今週のThe Economistはカナダを特集しています。移民の受け入れにも、自由貿易にも積極的なカナダこそ、自由の女神が世界に照らす「自由」を名乗るに相応しいと言いたいようです。

表紙には Liberty moves north(自由はアメリカから北上)のタイトル。


本来、7つの大陸を意味する 7つの突起がある自由の女神の冠が、挿絵ではカナダの国旗のカエデに。


左手には本来、アメリカ独立宣言の日(1776 74日)が刻印された銘板があるはずですが、挿絵ではカナダが連邦として自治を開始した 18767 1とあります(1976 年はローマ数字で MDCCCLXVII)。ついでにカナダの国技=アイスホッケーのスティックも持っています。

本当の自由の女神はどんなだったかしら、と思って検索していたら、先週、130歳を迎えたそうです。


The Economistの巻頭のCanada’s example to the world (カナダが世界に示す模範)はざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

(The Economist)

西側で自由を示すたいまつを掲げるのは誰か?アメリカの次期大統領ではない。共和党のトランプ候補はメキシコとの国境沿いに壁を作って、貿易協定を破棄するという。11月8日の大統領選挙で勝利するであろう民主党のクリントン候補も、かつて賛成していた大胆な通商協定に批判的な姿勢に転じた。

イギリスは移民の流入やグローバル化を心配して EU から退場することを決定。ドイツのメルケル首相は、難民に扉を開けたが、その後選挙で手痛い目に遭った。フランスでは、右翼ポピュリストのマリー・ルペンが来年の大統領選挙で 1 回目の投票で勝利する勢いだ。

壁を作ったり、扉をぴしゃりと閉めたり、架け橋を引き上げたりする国ばかりの中、カナダは心温まる例外だ。人口の1%にあたる 30万人の移民を毎年、受け入れている。

(Reuters)

去年就任した44 歳のカリスマ首相のジャスティン・トルドー Justin Trudueu)は、シリアから3 3000人の難民を受け入れてきた。保護主義的な空気が広がる中、カナダは今も自由貿易を推奨している。

アメリカに比べると地味な存在ではあるが、カナダは昔から良識、寛容、分別で知られてきた

歴史と地理から生まれたカナダの価値はそのままほかの国にあてはまるわけではない。国境を接するのはアメリカだし、アメリカが隣国であるからこそ自由貿易にも熱心だ。とは言え、多くの先進国同様に、カナダも製造業の衰退、所得の低迷、格差の拡大を経験している。

中間層の縮小、イスラム過激派によるテロについても怯えている。にも関わらず、カナダは世界から引き籠もろうとしていない

カナダからほかの西側諸国は何が学べるのか?

第一にカナダは移民を受け入れるだけでなく、社会に順応できるように力を尽くしている。移民に対して、職と住宅を探すのを支援しているのだ。難民が移住してきた1 年目は、民間の資金を活用して、住民がグループを作って支える仕組みだ。この結果、移民は順応しやすいし、社会としても歓迎ムードを作り出しやすい。

第二に財政政策だ。カナダは過去20年にわたって財政規律を守ってきた。それだけに、景気がぱっとしない今、トルドー首相は公共インフラに予算をつけやすいのだ。また、中間層には減税を実施する一方で、高所得者には増税した。 

IMFのラガルド専務理事は、こうした政策は"should go viral (世界に広がるべき)"と主張する。アメリカと比べてカナダは社会保障が手厚いために失業の痛みを緩和し、失業者には手当や職業訓練を提供している。

最重要なのは政策ミックスかもしれない。貿易と移民には自由主義的な姿勢を、成長を喚起し、グローバル化による負け組を救済するには積極的な姿勢をとっている。

つまり、中道的な政治はまだ効果を発揮できるのだ。自由主義への反対に屈するのではなく、トルドー政権は、むしろ提唱してきた。アメリカほど自由貿易は焦点になっていないものの、反対者の意見に耳を傾け、懸念を考慮してきた。


カナダだって完璧からはほど遠い。アメリカと比べれば、経済規模は小さく、生産性は低く、イノベーションは少ない。しかしながら、カナダは世界中が忘れかけていることを気づかせてくれた。

寛容と開放の精神は、安全と繁栄をもたらす水源である。安全と繁栄を脅かすものではない(tolerance and openness are wellsprings of security and prosperity ,not threats to them)