2012年10月19日

わかば



プカリと一口吸うと、白い煙が

「ボ〜ボ〜ゥ」と出る。


その煙草の名は、『わかば』。


野菜や草木の新芽のような淡い味と

香りがする紙巻き煙草。




わかば





専業農家だった遠い親戚や、知り合いの

叔父さん達は、今ではもう皆さん揃って

老いてしまったり、山寺の骨壺の住人に

なられてしまったが、私の若い頃には、

この人たちは逞しく農業に勤しんでいた。


夏になって農家をしている田舎の家に

立ち寄ると、井戸端で冷した大きな

西瓜を大きめな包丁でバサリと割って、

ドッサリご馳走してくれた。


そして、何故か?煙草は「わかば」を

吸っている人が多かった。



今に想えば、広い畑の中でプカリとふかした

煙草の煙が濛々と出ないと煙草を吸っている

気分になれないのと、煙草のわかばは比較的

強い風に吹かれてもぼうぼうと燃えずに確りと

火種が長持ちする。


畑の茄子や胡瓜等、作物を選定するとき、

わかばを斜めにヒョイと唇でくわえていた。


薄緑色の『わかば』のパッケージも、緑の多い

田舎の屋内外でも違和感を感じさせない。



親戚の農家の代替わりした主は、近年は身体の為と

ばかりに禁煙したり、喫煙者でさえもライト系の煙草を

好んで吸っていて、昔懐かしい『わかば』の愛煙家は

滅多に見当たらなくなってしまった。


誰か、『わかば』の愛煙家は居ないものかと、私は

他人の吸う煙草の銘柄に目を注いでいた処、東京

下町の植木屋さんが、自分が枝を選定した庭木の

下で、さも満足げに美味そうに吸っていたタバコが

『わかば』だった。


未々根強い『わかば』愛煙家は、緑の葉に包まれた

空気の中で健在していた。


私も先日、金二百五十円でわかばを一箱買ってきて、

我が家の庭で夜空を見上げながら吸ってみた。


秋の夜空に小さく光る遠くの星の光のような

淡い味と香りだった。











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