人公のモデルは明らかに俺だろう。そして、こっちのヒロインと書いてあるほうは、お前の兄貴だろう。流石に、これは反対させてもらうぞ。」
さっきから俺は、聴く姿勢を守っていたが、流石にこの点については意見を言いたかった。俺をデザインとしたであろうキャラクターを主人公にするまでは良い。ちょっと恥ずかしいが、それはそれで誇らしいことだ。しかし、ヒロインが赤城似の男だった時点で、誇らしさなど消え失せてしまった。
それに対して、瀬菜は
「えへへー。ばれてしまいましたか。」
と、にやけるだけであった。
「なんて、業の深い邪悪なの…。」
黒猫が若干引き気味で呟いた。
黒猫がまともに見えるのが不思議である。自分の趣味にTPOをわきまえると言っていた瀬菜であったが、わきまえない瀬菜ってこんなにも凄いものだとは思わなかった。既に片鱗は何度か経験していたが、やはり、瀬菜はこっち側の人間なのだ。
このように会議は、主に黒猫と瀬菜によって行われる。俺は、二人のプランに対し、これは面白そうとか、やってみたいとかプレイヤーからの意見を言うのが精一杯である。
そもそも、特にゲーム制作の技術が無い俺としては、前回同様に、ごく簡単な作業しか出来ない。それでも、前回と同様にゲーム制作の一員として数えられているのが嬉しかった。それどころか、前回の制作では黒猫と瀬菜は個別に活動したようなものであるから、今回は俺も含めて当初から三人で作っていけることが素直にうれしかったのである。
それには理由が二つ有る。一つは瀬菜からも同じグループの仲間として認められたきがしたからだ。

先日、授業が早めに終わり、部室に早めに着いた時に、偶然瀬菜と二人きりになったことがあった。その時、何気なく共通の知人である黒猫が話題となり、あの時の話をしたのだ。
まだ笑い話にするには早すぎる、黒猫と瀬菜が仲間として認めあうようになったきっかけの話だ。
「高坂せんぱいは、責任感がありますからね。五更さんが、私のところに頼みに来たのも、高坂せんぱいが関与しているんでしょう?」
「いや、俺は関与してないよ。五更の奴が自分で判断して、自分の意志でお前を必要だと思ったんだ。」
実際、俺は何をするでもなく、ただそばにいただけだった。黒猫が瀬菜のところに頼みこみに行ったのも、紛れもなくあいつの意思であり、あいつが必要だと思ったからこその行動だった。
「そうだとしても、五更さんに影響を与えたのは間違いないでしょう?」
俺はちょっと面を食らった。俺はそこまでの影響力は無いだろう。きっと奴を変えたのは桐乃のやつだ。瀬菜はそれを知らないので、俺に要因を見出してしまったのだろう。
「そうなのかな?そうだと嬉しいんだけどね。」
これは、俺の願望でもあった。俺は頼られたい願望がそこそこあるのだ。黒猫のことも、可愛い後輩として頼ってほしいと思っている。
桐乃のやつがライバルとして黒猫を引き上げる存在になるとするなら、俺はあいつにとってのお兄ちゃんをやってやりたいと思う。
「せんぱいは、五更さんの事好きですからね。これからも面倒を見てあげてくださいね。」
「っへ、そんなんじゃねーよ。」
おどけてみせたけど、内心はとても嬉しかった。嬉しかったと言っても、黒猫好きを公認されたからじゃないからな!
俺が嬉しかったのは、瀬菜が黒猫の面倒を見る役目を俺に任せてくれたことだ。
俺は瀬菜の事を、人に任せるというよりも、自分でやった方が早いと思うタイプだと思っている。それを良いか悪いかは別として、重要なのは、俺がそうだと思っていた瀬菜から、黒猫の面倒見役というポジションを、直々に頼まれごとをされたって言うことが嬉しかったのである。
ちょっと前の瀬菜からは、
「私が五更さんを監督します。せんぱいがいることによって、五更さんの甘えの温床になるんです!」
と、言いたそうな雰囲気が出ていた。それが、俺に任せると言ったのだ。もちろん、全部を全部丸投げというわけではなく、瀬菜から取れない、取りづらいアプローチは任せると言う事なのだろうけど、俺はそれで十分だった。

そして、もう一つ。どちらかと言えば、これがほとんどを占めているんだが、黒猫に、
「あなたが必要なのよ。」
と言われたことだ。
最も、このセリフの後に、テストプレイ要員だから、勘違いしないように。だとか、素人目から判断するためなど、色々付けたしはあったものの、俺はそれだけで満足だった。
最近は、俺の苦労が実ってか、黒猫から好意を感じられるようになって嬉しい。出会って間もないことは本当にツンケンとしていたからなぁ。…過去を振り返ってみたら、思わず泣けてきた。良く頑張った昔の俺。

などと俺が回想をしているうちに、終わりの見えない会議を強制的に終わらせてくれる第三者が訪れた。
キーンコーンカーンコーン。学校のチャイムだ。会議を続けているうちに下校時間となったようである。
「む、もう下校時間なのですか。今日もまたまとまりませんでしたね。」
そうなのである。これが初日ではないのではないのだ。この会議、一向に終わりが見えない。下校時間って素晴らしいな。こんな閉塞した状況をいとも簡単に打ち破ってくれるのだから。
「いい加減、ホモゲーを作ることは諦めて頂戴。あなた個人で作る分には構わないけど、私と制作するうえではそれは止めてもらいたいわ」
俺と制作するうえでもご勘弁願いたい。
「五更さんは分かっていませんね。男同士の絡みの魅力を。」
辞めてくれ、俺も分かりたくはない。
「五更さんにお勧めの入門書があるのでお渡しします。ええっと、かばんの中にあったかな。」
瀬菜が本格的にBLについて語り始めようとしたので、俺と黒猫はアイコンタクトを送り合い、瀬菜がかばんを漁り始めたあたりで、脱兎のごとく二人揃って逃げ出した。
瀬菜はあの病気が無ければ、良い奴なんだけどな…。

なし崩し的に黒猫と一緒に帰宅することとなった。こいつと帰るもの、最近は結構、慣習となりつつあるなぁ。麻奈美以外の女の子と帰るのは、今までに無かったことだ。
俺もついに麻奈美離れをする時代がやってきたか…。
あいつは本当にほんわかしていて、おばあちゃんみたいなオーラがあるかなぁ。
親とは言わないけど、とても面倒見のいい姉みたいな幼馴染だと思う。そう考えると、姉離れみたいなものか。
個人的には、この後輩と一緒に帰るっていうシチュエーションはかなり良い。
世の男子学生なら分かると思うが、異性の後輩と一緒に帰るというのは、実際のところかなり珍しい行為である。
それを俺は満喫しているのだから、実に愉快である。
ほんのわずかな間だったものの、下駄箱の位置が異なるため、昇降口で待ち合わせたときなど、男子学生から羨望のまなざしを受けて優越感に浸れてとても気持ちが良かった。
更にいれば、黒猫は面だけ見れば、とても美人であり、可愛らしい身なりをしている。その子と一緒に帰るというだけで、俺の鼻も高くなるというもの。
どうだ?羨ましかろう!実に大人気ない高校三年がここにいるぞ。

そんなことをおもっていると、
「あなたって、本当におせっかいよね。」
と、唐突に黒猫が言ってきた。
「なんだよ、急に。」
「べつに。常々思っていたのよ。いい機会だから訊いておきたいと思っただけよ。」
なんなんだ、その理屈は。と、俺はちょっと苦笑する。
「それは、俺自身もうんざりしているさ。でもな、俺は割とこの性格を気に入っているんだよ。この性格のおかげで結構苦労もしたし、失敗もした。だけど、まぁ、嫌じゃないんだ。」
桐乃にうざいと言われ、お前に妹の代わりとして見ないで頂戴と言われたこの性格だが、それでも俺はこの性格で良かったと思う。
「…あなたってマゾなのかしら?」
黒猫がジトっとした目が突き刺さる。
「そんなことはないさ。この性格のお陰でお前や沙織とも仲良くなれたと思うんだ。だから、そういうところで、俺はこの性格に感謝しているよ。」
「…そう。私と仲が良くなって嬉しいのね…。」
「まぁ、そうだな。」
黒猫と、こういう話をするのはあまりなかったように思える。今、お前はどんなことを考えているんだろうと思いながら、俺は話していた。そしてふと気付いた。
「そういえば、俺、ほとんどお前の事は知らないよな?」
「そんなことは無いでしょう。」
「確かに、黒猫としてのお前に関しては、それなりに知っているかも知れない。でも、今俺が知りたいのは、黒猫としてのお前じゃなくて、五更瑠璃としてのお前の事だよ。」
「それを言ったら、私だって、あなたの事は知らないわ。」
「そうなのか?桐乃から色々きいているんじゃないか?」
あ、今ちょっと驚いた顔した。なんでそれを知っているの?っていう顔をしているぞ。適当に言ってみただけだったけど、正解だったようだ。
「やっぱりか。まぁ、話を戻すが、瑠璃ちゃんはどんな子なのか知りたいわけ。」
「その名前を呼ばないで頂戴。」
「駄目なのか?」
「あなたは黒猫の私が良いの?私が黒猫だから良いの?」
質問を質問で返すとは。しかし、この物言いは俺を試しているようにも取れる。
「俺は、最近仲が良くなったと思っている後輩がどんな子で、どんな幼少期を送ってきたか気になっているんだよ。」
「……。そう。」
黒猫が呟き、会話はそれっきりで途絶えた。
俺は、恋愛シミュレーションゲームで間違った選択肢を選んでしまったような錯覚に陥った。ロードを出来るならば、そうしたいと思ったが、現実は非情である。
ちょっと焦りすぎたのかもしれない。黒猫にとって、俺はなんでも話せる間柄にまだなって無いかと俺は少し落ち込んだ。
俺は桐乃ではないのだ。ましてや、黒猫の事ではなく、瑠璃の事となると、アイツでさえ知っているか、わからない。
そういう関係になりたいのなら、もっとじっくりといかないといけないのかもしれない。
などと、考えていたことが、まるきりギャルゲーみたいな発想だったことに自分で、驚愕した。
俺はそこまで、ギャルゲーにのめりこんでしまったのか。
二重の意味でショックを受け、自然と無言で通学路を歩く。
思えば、俺にとってはもうかなりなじみの道だ。二年とちょっとこの道を毎日通っている。
一人で歩いたり、麻奈美と歩いたり色々あったが、まさかこいつと一緒に歩く日が来るとは思わなかった。
妹の付き合いで知り合った友人と言う非日常の関係から、学校の先輩と後輩という日常的な関係へと変わっていった。
世の中不思議なことだらけである。一年前の俺からは予想がつかないつながりだと思う。
そんなことを思っていた時に、不意に黒猫が口を開いた。
「自分語りというのは好きじゃないのだけど…。先輩なら良いのかもしれないわね。」
一瞬何を言われたのか、分からなかったが、続く言葉によって理解した。
「私がどんな子だったのか知りたいのでしょう?」
黒猫は小悪魔的なという表現がぴったりと合うような、そんな笑顔を浮かべていた。

To Be Continued?


ごめん。恥ずかしさで死にたい。
これ以降に続く二章以降が本来書きたいとおもって筆をとったところになります。
ご感想、批判などあればどうぞ。

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俺妹SS 

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コメント一覧

1. Posted by ぺけっぱ   2010年05月28日 12:13
5 よーんーだー! GJ!
おう、黒猫のプライベートに踏み込むわけですな!楽しみ楽しみ。
まあ、その恥ずかしさがいずれは快感になるものさw

お話のシリアス度にもよるんだろうけど、京介がちょっと固いかな?真面目というか。
ツッコミとボヤキが控えめな気がする。
である口調が多いせいかな。
のくせにわずか4文で麻奈実離れしてるしw


黒猫派としては次回を楽しみにするしかあるまい。のんびりまってまーす。
2. Posted by みんみ   2010年05月28日 16:59
5 さくさくと読みやすく、入りやすい文章でした!
黒猫が相手だと、京介は変な自分フィルター越しに語らないな、と率直に伝わりました。
この前降りで、メインの続きがなければ、私はマジ泣きしますよ!
面白さがジワジワと出て来て、これから!感が、たまらん!
黒猫がどんな子だったか気になるし、らんごさんが一番表現したかったものが、楽しみです。

創作する同士としては、とっても分かるんです!
このキャラにこれを言わせたい、させたい為だけに、長々と話しを書いた!みたいな。

俺妹SS、布教もガンバロー!

3. Posted by らんご   2010年05月28日 20:37
>ぺけっぱさん
黒猫がどうして、オタク文化に染まっていたかを妄想して書いていきたいなぁと思っています。
京介の口調が固いのは確かにそうですね
このあたりは、桐乃がいないので、黒猫との会話の中で桐乃を思い出し、ちょっと憂鬱になってる感を出したかったのですが、逆にキャラとしての持ち味を消してしまってますね
完結した際に加筆修正加えます
麻奈美離れが早いのは、黒猫派だから仕方ないことだと思ってくださいw

>みんみさん
メイン続きかければ、良いんですけどねぇw
これからって感じにもちあげて、落とすのが自分の特技なので、この特技が発動されないように頑張ります
なににせよ、次こそが自分の妄想で一番形にしたいなぁと思ってるところなので、時間を見つけたら、書いていきたいと思います。

黒猫に幸あらんことを!
4. Posted by 炎凛   2010年05月29日 03:52
確かに麻奈実って他のカップリングでSS書く時邪魔なんだよねw最初からいなかった事にしてもいいくらいww 言い換えるとやはり現状、作中でのラスボスであることにはかわりないって事なのか……?w

京介のツッコミのテンポがよくていい感じ。全体の感想は完結してから書かせてもらおうと思います。がんばって書いてね!w
5. Posted by らんご   2010年05月29日 04:20
>炎凛さん
麻奈美の扱いは面倒になりそうだったので、最初はいっそ放棄したほうが良いんじゃない?
と思っていたんですが、あまりにも不憫だったので、短いですが、文中に存在感を残しました。
麻奈美自身を出すとしたら、色々と面倒なことになりそうなので大変です
もしかしたら、最近の本編のほうでも麻奈美軽視の傾向はこの扱いづらさにあるのかもしれませんね

SSは頑張りますー。完結はさせたいなぁ

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