トランプ大統領の側近、バノン首席戦略官は"影の大統領"とも呼ばれ、政権内の主導権争いがとかくニュースになっていますが、彼にフォーカスした特集記事が相次いで出ています。
(Bloomberg)
Wall Street Journalは本人及び父親など家族にインタビューし、なぜアンチ・エスタブリッシュメントの思想となったのか、その原点に迫っています。
おもしろかったのは、New York TimesのLet Bannon Be Bannon!(バノンがバノンらしく振る舞えるように!)の解説記事。
まず、「バノンはトランプ大統領の演説について大きな影響力があるが、最近のトランプの政策に対する影響力はゼロのようだ(He seems to have a big influence on Trump speeches but zero influence on recent Trump policies)」と指摘しています。
就任直後の頃は、「一貫した統治思想を持っていた。バノンは、共和党も民主党もワーキングクラスを見捨てたことに気づき、21世紀型の政治論争が『大きな政府vs小さな政府』ではなく、『開放社会vs閉鎖社会』が軸となることを認識していた」としています。
この結果、トランプの政策が■貿易と移民に扉を閉ざし、■雇用創出のためにインフラ投資に力を入れ、■社会保険制度の規模縮小を狙う共和党の動きを阻止し、■ペンシルベニアやミシガンなどのワーキングクラスが潤う制度に予算措置することは予想できたということです。
貿易や移民の扱いに不満の者も「経済的な打撃を受けた人々が助かるなら」という思いがあったはずだとしつつ、今では「バノン的なポピュリズムが捨てられた」と総括。
その根拠として、■インフラ投資や雇用創出の計画が先送りされ、■共和党のライアン下院議員が主張する医療保険制度改革を先行して行い、■この医療保険制度改革がワーキングクラスに苦痛をもたらすことを列挙。
それでは、なぜ"バノンイズム"が劣勢になっているのか?理由を3つ指摘しています。
①政権を埋めるだけのトランプ/バノン思想の持ち主が揃わず、伝統的な共和党支持者に依存せざるを得ないこと。
②トランプはポピュリズムによって勝利し、議会共和党は小さな政府のシナリオで勝ったことは、2016年の共和党勝利は2つの道筋があったことを意味し、バノンより伝統的な共和党の方が政治に手馴れている。
③トランプ大統領は国内政策に関心なく、軍事などテストステロンにしか興味ないこと。
つまり、「トランプ的なポピュリズムと共和党の伝統的な自由主義という最悪の組み合わせとなっている。アメリカは壁を作って世界から隔離される一方で、富を貧困層から富裕層に移転している」と指摘し、「このままでは、ホワイトハウスと議会の間で聖戦が起きる」と予想しています。
トランプに投票した人たちが経済的な懲罰ではなく、支援を受けられるために必要なこととして、こう締めくくっています。
「緊急対策はひとつ:バノンを自由に解き放て(Unleash Steve
Bannon)!」
バノンはなかなかインタビューに応じませんが、WSJには応じています。記事のタイトルは、Steve Bannon and the Making of an Economic Nationalist(バノンと経済ナショナリストの成り立ち)です。
長い記事ですが、一言で言うとこういうこと。
バノンは父親と頻繁に電話で話しているそうですが、AT&Tの株式売却については相談がなかったそうです。
バノンはインタビューで、「父が持っていた財産は、小さな一軒家とAT&T株だけだった。(金融危機のあと)大手企業が救済されながら、誰も負担をかぶらず、責任を取らされて投獄された者がひとりもいない。企業側過度なレバレッジを効かせていたにもかかわらず、みんな見て見ぬふりをしていた」と述べて、この経験がバノン首席戦略官の経済ナショナリストとしての思想を鮮明にしたということです。
つまり、政府が問題を作り出したにもかかわらず、政府はミドルクラスを見捨てて富裕層="fat cats"を救済したという怒りが 思想の背景にあるということです。
(Washington Post)
Washington PostのThe Mercers and Stephen Bannon: How a populist power base was funded and built(ポピュリストの選挙基盤がいかにカネによって作られたか)では、バノン首席戦略官と大口の政治献金をしているMercer家の関係を取り上げています。
資産家のRobert Mercerと三人娘の一人のRebekah(43歳)は、共和党に巨額献金をするメガ・ドーナーとして知られ、クルーズ上院議員の大統領選挙戦を応援。
"右"のコーク兄弟(Koch brothers)や"左"のジョージ・ソロスが大口献金者として有名で、有権者の動員に力を入れている一方で、Mercer一家は既存メディアに代わるシステムの構築に力を入れて世論操作をしてきたそうです。
一家が資金を出し、現在、首席戦略官となったのバノンが娘のレベッカと共に大きな政府と主要メディアに対する信頼失墜通じて選挙基盤の構築を目指しました。
「バノンが率いたBreitbart Newsは、違法移民やイスラム過激派に対するトランプの重苦しい警告を伝えた。ソロスが資金支援し、ハーバード大学とMITのチームが行った大統領選挙の研究によると、ブライトバートは保守系メディアの論調を決め大手メディアの報道にも影響を与えた」と言います。
Mercer家が狙うのは、ベストセラーになった「クリントン・キャッシュ」の映画化のようなプロジェクトだということです。
クリントン夫妻のカネに焦点をあてたこの著書は、バノンが創設し、Robert Mercerが資金を出したGovernment Accountability Institute(非営利の調査機関)のPeter Schweizerが書いたもの。
今後、この団体の会長は娘のレベッカが務め、調査報道に力を入れると結んでいます。
✴︎「クリントン・キャッシュ」についてはこちら。
コメント