トランプさんに関するこの人の話、腹に落ちました。老舗雑誌The Atlantic の
editor-at largeのSteve Clemons。
イラクやアフガニスタンで戦ったあと、
ヒューレットパッカードなどのメーカーに就職しながら何度も人員
削減に合う、というのが"トランプのアメリカ"を支える人々だ。「軍人として戦ったので報われる」というquid pro quo (交換)
がないことが不満なのだ。
外国特派員協会で行われた会見で何度も「はっきり言いすぎるかなぁ」と気にしながら、次のようなことをぶっちゃけで話しました。
■
トランプ大統領の"対日観"は「ズルをして豊かになった国」
という1980年代の見方のまま。
■12
月の安倍首相の会談ではトランプ側に必死だと思われ、弱腰と受け止められた。
■2月8日の
首脳会談への臨み方は、トランプ的なナショナリズムを露わにしてありのままの安倍首相の姿を打ち出すこと。
■
トヨタへのアドバイスは、"white America"の一部でないことを踏まえて本社を移したテキサスを活用してトランプとのつながりを強調すべき。
以下、印象に残った点を紹介します。
私の地元はオクラホマ州の田舎町で、親戚100人のうち
97人が
トランプに投票した。MSNBCなどに出演していることからリベ
ラルと見られがちが、私自身は独立派(independent)
である。
3日のマティス国防長期の来日、 10日の
安倍首相と麻生副総理のワシントン訪問を前にトランプ大統領と日米関係
について考えたい。
<トランプのアメリカ>
トランプは、ワシントンをぶっ潰そうとしている。2007~
2008年の金融危機のころにヌクヌクした関係にあったインサイダーに強烈な圧力をかけている。
アメリカ国民、
とりわけ中西部の白人は、遠い異国での軍事行動、
および身の回りの経済の低迷に疲弊している。
トランプは今、
同盟国に揺さぶりをかけている(a shakedown to allies)
。アメリカが相手国に何かやってあげたら、
目に見えるベネフィットが欲しいと思っている。つまり
mercantilism (重商主義)を重視する姿勢だ。
The Atlanticでは、Obama Doctrineとしてオバマ大統領の外交方針
を特集した。
実は、オバマ大統領の世界観とトランプの世界観は似ている。 アメリカの
世界への関与を弱めたいのだ。オバマの場合は、「戦略的な抑制(strategic restraint) 」に対して、トランプの場合は、「
明らかな利点がないと逃げ出す(will run away without a clear payoff)」の違いはあるが。
<TPP>
アメリカは交渉入りした理由を間違えた。「経済」ではなく「地政学」を理由にした。アジアでの空白を埋めるためだとして、企業ではなく軍関係者が議会をロビーした。新聞の広告も軍関係者が出した。その結果、TPPは「世界への関与のために経済的利益が売られた(economic interests were sold out out to global engagement)」の象徴(poster child)となってしまった。
TPP離脱は、中国に対する贈り物となるだろう。今週に入って、中国と並んで日本が為替操作していると批判した。これらに見られるように、シナジーを考えることがない。だって、合理的な戦略家であれば日本を大切にするはずだ。
<対日観>
トランプ大統領の日本観は、「ズルをして豊かになった国」「ズルをして成功した国」(a nation that got rich by cheating, Japan cheated itself into success)。確かにこれは今日(こんにち)形成された認識ではなく、1990年代までに作られたもの。今の中国にも同じ思いだ。中国以上に
mercantilism(重商主義)の姿勢を取るだろう。
日本は今、"忘れられた同盟国(the forgotten ally)"となっている。このままでは「トランプ王国で遊びたがっている小型犬(a lap dog willing to play in Trump Land)」と間違えられてしまう。
日米首脳会談では日米FTAを提案すると言われている。本来は、もっとプラットフォームを広げないと日本にもアメリカにもうまみがないが、安倍首相へのお土産として2国間FTAを提案することも。
これから予想されるのが憲法9条の問題。「日本は弱い。自らもっと防衛しないといけない」とトランプが言いだすかもしれない。本来、憲法改正をやりたいという安倍首相にとってはありがたい事態か。問われるのは「安倍首相が欲しいもの(憲法9条の改正)をあげたので、その代わりに何をしてくれますか?」ということになる。
<安倍首相への助言>
英メイ首相はオバマ前大統領のアドバイスに従って、仲良くし、トランプに挑まなかった。一方、オーストラリアのターンブル首相は同じようにしたつもりなのに、1200人の難民受け入れに感謝の意を伝えようとしたら、逆切れされて電話を切られた。
安倍首相のDNAを考えると中国への姿勢は厳しく、愛国主義者であるはずだ。2人ともnative nationalistという共通点がある。
助言するとすれば、ありのままの姿を出せば仲良くなれる、ということ。安倍首相に内在するトランプ的な要素("inner Trump" of Abe)を見せよ、ということ。
トランプ王国(Trump Land)のインサイダーによると、12月のトランプタワーでの会談について、安倍首相が弱腰に映った。しかも「会談は時期尚早で避けたい」というトランプ側の意向にも関わらず、飛行機に乗ったので、必死(desperate for attention)という印象を植え付けた。
<トヨタ>
今のアメリカにはethnic nationalism(人種ナショナリズム)が広がり、"white America"=白人のアメリカへの欲求が広がっている。トヨタがアメリカ企業だと思っている若者もいるが、やはりトヨタはwhite Americaの一部ではない。
トランプはズルをして成功した会社と思っており、ゆさぶりをかけている。トヨタは本社をテキサスに移すので、それをフルに活用してトランプ支持者とのつながりを強調するべき。今は、トランプ大統領のやっていることに、うまくはまらない(doesn't fit the ethnic code of what they're doing)。
<今後の注目>
人物では、上級顧問兼首席戦略官のSteve Bannon。トランプに原理原則はないが、バノンが重商主義的な考えを打ち出している。
弾劾されるのではないか、という見方を耳にする。教育長官に指名したBetsy DeVosの承認をめぐり、共和党のLisa MurkowskiとSusan Collinsの2人の上院議員が反対票を投じた。トランプは、ある意味ここまで育ててくれたFox Newsも、共和党の保守本流のPaul Ryanも完膚なきまでおとしめた。あまりに怖くて誰も異を唱えられない事態で、弾劾などあり得ない。トランプが2人の議員をどう処罰するかに注目が集まっている。
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