先日、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」が、胃がん検診として、従来のX線検査(バリウム検査)に加えて、内視鏡検査を推奨することになり、厚生労働省は来年度からの適応を目指すことになりました。

 

がん検診のあり方に関する検討会」の議事録を読みましたが、相変わらずABC検診(ピロリ抗体+ペプシノゲン)については、「死亡率減少効果を示す(直接の)エビデンスがない」と非常に手厳しいです。しかし、今回初めて、内視鏡検診で死亡率減少効果があると認めたのですから、胃がんのリスクが高い人を抽出して、内視鏡検査を行うABC検診に死亡率減少効果があると考えるのが自然です。

 

ABC検診反対の急先鋒である国立がん研究センターの某構成員は、エビデンスを非常に重視しているようですが、「実際ピロリ菌がいないところから胃がん死亡例が報告されているんです。つい先週も抄録レベルですけど」と発言。エビデンスを重視している先生が症例報告の話をするとは、驚きを禁じ得ません。と言うか、ピロリ菌がいないところから胃がんがでるのは稀だから報告されるのであって、胃X線検査(バリウム検査)で「異常なし」とされた受診者からその直後に内視鏡検査で胃がんが発見されることなど日常茶飯事なので、報告されることもないということを知らないのでしょうか?

 

その一方で、彼は胃X線検査(バリウム検査)に対しては、非常に甘いです。検討会では、従来の胃X線検査のエビデンスについては、再検討されていません。また、前回の検討会以降、3個の論文(エビデンス)が報告されています。一つはコスタリカからの報告で、日本からの報告は二つです。その日本からの報告はいずれも2006年発表ですが、両方ともコーホート研究で、一つは1990年に胃X線検査(バリウム検査)の受診歴を聞き、その後追跡したものです。もう一つは今論文を取り寄せているところですが、13年追跡していますから、これも1990年ごろスタートしたものでしょう。今から、25年も昔のことです。その頃の検診対象者のピロリ菌感染率は80%、今は20%です。前提条件が異なれば、結果が異なるのは当然なのに、そのことを指摘した人はいません。

25年から30年前の前提条件(ピロリ菌感染率)が今と全く違う時代のエビデンスを金科玉条にして、胃X線検査(バリウム検査)は今でも有効だという主張には納得できません。今、胃X線検査(バリウム検査)の有効性を調べるスタディを始めたら、おそらく有効性は証明されないでしょう(註:罹患率が下がると、同じ検診を行っても、両群の死亡率に有意差が出にくくなります)。

 

ジャーナリストの岩澤氏によると、厚生労働科学研究費は年間447億円です。厚生労働科学研究費の配分には国立がん研究センターが非常に大きな権限を持っているので、国立がん研究センターに対しては、大きな声で反対はしにくいそうです。また、日本対がん協会の収入は779億円ですが、そのうち600億円が胃X線検査(バリウム検査)です。そして、日本対がん協会支部は地方自治体幹部の天下り先になっています。ABC検診が導入されると、検診団体の収入が激減し、これらの利権構造が壊れるので、検診ムラは既得権益を守ろうと必死ということらしいです。