米バージニア州で白人至上主義や極右思想を掲げるグループが起こした事件に対するトランプ大統領の発言が連日ニュースになっています。

直後の発言は「我々はさまざまな側にある憎悪と偏見、暴力を非難する。さまざまな側にあるものだ」。

世論の批判を受けて 2日後の14日、「人種差別は悪だ」と述べ、KKK、ネオナチ、白人至上主義者を名指しせざるを得ない状況に追い込まれました

ところが翌日の15日、ニューヨークで記者会見して全て帳消しに。トランプ大統領は「(衝突の現場には)白人至上主義者とネオナチ以外にもいた。左寄りの人たちだ」、さらに「責任は双方にある(blame on both sides)」と発言し、ネットなどで驚きと怒りが広がっています。

15日の発言に先立ってですが、リベラルなメディアのみならず、ふだんはトランプ大統領を擁護する保守系のメディアも社説で、白人至上主義を批判しないトランプ大統領を批判しています。アメリカが悩める国であることを感じる内容です。

(AP、15日の会見)

リベラルなNew York Timesの社説 Mr. Trump Talks at Last. Will He Act?( トランプ大統領、ついに話す。さて、行動に出るか?)です。

この中で、「いま全米で道徳的な気づき(moral awakening )が起きているが、トランプ大統領は今なお隠れている」と伝えています。

バージニア州のデモを人種差別的だとしたうえで、トランプ大統領は白人至上主義やネオナチの人たちと自らが違うことを明確にする機会がありながら、そのチャンスをミスッたHe blew it )としています。

特に女性ひとりが死亡した 12日当日、側近から白人至上主義を批判するよう促されたにもかかわらず「我々はさまざまな側にある憎悪と偏見、暴力を非難する 」と述べるにとどまったことを批判。

トランプ大統領はイラスラム過激派や外国人による事件を即座に批判することを踏まえて「大統領のダブルスタンダードは、犯人の肌は黒か茶色で、犠牲者の肌は白色だという単純で人種差別的な世界観による (The double standards go to the heart of Mr. Trump’s simplistic, racialized worldview, where the criminals are black or brown and the victims are white)」と指摘しています。

やはりリベラルなLos Angeles Timesの社説は、 Trump’s response, take two (トランプ大統領の反応、第2弾)。

白人至上主義者を批判するまでに2日かかったことは遅きに失したと批判。セッションズ司法長官もペンス副大統領もトランプ大統領をかばっとしつつ、最終的に追い込んだのは世論の波(tsunami of public opinion だといいます。

問題の核心として、「トランプが自らの支持者の間にある人種差別の汚点を受け入れないことと自らの過ちを絶対に認めないことが相まった (Trump’s reluctance to acknowledge the dark stain of racism among some of his supporters is compounded by his inability ever to acknowledge that he is wrong) 」と解説しています。

普段ならトランプ大統領を擁護する保守系のNew York Postも社説 Trump badly missed the mark on Charlottesville(バージニアの事件でトランプは、思い切り的を外した)として、「我々は、さまざまな側にある憎悪と偏見、暴力を可能な限り強い言葉で非難する。これはさまざまな側にあるものだ (We condemn in the strongest possible terms this egregious display of hatred, bigotry and violence on many sides. On many sides) 」という当初の発言について「これだけかよ(Really: That was it)」とばっさり。

車が突っ込み女性が死亡した事件について、安全保障担当のマクマスター大統領補佐官が「もちろんテロリズムだ。大統領も頭の中で明確にそのように考えている」とボスさまを擁護

これに対して社説は「大統領が頭の中で明確に考えているのであれば、自らの言葉でも発する必要がある (If it’s clear in the president’s mind, he needs to make it clear in his own words, too)と締めくくっています。

保守系のWall Street Journalの社説は、 The Poison of Identity Politics (白人至上主義政治の毒)。

バージニア州の事件をめぐって、トランプ大統領の発言ばかりに注目するのは事件を矮小化するもので、トランプ大統領が去ったあとも残るであろう左右に激しく割れた政治が問題だと指摘します。

「リベラルな政治家よりも保守派の政治家こそ人種差別的な事件を非難するべきであり、実際にそうなっている」として、セッションズ司法長官が強く非難したうえで捜査に乗り出したことを指摘。

白人至上主義政治は、何十年にもわたって(保守系)の政治にとって毒だった (The politics of white supremacy was a poison on the right for many decades) 」といいます。

そのうえで、「トランプ大統領の誕生は原因ではなく、症状だ。とはいえ、今の立場ではとりわけ非難する義務がある(He is more symptom than cause, though as President he now has a particular obligation to renounce it) 」とも指摘し、アメリカが国内の左右の分裂を克服しない限り状況は変わらないと主張しています。