前述のように、一連のJUPITER関連の論文のauthorであるDr. Ridkerは、Lancetに「初回の主要な心血管イベント」は、ベースラインのCRPを5mg/dLを境に上下二群に分けて解析すると、群間でイベント発生率に差はなく、また、"We detected no evidence of a significant interaction between the overall efficacy of rosuvastatin and baseline concentrations of hsCRP less than 5 mg/L (HR 0·49, 95% CI 0·37–0·65) or 5 mg/L or greater (0·66, 0·49–0·89; p for interaction=0·15)"と、つまり、rosuvastatinの効果はCRPが低い群のほうで大きい傾向にあった〈有意差はなし)と書いている(これは事前に経計画された重要な解析であるにも拘らず、図表などはない)。これは、CRPが高いほどイベント発生率は高く、rosuvastatinの効果は大きいだろうという、我々の予想を覆すものであり、驚いたが、CRPの特許を持ち、CRPの有効性を示したかったDr.Ridkarは我々以上にガッカリしただろう。結局、AZNが行った効能追加申請は部分的にしか承認されず、欧州の添付文書では、CRPという言葉さえ出て来ない。

しかし、3月9日アトランタで開かれた米国心臓病学会で、同じDr. Ridkerが、同じデータを使って、CRPが高いほどイベントの発生率は高く、かつrosuvastatinの効果も大きいと、Lancetとは全く逆の発表を行った。

ポスターの図の横軸の下の文字が小さくて、読みにくいが、左から、Relative Risk Reduction, Absolute risk(per 100 person-years), Absolute risk reductionだ。見事に、Absolute riskはCRPが高いほど高く(中央の図)、 Absolute risk reductionもCRPが高いほど大きくなっている(右の図)。また、placeboと比較してすべての分位でRelative Riskの減少が見られている(左の図)。同じ演者が同じデータを解析して、なぜ正反対の結果になったのだろうか?よく読むと、米国心臓病学会での発表はエンドポイントが「初回の心血管イベントあるいは全死」になっていた。

ACC
JUPITERの一次エンドポイントは、「初回の主要な心血管イベント」である。「初回の主要な心血管イベント」の定義は、「非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,不安定狭心症による入院,血行再建術,心血管死」だ。それにも拘らず、Dr. Ridkerが「初回の心血管イベントあるいは全死」を対象にしたのは、一次エンドポイントの「初回の主要な心血管イベント」では有意差が出なかったからだ。治験者全体で、心血管イベントは393件、全死は445件(うち心血管死は79件)なので、全死を入れると入れないとでは、結果が大きく異なるであろうことは、容易に推測できる。因みに、二次エンドポイントは、一次エンドポイントの個別イベントおよび全死となっていて、それらの合計ではない。結果を見てから、一次あるいは二次エンドポイントでない別のエンドポイントを設定するのは、「後出しじゃんけん」みたいなものだ。この発表内容が論文としてacceptされるかどうか、別の意味で、興味深い。

post-hoc分析の信頼性は、一般的に低いが、事前にサブ・グループ解析をすると、その方法まで明記している場合は、その解析の信頼性は比較的高い。しかし、事後にコンピュータを使って、自分に都合がいい有意差の出るサブ・グループを見出して、サブ・グループ分析をした場合は、当然信頼性はかなり低くなる。Dr.RidkarはLancetで、ベースラインのCRPとエンドポイントとの関係を分析して、相関があるかどうかを調べて、"We detected no evidence of a significant interaction between the overall efficacy of rosuvasatin and baseline concentration of hsCRP less than 5mg/L (HR 0.49, 95%CI 0/37-0.65) or 5 mg/L or greater (0.66, 0.49-0.89; p for interaction=0.15)"と書いた。ここまでは良心的だと思った。

しかし、Dr.Ridkarが今年のACCで行った発表は、結果が全部出てから、自分に都合がいいように後からエンドポイントまでを変えた。野球の例で言えば、試合が1-2で負けてから、「この試合は、得点+安打数で勝敗を決めよう」と言い出すようなものだ。CRP検査の特許を持っている彼は、よほどCRPの有用性を示したかったのだろう。彼は、結果が出てから、CRPと相関があるエンドポイントを後から見つけて、「CRPはイベントを予測するのに有効だ」と言ったのだ。

(CRPが心血管イベントや死亡率のリスク・マーカーになりうるかどうかの議論をしているのではなく、あくまでも「JUPITER」の中での話だ)

JUPITERから得られる知見は大であるが、Post-hoc解析が断片的に出てくる、少し不思議な治験だ。