NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEという臨床系医学では世界最高峰のジャーナルに
Pragmatic Trial of E-cigarettes, Incentives, and Drugs for Smoking Cession”という論文が載っていました。

米国の54社の従業員を対象に、1. 一般的な情報提供と国立癌研究所提供の禁煙プログラム(アドバイスや激励をメールで行う)、2. 薬物(ニコチン補充ガム・パッチ、bupropion《抗鬱剤の一種、日本では売られていない》、チャンピックス《ニコチン受容体部分作動薬》)を無料で提供、3. 電子たばこ(註;加熱式たばこではない。加熱式たばこは米国では未発売。電子たばこは日本では未発売)、4. $600の報酬(禁煙が続くと貰える)、5. $600の償還可能な預金(最初に$600を貰い、禁煙に失敗すると返す)のグループに無作為に分け、6ヵ月後の禁煙達成率を調べました。

結果を書くと、薬物、電子たばこは、一般的な情報提供・禁煙プログラムと比べて有意差なし。$600の報償または償還可能な預金は有意差あり。報酬または償還可能な預金との間に禁煙達成率に有意差はないが、償還可能な預金の方が禁煙達成率が高い傾向はありました。得たものを失う痛みはより大きいというフレーミング効果です。

参加者一人当たりのコストは、1<<2<3<4<5ですが、禁煙成功者一人当たりのコストは、1<<5<4<3<2でした。

現在、多くの会社では、禁煙補助薬に対し実質無料の施策を行っていますが、禁煙補助薬は情報提供・禁煙プログラムと比べて禁煙達成率に有意差がなく、禁煙達成者を一人作るのにかかるコストが最大でした。日本の会社で、実際に報奨金あるいは償還可能な預金を与えたという話は聞いたことはありませんが、本気で喫煙率を下げたいと考えているのなら、一考の余地があるかもしれません。