池の周りを散歩ジーパンと衣替え

2008年11月07日

黄色い自転車と黒鬼




其の男は自転車は黄色い物と

生涯思い込んでいた!


私が子供の頃に過ごした自宅近くで

其の男は年中、黄色い自転車に乗っていた。

黄色な自転車は其の男の仕事の

看板であり、道具であった。


通称、鬼の集金人と一部の村人からは

其の男の姿さえ見るのも恐られていた。


当時、東京電力の集金人の一人であった

この男の稼業は農家である。

萱葺き屋根で庭はタダ広く、盆栽や庭木は無かった。

農繁期には庭が作物の置場になったり、

作業場に使うためである。


その広い庭には電柱が立っていて、当時としては

珍しく外灯が付いており、その電柱には動力用の

電線が引かれ配電盤が取り付けられていた。


モーターで脱穀機等を長いベルトで伝達していた

現場を見た事が有った。



この農家の跡取り息子だった東京電力集金係りは

会社から自分に与えられた集金ノルマを早々と

終らせて農作業に励む為に、自ずからが強引な

電気料金の取り立てをしていた様である。


電気料金を集金日に間に合わせず、後日に

払おうとする方にも問題はあるのだが、

この東京電力集金人には「後日支払いますから」等の

言い訳は通用しなかったそうである。


東京電力専用の黄色い自転車を集金様が

来てやったとばかり、道路の真ん中だろうが、

墓の前だろうが、何処であろうが東京電力様の

看板とばかりに大威張りで停めて、近所中に

聞こえる大きな声で東京電力集金と怒鳴る!


多少耳の遠い年寄りでも聞こえる様にか、

東京電力の威嚇か?

「金が無いなら他家から借りて来い」と

怒鳴りつけて東京電力様が集金に来たからには

絶対に集金せずには帰らない。

強引な集金を年中、茶飯事としていた男であった。



東京電力としては優秀な集金人であったのだろう。

無事にこの男は黄色い自伝車に集金カバンを

提げて定年を全うした。



鬼の東京電力集金人は定年後、不動産ブームで

自分の農地をアパート経営に切り替えて

優雅な老後を過ごしたが、老人に成っても

自転車は黄色であると頑固にも思い続け、

お寺の御寺会費の集金をやはり黄色い

婦人用自伝車に乗って集めていた。


若い時からの集金技術が役に立ったのか、

この男がお寺の集金係になってからは

寺も儲かったらしく、寺の坊さんは

高級外車を乗り回す様に成った。



何年かは平和な日々が続いていたが、

その後、黄色い自転車を生涯の看板にしていた

集金技術師と高級外車の坊さんは二人揃って

あの世とやらに旅立ってしまったが、

あの世でも高級外車に乗る坊さんの後を

黄色い自伝車に三途の渡しの木戸銭を

集金カバンに追っ掛けているのだろうよ!


日焼けで真っ黒な体は見るからに

この世の人間ではなく黒鬼だった。







【送料無料】【23%OFF】【08モデル】JOY TOWN MG-OEM26 イエロー 26インチ軽快車

kappa_gallery at 01:19│昭和の風景・四街道の昔話 
池の周りを散歩ジーパンと衣替え