新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、いろいろ考えさせられる寄稿文が出ています。

1853年にペリー提督が来航したことをきっかけに日本が政治や教育制度を大きく変えたように、アメリカもコロナを大きく転換するきっかけにしないといけないというピュリツアー賞受賞者のオピニオン。

■著書「サピエンス全史」で知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏は別の意味でコロナが大きな転換点になると指摘。国家が緊急事態を理由に体温や心拍数などの生体データをスマホから集めて「プライバシーよりも健康が大事」ということで市民も「緊急事態なら」と協力するが、その後も監視主義続くことに警戒感を示しています。


The AtlanticにAnne Applebaumが寄稿したのはThe Coronavirus Called America’s Bluff – Like Japan in the mid-1800s, the United States now faces a crisis that disproves everything the country believes about itself.(コロナウイルスはアメリカのハッタリを暴露した~1800年代の日本同様、アメリカは今回の危機で自己否定を迫られている)。

この中で、特別な神の国だと信じていた日本がペリー来航でアメリカに対して文化、政治システム、テクノロジーでかなわないと気づき、一気に近代化したと指摘。

今回のコロナパンデミックは、アメリカにとって日本のペリー来航のような存在になっているとして、アメリカの政権、医療システム、官僚組織、政治システムの問題点をあぶり出したといいます。

トランプ大統領は感染者が拡大すれば最も重要視している株価の急落につながるとして数を低く抑えたいと公言していることから、周囲が忖度して検査や準備をせず、その結果、大統領が裸の王様となり、世界的なパンデミックのみならずサイバー攻撃や情報戦争といった21世紀型の課題に取り組めなくなったと主張しています。

日本はペリー来航で転換しないといけないことに気づき明治維新を成し遂げたが、さてアメリカはどうか?と疑問を投げかけて締めくくっています。

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(FT)

FTにYuval Noah Harariが寄稿したのはthe world after coronavirus – This storm will pass. But the choices we make now could change our lives for years to come(コロナウイルスの後の世界~この嵐はいずれ去るが、きょうの判断が今後の生活を大きく変えうる)です。

人類は今グローバル危機に直面している。われわれ世代で最大の危機だろう」と切り出し、今後数週間で各国の政府が行う決定は今後の世界を形作るだろうと予測。

いま問われているのは2つ。

全体主義的な監視か市民の力か
孤立主義か世界的な連帯か

まずは監視主義について。中国は感染者を追跡するためにスマホや顔認証技術を使い、体温などの報告を義務化し、アプリで人との距離感が近すぎるとして行動を変えさせたのが有名だが、イスラエルなどほかの国でも実施。

こままでは、追跡し、モニターし、行動を変えさせるために今回のコロナ危機が重要な分岐点になる、と。コロナ危機のもとで生体監視(biometric surveillance)は一時的な措置だと言うかもしれないが、「プライバシーか健康か」という二者択一に市民は健康を選択するから、データに飢えた政府は、次なる危機を理由に撤回するとは限らないと予測しています。

しかし、正確な情報があれば市民は正しい選択をできるとして、石鹸で手を洗うことが最大の予防策だと知れば市民は「石鹸警察」がいなくても手を洗うと主張。ただし、そのためには当局に対する信頼が欠かせないといいます。

2番目の重要な課題として孤立主義か世界的な連帯か

感染そのものの、それによる経済危機もグローバルであり、グローバルな協力なくして解決できないと指摘。

そのためには協力の精神と信頼が不可欠で、国家間で情報をシェアし、教訓から学ぶ謙虚さが必要だが、アメリカがリーダーの役を担った2008年の金融危機(日本で言うところのリーマンショック)、2014年のエボラ出血熱の感染拡大の時と違い、今のトランプ政権は「人類の将来」よりも「アメリカの偉大さ」の方が重要だという姿勢を明確にしている。

世界的な連帯ができなければ、危機は長期化し将来的にはさらに深刻な危機につながる。

その一方で、連帯できれば、コロナ危機に対する勝利のみならず、将来の疫病や人類の危機に対する勝利にもなると締めくくっています。