アメリカの大統領選挙戦を見ていると、保守的な有権者もリベラルな有権者もめっちゃ怒っているのが分かります。


共和党のトランプ氏はブルーカラーの白人男性の怒り、民主党のサンダーズ氏は若い人たちの怒りの受け皿になっています。どちらも経済・雇用情勢が根底。


一方、「米独仏で、有権者の怒りに訴え、火に油を注ぐような政治家によってかき乱されている一方で、日本では久々に政治的な安定を維持している」と奇妙な現象として紹介しているのが、米WSJの「アベノミクスの行き詰まり」


 (写真はすべてWSJより)


ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

How Japan’s "Abenomics" Reached an Impasse 日本のアベノミクスがどう行き詰まったか)


~安倍首相の経済再生プログラムは持続的な回復を作るのに失敗した〜

 

安倍首相の経済再生策の核心は、日銀の強い意思により20年のデフレから脱却できるというものだった。しかし、日銀がマイナス金利政策を導入しても持続的な経済再生が起きないのは、アベノミクスが袋小路に入ったことを示すものだろう。

 

経済の失速により、東京株式市場の日経平均株価は10日、2.3%下落し、日銀が 20141031日に行った追加緩和前の水準にほぼ戻った。円相場は13か月ぶりの円高水準となり、日銀の思惑とは真逆に安全への逃避(flight to safety)が強まっている。


 

安倍首相が201212月に政権に復帰した当時、日本はバブル崩壊から 20年以上もパッとしない安定(lackluster stability)に安住していた。日本経済の成長はのんびりしていて、高齢化は一気に進んでいたが、日本は少なくても大都市は、安全で、綻びが目立たない社会だった。

 

安倍首相は、それで満足してはならないと語った。金融緩和、財政支出、構造改革の"3本の矢"を打ち出し、経済をロケットスタートさせ、物価と賃金を再び上げると宣誓した。

 

第1の矢以外は結果を出していない。財政支出は財務省の圧力により、すぐに地に落ちてしまった。女性の職場での活躍などの第3の矢は長期の目標であったし、安倍首相は外国人労働者に門戸を広げるという大胆な手段にまでは踏み切らなかった。

 

その結果、すべては日銀の黒田総裁の双肩にかかってしまった。黒田総裁は、市場を資金でじゃぶじゃぶに溢れかえらせ、円安をもたらし、企業業績のブームを後押しした。今月も「金融緩和に限りはない」と語ったように、物価上昇率2%の達成を公約している。

 


黒田総裁をもってしても、できなかったのは、企業に対して収益を使って賃金を上げさせ、新技術に投資させること、消費者を強引にお店に連れて行き、もっと買い物をさせること。

 

安倍首相とそろってやったのは、

"Japan is back"などと力強い表明 を行うことだった。しかし、去年の後半までに、日本のアニマルスピリットが冬眠から起きていないこと (Japan’s animal spirits remained in hibernation)が分かってきた。


その理由の一端は政府の矛盾した政策だった。安倍首相は 20144月の消費税増税を決行した。しかし、これは個人消費を冷やし、財政の引き締め (belt-tightening)のメッセージとなった。

 

そして、年が明けて、海外からいやな風が吹いてきた。中国経済の減速、ヨーロッパの金融機関の経営に対する懸念、世界経済を不安定に陥れる原油安-資源のない日本にとっては本来プラスだが。

 

勢いを維持しようと、黒田総裁は129日に最後の手段として、前の週に検討していることすらも否定したばかりの政策に打って出た。初めてマイナス金利政策を導入したのだ。当初は思惑通りに株高円安が進んだ。しかし、すぐにマーケットは反転し、出発時点よりもさらにゴールが遠のいた形(leaving the central bank farther from its goal than when in started)


 

安倍首相も黒田総裁も、計画が根本的にそれたとは思っていない。黒田総裁は今月、日本経済は「緩やかに回復している」と繰り返したが、企業収益と賃上げの好循環は「いくぶん弱い」とは認めた

 

安倍首相は10日、予算委員会で、黒田総裁とその経済再生に自信を示し、「アベノミクスが最終段階だと見る向きは間違っている」と述べた。

 

安倍首相にとっての発見は、有権者は一般的に力強い経済成長を期待していないことだ。あるいは、大きな変化を恐れているのかもしれない。その結果、有権者は公約を達成できない政治家を(落選などで)罰することをしない(they don’t punish politicians who fail to deliver it)アメリカ、ドイツ、フランスで、有権者の怒りに訴え、火に油を注ぐような政治家によってかき乱されている一方で、日本では久々に政治的な安定を維持している (At a time when the US, Germany and France are roiled by politicians who appeal to voter anger and fan its flames, Japan is enjoying its greatest political stability in a generation)

 

各種の世論調査によると、安倍首相の支持率は50%以上を回復し、自民党はこの夏の参議院選挙の勝利が予想されている。

 

仮にアベノミクスが失敗したとしても、日本経済は安倍首相が登場する前の状況に戻るだけであって決して日本経済がクラッシュするわけではない。


日本の公的債務はGDP200%超だが、国債の利回り低下により以前よりも問題でなくなったようだ。日本政府は今や金利ゼロで借金できる。あるいは、借金すると投資家から手数料すら取れるかもしれない。