旧知の友人に誘われて3人で中国茶。テーマは「マイナス金利の限界とヘリマネの現実性」です。


ヘリマネとはヘリコプターマネー。26日のFTや今週号のThe Economistに特集されているように、最近よく話題になります(^_^)


 (BlueWire Studio)


FTはGoldman Sachsの研究所長の寄稿文の中で、ヘリコプターマネーの危険性を指摘しています。


(FT)


一方、The EconomistのMoney from heaven(天国からのお金)To get out of slump, the world’s central banks consider handing out cash(景気停滞を脱するため、各国の中央銀行は現金配布を検討)は、頭の体操として考えてみたら?というトーン。ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。


 (The Economist)


"Helicopter money"とは一見、ヘッジファンドマネージャーの経費請求の1項目のようだが、実は大胆な金融政策を象徴する言葉だ。▼政府支出をまかなうために紙幣を刷ること、あるいは▼国民に現金を手渡すことを意味する。


中央銀行の中には、ヘリコプターの機体を準備し (preparing their whirlybirds)、紙幣の印刷だって準備しているところもある。3月にヨーロッパ中央銀行のドラギ総裁は、ヘリコプターマネーについて「たいへん興味深い案だ」と語った。


とは言え、ヘリコプターマネーは、その響きほど大胆でもない。何よりも、景気低迷の最大の理由の政治的な制約を取り除くことはできない

 

ヘリコプターマネーという刺激的なアイディアは、マネタリズムの父と言われるミルトン・フリードマンから由来する。


フリードマンは1969年、中央銀行は空から、現金が枯渇している下界に向けて、新規にお札をばらまくことができるので、通貨供給量を押し上げ続けることができると主張した。


(Telegraph)


このアイディアは、デフレの罠に陥った日本をどう復活させるかをめぐって 2000年初頭に再び出現。当時、米FRBの新理事だったバーナンキ前議長は、デフレ退治策に関するスピーチの中で、フリードマンの突飛なアイディアを引用し、"Helicopter Ben"というあだ名を得た。



最近は、ヘリコプターマネーと言って笑う人も少なくなった。世界の主要国は、恒常的に低い物価と低い金利の面で、日本を追随している。とりわけヘリコプターマネーを導入する候補のヨーロッパと日本では、金融危機のあと、名目経済成長率は惨めなくらい低い。


ヨーロッパ中央銀行にしても日銀にしても、マイナス金利政策を導入し、国債を大量に買い入れている(=量的緩和)にもかかわらず、依然として経済は弱い。確かに新たな戦略が求められているようだ。

 

ヘリコプターマネーの推進者は、決して空から現金をばらまくつもりなんてない。簡単に言うと、財政支出、減税、あるいは国民に対する直接配布を通じて財政刺激策を求めているのだ。


その財源は、借金や増税ではなく、新規の紙幣発行で賄うことが念頭にある。ヘリコプターマネーのメリットは明らかだ。政策金利の上げ下げで企業による貸し出しを媒介する場合と異なり、直接現金を行きわたらせることができる。 その結果、中央銀行が新たなバブルを作り出すリスクを低減させ、金融システム不安が起きた折には中央銀行の潜在力が向上する。


が借金をして財政支出する場合も同様の効果があるが、国民は膨大な借金を返済するために増税があるに違いないと思えば、消費を控えてしまう。



ヘリコプターマネーの本当の問題は、政治的な制約に対する技術的な解決策に過ぎないということだ。欧州の景気低迷は、ECB=欧州中央銀行が QE=量的緩和といった政策の導入に踏み切るのが遅かったため、アメリカやイギリスに比べてひどい状況となった。


というのは、欧州の法律が中央銀行による財政ファイナンスを禁じているためだ。ようやく去年、デフレの深刻化という亡霊(specter of deepening deflation) により、ドラギ総裁は緊急の金融政策として、国債の買い入れの正当性を訴えることができた。


ECBがヘリコプターマネーを導入するには、ヨーロッパ各国は ECB創設の礎となった条約を改正しなければならない。しかし、各国がそもそもECBにそこまでの自由度を与えていれば、経済はここまで悪化していなかっただろう。

 

多くのユーロ圏政府は、30年ものの国債の利回りがゼロ近辺にある。量的緩和のおかげで、借金まみれの政府であっても財政支出は、低金利でまかなえる。


大盤振る舞いを続けてきた日本 (spendthrift Japan)。ここでも財政赤字の縮小に向けて消費増税を行うという安倍首相の決意が、自らの経済再生プランを脅かしている。


フリーマネーはすでに出回っている。欠けているのは、これを使うかどうか、あるいはどう使うかという政治的なコンセンサスである。



ヘリコプターマネーが効果を発揮するには、例えばユーロ圏で政治的な意見の相違がなくなっていくと確信しなければならない。ただし、インフレやモラルハザードに対するドイツの懸念を考えると、政治的な意見の相違は逆に広がりそうだ。


各国政府がヘリコプターを活用するための枠組みを検討してもよい時期だろう。次の金融危機に直面した時、中央銀行は金利引き下げの余地がほとんどないだろう。


例えば個別金融機関の口座に速やかに現金を注入することでショックを緩和できる。いずれにしても、意思のないところに道はない(there is no way without a will)