担々麺大好き(特にゴマ風味のもの)。
アジサイ大好き(桜や紅葉も)。
そして経済ニュース大好き(国際ニュースも)。
ということで「担々麺とアジサイと
ちょっと経済」です^_^

Steven Mnuchin- 日本の報道では「ムニューチン」ですが、米財務省の友人とかに聞くと、響きは「ミニューチン」に近い印象です。何はともあれ、 m nが隣り合わせのお名前には初めて遭遇しましました。

誰、ムニューチン?」ということで、さまざまな報道が出ています。とりわけ詳しいのはWSJ Seven Mnuchin’s Defining Moment: Seizing Opportunity From the Financial Crisis(ムニューチン氏の決定的瞬間:リーマンショックで大儲け)。

 (AFP)

3 4 %の経済成長率を達成させることや税制・規制の見直しに最優先に取り組むとインタビューで述べたこと、skilled team player (巧みなチームプレイヤー)と評価されていること、▼リーマンショックの時に破綻した地方銀行IndyMacを買収して大儲けし、承認にあたって議会上院の公聴会でこの経緯が問題になりそうなこと、▼トランプ氏とはマンハッタンの互いの自宅を行き来し、全米オープンテニスや Metropolitan Museum of Art のパーティで交友を深めたこと、▼2番目の奥さんとは2014 年に離婚し、今はスコットランドの女優のLouise Lintonと婚約していることがなどが紹介されています。

(REX)

ここまで書いておいてナンですが、BBCの「 Steven Mnuchin について知っておきたい5項目」の方が分かりやすい。ざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。

ゴールドマンサックス出身の財務長官として3人目
クリントン政権のルービン財務長官、ブッシュ政権のポールソン財務長官に次ぐ3人目のゴールドマンサックス出身者だ。17年間、この投資銀行に身を置き、住宅ローン関連の債券を担当し、Chief Information Officerまで上りつめた。今の CEOLloyd Blankfeinは「非常にスマートな男で、野心家だった(high-flyer)」と振り返る。

ハリウッド映画にも登場
これから公開される映画Rules Don’t Applyで、バンカー役を演じている。ムニューチン氏はハリウッドでも長く仕事をしていて、 AvatarMad Max: Fury Road などのヒット映画も手掛けてきた。最近の映画としては SullyThe Accountant もある。


③銀行を買収するも「不快な取引」と評される
金融危機(=日本で言うところのリーマンショック)の際に金融界に戻り、George Sorosも参加するヘッジファンドを立ち上げ、経営破綻した政府系金融機関の IndyMacを買収した。その後、One West と名称が変わったが、住宅ローンの返済が遅れた利用者の住宅をすぐに差し押さえたことを指して、裁判官から「不快で、ショッキングな行動だ」と評された。

④米中堅証券会社の元会長マドフの巨額詐欺事件を巡り訴えられる
トランプ次期大統領と同様にムニューチン氏も裕福な家庭に生まれ育った。父親のRobert Mnuchinはゴールドマンサックス出身でアートディーラーに転身。母親はミュージアムの役員で、2005年に亡くなった後、2人に息子遺産を相続。数か月以内にあわせて320万ドル(約3億6000万円)を引き出しマドフ元会長の証券会社の口座へ。それから3年。マドフが逮捕され、マドフの詐欺事件の被害者らからムニューチン氏も訴えられた。

かつてトランプに訴えられたことも
ムニューチン氏が運営するDune Capitalやドイツ銀行などとともに、シカゴのトランプ高層ビルの建設に融資を行なった。金融危機の際にトランプ氏は融資の延長をめぐり債権者を訴えた。のちに和解した。またトランプ氏とムニューチン氏は、ハワイのホテル開発を共同で手がけたことがある。


ハーバードビジネススクールのMichael Porter教授のお話をお聞きする機会がありました。やはりHBSの竹内弘高教授が立ち上げられたGlobal Academyの講義の一環です。


Can Japan Compete (again)=日本は(再び)競争できるか、という刺激的なタイトルのもと、グローバル人材をどうやって、しかも大量に排出するか。現代の企業の競争力とは何かなどを話されました。

一番印象的だったのはThe global context of competition has changed(競争力のグローバルな定義が変わった)という言葉です。「インターナショナルでダイバーシティがあり、世界につながっていない企業にもはや競争力はない」と断言。

同じアジアの国の中でも、日本がとりわけ遅れていると聞き、ショック。今回、4度目となる会談で安倍首相にもいろいろと進言されたそうです。

心に残った点は以下の通りです。


安倍首相は、ビジネス環境の改善などに向けて戦略を打ち出している。その結果、日本の環境は改善している。非常に遅いペースだが。

日本企業の人材と志はグローバルに戦うだけの装備がされていない(nature of talent and aspiration in Japan are not equipped to compete globally)。

人材は根本的な問題だ。成功の定義と日本の将来見通しを変えるには内向きでは人材のグローバル化はできない。

競争力のグローバルな定義が変わった(The global context of competition has changed)。インターナショナルでダイバーシティ があり、世界につながっていない企業にもはや競争力はない

品質管理さえしていれば競争上のアドバンテージがあった時代はとっくに終わり、常に他者と差別化しないといけない。

競争力のグローバルな定義が変わったことは、同じアジアの国でも日本だけが腹に落ちていない(does not get it)。シンガポールは国の成り立ちからして、韓国も企業マインドが早い段階からオープンな発想。中国は世界を制覇したいという発想。日本は国内が居心地がいいからかもしれないが、他国との考えの違いは歴然と感じる(very much notable)

[技術開発と人材]
私は以前は、企業と社会の関係(relationship of business and society)に関心があったが、今のbig new issueは、互いににつながったスマート製品(smart connected products)である。本当のスマートシティはまだ実現していないが、実現するでしょう。

IoTやAI=人工知能が進展する中で企業の競争のあり方も進化するだろう。人間の役割とは何か、人間の将来はどうなるのか(what is the role of humans, what is the future of human beings)が問われる。そう悲観することはないが、人間にとってのチャレンジは、インターフェースをどう作るか、である。

[リーダーとの違い]
リーダーとグローバル人材は違う。リーダーは作れる。優れた執行責任者が優れた経営トップになるとは限らない。特にリーダーの課題は時間の配分の仕方だ。何に時間を使うか。ど誰とその時間を過ごすか。誰を同席させるか。時間の配分はCEOの最大の悩みだ

[人材を企業にどう惹きつけるか]
日本企業の問題は、年功序列とコンセンサス作りに時間をかけすぎること

コンセンサスは、業務改善には必要だが、経営戦略の策定には不向き。日本企業も投資家の意向を無視できず、変わりつつあるが、年功序列の昇進制度では、魅力的な人材は集まらない

[短期と長期の視点]
企業にも社会的な存在意義(social purpose)が必要だ。ネスレは、もともとFood Compnayを自称していたが、食べ物ではなく栄養を提供しているという意義を見つけた。そこで、Nutrition Company となったのだ。

日本企業を対象にPorter Prizeを授与しているが、名の知られた大手企業が応募してこないので、理由を探った。驚いたことに「受賞できないと恥ずかしい」というのだ。受賞できなければ、翌年頑張れば良いのに。なかなかこれまでの発想を変えられない(cannot think out of the box)。

社会的に意義があることは、多くの場合、利益も上がる。なので、「利益を重視するために短期的な思考となり、長期で考えられない」というのは誤り。偉大なるリーダーは短期的な視点と長期的な視点の両方で物事を考える(great leaders do both)。

アメリカの企業カルチャーも進化している。利益を最大化するためとして短期的に視点しか持たないことの罠(trap of short term maximization of profits)が指摘されるようになった。進化しているのだ。

洗濯機を使っていない時間帯に他人の洗濯ものを請け負うという、いわば"洗濯版ウーバー"の記事がFTに出ていました。

自動車の空き時間にお客を運ぶ Uberのように、洗濯機をシェアするという発想がユニーク。ライドシェアならぬランドリーシェア を検討しているのはスウェーデンの白物家電メーカー Electroluxです。

(FT)

ちょっとおもしろいのでご紹介します。Electrolux gives "Uber for laundry" idea a spin – Swedish appliance maker tests concept of sharing washing machines エレクトロラックス"洗濯版ウーバー"を検討~スウェーデンの家電メーカー、洗濯機のシェア構想試す)はざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。

CEO Jonas Samuelsonは48歳。スウェーデン出身で直前まで同社のヨーロッパ事業を統括していたそうです。

(FT)

スウェーデンの家電メーカー=エレクトロラックスは、一般の人が自宅の洗濯機を使っていない時間帯に他人の衣類を洗濯するといういわば"洗濯版ウーバー"を検討している。

世界第 2 の白物家電メーカー (world’s second biggest white goods manufacturer) の新CEOJonas Samuelson は、インタビューで実現に向けて課題を検討中だと語った。

「楽しいアイディアをいろいろ試している。たとえば、ウーバーのような洗濯はどうだろうか。一般の人が洗濯機を使っていない時間帯に洗濯をしてさげるとか。衣類が破損した場合など問題はいろいろある」とも述べた。

レクトロラックスは、皿洗い機や掃除機、乾燥機といった白物家電の収入が伸び悩む中で、どうすれば利益を伸ばせるかを考えている。Samuelson 氏は、牛肉の焼き具合を消費者が温度や時間を設定するのではなく、自ら考えるようなオーブンなど、消費者のニーズ に応えようとしている。 ことし2月に CEOに就任したSamuelson 氏は、「さまざまな実験には前向き」だという。

洗濯版ウーバーが実現した場合、エレクトロラックスの役割は洗濯機の製造だけではないと指摘する。具体的な時間軸などは示さなかったが「洗濯機の中に高度なコミュニケーション機能が必要となる」と悦明した。

エレクトロラックスの伝統的なライバルと言えばワールプール(Whirl Pool)やデロンギ( De Longhi)だが、最近はグーグルやアマゾンがスマートホームに焦点をあてている

エレクトロラックスも、スマホに写真を送るカメラを搭載したオーブンやスマホのアプリで制御するエアコンといったような技術に入り込んでいる。

きょうも原油価格と市場シェアをめぐる攻防が気になります。FTSaudi Arabia sets high bar for OPEC supply deal(サウジアラビア、OPEC生産合意に高いハードルを示す)によると、サウジアラビアは自らが4.5%の減産に踏み切ることを提案する一方で、ロシアの参加が不可欠

さらに、この数日は合意をまとめようという気概を感じないと伝えています。ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

(FT)

サウジアラビアは、30日にウィーンの本部で開かれる OPEC 総会を前に、中東地域のライバルのイランとイラクにより多くの減産を受け入れさせようと、ハードルを引き上げている

OPECは金融危機(=日本でいうところのリーマンショック)以降で初めてとなる減産に踏み切り、 2年に及ぶ原油安に歯止めをかけようとしている。

OPECの事実上の盟主のサウジアラビアは10 月の日量 1050万バレルの水準から4.5 %の減産を提案したと内情を知る 2人の関係者が語る。その代わりにイランは日量380 万バレルの減産、そして各国はいずれも独立した機関のデータをもとにし、ロシアなど非 OPEC国の減産への参加が不可欠だという。

一方、イランは過去2 年に生産を急増させたサウジアラビアと湾岸諸国のみが現段階で減産に踏み切るべきだと主張している。 OPECに加盟する14か国は 9か月にわたって協議してきた。仮にサウジアラビアの強硬姿勢の結果、合意できない場合、原油価格は25 %下落すると投資家は警鐘を鳴らす。

30日のOPEC 総会を前にしたサウジアラビアの姿勢は瀬戸際外交とも見られているが、世界最大の原油輸出国のサウジアラビアはこの数日、合意をまとめなければならないという必死感がない (the world’s biggest oil exporter has appeared less desperate to clinch a deal in recent days)

サウジアラビアのエネルギー相= Khalid Al Falih 27日「OPEC による介入がなくても、 2017年に原油価格は均衡するだろう。各国が今の水準に生産を維持することは正当化できると思う(The market will reach balance in 2017 even if there is no intervention by OPEC. I think maintaining production at current levels is justifiable) 」と語った。

サウジアラビアは、OPEC国どうしで合意に達しない限り、非 OPEC 国との協議には参加しないとして、28日に予定されていた会議への出席を見送った 

OPEC 30日にウィーンで開く総会で、2 か月前にアルジェリアで暫定合意した「日量3250万から 3300 万バレルに減産」の最終合意に漕ぎ着けることで、供給過剰を解消しようとしている。仮に合意に失敗すれば原油価格は1バレル= 40 ドル以下に落ちる可能性がある。

国別の減産幅については加盟国の間で今なお具体的な合意に至っていない。アルジェリアのNoureddine Bouterfa石油相とベネズエラのEulogio del Pino石油相がモスクワに飛ぶなどして橋渡し役になって外交的な合意点を見出そうとしている。原油生産の日量 3250 万バレルの削減は、日量 130万バレルの在庫カットを意味する。

イランは西側の経済制裁から立ち直りつつあるが、内戦が続き石油施設が破壊されたナイジェリアとリビア同様に、イランも減産合意から免除されるというのがアルジェリアの暫定合意だと解釈している。イランの生産目標は少なくても日量400 万バレルである。イラン政府は 27日、国営通信を通じて「サウジアラビアは先の約束を反故にするようだ」と伝えて牽制した。

どんな合意であろうと、サウジアラビアとしては地域のライバルのイランには参加させたい。このため、サウジアラビアはイランに対して、2002 年から 2016年の間のもっとも高い生産量を基準に選んでそこから4.5 %削減するよう求めている。その結果、日量 380万バレルの生産が認められることになる。相場観を示すためにOPEC 関係者の数字を紹介すると、イランは 10月に日量372万バレルを生産した。

イラクは、不本意ながらも合意には参加する姿勢を示している。しかし、減産を行う基準の生産量については異議を申し立てている。

何はともあれ、サウジアラビアはOPEC が仮に合意に達したとしても、ロシアなど非 OPEC国の参加が条件であることを加盟国に伝えている。ロシア政府は、OPEC が合意に達すれば、生産を凍結する用意を示している(Moscow has offered to freeze its output if OPEC reached a deal)


今週は原油価格が話題になりそうですね。30日にウィーンで OPEC総会が開かれ、先に合意した減産の詳細をまとめられるかどうかが焦点となっています。

(WSJ)

合意が難しいとして、「OPEC 総会を控えて原油価格下落」などがニュースになっています。 

WSJSaudis Won’t Attend Meeting with Russian, Others Ahead of OPEC Talks サウジ、 OPECに先だってロシアなどのと会談に出席せず)はざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

(Reuters)

OPEC関係者によると、サウジアラビアはロシアなどの当局者と28 日に予定されている会談に出席しない。世界の2大産油国が減産で合意できないということで、低迷する原油価格を押し上げようという計画はうまくいかないと見られる。

OPECに加盟する14 か国が袋小路を脱することができるのかという意味で、30日にウィーンで開催される OPEC 総会に再び焦点があたっている。世界の原油生産の 3 分の1を支配するOPECは、各国の原油収入を減らすほどに原油価格が下落した要因となっている世界的な供給過剰を是正するために生産をカットすることで 9 月に合意した。

ただし、原油の減産の詳細については30日の総会まで先送りし、その後の準備も混迷している。 OPECの第2の産油国のイラク、第 3のイランは、計画に沿って具体的に減らすかどうかに今なお合意していない

ロシアはOPEC加盟国でないが、減産に同調するよう期待する声がある。これまでに協議された計画は、 OPECと、ロシアを始めとした非OPEC 国が次の 6か月の間に世界の原油生産を2 %近く削減するというものだ。

ロシアなど非OPEC加盟国の協力を得るには、まずは OPEC加盟国で具体的な内容を決める必要があることが明らかになってきたと言う。ロシアのエネルギー関係者は、OPEC が具体的な行動を取れば、ロシアは生産量を凍結する用意があるとしている。

サウジアラビアの政府高官は25日、ロシアなどに共同歩調を呼びかける前に「 OPEC内の明確な決断が必要だ」と述べた。サウジアラビアが出席しないにしても、OPEC の中にはロシアなど各国と協議する予定だという加盟国もある。

とは言え、 OPECで最大の影響力を持つサウジアラビア抜きにした合意はあり得ない28 日の協議には、ロシア以外にアゼルバイジャン、メキシコ、カザフスタンも出席する予定だ。

サウジアラビア欠席の報道を受けて、25日の原油市場では価格が下落した。ニューヨーク原油市場では WTIの先物価格が約4%下がり 1バレル46ドル 06セントとなった。2か月ぶりに大きな下落幅である。


今回の不協和音は、複雑な地政学と経済的な国益を示す結果となった。OPECの高官の 1人は、30日の OPEC合意には、非OPEC国の協力なくして成功しないと語った。減産合意に際しては、サウジアラビアは「当然」、非加盟国にも減産を求めると言う。

サウジアラビアは、やはり供給過剰から原油安となった1980年代には自国のみが減産の痛みを受け入れたが、当局者はかねてより、今回はそうしないと強調してきた。当時、サウジアラビアは日量で数百万バレルを減産し、その結果、お客を逃したのみならず、原油価格の上昇にもつながらなかった

2014年に原油価格が下落し始めたころ、サウジアラビアは1 国で痛みを受け入れることを拒否し、むしろマーケットシェアを獲得する方針に切り替えた。しかし、サウジアラビアや各国が予想していた以上に原油安が長期化し、サウジアラビアも市場に安定をもたらすために減産やむなしとして、方針を転換した。

しかし、イラクとイランが問題を複雑にしている。

サウジアラビアの地政学的ライバルのイランは、減産ではなく増産を主張している。というのは、核合意に達したことで、欧米の経済制裁から活動できなくなったエネルギー業界がようやくかつてのマーケットシェアを奪還できると見ているからだ。

イラクは、ことし記録的な水準まで増産している。これは、テロ組織 IS=イスラミック・ステートとの戦争を戦うための戦費調達のためだと言う。イランとイラクは、OPEC 各国と、減産の基準となるベースラインをめぐりもめている。

OPEC高官によると、イラクは、減産前のベースラインを日量480 万バレルとしている。これはOPECのデータよりも日量20 万バレル少ない量だ。

知日派の代表格のGerald Curtisコロンビア大学名誉教授の日本外国特派員協会でのお話、とってもおもしろかったです。


■「保護主義」と「同盟軽視」を主張するトランプ政権の成立は、むしろ日本/安倍首相が自由貿易における世界のリーダーになり、対ロ・対中関係を改善させるチャンスである。

■プーチン大統領を敬愛するトランプ大統領の誕生は、安倍首相の対ロ交渉能力を低下させるかもしれないが、プーチン・トランプの仲介役となり得る。

■国内世論を抑えて四島返還でない合意をまとめられるのは、歴史上、ロシアではプーチン大統領のみ、日本でも安倍首相のみだろう・・・などが勉強になりました。

以下は、メモです。

(首相官邸HP)

トランプの登場は不透明感(uncertainty )をもたらし、国際政治の不安定(instability )つながっている。アジアにいたっては、トランプ登場前から不安定だったので、よりいっそう混乱する。

トランプの外交政策はとかくこう言われている。
■ロシアのプーチン大統領と関係改善
■中国との対立から通商戦争が勃発
■移民政策の転換
■日米同盟の形骸化

一方で、トランプは原則がなく、ナルシストである。そして、トランプはアメリカのソフトパワーに大打撃である。日本の学生から「アメリカに留学したいが、安全か?」「日本人などアジア人がニューヨークで差別されないか?」と聞かれ、衝撃を受けた。

日系アメリカ人の強制収容をトランプは批判しなかった。それどころかトランプ陣営は、イスラム教徒を規制するために日系アメリカ人の強制収容を参考にするとまで言った。

[日米関係]
118 日の大統領選挙の 2日前、在ワシントンの日本大使館がトランプ陣営に「トランプが勝利したら、直ちに安倍首相から祝意を伝えたい」と連絡をしたところ、先方はえらい喜んだそうだ。

あわせて、ペルーのAPEC に出席する前にNYに寄って会談したいとも申し入れた。トランプは "that would be awesome(ちょーうれしい) " と言ったそうだ。

NYでの会談はget to know you meetingだったのだろうが、予定の 45分をこえた90分の会談ではゴルフ以外についても話したでしょう。 一方で、間違いなく 話さなかったのは、日本が予算を増額しない限り駐留するアメリカ軍を撤退するという選挙公約

安倍首相は「トランプ氏は信頼できるリーダー」と述べた。個人的には言い過ぎだと思うが、仮にトランプが米軍のことを話したら、こうした反応にはならない。もちろん日米同盟の重要性については話したのだろう。

安倍首相はトランプに高価なドライバーを贈ったが、何かほかにお土産があったわけでない。そして、就任する前の大統領に対して、日本の立ち位置を説明した。決して、アメリカに日本の立ち位置を聞きに行ったわけではない。ここに大きな変化がある。

私は、トランプ政権下での日米関係について楽観的である。確かに、日本に対して防衛費の増額を求める圧力はあるだろう。しかし、それは仮にクリントン政権が誕生した場合も同じだっただろう。それに、防衛能力を引き上げたい安倍首相にとっては願ったり叶ったりの要求だ。

次の国家安全保障補佐官になるMichael Flynnは先月来日した際に菅官房長官に対して「日米関係に変化はない」と伝えたということだが、それはその通りだと思う。トランプ大統領になってもアメリカに強い組織があり、その最たるものがペンタゴン=国防総省である。

日米同盟をめぐる環境は変わった。これまではアメリカがもの申して決断をして、日本が負担をする関係だった。今や、日本は自らの考えを持ち、アメリカもそれに対応しないといけない。安倍首相のトランプ大統領へのメッセージはそういうものだろう。日米同盟は日本にとって不可欠だが、アメリカにとっても不可欠だ。

トランプは決して「日本は自国で防衛しろ」とは言っていなかった。トランプが言ったのは「日本はもっとカネを払え」と言ったのだ。これではまるで傭兵 (mercenary army)のようだとして、反発を招いた。アメリカにとって日米同盟かが不可欠でなければ、いくらカネを払われても日本を防衛しない。日本を防衛することはアメリカの防衛にとって重要なのだ。

[日米経済関係]
トランプの話を聞いているとまるで彼の精神が貿易摩擦が激しかった1980 年代に凍結されたままのようだ。ただし、その頃と大きく異なるのは日本の企業が積極的にアメリカに工場を建設したこと。

例えばトヨタ自動車が工場を持つ全米 9つの州は、いずれも州知事が共和党で、多くの上下両院の議員も共和党だ。トヨタは全米で210 億ドルもの投資をして雇用を生み出している。

次期副大統領のペンスはインディアナ州知事を経てインディアナ州出身の議員だ。そのインディアナ州には、ホンダ、トヨタ、富士重工が工場を持っている。仮にトランプが日本叩きを始めたら、こうした州の知事や議員が何をやっているだ!と騒ぎ出すだろう。

TPPについては、安倍首相は非常に一貫している。日本では11 10日に必要な法案が衆議院を通過し、30日後には成立する。大統領選挙の前後は「TPPはもう絶対にやれない」と申し上げてきたが、今週に入って「絶対に」を落として「TPPはやれない」と申し上げている。

安倍首相は、共和党の主流派がトランプの気持ちを変えることを期待している。トランプの顔を立てて、一部修正するにしても、共和党の多くの議員がTPPを支持し、ペンス次期副大統領が自由貿易推進派であることから薄い望み( slim hope)を持っている。

ここは日本にとってはチャンスである。トランプが保護主義的な提唱をする中で、自由貿易を支持する側のリーダーに安倍首相はなれる。

[中国]
トランプは、中国を為替操作国(currency manipulator )に指定すると明確にしている。こうなれば、中国は報復するだろう。しかし、それはアメリカ対中国の通商戦争ではなく、アメリカ対日本を含む東アジアとの通商戦争の勃発である。今のサプライチェインの構造からして、日本を罰することなく中国だけを罰することはできない

ペルーのリマでの安倍首相と習近平国家主席との会談を見ても、関係が改善しているようだ。

尖閣諸島をめぐり、中国がアメリカがどこまで日本を防衛するかテストするとは思っていない。中国経済が低迷する中で、日本の企業は中国にとって重要なはず。仮にアメリカ中国から試されていると感じればアメリカは行動するだろう。

[ロシア]
日本政府は今、山口で来月行われる安倍・プーチン会談の期待値を下げようとしている。官邸も「これはスターティングラインであって、フィニッシングラインではない」と強調している。

一方、プーチン側は姿勢は強硬だが、「交渉の余地はある」としている。ロシアから見れば日本との経済関係強化というメリット、日本にしたら台頭する中国とバランスを取るというメリットがある。恐らく、「大きな成果はないが、前進した」という内容になるだろう。

ロシアとの関係改善を望んでいるトランプが勝ったことで、日本によるロシアとの接近はアメリカからの抵抗は少ないだろう。これはクリントン政権が誕生した場合との大きな違いだ。

トランプに対してマケイン上院議員(共和党の元大統領候補)は「元KGBのプーチンに取り込まれるな」と言っている。さらに、ロシアは民主党の全国党大会のシステムにハッキングしてアメリカの大統領選挙を左右しようとした。こうしたことから、トランプがどのくらい速やかに、どのくらい深くロシアとの関係を改善できるかは未知数だ。

トランプは公約したことを平気で破棄するが、仮に公約通り、プーチンとの関係を改善した場合、安倍首相にどういう意味をもたらすか?

■アメリカがプーチンを敵視していたことが安倍首相のレバレッジだったが、トランプ・プーチンで仲良くなれば、プーチンは日本と仲良くなる必要はない。安倍首相はロシアにはしごを外されるpull the rug from under )。さらに、■安倍・プーチン・トランプで仲良し同盟を作ることもあり得る。

アメリカの同盟国の中で、トランプを批判しておらず、なおかつ国際情勢に強いのは安倍首相だけだ。プーチンとの関係改善を図りたいトランプに対して、Vladimir と呼べる安倍首相が仲介役を果たし、国際情勢を教えてあげることもできる。

ロシアにしてみれば、アメリカが中心となっているウクライナ侵略をめぐる経済制裁が痛手で、日本にはそのグループから外れてロシアに投資してほしいと思っている。

安倍首相は北方領土の四島のうち、すべての返還は無理で「二島 とほかに何か」を考えているはずだ。

プーチン大統領は、領土を譲っても国内世論を抑えられる歴史上初めて、そして今後も出てこないリーダーだろう。そして安倍首相もまた、四島 より少ない領土の返還で合意できる唯一の日本の首相だろう。この2人の組み合わせだからこそ、何らかの合意が成立し得る ( you put the two together and you have a possibility of a deal)

[北朝鮮]
アメリカは何年にもわたって、北朝鮮の非核化を目指してきたが、うまくいっていない。とにかく中国に共同歩調を取ってもらわないことには進まない。しかし、中国は、北朝鮮に非核化よりも北朝鮮の崩壊を懸念している。

トランプは北朝鮮を予防的に核攻撃しようと言うが、そんなことをしたら、同盟国韓国のソウルはもちろん、東京と大阪も巻き添えになることを分かっていない。

北朝鮮にお土産をあげたり、脅したり、あらゆるアプローチをしてきた。オバマは、戦略的忍耐(strategic patience) とかっこいいことを言っていたが、戦略的でもなければ忍耐強くもなく、無関心(indifferent ) だっただけだ。私自身は北朝鮮情勢には悲観的で、中国しか情勢を変えることはできない。

[結論]
トランプは選挙戦の公約通り、■保護主義、■同盟軽視の姿勢を変えなければ日本/安倍首相にはメリットがある。

自由貿易のリーダー、防衛強化、対中関係の改善、対ロ関係の改善。日本は日米同盟を維持しつつ、すべての卵を日米同盟という1 つのバスケットに入れないことだ(分散投資を)。

安倍首相とアメリカのトランプ次期大統領の会談を伝える報道は多くありますが、FT Shinzo Abe’s boldness abroad belies his timidity at home海外では大胆に、国内では慎重に)では、「安倍首相は日本を改革した男としてのレガシーを残すのではなく、世界の中で日本の位置づけを見いだした男になりたいようだ」と分析。

(FT)

要は、外交成果は評価しつつ、国内の構造改革( 正規・非正規の労働市場改革など)は期待外れというトーンです。ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

(首相官邸HP)

トランプ次期大統領の外国首脳との初の会談は驚きがいっぱい。国務省の不在、娘のイヴァンカの出席、ディズニーランドとベルサイユ宮殿をあわせたような会場(Disney-meets-Versailles vision)

(首相官邸HP)

同時に初の会談相手も驚きだった。会談を申し入れた要人を差し置いて前に飛び出てきたのは日本の首相だったのだ。何十年にもわたって日本の外交は、悪く言えば一貫性がなく支離滅裂。よく言えばほとんど存在しないくらいに控えめ

しかし、安倍首相は違う。トランプ氏のもとに押しかけるという大胆な行動の源泉は、世界 65か国を股にかけてきた首相の外交エネルギーだ。

安倍首相が積極的な外交を展開できるのは、国内の政治が安定しているためだ。過去5人の首相が 1年程度しか務めていないのに、彼はまもなく就任からまる4 となる。この安定は「アベノミクス」と呼ばれる改革に対する国内での支持が根っこにある。

ただし、安倍首相のパラドックスは、国際舞台で成功すればするほど、国内で政治的なリスクをとることに熱意がなくなること。

この1年、安倍首相は外交で得点を稼ぎ、財政と金融政策を通じて景気を刺激してきた。しかし、重要な法案はほとんど通していない。日本を改革した男としてのレガシーを残すのではなく、世界の中で日本の位置づけを見いだした男になりたいようだ (Rather than a legacy as the man who reformed Japan, it seems Mr. Abe wants to be the man who found Japan’s place in the world)

安倍首相は、日米同盟とインドとの関係を強化し、対中関係を凍結状態から冷え込んだ状態まで改善させた。さらに、2015年の夏には自衛隊 (Japanese military)をアメリカと共に戦いやすくするよう、安全保障法案を成立させた。また、去年12 月には韓国との間で慰安婦問題を解決させるための画期的な取り決め (landmark deal)にこぎ着けた。

こうした一連の成果は特筆すべきだ。日本はここ最近ではないほどに歴史問題をめぐる国際的なプレッシャーにさらされておらず、国益を守るために同盟国を困らせるだけの自信を持っている。それが明らかとなったのは、中国が議長国のG20 首脳会議の直前にイギリスに対してBrexitEU 離脱の方法をめぐり日本政府がメモを発出した時だろう。

ご参考
【Brexit 日本からの警告】

そして今、安倍首相が目指すのはさらに大きな外交成果である。ロシアのプーチン大統領との間で北方領土問題を解決することだ。実現すれば、日本の安全保障環境は格段に改善する。対ロ関係がよくなれば、中国の台頭に対応しやすくなる。

振り返ってみると、安全保障法案の成立の瞬間に国内改革が失速した。

法案は不人気だった。挽回するため、政府はアベノミクスについてポピュリスト的な第2 段階を打ち出した。政府高官は2016年夏の参議院選挙のあとに改革に再び着することを静かに約束していた。

参議院選挙は終わった。しかし、約束された改革はまったく見当たらない。国内対策を手がける政府高官は「正直に言うと、安倍首相はリスクをとりたがらないように感じる。いま非常に強い立場にあるので、それを危険にさらしたくないのだろう」と語る。

それが最も顕著なのは労働市場改革だろう。終身雇用の正規労働者と保障がまったくない非正規労働者のギャップを埋めることこそ日本に求められている

なのに、安倍首相は、日本の長時間労働の是正を目指す「働き方改革(working style reform) 」に注力。長時間労働が大きな社会問題であることには違いない。改善すれば支持されるだろう。しかし、それは改革リーダーにとっては控えめなレガシーだ。

安倍首相はすでに日本にとって重要な首相である。仮にプーチン大統領との間で合意がまとめれば、歴史に残る首相となる。

しかし、ロシア政府との交渉で成功する者が少ない中で合意がまとまらなければ、安倍首相は国内改革を進めるチャンスよりも外国との冒険を優先させたことを後悔するかもしれない (Mr. Abe may yet regret passing up his chance for domestic reform in favor of foreign adventures)

いろんな分析が出ていますが、ブッシュ前大統領の選挙参謀だったKarl Rove(飯島勲さんとよく比較されていましたね)の分析が分かりやすいです。

(Reuters)

3の政党の台頭で、民主・共和の2 大政党に投票した有権者数が減り、 18%が「トランプ候補もヒラリー候補も好きでない」と回答。

トランプ候補は4年前のロムニー候補に比べて率にすると 0.5%の票を失ったが、クリントン候補はオバマ大統領よりも3.4 %失い、トランプが勝ったのではなく、クリントンが有権者を活気づけられなかったことで敗北

■トランプ候補に票を投じた有権者はグローバル化に反対というよりは、景気の現状に対する不満が強かった、などと指摘しています。

WSJDonald Trump Won Because Hillary Clinton Flopped (トランプ勝利はクリントンが自滅した結果)では「トランプ次期大統領になって給与が増えて景気が拡大しないと、有権者はすぐに怒りっぽくなるだろう」と締め括っています

Karl Roveの分析は、ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

 (Reuters)


トランプ候補がクリントン候補に勝利した理由は、おおかた皆が言う通りである。しかし、Fox Newsの出口調査を見るとより深いことが分かる。

 

選挙前は有権者が熱狂して、投票率が大きく上がると言われていた。国勢調査によると、有権者は21510万人だった4年前から22700万人に 5.5%増加。しかし、票を投じた有権者の数は12920万人から13120万人と1.5%しか増えなかった(まだ100万程度数えられていない郵送の票もある)。

 

もっと驚きは次のことだ。共和党と民主党の2大政党に投票した有権者の絶対数が減った2012年に共和党と民主党は12690万票を獲得した。


ことしは?わずか 12370万人だ。第3の政党が750万人票、率にして5.5%も取ったのだ。1996年以来の大きなシェアだ。

 

獲得票では負けながら、選挙人の数で勝ったという選挙戦は史上5回目である。そして、勝者が全体票の50%を獲得できなかったのは14回目である。これまでのところ、トランプ氏は 6130万票で 46.8%、クリントン氏が6240万票で47.7%を獲得。


2012年と比べるとどうか?トランプ氏はロムニー氏よりも317000票取ったが、有権者が増えているため、率にすると 0.5%少ない。クリントン氏はオバマ大統領よりも 350万票、率にして3.4%少ない票数しか取れなった。両候補とも白人票は4年前より減っている。トランプ氏は160万、クリントン氏は230万少ない。

 

つまり、トランプ氏は決して共和党の支持基盤を拡大したから勝ったわけではないクリントン氏がオバマ大統領が獲得した票を大きく落としたから、トランプ勝利となったのだ。


2012年のオバマ大統領に比べて、クリントン氏は黒人票を180万、 18歳から 29歳のグループの100万、30から44歳のグループの180万、カトリック教徒の260万、年収30万ドル(約 330万円)以下の家庭の 450万減らしているのだ。

 

有権者の中のヒスパニック系は10%から11%に拡大したため、2012年のオバマ大統領の時より18万多い 940万票を獲得した。しかし、ヒスパニック票のうち、ロムニー氏の 27%に対して、トランプ氏が29%取ったため、次期大統領は420万のヒスパニック系票を取ったことになる。これはロムニー氏より69万多い。

 

トランプ氏は、ブルーカラーの労働者階級の支持を得て勝った。それもグローバル化の懸念を背景にして。これが一般的な解釈だ。前者は、一部注釈が必要だが、概ね正しい。グローバル化に関する後者はそうでもない。確かに労働者階級の支持によってトランプ氏は、オハイオ、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ミシガンで勝った。

 

しかし、教育レベル人が低い人では決してない。高卒以下はわずか18%だ。短大、あるいは大学卒業の有権者のうち、トランプ氏は4年前に比べて380万増やした一方で、クリントン氏は 35万落とした。

 

グローバル化反対のスローガンが躍ったが、実際には有権者を突き動かしたのは景気の現状のようだ。出口調査で有権者の3分の1が景気が「非常に良い」あるいは「良い」と答えた。この集団の77%はヒラリー票となった。これに対して、景気が「良くない」「悪い」と答えた 3分の2のうち、63%がトランプ票となった。歴史的に見ても今回の選挙について、有権者は冷めていた。有権者の18%がトランプ氏に対してもクリントン氏に対しても好ましい印象を持っていないと答えている。このうち、トランプ氏を好ましく思っていないのが49%、クリントン氏は 29%。この結果、トランプ次期大統領が就任からすぐに給与を増やして、経済を成長させない限り、すぐさま有権者は怒りっぽくなるだろう。次期政権にとって、経済が引き続き最大の課題なのだ(the electorate could get grumpy quickly if President Trump doesn’t produce bigger paychecks and stronger growth.  They economy remains the paramount issue for the incoming administration)


お伝えしていますように、イタリアの憲法をめぐる国民投票が12月4日に行われます。イギリスのBrexit 、アメリカのトランプ大統領選出に続くポピュリスト的な動きになるのではないかと注目されています。


議会を今の二院制から事実上の一院制に変えるための是非を問うものですが、実際にはレンツィ首相の信任投票を意味するとして金融市場がびびっているというのはWSJ Next Wild Card for Markets: Italy’s Constitutional Referendum(市場の次の不確実性はイタリアの憲法改正めぐる国民投票)。

ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。


Brexit=イギリスのEU 離脱とトランプ勝利に続き、投資家が注目しているのは12月4日に行われるイタリアの憲法改正をめぐる国民投票。結果しだいでイタリアの銀行の株価が急落し、国債が急騰し、通貨ユーロがさらに安く可能性がある。

憲法改正を求めるのは41歳のレンツィ首相。議会の手続きを進めやすくし、安定した政権ができるという。レンツィ首相は、国民投票で NOが勝利し自らの提案が否決された場合、退陣することを公言している。イタリア経済が混乱し、首相の支持率が低迷する中、今回の憲法改正は事実上、首相に対する信任投票を意味する。

ドイツ銀行のストラテジストは、イタリアの国民投票のことを「2017年の政治・投資環境を占う」と言う。

最近の世論調査ではNOがわずかにリードし、 20%以上が「決めていない」と答えている。イタリアはヨーロッパ随一の債務国のひとつで、銀行が不良債権を抱え、景気低迷が長引き、反ユーロの機運が高まっていることを踏まえて、投資家はイタリアの政治が不安定になると神経質になっている。

レンツィ首相は、「提案が否決されればイタリアは何も変わらない。このままでは、イタリア政治は不安定なままで、密室政治のままだ」とインタビューで述べている。

レンツィ首相は、ヨーロッパでもっとも構造改革を進める姿勢が強いと見られている。その首相が退陣すれば、恐らく暫定政権が成立するだろう。さらに、2018 年に予定されている議会選挙が前倒しとなる。

反エスタブリッシュメントを掲げる五つ星運動(5 Star Movement)に対する支持率は 30 %程度あり、新たな政権を率いる可能性がある。五つ星運動が主張しているのは、イタリア債務の再交渉、ユーロの使用を続けるかどうかの国民投票の実施など、ユーロ圏全体を揺るがす内容だ。

投資家の中には、6月の Brexit投票、11月の米大統領選挙のあとの金融市場の混乱が短期で終わったことから、イタリアについても混乱してもそう長続きしないという楽観的な見方もある。

一方で、市場がイタリアの国民投票を十分に織り込んでいないという見方もある。ドイツ銀行は、五つ星運動が政権についてユーロの賛否に対する国民投票を実施した場合、ヨーロッパの株価は 20%下がると予想する。

ユーロ圏第3 の経済大国の政治混乱は、ユーロ圏全体の懸念につながる。イタリア発のショックでヨーロッパ中央銀行が金融市場の混乱を沈静化できなければ、投資会社の BlackRockの担当者は「ユーロ圏全体への伝染は、Brexit の比ではない」と言う。

国民投票をめぐる心配からイタリア国債が影響を受けている。世界で5番目に取引量が多いイタリアの 10年もの国債の利回り1 年ぶりに 2%をこえてきている。50年もの国債については、 10月半ばには2.9%だった利回りが今では 3.5%に高止まりしている。

ドイツ国債とのスプレッドは、2年ぶりの拡大幅となる 1.7ポイントに広がっている。それでも2011 年のスプレッドよりも遙かに小さい。

国民投票の結果はとりわけイタリアの銀行に打撃となる。銀行株はことしに入って半分にまで下がっている。イタリア最大の銀行ウニクレディト(UniCredit) と第3のモンテ・ディ・パスキ・ディ・シアナ(Banca Monte dei Paschi di Siena) はどちらも国民投票の後に増資を予定している。ウニクレディトは12月13日に経営戦略を発表する。

イタリアの経済がうまくいくかどうかと銀行の経営健全性はユーロ圏全体に影響する。投資家のひとりは「イタリアはイギリスのBrexit よりも影響が大きい。イタリア経済が再び成長しない限り、ユーロ危機は終わったとは言えない」と語る。

✳︎【イタリア国民に投票の行方】はこちら。

今週は、ワシントンから続々といろんな方が来日中。米外交問題評議会のSheila Smithお話は日米関係が主です。ざっくりこんな感じ。

(The Economist)

トランプの支持者=Trumpers Trumpkinsと呼ばれる熱心な有権者は、Pennsylvania, Wisconsin, Michigan で思いのほか、投票所に足を運んだ。

クリントン陣営もトランプ陣営も同じ州を重点州として位置付けていたが、トランプ陣営の方がうまくやった。クリントンはWisconsin Michiganに十分に選挙戦を戦わなかった。

(NY Times)

[貿易]

大統領選挙でこれほどまでに外交が焦点となったものはない。それも通商だ。通商、通商、通商の選挙だった。特に焦点となったのがTPP。


クリントン候補10/7/2015の時点で「今のTPPには賛同できない」と述べた程度だったが、 8/11/2016になると、「TPPには今も将来も、大統領になっても反対する」とまで言った。


一方のトランプ候補11/10/2015の時点で「TPPはひどい。中国を利するものだ」と述べていて 6/28/2016になると、「TPPは既得権益を利するもので、この国をレープするものだ」と言い放った。


ただ世論調査を見ると、アメリカ国民全体が自由貿易/通商にそこまで反対しているわけではない


[安全保障]

バードンシェアリングは日本も求められるだろう。お金ではなく安全保障の能力(capabilities)が問われる。アメリカでよく言うように roles, mission and capabilityが重要になる。


日本にとって幸運なのは、去年=2015年に5年間のHost Nation Support(思いやり予算)の改定を終えていることで、4年後までない。一方、韓国では来年= 2017年が改定期にあたっている。


[トランプ次期政権の外交の優先順位]

NAFTAの再交渉 (reopen NAFTA)

■TPP離脱(take America out of TPP

■中国を就任初日に通貨操作国に認定(declare China a currency manipulator on day one


[中国]

中国をどのように通貨操作国に指定するかが問われる。WTO=世界貿易機関の手続きに則ってやればそう問題ではない。しかし、トランプ氏が通貨操作国指定を「交渉の武器として使う」と繰り返していることから、これまでに結んだ協定などの再交渉を求めるのだろう。その場合、米中関係は難しくなる。


貿易戦争(trade wars)はドラマチックすぎるが、貿易関係の緊張( trade tensions)にはなるだろう。トランプ氏は、米中関係の根底からの見直しを模索している。

 

[外交・通商姿勢]

外交については、isolationistneo-realistのハイブリッドで、オバマ政権と比べて規制なく軍事力を行使するだろう。


通商については、 isolationistprotectionistのハイブリッドでアメリカ経済の強さ、市場の大きさを武器として使うだろう。つまり、アメリカのリーダーシップは大きく変わる

 

[ロシア]

トランプ氏は、プーチン大統領への敬愛(admiration)を公言してきた。米ロ関係はリセット、リフレッシュする時期であり、サイバー攻撃に鑑みても関係修復は望ましいこと。


 (FT) 


[日米関係]

日本はリーダーシップを発揮できる立ち位置にある。TPPについては、「アメリカ抜きでは意味がない」という話も日本では聞くが、それは違う。意味がある。あくまでもアメリカ側の失敗である。


アメリカが離脱してもぜひ、日本が中心になって進めてほしいと思う。TPPの手続きが進んでいれば、アメリカが戻ってきた段階で物事が早く進む。


安倍首相の外交スタイルを見ると、ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相と親しい関係を築いており、トランプ氏とも合う可能性があるし、今の地政学の環境の中で強みだと思う。


ニューヨークで17日、日本時間の18日の朝開かれる日米首脳会談は信頼関係を築くことが第一だ。大事なのは、会談のあと、安倍首相が「日米は引き続き重要なパートナーである」という力強い明確なメッセージを発すること。それで十分。


通商や外交をめぐる具体的な政策のすり合わせは、トランプ氏が実際に大統領になってから進めればよい。そして、安倍首相が世界の首脳で最初にトランプと会談することは意味がある。たいへんに注目されるだろう。それは日本にとっても良いことだ。


今週は、アメリカから続々と政府関係者が来日しています。民主党系の方が多いのですが、その中でブッシュ共和党政権のホワイトハウスで経済政策を担ったEdward Lazear氏 Michael Armacost元駐日大使 のお話を東京財団で聞きました。

(WSJ)

ざっくりこんな感じです  


[Edward Lazear (ブッシュ共和党政権下のCEA委員長)]

トランプ氏の主張は、■所得税を12%、 25 %、33%に下げる、■法人税率を35 %から 10%に引き下げるというのは共和党も賛成だが、■海外に移転した企業の税率を引き上げる、■巨額の財政支出をするといったものはむしろも民主党に近い

このままでは今後10 年で 4兆ドルの増加になる。果たして、budget hawk の議会共和党の賛同が得られるかどうか。

ほかにFRBの金融政策に批判的だが、具体的にどうしたいのかは見えない。イエレン議長の任期はあと 1年半で切れる。

トランプ新政権が取り組むべき経済の最優先課題
■新たな投資を促すような税制の見直し
■医療保険=オバマケアの修正、あるいは別の政策への代替
■プラスマイナスを見極めて規制を見直す(金融規制のドッド・フランクルール、消費者金融保護庁、 SIFIs=大手金融機関規制の見直しなど)。

格差の拡大に対する怒りは大きかった。ただし、富裕層と貧困層(rich and poor) の対立ではなく、富裕層と中間層   (rich and the middle class)の対立だ。

アメリカの製造業は衰退しているわけではない。アメリカの製造業は今なお力強い。しかし、生産性の向上によって製造業に従事する労働者が減っている。アメリカの場合、大学を出ていない大人の割合が人口の50 60%だが、ドイツ語圏にあるような職業訓練の場がないのが問題だ。

共和党はインフラ投資そのものに反対しているわけではない。全米の国道(interstate highway) を建設したのはアイゼンハワー共和党政権の時だ。

問題は「景気刺激」と見るのか「長期的な投資」と見るのか。景気刺激にしては、経済成長につながるまでに何人もかかり、有効ではない。一方でニューヨークのラガーディア空港に降り立つと途上国のようで驚愕するが、必要な公共投資もある。ただし、その場合は教育などの予算が削られ、 trade offが発生する。

議会下院のPaul Ryan議長は、財政規律に厳しく、政策に詳しい (budget hawk, policy wonk) 。つまり、トランプと正反対だ。再任が決まったが、彼が率いる議会下院とトランプ政権との間の緊張が予想される。むしろ、野党上院民主党のChuck Schumer議員(NY選出)の左よりの議員とトランプは気があうだろう。

財務長官には、ポールソン財務長官のようなウォール街出身者、あるいはスノー財務長官のような大手企業のCEO出身者を選ぶ可能性が高いと思うし、そうするべきだと思

[Michael Armacost(1989-1993の駐日アメリカ大使)  ]


今、閣僚を含めた4000人近くの政治任命を選定中のはずだが、安全保障の分野ではトランプ反対を明確にした者が多く、そもそも候補が進まない。

共和党出身の大統領はこれまで■自由貿易と■民主主義の伝播を推進してきた。しかし、トランプはそうではないどころか、外交について真剣に考えたことはなく、歴史について疎く、本も読まないようだ。

Power balance をまったく理解せずに、ロシアについて話すことに驚いている。TPPだって、通商のみならず安全保障の側面があるのだが、それが理解できていない。日本に米軍の駐留費の増額を求めた際にHost Nation Support (思いやり予算)は知らなかったのだろう。

プーチンのロシアという独裁国家に批判の矛を向けない一方で、独裁国家の中国を批判して、一貫性がない。

日本、韓国、サウジアラビアにnuclear option(核兵器の選択)を与えると言って、核拡散防止を理解していない。

彼の政策は現在勉強中といったところだろう(his view on policy is work in progress)

これから政権を始動するにあたっての注目は3つ。
どうチームをつくるか
■カーターのようなteam of rivalか、パパブッシュのような team of colleagues
■政策判断を進める人員の規模をどうするか

私がいたころは50人規模だった NSC=国家安全保障良委員会は今、400人にまで膨らんでいる

政策の優先順位をどうつけるか。どの政権も誕生したばかりの時点で大胆なことをやりたがる。Use power or lose it と思っているからだが、政権発足当初は閣僚すらそろっていないかもしれない。

メディアの関心も高いが、最初の6か月は大胆なことをせずに経済を潤すことだとレーガン大統領が言っていたが、その通り。

新しい大統領は、前の大統領のやってきたことを相続する。オバマ大統領は中東からアジアに軸足を戻した(pivot back to Asia) 。ミャンマーとは関係を構築したが、フィリピンとは今後どうなるか分からない。               

北朝鮮に対してトランプは勇ましいことを言ってきたが、北朝鮮のレジームチェンジは、中国と韓国の協力なくしてできない。

[Karl Eikeberry(米陸軍出身、元アフガニスタン大使)]

今回、次期副大統領のMike Penceが政権移行チームを率いることになったが、これは 1976年のカーター大統領・モンデール副大統領まで遡らないとないくらい珍しい。異例づくしだ。

トランプは、十分に予算をつけた強い軍隊で自由世界を率いる(lead the free world with a strong military funded beautifully) と言ってきた。

では、アメリカ軍をどうするのか。

■核を抑止するためにアメリカの陸海空を強くする。

■海軍の軍艦を今の273000から 35万に増やす。

■陸軍の要員を今の49万人から54万人に増やす・・ などと主張している。武器とシステムの更新を伴うため、関連企業の株価が上昇しているが、当然、国家の予算が必要となる。軍事費に5000億ドルを追加するという。


Burden sharingについては、主に NATO を念頭に発言しているが、それはゲーツ国防長官だって同じことを言っていた。ゲーツが言った時に人々は「孤立主義者」だとは言わなかった。


日本に対しては、防衛費がGDP 1 %は少な過ぎることを指摘するだろう。


どの政権であっても今、東アジアが優先だ(East Asia is a priority)。北朝鮮があり、ドゥテルテ大統領の誕生で関係が複雑になったフィリピンがあり、慎重なヘッジが必要な中国がいる。北朝鮮は、 2020年までにアメリカ大陸に到達する核弾頭を搭載した長距離ミサイルを撃てるようになるだろう。


この2020 年」というのがカギだ。トランプ政権が終わる年である。どんな大統領も2期目を考えるものであり、トランプも北朝鮮をどう扱うか真剣に考えざるを得ない。


国際社会にとっても優先課題 (top international priority)は北朝鮮だろう。そして、韓国は当然、トランプ大統領のもとのアメリカの「核の傘」を頼りにできるのか戦略的に再考するだろう。


✳︎東京財団とスタンフォード大学APARCの共催シンポジウムでした。

トランプ次期大統領をめぐるニュースが途絶えませんね。女性やヒスパニック系の蔑視発言を繰り返し、グローバル化反対のトランプ。公共事業を通じて財政支出を増やし、規制緩和でアメリカ経済を上向かせるというトランプ。いったいどっちが本当のトランプなのか?

(The Economist)

The Economist今週号のMeet the new boss(新しいボスがこの人)はざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。


トランプ次期大統領は、ビジネス界でも実はアウトサイダーだ。トランプ氏の特徴は3つ。

(1)経済再生に向けて民間企業の力を解き放つと主張していること。

(2)経済は大手企業に有利で、いんちき資本主義というポピュリスト的な考えの持ち主であること。

(3)保護貿易主義の論者であること。

まず、企業が期待していることから考えてみよう。トランプ氏の税制は専門家から笑いものにされてきたが、企業の間では期待が高い。法人税率を約40%から 20%以下に引き下げたいという。同時に企業に有利な抜け穴を是正するとも言う。

一方、企業が海外に蓄積した2 兆ドル(約 200兆円)の資産を巨額な課税なしにアメリカに持ち帰ることも提唱する。

トランプ氏の官僚主義の打破(war on red tape)もビジネス界で人気だろう。オバマ大統領の医療保険=オバマケアを破棄することで負担に感じていた中小企業の支援にもなるだろう。

環境規制を破棄することに成功すれば石油・ガス・石炭といった産業への完売な取り扱いにつながるだろう。選挙結果が判明した 119日、チャプター 11 で経営破綻したPeabody Energyという石炭会社の株価が50 %上昇した。ノースダコタ州などでシェール開発を進めているハロルド・ハム(Harold Hamm)氏がエネルギー長官になる可能性もある。

減税、規制緩和、新たなインフラ投資はビジネス界が喜ぶことだが、大手企業は次のことを懸念しているはずだ。

トランプ氏はアメリカ経済が消費者や普通の労働社には不利だとポピュリスト的な主張をしてきた。

トランプ氏の大手企業の競争に対する考えもまちまちだ。 10月にはAT&T 1090 億ドルでTime Warnerを買収することに反対の姿勢を示した。一方で、製薬会社の薬価には寛大な姿勢をとってきた。

特に今懸念を示しているのは、■ウォール街と■シリコンバレーである。トランプ氏は2008年のリーマンショックのあとに制定された金融機関を規制するドッド・フランク法を修正したいと主張している。金融機関はこの法律が大嫌いである。

一方で、トランプ氏は投資銀行と商業銀行を分けるべきだと主張している。そんなことになれば JP Morgan Chaseなどは悪夢となる。

シリコンバレーも焦点となり得る。Facebook Googleの影響力は甚大であり、傲慢と言っても良いくらいであるが、トランプ氏に堂々と反対してきた。  

ライドシェアのUber の運転手の扱いに反発することも容易に想像できる。あるいは Appleに安全保障を理由に顧客のiPhone の情報を提供するよう求めることも。

ただ、トランプ氏の3つの特徴のうち、経済界に最も悪いには保護貿易主義である。トランプ氏にとって最初の大きなビジネス取引は 1970年代半ばのニューヨークである。グランドセントラルでハイアットホテルを建設したのだ。その時に比べて、アメリカ企業は海外への依存を大きく増やした。今ではS&P の大手企業の売り上げを見ると、 44%が海外だ。

選挙期間中、トランプ氏は、自動車大手のフォードや食品大手のモンデレズがアメリカ国内で雇用を十分に生み出していないとして批判してきた。

通商戦争や報復関税は、サプライチェインの破壊につながる。アメリカの自動車産業はメキシコの部品供給に依存している。仮にトランプ氏が本当に中国に対して報復関税を課すようなことをすれば、中国側は当然、中国で活動するアメリカ企業を規制するだろう。

アメリカの多くのCEO は、トランプ氏は何だかんだ言ってもビジネスを理解していると信じたいだろう。それはそれで真実だ。オバマ氏やクリントン氏に比べて、トランプ氏は資本主義に対する直感的な理解がある。

ただしトランプ氏は介入的でもある。トランプ氏は、アメリカ企業は自分の権力を行使するための道具だと思っている。

彼の不動産王という最初のキャリアの影響力はアメリカ株式会社にとって限定的だった。政治家としての第 2のキャリアの影響力は甚大であろう。

次期国務長官として名前が挙がっているJohn Bolton The New York Postに寄稿しています(リベラルなNY Times ではなく、保守的な編集方針で知られる NY Post)。

(Reuters)

ボルトン氏と言えば、ブッシュ前政権で国連大使を務め、ネオコンなどと言われていた保守の論客。タイトルは、Trump needs to reverse the Iran deal and assert our interests (トランプは国益のためにイラン核合意の撤回を)です。

そもそもアメリカの中東への介入に嫌気がさしてアメリカ国民が8年前、オバマ大統領を選んだはずですが、振り子は大きく振れますね。一方で、■イラク戦争への姿勢(トランプ氏は明確に反対)、■ロシアとの距離感(トランプ氏はプーチン大統領といちゃいちゃ)がネオコンと違います。

ボルトン氏はトランプ氏には「次期大統領」と肩書をつけつつ、オバマ大統領やクリントン氏を呼び捨てにしているのには笑ってしまいました。

ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

(NY Post)

バラク・オバマの外交政策のレガシー とは、■アメリカの国際的な影響力の低減、■アメリカ軍や諜報活動の予算の劇的なカット、そして■ワシントンが国際的な脅威を理解していないのではないいかという 同盟国の懸念の台頭である。

その結果、何が起きたかと言えば、核兵器の拡散とイスラムのテロの増大である。 8年前に比べて、世界がより危険な場所になったことには理由がある。

オバマは、ホワイトハウスにいる間、安全保障政策を注意散漫の対象(distraction) としか見ていなかった。むしろ、 2008年に率直に認めたように、アメリカを「抜本的に変革すること(fundamentally transform) 」が目標だった。そうした理想とは別に国際的な危機が頻繁に起きて、時間もエネルギーもそちらに注がざるを得なかった。

オバマは独自の世界観がなかったわけではない。しかし、それは誤った世界観だ。オバマ、さらにヒラリー・クリントンらの意見によると、アメリカの国際的な存在感や強さ、自己主張、それに同盟国を守ることは、緊張、不安定、そして衝突につながるというのだ。彼の世界観では、アメリカの自己防衛や同盟国との安全保障は、問題であって解決策ではない

世界的な危機の拡散が最も顕著なのはである。そして、中東こそがトランプ次期大統領がすぐに直面する国際的なチャレンジとなるだろう。

■イスラム過激主義はこの地域に広がり、政府を崩壊し、テロリスト・グループや部族長がのさばる無政府状態となった。

■第1次世界大戦後の国境が消えつつあり、かつてシリアとイラクだったところにISISがカリフを作りつつある。

■クルドの人々が"クルジスタン"を独立宣言する日が近づいている。

■トルコが政教分離からエルドアン大統領が独自に考えるカリフに移行しつつある。

アルカイダとタリバンがアフガニスタンで再起して、イエメンが崩壊してしまった。

■そして何よりも、オバマの恥知らずのイランとの核合意の結果、イランは経済制裁解除で得をし、特にヨーロッパによる新たな貿易・投資により潤っている。イランのテロ支援はとどまるところを知らないし、核合意のあと挑発的な態度はいっそう悪化した。ロシアの中東地域での影響力は1970年代以降で最悪だ。


トランプ次期大統領は、ISIS を撲滅することこそ最優先に取り組むべきだと断固として強調してきた。オバマのスローモーションのような態度を続けては、 ISISが新たな戦闘員を増やし、西側にテロリストをまき散らすことになる。


さらに、トランプのISIS 撲滅運動では、オバマの誤ったイラク政府依存を是正しなくてはならない。今やイランの操り人形に過ぎない。


この複雑でいくつもの側面のある戦争で、ある国の敗退はほかの国を利することになる。つまり、目標は、ISIS を撲滅しつつ、極力イランの利益にならないようにすることである。オバマのアプローチはどうも、イランの利益を拡大させるものだ。


もっとも難しい問いは、次のものだろう。ISIS撲滅のあと、何が起きるのか (What comes after ISIS is defeated)


かつてISISを支持してきたスンニアラブの国々は、イランが力を持つイラク政府アサド政権のシリアなどに静かに、再び追いやられることはないだろう。シリアとイラクの焼け野原から新しい国家を樹立するか、あるいはほかの持続的な方策を考えないといけない。


(ラタキア、Google Map)


シリアのラタキアに新しくできたロシアの空軍基地は地中海の東側の戦略的な状況を劇的に変えた。残念ながらオバマの間違った政策を撤回したくらいでは、この空軍基地は消えない。


この地域が廃墟となった8年間、イスラエルとアラブの友好国は、強いアメリカの大統領を待ち望んでいた。トランプ次期大統領の登場は、地政学の力学を一気に変えて、アメリカの選挙は世界を変えられことを示した


まず重要なのは、就任直後にイランの核合意を廃止することだ(abrogate the Iran nuclear deal in his first days in office) 。この大胆かつ不可欠な決断を実行するには外交的な説明が必要となるが、世界に発信するアメリカの明確なメッセージは評価してもしきれない。


テロや中東の無政府状態は、どんな大統領にも起き得るが、トランプ次期政権は■グローバル・ガバナンスを主張する者や、■中国やロシアといった国際的な競争という現実から、アメリカの立憲制度を守るという長期の課題に立ち向かうための戦略も考える必要がある。


政権発足時に戦略的な思考を怠れば、4年、あるいは 8年の任期の間に起きるであろう問題を悪化させるリスクがある。今のうちに骨の折れる準備作業をやっておけば、不透明な将来が厳しい現実となった時に十分に役立つだろう (Doing the hard preparatory work now will pay off when the uncertain future becomes all too real)

マーケットは、トランプ次期大統領の経済政策のいいとこ取りをして熱狂しているけど、一般国民の生活は今後、悪化する。

(FT)

サマーズ元財務長官がFTへの寄稿文=A badly-designed US stimulus will only hurt the working class(中身を誤った景気刺激策は労働者層の痛手に)で、こう指摘しています。

アメリカの空港や道路は途上国並みに古く、インフラ投資が必要という主張は、トランプもサマーズも同じ。ただし、トランプのやり方は誤っているとサマーズは強調しています。ざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。

(AP)

金融市場が急落したあとの、8日夜、トランプ次期大統領が行った勝利宣言は予想より融和的でインフラ投資に重点を置いていた。投資家は概ね、財政出動の急拡大への姿勢の転換、エネルギー、金融、製薬セクターの規制緩和によりアメリカの需要を喚起し、経済を上向かせると判断した。

その結果、長期金利とインフレ期待が上昇し、株高ドル高につながった。しかしながら、過去の経験から市場の初期反応はのちのちの効果を反映しないことが分かっている。

MITの故Rudiger Dornbuschの研究成果によると、世界のポピュリスト的な経済政策は、直後にはプラスであっても長期に見ると労働者に劇的にマイナスだということだ。

トランプ氏の経済政策は、政策の組み立てのエラー、無理な想定、世界経済軽視の姿勢から、やはり長期にはマイナスになる運命かもしれない。

私自身は、低金利を活用してアメリカの老朽化したインフラを建て直すために財政支出を増やすべきだと長く主張してきた。それだけにトランプ氏が提唱するのを聞いて嬉しかった。

ただ残念ながら、Peter NavarroやWilber Rossといったアドバイザーが示したプランは、株式投資に対する税額控除と誤った資産配分をベースにしている。

全米の道路や6万に及ぶ橋の修復、学校校舎の近代化、空港の管制塔の最新鋭化といった成果の大きな投資案件は含まれていない。金銭的なリターンが小さいからだ。また、非課税の年金基金、寄付による大学基金、ソブリンウェルスファンドといったインフラ資金の有望な出し手は計画に参加できない

私は財政拡大の有効性を楽観視している。とは言え、責任あるエコノミストであれば、一定規模を超えた財政出動が外国からの借り入れの増加、インフレ、そして金融危機に発展する危険があることは認めざるを得ない。

インフラ計画のコスト増(トランプチームはひどく過少評価している)や、国防費の拡大を考慮しなかったとしても、トランプの税制見直し案は国家への負担が大きすぎる。遺産税の廃止同様に多くの案は、金持ちのみを優遇する。

トランプ案が機能するには劇的な修正が必要だが、公共投資の増加、税制の修正、規制の見直しという方向性自体は妥当だ。

トランプ勝利の直後に起きたことを振り返ってみよう。保護主義的な政策の導入へも懸念からメキシコの通貨ペソはドルに対して10%下落した。ほかの新興国通貨も急落した。

この結果、アメリカがメキシコに輸出したモノは値上がりし、メキシコがアメリカに輸出するモノは値下がりすることになる。

また、グローバル企業にとってアメリカよりもメキシコなどの新興国での事業展開が割安となる。つまり、アメリカの製造業に従事する労働者に対する下押し圧力は増すことになる。

トランプ案では、中国を為替操作国に認定するとしており、アメリカが各国に通貨を安くしないよう圧力をかけられると考えているようだ。これはばかげている。

中国が輸出を有利にするために為替を過去に操作したということは言えても、この1年について言えば、中国は人民元相場をむしろ押し上げるために市場介入を続けているというのが現実だ。ほかの新興国も同様の状況だ。政治的に力のあるアメリカ大統領とは言え、経済法則はひっくり返せない

ポピュリスト的な経済政策は、アメリカの場合、新興国とは違う形で繰り広げられるだろう。しかし、結果が芳しくないことには変わりない。

世界経済に参加するすべての関係者はこう願わずにはいられない。統治の責任を預かるアメリカ大統領は、選挙戦の公約の柱は守りつつも、見直しは行って欲しい


けさ6時半すぎにトランプ次期政権の大統領首席補佐官にプリーバス(Reince Priebus)全米共和党委員会の委員長が起用されると発表されました。

これに先立って、ペンス副大統領候補が率いる政権移行チームが閣僚などの主要ポスト選びを急いでいるとアメリカの各紙が報道。

(The New York Times)

その中でも The New York Timesが詳しいです。

Donald Trump Is Picking His Cabinet: Here’s a Short List(ドナルド・トランプ、閣僚を選任 中:こちらがその短いリスト)は、ざっくりこんな感じです。

ひとりだけ頻繁にお会いしたことのある方がいました。エネルギー長官に名前が挙がっているコノートン氏です。以前、ホワイトハウスの環境評議会議長でした。

(Zuma Press)

■国務長官
トランプ氏がイデオロギー色の強い人を選任するにしても、過去の共和党政権でも活躍した外交のベテラン(a seasoned foreign policy hand) を選任するにしても、国務省は、1945年以降続けてきた同盟国重視とグローバル化の中心となる。まさにトランプ氏が破棄すると主張してきたのが同盟国重視とグローバル化だ。

・John R. Bolton
ブッシュ(息子)政権下の国連大使
・Bob Corker
テネシー州選出の上院議員で、議会上院外交委員会の委員長
・Newt Gingrich
元議会下院議長
・Zalmay Khalizad
元アフガニスタン大使
・Stanley A. McChrystal
元アフガニスタン駐在軍司令高官

■財務長官
財務長官は国債を発行することで金融市場から資金を調達する責任があるほか、税制の見直しをアシストし、日本の国税庁にあたるIRS を監督する。さらに、財務省は、敵対国に対して金融制裁を科したり、解除したりすることもできる。オバマ大統領はこの権限を使ってイランとの核合意やキューバとの国交回復を実現した。

・Thomas Barrack Jr.
コロニー・キャピタル(プライベートエクイティー・不動産投資)の創設者で会長
・Jeb Hensarling
テキサス州選出の下院議員で議会下院金融サービス委員会の委員長
・Steven Mnuchin
元ゴールドマンサックスの幹部でトランプ陣営の財政責任者
・Tim Pawlenty
元ミネソタ州知事

■国防長官
次の国防長官は、ISISとの戦いを形作る一方で、アメリカ軍を指揮する。アメリカ軍は、オバマ政権のもとで、女性に戦闘の最前線で戦う役割を与えたほか、トランスジェンダーの人々が堂々と入隊することを許可したが、軍はこれに苦労しており、どちらも見直される可能性も。

・Kelly Ayotte
ニューハンプシャー州の上院議員(今回の選挙で敗退)で議会上院の国防委員会の委員
・Michael T. Flynn
退役陸軍中将元国防情報局長(退役軍人に対する7 年の規制があるため、議会からその免除が必要)
・Stephen J. Hadley
ブッシュ(息子)政権下の国家安全保障担当の大統領補佐官
・Jon Kyl 
アリゾナ州選出の元上院議員
✳︎ご指摘を受けて修正しています。
・Jeff Sessions
アラバマ州選出の上院議員で、移民反対論者

■司法長官
トランプ氏が主張する「法と秩序」を推進し、クリントン氏を投獄する権限を持つ。市民権の運用方法を変更することも。

・Chris Christie
ニュージャージー州知事
・Rudolph W. Giuliani
元ニューヨーク市長
・Jeff Sessions
アラバマ州選出の上院議員

■内務長官
全米の大地や水を管理する。オバマ政権が進めてきた石油、責任、ガスの開発規制や国立公園などで風力や太陽光の推進などを阻止することも。

・Jan Brewer
元アリゾナ州知事
・Robert E. Grady
グライフォン・インベスターズのパートナー
Harold G. Hamm
石油・ガス会社のコンチネンタル・リソーセスのCEO
・Forrest Lucas
自動車の潤滑油やグリースを製造するルーカス・オイル・プロダクツの社長
・Sarah Palin
元アラスカ州知事

■農務長官
農務長官はアメリカの農産業を所管し、食品安全検査を実施し、食品を買うための費用を補助する。各国の市場開放を求めることから、トランプ氏の通商政策の一翼を担う。

・Sam Brownback
カンザス州知事
・Chuck Conner
National Council of Farmer Cooperativesの責任者
・Sid Miller
テキサス州の農業コミッショナー
・Sonny Perdue
元ジョージア州知事

■商務長官
商務省は、長年にわたり予算カットの対象だが、商務長官は国勢調査や経済分析局などの責任も持つ。

・Chris Christie
ニュージャージー州知事
・Dan DiMico
製鉄のニューコアの元CEO
・Lewis M. Eisenberg
グラナイト・キャピタル・インターナショナル・グループのプライベート・エクイティー担当

■エネルギー長官
エネルギー省の主要な役割は、国家の核兵器を守り、管理すること。

James L. Connaughton
Nautilus Data Technologies CEO で、ブッシュ(息子)政権の環境評議会議長
・Robert E. Grady
Gryphon Investors のパートナー
Harold G. Hamm 
Continental ResourcesCEO

■大統領首席補佐官
ホワイトハウスのスタッフの責任者であり、大統領の政策の実現を担当する。トランプ氏が政策立案の経験がまったくなく、ワシントンのキーパーソンとのコネクションも乏しいことから重要な役割となる。

Stephan K. Bannon
Breitbart Newsの編集長で、トランプ氏の選対本部長
Reince Priebus
全米共和党委員会の委員長


■国連大使
国務長官に次ぎ、世界に対してアメリカを代表する。

・Kelly Ayotte
ニューハンプシャー州の上院議員(今回の選挙で敗退)で議会上院の国防委員
・Richard Grenell
ブッシュ大統領(息子)の国連大使の広報担当

■国家安全保障担当補佐官
閣僚ではないものの、国務省、国防総省などの提案をさばく重要な役割。

Michael T. Flynn
元国防情報局長

きょう出たThe Economistの表紙はThe Trump era=トランプの時代。まさにそうなるのでしょうね。


そんな中、Glen Fukushimaさんのお話を日本記者クラブでお聞きしました。会場に入ってきた段階だから、何だか元気ありませんでした。

グレンさんは民主党政権でのアメリカ通商代表部の高官を務めた日系アメリカ人で、今回ヒラリーを応援していただけに心中お察しします。

選挙結果の分析や今後の日米関係について語りました。以下、メモです。


■大統領選挙の結果について

私にとっては驚きだった。アメリカの現状に不満な有権者が予想以上に大きかった

・経済への不満
・グローバル化への不満
・伝統的なワシントン政治への不満

ヒラリーは既成政治・現状維持の代表というレッテルを貼られ、トランプが変化の代表だった。2008年のオバマ勝利の時と同じ構図だ。

教育水準が高くない白人男性は伝統的に民主党支持だったが、2040年に白人が全米でマイノリティになり、非白人、女性ばかりにベネフィットがあり、自分にはないとして、不満・不安を強めていた。そこに不満の代弁者であり、自分の代表として期待できるトランプが現れた。

言語学者によるとトランプは小学校2年生にも理解できる単語しか使わず、コミュニケーションが上手。ある意味、政治家らしい候補者だった。 Make America Great Againというスローガンも分かりやすかった。

世論調査会社とマスコミの役割だが、各種世論調査は大きく外した。マスコミはトランプが出馬した去年 6 月からことし春までの1年半、おもしろおかしく取り上げ、政策の中身を追求しなかった。トランプが視聴率を取れることを指して CBS テレビの会長が2月に「トランプはアメリカにとって良くないが、CBSにとっては神さまだ」と述べたことが象徴的。

ほとんどの主要紙が社説でヒラリー支持を打ち出した。インテリ層と教育レベルが比較的低い有権者との間にギャップが生じた。

地図を見ると明らかだ。東海岸、西海岸、都市部ではヒラリーが勝ち、中西部や南部~ペンシルベニア、オハイオ、ノースカロライナ、フロリダなどの激戦州を含む~をトランプが取った。

メール問題をめぐるFBI の対応が選挙結果を左右した。 1028日にコーミー長官が私用メールサーバーについて議会に書簡を送った。それまでは民主党が上院を奪還するばかりか下院も奪還できるのではないかというくらいに勢いが高まっていたが、この日を境に雰囲気ががらりと変わった 

116 日にコーミー長官が訴追をしないという会見をしたが、 FBIの中立性に疑問がついた。それは民主党だけでなく、共和党も。選挙前の60 日前以降は、選挙に影響しそうなことはしないという暗黙のルールがあるので。

■今後の見通し

118 日から来年1月20日まで10週間が政権の「移行期間」となる。4000 人近くのポリティカルアポインティーが任命される。このうち、閣僚・副長官・次官・次官補・大使の約1000 人は議会の承認が必要だ。議会の承認とホワイトハウスの調査(いわゆる身体検査)も必要で、普通は1月20日 政権発足時までに閣僚は終わる。

副長官、次官、次官補は3月から 5 月までに任命され、その後大使という順番。駐日大使でもっとも早く赴任したのがシーファー大使の2005 4月。フォーリ-大使は1997 11月、ケネディ大使は2013 11月と遅かった。ルース大使は2009 8月だった。

政党の異なる政権への交代なので、政府が機能するには時間がかかる。さらに、トランプは政治経験もなければワシントンの経験もない。

ニュート・ギングリッチ、クリス・クリスティ、ルーディ・ジュリアーニ、ジェフ・セッション、マイク・ペンスあたりが中心になるだろう。

■政策

現状批判ばかりをしていて、具体策がないのでよく分からない。

法人税率を35%から 15 %に引き下げること、所得税を減税すること、インフラ投資を進めることは明確にしている。一方、TPP、NAFTA については「廃止、あるいは再交渉」としか言っていない。

今後の焦点は▼何を優先課題にするのか、▼議会、最高裁、マスコミ、各国、国際機関がある中で、それを実行できるのか

中国製品に対する関税を35%課すと言ってみたり、 75%と言ってみたり。また日本に対しても、日本がアメリカ産牛肉の輸入に38 %の関税をかけているためアメリカは日本車に 38%の関税を課すと言っている。優先順位なのか実行可能なのか不透明だ。

■日米関係

そもそもトランプの対日観は30年間変わっていない 1987年に9 5000 ドルを払って、The Washington Post, The New York Times, Boston Globe日本に対する批判広告を出している。

▼円安に誘導して自動車の輸出を有利にしている、▼安全保障でただ乗りしているというのが柱。その後、 Opra Whinfreyのインタビューに対して、さらに雑誌Playboy のインタビューでも同じことを言っている。

11月17日に安倍首相がトランプとニューヨークで会談するということだが、以下の4点を質問するべきである。

TPPの何が不安で、どこを修正したいのか?

②日本について過去30年、貿易・雇用・為替の面から批判しているが、日本の自動車に 38%の関税を本当にかけるのか?

沖縄の駐留米軍の役割について、日本がどこまで負担すればよく、仮に負担しないとしたら撤退するのか?

④対中関係の一環で尖閣諸島について、2014年にオバマ大統領は日本で「日米安全保障条約第 5条適用の範囲」と明言したが、トランプ政権でもこの立場を維持するのか?

この本音が分かれば、日米関係の今後がはっきりしてくる。

質疑応答

■議会共和党の役割は?
□民主党は上院で2つの議席(イリノイとニューハンプシャー)を増やしたが、多数派を奪還できなかった。トランプはインフラ投資を増やすと主張しているが、共和党は財政規律に厳しいのでどこまで増やせるかは分からない。自由貿易をめぐっては、ビジネス界と対立することも予想される。

■アメリカ国内の分断と国際社会との分断をソフトランディングできるのか?
□女性蔑視、移民排除、LGBT軽視の発言を繰り返すトランプが本当のトランプなのか、勝利宣言をした大統領らしいトランプが本当のトランプなのか、まだ分からない。ビジネスマンなので手の内を見せない方が良いと思っているようだが、国レベルではそうもいかず、本音なのか脅しなのか分からない。

■ヒラリーはなぜ、女性票を伸ばすことができなかったのか?
□世代間の問題が大きかった。50歳以上の女性は、民主・共和問わず、熱狂的なヒラリーファン。一方、若い女性は差別を受けた経験がなく十分に女性にアピールできなかった

また、好感度が低く、女性に限らず、黒人やヒスパニックの票も期待されたほどとれなかった。古いと見られ、資質も問われた。

■上下両院も共和党に握られ、民主党はどう再建するのか?
□共和党は前回の大統領選挙で敗北したあと、2013 3月に将来像に関する報告書を出した。民主党も反省が必要だ。あそこまで有能な候補で、組織力があり、資金力があり、盤石な選挙体制がありながら勝てなかった

トランプは2 期目はないと期待。 2020年を見据えると、ヒラリーや今のバイデン副首相は年齢的に無理。

副大統領候補だったティム・ケイン、カリフォルニアから今回上院議員に決まったカマラ・ハリス、メリーランドの元州知事のマーティン・オマイレーなどが次期候補になり得る今の段階でリーダー的存在がいない。オバマ、トランプの躍進を見ると、 実績がない人でも大統領になれることが分かったので、新しい人を発掘しないといけない。

■自由貿易は終わったか?
□理念が変わったとは思わない。実際、ペンス次期副大統領は推進者だ。ピュー研究所の世論調査を見ると、自由貿易を推進しているのは共和党ではなく民主党。むしろ共和党の支持者が自由貿易に反対なのだ。トランプ政権の間に貿易を縮小してもアメリカ経済がよくならないと証明される と思う。中長期的には自由貿易に大きな変化があるとは思わない。

ただし、一点付け加えるとサマーズ元財務長官がことし 7月、 Brexit投票の直後に▼FT Voters deserve responsible nationalism not reflex globalism ▼ Washington Post How to Embrace Nationalism Responsiblyと寄稿したように、国のリーダーはグローバル化だけなく、責任あるナショナリズムを考えないといけない。自由貿易がよいことばかりないことも分かってきた。

TPPはどうなるのか?
□議会のいわゆるレームダックセッションで批准されないのははっきりしてきた。TPPが今の形で残るのは不可能だ。多国間ではなく、日米の2国間 FTAを締結することに米産業界は賛成だろうが、むしろ日本側は農産物の問題で困難があると思う。トランプはそもそも貿易協定に価値を置いていない。国際経済を担当する 商務長官、通商代表部の代表に誰を選ぶのか注目したい。

参考)

ヒラリーは敗北宣言をした時もRalph Lauren のパンツスーツでした。

(画像は全てReuters)

投票所に行く時も。


ちなみに、トランプ次期大統領の勝利宣言の時にファーストレディとなるメラニアが着ていた白いパンツスーツも Ralph Laurenだったそうです。


ヒラリーは、これまでアメリカの国旗のred white and  blue 3白のパンツスーツで3 回の討論を乗り切りました。いずれもラルフローレン


敗北宣言では紫。共和党を象徴する赤と民主党を象徴する青を混ぜると紫

選挙を経て、アメリカを再び統一しようという意味でしょうね。勝利宣言用に用意したものと推察します。後ろでビル・クリントンもさりげなく紫のネクタイをしています。

支持者を前にしたヒラリーのconcession speechは 潔かったと思います。トランプの勝利宣言とヒラリーの敗北宣言の動画のリンクの下に、ヒラリーのスピーチをご紹介します(日本語、英語の順番)。

Trump Victory Speech

Clinton Concession Speech


友人の皆さん、ありがとう。ここにお運びいただきありがとうございます。私も皆さんのことが大好きですよ。

昨夜、私はドナルド・トランプに祝意と、この国のために一緒に働くことをお伝えしました。彼があらゆるアメリカ人にとって素晴らしい大統領になることを願っています。

今回の結果は決して、望んでいたものではありませんし、必死に働いてきたのもこの結果のためではありません。今回の選挙で、われわれの価値観、国のビジョンをもってして勝てなかったのは残念でなりません。

それでも今回の選挙を一緒に戦った皆さん、広範で多様で、創造力があり、時にまとまりがなく、活力がある皆さんに対して誇りと感謝の気持ちでいっぱいです。よきアメリカを象徴するそんな皆さんを代表して候補になれたことは私の人生でもっとも栄誉なことでした。

(拍手)

皆さんがいかに失望しているか分かります。だって私もそうですから。そして今回の選挙に希望と夢を託して尽力してきた何百万人ものアメリカ人も同じ思いのはずです。

この結果はつらいし、この痛みはすぐには消えないでしょう。それでも、お伝えしたいのです。今回の選挙で訴えたのは決して、誰かひとりのためのものではなかったし、たった一回の選挙で終わるものでもありません。私たちが愛する国をめぐるもの、そして希望に満ちて多くの人たちに寛容なアメリカを築くための戦いだったのです。

この国が思っていた以上に深く分断されていることを目の当たりにしました。しかし、私は今なおアメリカを信じているし、今後も信じ続けます。そして、皆さんもこの思いを共有してくださるなら、今回の結果を受け入れて、その上で将来を見据えなければなりません

ドナルド・トランプはわれわれの大統領になるのです。開かれた心で、彼が国を率いるチャンスを与えなければなりません

アメリカ憲法に基づく民主主義は平和的な権力の委譲を約束しています。私たちは、これに敬意を表するのはもちろんのこと、これを大切に思っています。

ほかにも約束しています。法秩序、平等な権利と尊厳、信仰と表現の自由。こうした価値観についても、敬意を表し大事に思うと同時に、守らなくてもなりません。

(拍手)

もう一つアメリカ憲法に基づく民主主義について付け加えると、われわれの参加を求めています。それも4 年に 1回の選挙の時だけではなく、常に、です。ですから、是非、一緒に大切にしている信念や価値観を前に進めましょう。それは、富裕層だけでなくみんなのための経済をつくることであり、国を守り、地球を守り、夢の実現を阻むあらゆる障壁を打ち破ることです。

この1年半、私たちは全米から大勢の人たちが一緒になって、アメリカン・ドリームとは、あらゆる人種、あらゆる宗教の男女、移民、 LGBTの方々、障害を持つ方々などみんなを包み込むだけ大きいことを訴えてきました。みんな、です。

(拍手)

さぁ、ひとりの市民としてよりよい、より強い、より平等なアメリカを築くために責任を果たすべき時です。皆さんならその責任を果たすでしょう。

皆さんとこの場にいることができて感謝の気持ちです。ティム・ケインとアン・ホルトンは、この長い旅路を一緒に歩いてくれました。

(拍手)

さらに親しくなり、本当に嬉しかったです。ティムがバージニア州を代表して引き続き上院議員として民主主義の最前線にいることで希望が持てるし、安心もできます。

拍手)

バラクとミシェル・オバマにはこの国全体として、感謝の気持ちを伝えなければなりません。

(拍手)

優雅で強い意思のあるリーダーシップは多くのアメリカ人にとって、そして世界の人々にとって意味あるものです。

そして夫のビルと娘のチェルシー、義理の息子のマーク、孫のシャルロットとエイダン、それに家族のみんなにどんなに愛しているかを伝えたいし、どれほど感謝しているかは伝えても伝えきれません。私や陣営の代わりに全米を飛び回ってくれ、一番落ち込んでいる時に手を差し伸べてくれました。生後 4か月のエイダンもママと一緒に来てくれましたね。

ニューヨークの選挙対策本部、それに全米の事務所で働いてくれたクリエイティブでタレントあふれ、献身的に働いてくれた皆さんに対する感謝は一生忘れません。

拍手)

皆さんは、今回の選挙戦に全身全霊で取り組んでくださいました。中には何度も選挙戦を経験された方もいました。初めての選挙戦という方もいました。皆さん一人一人が世の中で一番素晴らしい支持者だったことを言わせてくださいね。

(拍手)

そして大勢のボランティア、コミュニティーリーダー、活動家、労働組合の代表の皆さん。個別訪問をし、近所の方たちと話し、フェースブックでメッセージを訴えてくれました。秘密のプライベートなフェースブックでも・・

笑い、拍手)

是非、堂々と出てきてくださいね。今後、そうした皆さんの声が聞かれるようにしたいのです。

(拍手)

5ドルから始まった献金をしてくださった皆さん、ありがとうございました。われわれ一同から、本当にありがとうございました。

特に若い皆さんにお伝えしたことがあります。

私は、さっきティムが言った通り、社会人になってからずっと信じるもののために戦い続けてきました。うまくいったこともありますし、うまくいかなかったこともあります。時には本当につらいことも。

多くの皆さんは、まだ公職あるいは政治キャリアの入り口に立ったばかりです。これからうまく行くこともあれば失敗することも成功することもあるでしょう

今回の敗北は本当につらいです。しかし、どうぞ信じ続けてくださいね。正しいと信じることのために戦うことは意味あることです。

(拍手)

意味があるのよ、本当に。

拍手)

若い皆さんには今後もずっと戦い続けてほしいのです。

すべての女性の皆さんにもお伝えしたいことがあります。特に若い女性の皆さん。私を信じてくれた皆さん。あなた方のチャンピオンになれて本当に誇りに思います。

(拍手)

かっていますよ、まだ一番高く、岩盤のように堅いガラスの天井を打ち破っていません。しかし、ある日誰かがやってくれます。願わくば、いま考えているよりも早く

(拍手)

これを見ている女の子たちにも伝えたいことがあります。自分は価値があること、力があること、そして世界中のあらゆる夢を追いかけて実現させるだけのチャンスを得る存在であることを一度たりとも疑ってはいけません

最後に・・

拍手)

私にこれだけのことを与えてくれたこの国にどれだけ感謝していることか。アメリカ人で良かったと毎日感謝しています。そして、今なお信じています。違いを尊重しつつ、団結して共に行動し、強い信念を持ち、この国を愛すれば、未来はまだまだ明るいです。

(拍手)

というのは、団結した方が強いと思うし、共に前に進めるからです。そのために戦うことを悔やむようになってはいけません。

聖書にはこうありますよね。たゆまず善を行いましょう。飽きず励んでいれば時が来て、実を刈り取ることなります

友人の皆さん、お互いを信じましょう。決して飽きることなく、信念を失わないようにしましょう。その時はやがて来るでしょう。励みましょう。

今回の重大な選挙で皆さんを代表できたことを本当に感謝しています。May God bless you and may God bless the United States of America.

<原文>

Thank you, my friends. Thank you. Thank you, thank you so very much for being here and I love you all, too.

Last night, I congratulated Donald Trump and offered to work with him on behalf of our country. I hope that he will be a successful president for all Americans. 

This is not the outcome we wanted or we worked so hard for and I’m sorry that we did not win this election for the values we share and the vision we hold for our country.

But I feel pride and gratitude for this wonderful campaign that we built together, this vast, diverse, creative, unruly, energized campaign.

You represent the best of America and being your candidate has been one of the greatest honors of my life.

(APPLAUSE)

I know how disappointed you feel because I feel it too, and so do tens of millions of Americans who invested their hopes and dreams in this effort. 

This is painful and it will be for a long time, but I want you to remember this. Our campaign was never about one person or even one election, it was about the country we love and about building an America that’s hopeful, inclusive and big-hearted.

We have seen that our nation is more deeply divided than we thought. But I still believe in America and I always will. And if you do, then we must accept this result and then look to the future. 

Donald Trump is going to be our president. We owe him an open mind and the chance to lead.

Our constitutional democracy enshrines the peaceful transfer of power and we don’t just respect that, we cherish it. It also enshrines other things; the rule of law, the principle that we are all equal in rights and dignity, freedom of worship and expression. We respect and cherish these values too and we must defend them.

(APPLAUSE)

Now — and let me add, our constitutional democracy demands our participation, not just every four years but all the time. So let’s do all we can to keep advancing the causes and values we all hold dear; making our economy work for everyone not just those at the top, protecting our country and protecting our planet and breaking down all the barriers that hold any American back from achieving their dreams.

We’ve spent a year and a half bringing together millions of people from every corner of our country to say with one voice that we believe that the American dream is big enough for everyone — for people of all races and religions, for men and women, for immigrants, for LGBT people, and people with disabilities. For everyone.

(APPLAUSE)

So now, our responsibility as citizens is to keep doing our part to build that better, stronger, fairer America we seek. And I know you will.

I am so grateful to stand with all of you. I want to thank Tim Kaine and Anne Holton for being our partners on this journey.

(APPLAUSE)

It has been a joy getting to know them better, and it gives me great hope and comfort to know that Tim will remain on the front lines of our democracy representing Virginia in the Senate.

(APPLAUSE)

To Barack and Michelle Obama, our country owes you an enormous debt of gratitude.

(APPLAUSE)

We — we thank you for your graceful, determined leadership that has meant so much to so many Americans and people across the world.

And to Bill and Chelsea, Mark, Charlotte, Aidan, our brothers and our entire family, my love for you means more than I can ever express. You crisscrossed this country on our behalf and lifted me up when I needed it most — even four-month-old Aidan who traveled with his mom.

I will always be grateful to the creative, talented, dedicated men and women at our headquarters in Brooklyn and across our country.

(APPLAUSE)

You poured your hearts into this campaign. For some of you who are veterans, it was a campaign after you had done other campaigns. Some of you, it was your first campaign. I want each of you to know that you were the best campaign anybody could have ever expected or wanted.

(APPLAUSE)

And to the millions of volunteers, community leaders, activists and union organizers who knocked on doors, talked to neighbors, posted on Facebook, even in secret, private Facebook sites…

(LAUGHTER)

(APPLAUSE)

… I want everybody coming out from behind that and make sure your voices are heard going forward.

(APPLAUSE)

To everyone who sent in contributions as small at $5 and kept us going, thank you. Thank you from all of us.

And to the young people in particular, I hope you will hear this. I have, as Tim said, spent my entire adult life fighting for what I believe in. I’ve had successes and I’ve had setbacks. Sometimes, really painful ones. Many of you are at the beginning of your professional public and political careers. You will have successes and setbacks, too.

This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what’s right is worth it.

(APPLAUSE)

It is — it is worth it.

(APPLAUSE)

And so we need — we need you to keep up these fights now and for the rest of your lives.

And to all the women, and especially the young women, who put their faith in this campaign and in me, I want you to know that nothing has made me prouder than to be your champion.

(APPLAUSE)

Now, I — I know — I know we have still not shattered that highest and hardest glass ceiling, but some day someone will and hopefully sooner than we might think right now.

(APPLAUSE)

And — and to all the little girls who are watching this, never doubt that you are valuable and powerful and deserving of every chance and opportunity in the world to pursue and achieve your own dreams.

Finally…

(APPLAUSE)

Finally, I am so grateful for our country and for all it has given to me. I count my blessings every single day that I am an American. And I still believe as deeply as I ever have that if we stand together and work together with respect for our differences, strength in our convictions and love for this nation, our best days are still ahead of us.

(APPLAUSE)

Because, you know — you know, I believe we are stronger together and we will go forward together. And you should never, ever regret fighting for that. You know, scripture tells us, "Let us not grow weary in doing good, for in due season, we shall reap if we do not lose heart."

So my friends, let us have faith in each other, let us not grow weary, let us not lose heart, for there are more seasons to come. And there is more work to do.

I am incredibly honored and grateful to have had this chance to represent all of you in this consequential election.

May God bless you and may God bless the United States of America.


TRUMP TRIUMPHS(トランプ勝利)言葉遊びとしてはしゃれていますが、ワシントンポストもニューヨークタイムズもまったく同じ見出し

 

上がThe New York Timesで、下がThe Washington Postです。



USA TodayDonald Trump stuns the world(ドナルド・トランプ、世界を驚かす番狂わせ)。


 

まだ主要各紙の社説を見つけることができませんが、FTSeven Donald Trump policies that could change the US(アメリカを一変させ得るトランプの7つの政策)はざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。


 

トランプ氏の驚くべき勝利(stunning victory)は、アメリカ国内、そして海外に大きく影響するような政策の転換につながる。トランプ政権は、オバマ大統領の代表的な成果をひっくり返す可能性がある。


▼オバマケア(医療保険)、▼気候変動政策、▼イランとの核合意など。さらに最高裁判所判事の指名をめぐる民主党の希望を打ち砕くことになる。より保守的な最高裁となるだろう。外交政策も大きく変わることもある。


多くのアナリストは、選挙戦の公約と実際の政策が違うことに警鐘を鳴らす。確かに通商協定の再交渉は、宣伝されるほど中身がないこともある。イスラエルのアメリカ大使館を現在のテルアビブからエルサレムに移転するといった外交政策も横に置いておいて、となるかもしれない。


しかしながら、45代となるトランプ大統領のもとで大きく変わると見られるのが以下の7 つの政策だ。

 

①通商政策

トランプ氏はTPPに反対し、メキシコとカナダとの通商協定の NAFTA を抜本的な見直しを提言してきた。こうした発言は中西部のラストベルトと言われる旧工業地帯での人気を後押ししたようだ。その結果、選挙戦全体にも影響した。


さらに、中国からの輸入品に 45%の報復関税を課すと脅してきた。通商戦争を引き起こしかねない。

 

②外交政策

トランプ氏は、オバマ大統領が進めてきたイランの核合意は破棄する、あるいは再構築すると言ってきた。オバマ大統領は、核なき世界(a world without nuclear weapons) を掲げて就任したのに対して、トランプ氏は日本と韓国が核兵器を開発することを受け入れると言ってきた。


さらに、 NATOの同盟国が十分な金銭的な負担をしていないとしてNATOとの関係を見直す、ロシアのプーチン大統領とより緊密な関係を築くことも明言してきた。

 

③医療保険

トランプ氏は共和党が言っているようにオバマケアを「撤廃する、あるいは別のもの取って代える」と主張してきた。代替案を示していないが、市場原理を働かせると言っている。

 

④税制

トランプ氏は、大規模な減税をするとして、レーガン大統領以来の税制革命を起こすと約束している。企業の利益に対する税率を今の最大35%から最大15%に引き下げると言う。また所得税についても最大 39.6%から引き下げると言う。

 

⑤最高裁判事

これがもっとも影響を受けると見ている専門家も多い。最高裁は今、保守的な判事4人とリベラルな判事4人と真っ二つに割れている。クリントン氏の支持者は、空席の9人めの判事を任命することで、長きにわたってリベラルな判決を期待していた。


しかし、トランプは議会も共和党が維持したため、簡単に任命を受けられるだろうし、場合によっては高齢のリベラルな判事を置き換えることもできる。

 

⑥気候変動政策

トランプ氏は、地球温暖化はアメリカの製造業の競争力を弱めるために中国が編み出したでっち上げだと主張してきた。そして、オバマ大統領と中国が合意したことで発効にいたったパリ協定を「キャンセルする」と約束してきた。


また、国連の気候変動関連のプログラムに対するアメリカの支出をすべてやめると言っている。

 

⑦移民政策

トランプ支持者をもっとも奮起させた政策であり、反対にヒスパニック系アメリカ人がトランプのホワイトハウス入りを強烈に阻止させた政策でもある。クリントン氏もオバマ大統領も不法移民であってもアメリカ国民になれる包括的な改革を後押ししてきた。


トランプ氏は、メキシコとの国境沿いに壁を築き、イスラム教徒の移民を禁止し、1100万人の不法移民を強制送還させると言ってきた。しかしながら、その後は「入念な検査 (extreme vetting)」とあいまいな表現を用いたり、不法移民をめぐる具体的なプランについて口を濁してきた。


いよいよアメリカ大統領選挙の結果が出る(はずの)日ですね。長かった選挙戦もこれで終わり(のはず)。

The Economistの最新号の表紙は、人差し指と中指をクロスさせた写真です。


「幸運を祈る」という趣旨のkeep your fingers crossedということでしょう。指の腹にはクリントン候補の似顔絵。

さらに、タイトルはAmerica's best hope(アメリカの最大の/唯一の希望)とあります。この雑誌としては、クリントン候補が大統領になることがアメリカの望みだというわけです。

現地の報道によると、すでに4600万人が期日前投票をしたそうです(50州うち、early votingができるのは37州)。

USA Todayによると、最近の敗北宣言の時間は以下の通りです。

2004年:ブッシュvsケリー
ケリーが23:02(日本の翌日の13:02)にブッシュに電話して敗北を認める。14:00(日本時間翌々日の04:00)に敗北宣言(concession speech)。

2008年:オバマvsマケイン
マケインが翌日の23:20(日本の翌日の13:20)に敗北宣言。

2012年:オバマvsロムニー
ロムニーが翌日の01:00(日本時間15:00)に敗北宣言。

今回は、一方の候補が「選挙結果を受け入れない」と公言しているだけに、どうなるか。分からないですね。

カレンダーでいうと本日がアメリカ大統領選挙。それにしても、アメリカの選挙人制度って分かりにく~い。さらに、今年は第3の候補が頑張っていて Evan McMullinが地元のユタ州(選挙人6 人)を獲得する可能性があり、トランプ候補もクリントン候補も 538票のうち必要な270票を獲得できないのではないかという指摘もあります。

(Oklahoma State University)

ぎょへ、トランプ候補とクリントン候補が同着だった場合、どうなってしまうの?という疑問に Bloombergが答えています。ざっくりこんな感じです。それにしても、日本時間のいったいいつ当選確実が出るのかしら!?

(Washington Post)

■誰も過半数を取らない事態とは?

□勝利するには538の過半にあたる270票を獲得する必要がある。538票は、人口に応じて50州と首都ワシントンに割り振られている。


論理的には 269269はあり得るが、これまでにそこまでの接戦だったことはない


ところが、今年は別の波乱要素がある。独立系の候補のEvan McMullinが地元ユタ州を獲得する可能性が十分にあるのだ(is in striking range to win his home state of Utah)


ユタ州は 6を持っており、本来だったら共和党の地盤のためトランプからその票が逃げる形になる。トランプもクリントンも270に達しないという可能性もある。


■その場合、どうなる?

□大統領を決める場が、アメリカ議会下院の不測事態の選挙(contingent electionという場に移される。議会下院は上位3人~例えば、トランプ、クリントン、マクマリンを選出し、 50州の選挙人は各州が1票として投票する50人を超える選挙人のいる最大票田のカリフォルニア州も1票として数えられる。26州の支持を得た候補が次期大統領となる。


■では、各州の選挙人はどう候補を選ぶのか?

□州ごとにミニ選挙を開く。恐らく秘密投票となるだろう(とは言え、アラスカ、デラウェア、モンタナ、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモント、ワイオミングは選挙人は1人)。


そこでの勝者が州の候補となる。予め議会下院は「過半」を勝者とするのか、「多数」で十分なのかルールを決めておく必要がある。


■州の選挙人が真っ二つに割れたら?

□その州の票は除外される。


■首都ワシントンの扱いは?

□大統領選挙で投票はできるが、ワシントンDC選出の下院議員(1人)はこの場での発言権はない。


■議会下院というは今の議員のことか、今度選出される議員のことか?

□議会下院におけるミニ選挙は、来年1月3日に召集される次期第 115回議会の議員が対象となる。その結果、今の議員ではなく、新規に選出される議員が大統領を選ぶ代表となる。


■勝者を予想するとしたら?

□分からないが、今の議会の構成から想像すると共和党の可能性がある。50州の選挙人の民主・共和の配分で見ると、共和党が33州で、民主党が14州で、共和党が多数を持っている。ただし、 118日の選挙結果しだいでは、それも変わり得る。


■議会下院の投票結果でも決まらない可能性は?

□ある。


■その場合、どうなるの?

□議会下院が来年1月20日の大統領就任の日までに次期大統領を選出できない場合、次期副大統領が大統領が決まる間、暫定を務める


すると、当然、次の質問が出てきますよね。


■次期副大統領は誰が選ぶの?

□1804年以来、大統領候補と副大統領候補は同じ政党で"セット"として選ばれてきたが、不測事態の選挙(contingent electionとなった場合、別々のものとして扱われる。


議会上院は副大統領を上位 2(議会下院は上位 3人だったが)から選出する。共和党のマイク・ペンスと民主党のティム・ケインを想定しよう。


100人の上院議員は選挙人団としてではなく個人として、票を投じることになる。バージニア州選出のケイン上院議員は2018年までが任期であり、自分に票を投じるチャンスがある。そして、大統領と副大統領が違う政党の人間になることもあり得る。


■仮に議会上院でも決まらない場合は?

□オバマ大統領が退任する来年1月20日の正午までに新しい大統領も副大統領も決まらない場合、議会下院の議長が大統領代理を務める。仮にそれができない場合、1947年に成立した大統領の継承に関する法令(Presidential Succession Act of 1947)に定められた継承の順番に従って決めることになる。


■ポール・ライアン大統領ということか?

□それは早合点だ。ライアンは今の下院議長だが、次期議会でも下院議長となるかは分からない


■こうした事態は起きたことがあるの?

□ある。1824年に民主党と共和党のの分裂によって4人の候補が現れ、選挙人を獲得した。アンドリュー・ジャクソン候補が過半に達するには32足りなかったものの、トップの 99の選挙人を獲得した。


それでも、議会下院は大統領にクィンシー・アダムスを選出した。 1836年に副大統領をめぐる選挙戦でも似たような事態が起きた。この時は議会上院がリチャード・ジョンソンを選出した。

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