政府が国家安全保障を理由に企業買収を阻止できるアメリカのCFIUS=Committee on Foreign Investment in the United States(対米外国投資委員会)のニュースが目立ちます。

焦点になっているのは、東芝の米原子力子会社だったWestinghouseを中国企業の手に渡らせたくないこと。

(AP)

FTはTrump administration seeks non-Chinese owner for Westinghouse (トランプ政権、WHの買い手に中国企業は回避したい)は、「トランプ政権は、経営破綻した米原子力事業会社のWHが中国のコントロール下に陥らない方策を模索中」と伝えています。一方でパッシブな投資は必ずしも否定しないそうです。

WH売却には国家安全保障の懸念が生じることから、早い段階でアメリカ政府が中国に強い姿勢で臨むことを明確にする」とのこと。

WHのアドバイザーがニューヨーク破産裁判所に提出した資料によりますと、■アメリカで原発4基を手がけ巨額の損失の原因となった契約に縛られる部門と、■原発の運営、核燃料や部品の製造を行う黒字の部門を切り分けを目指しているということです。

黒字部門ですら米GEくらいしか原発運営能力しかないですが、WHとは原子炉の「型」が異なることから難しくなって韓国電力公社=KEPCOがWHの一部の買収に向けて入札するのが現実的だと見られていると伝えています。

外国企業による買収は、アメリカのCFIUS=Committee on Foreign Investment in the United States(対米外国投資委員会)が審査します。CFIUSは、財務長官が議長で、国務長官、商務長官、国防長官がメンバーで、「重要なインフラ、軍事転用できる技術」に焦点をあてて審査。どちらもWHに該当します。

BloombergはTrump Team Takes Steps to Keep Chinese From Westinghouse(トランプのお仲間、中国勢のWH買収を阻止へ)の中で、「トランプ政権は中国の投資家がWH買収に乗り出すことを危惧して、アメリカ、あるいは同盟国の買い手を探している」と報じています。

整理すると、政権は■中国企業の買収を拒否、■アメリカ、あるいは同盟国や友好国の投資家に入札を促す、■オバマ前政権が米自動車メーカーを救済したように公的資金を投入して政府が株式を取得する3つの選択肢をこれまでに検討したということです。

主な懸念は、秘匿されてきた原子力技術が軍あるいは産業に流れることで、米中首脳会談の中でWHの経営破綻が議題となることに備えているという米政府高官の声を紹介しています。中国では21基の原発が建設中で、さらに179基が計画/提案されていて需要があるということです。

WHに原発2基の建設を発注したアメリカのサザン電力のファニングCEOは、WHの今後を話し合うため、ペリー・エネルギー長官とティラーソン国務長官と会談したほか、ムニューシン財務長官、ロス商務長官がWHの売却の協議にかかわっていると伝えています。

中国企業がWH買収に名乗りを上げた場合、CFIUSでの審査が不可欠で75日のレビューを経て、一部修正を求めたり、買収拒否を大統領に提言できるとしています。実際、オバマ前大統領は2つの中国がらみの買収を阻止しました。

調査会社のRhodium Groupによると2012年から2014年の間にCFIUSの審査のうち5分の1近くが中国関連の投資だったそうです。

Reutersは、2013年に食品メーカーのSmithfield Foodsが中国企業に買収されたことを踏まえて、CFIUSの審査対象に「食の安全」を入れるよう求める法案を共和党の上院議員が提案したことを報じています。

CFIUS改革に踏み込んでいるのが米シンクタンクCSISのGlobal Economics Monthlyで、Matthew GoodmanとDavid ParkerはThe China Challenge and CFIUS Reform(中国からの挑戦とCFIUS改革)を掲載。

まずは、今の中国からの大量の投資が1980年代の日本からの投資との類似している点を紹介する一方で、違う点も指摘しています。

■中国共産党の一党独裁体制、■科学技術の一大世界勢力を目指す国家目標、■政府の資金を使って市場経済に介入、■軍と国家安全保障の点でアメリカライバルである。

審査対象は、あくまでも国家安全保障にかかわる分野に絞るべきだとした上で、■雇用や経済成長、税収への総合的なメリットを測る、■相手国経済の市場開放度合いなどを加味するアイデアを出しています。

また、アメリカ一国では中国からの挑戦を受け止めきれないとして、ドイツや日本など産業や技術の基盤が強化な同盟国と連携するべきだと主張。

CFIUSが設立されたのは、1975年産油国からの投資が急増したカーター政権時で、2007年には中国や中東からの投資拡大を受けて「重要なインフラ(critical infrastructure)」が審査対象に追加されたということで、アメリカの企業買収と国家安全保障の枠組みが時代にあわせて進化を続けていることがよく分かります。