刈屋さんちの安心野菜ができるまで

新潟県長岡市栃尾にて農で起業する刈屋兄弟と周囲の人たちの日々をつづります。

疲れやすい私の身体と自然をみる目

私は右肘、左肩、右足首に疲労が溜まりやすい。それぞれ部活や交通事故などで痛めた箇所で、怪我や傷自体が治っても完全に元通りには治らなかった。最近土木作業員のようにスコップを持って畑に行っていると、当然のごとく該当箇所に疲れが溜まり、稼働域が落ちてくる。連動するかのように右手首、右膝などの動きも悪くなってくるので、仕事が終わると意識的に身体をほぐす毎日だ。

と言っても、事故に遭った直後は全く無自覚で、農業を始めるまで自分の身体に疲れが溜まりやすい箇所があるなんてことは分からなかった。農業を始めた直後、身体があまりにも辛すぎて紹介してもらって行ったカイロプラクティックの先生に「きみ右肘と左肩に疲れが溜まっているけどなにか大怪我したことはある?」ときかれた。交通事故にあったときもアゴの骨を折っただけだったので、そのときは全然思い当たる節がなかったのだが、後で考えた時に事故でアゴと同時に左肩も痛めていたような記憶があった。

肉体労働をしていると、身体にとって大事な部分を怪我しているので、なにかと不便だなと思うのだが、自然の流れを読むときにその自分の身体を「みる目」が案外役に立つことが分かった。自分の身体には怪我によって血が滞りやすくなってしまった部分があるのと同じように、自然にもよく滞りがちになってしまう場所があることが見えてくる。例えば水路の中にある大きな石。

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(水路の中にある石。周囲には草や泥が溜まっていた。)

大きすぎて掘り上げるのが難しく放置されている石には、流れてきた草木が引っ掛かり、滞りが大きくなって水の流れを変えてしまうことがある。

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(水の流れは写真下から上に流れている。写真真ん中右部分にある石で流れがさえぎられている。)

また石のある部分は下流数メートルにわたって水の流れがなくなっている。こういう場所は定期的にメンテナンスをしてあげないといけないのだろう。

なんてことを考えながら、自然と自分の内なる身体の声に耳を傾ける日々が続いている。

土が生きている畑は雪解けも早い

今日は快晴。肉眼でも杉が花粉を飛ばしているのが見えたので、花粉症の方はさぞかし大変な1日だったのでしょうね。幸いにして今のところ私は花粉症とは無縁なので、春の日差しを浴びて楽しく外仕事ができた1日でした。
今日畑を見て回っていると、あることに気づきました。

土が生きている畑は雪解けも早い

という事実に。

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(手前が残雪の少ない畑、奥が多い畑)

うちの畑の中でも特に作土層(フカフカの作物が根を張れる土)が少なく、1年目に畑を見に来てくれた専門家の方に「最悪の土」と評された圃場がありました。1年目は畑の土壌改良のために播いた「最強の緑肥」と言われるセスバニア(地上部の背丈2~3m、地下1m以上に根を張り硬盤破砕に用いられる)ですら30cmの大きさにしか育たなかった不毛の地で、2年目以降ほぼ放置状態でした。その畑に昨年再度緑肥(セスバニア、クロタラリア、ソルゴーなど)を播いて、3m近くの大きさに育った後、花が咲く前に刈り倒しておきました。そこに棒を刺してみると、1年目は10cmも入らなった棒が30~40cmも刺さるようになっていました。
なんと今日行ってみると、その畑の土が隣の畑よりも雪解けが早いことが分かりました。場所によっても多少誤差があるんですが、該当畑では残雪が0cm~10cmほど、

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(雪が多く残っているとことで拳1つ分程度)

すぐ隣の同じ高度にある畑は15cm~25cmほど雪が残っていました。

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(雪が多いところでは指先から手首ぐらいまで残っていた)

雪をどかしてスコップで掘ってみると、スルリとスコップが刺さり、棒も60cm~70cmも土の中に入っていくようになっていました。どうやら雪が積もっている間も地中では微生物たちが働き続けて、土壌改善をしてくれていたようです。そして、土の中の温度も温かくなり、雪解けも早く進んでいたのです。

土壌微生物たちに感謝すると同時に、この畑での今年の作付けが俄然楽しみになってきました。

神の死と意味の病~棚田の水路を掘りながら考えたこと~

栃尾の残雪ももう10cm。例年よりも2、3週間早い雪解けになった。毎年この時期になると「雪よ、早く解けてくれ~」となるのだが、先日の「大地の再生講座」で「雪があるうちの方が大地の再生が早く進む」というお話を聞いて以来、「もうちょっと解けないでくれ…」と思っている。特に今週は晴れが続き、気温も上がっているので仕事もはかどるが、融雪も早まる。

大地の再生講座で法面に縦穴を掘っていたのを真似て、水路に沿って穴を穿ってみた。

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(「大地の再生講座」では水路に沿って1尺ほどの間隔で法面に穴を掘っていた)

すると、徐々に水がしみ出してきて、穴に水が溜まっていった。掘り進めているうちに、土の表面に水が溜まっている場所を発見した。ここはさぞかし水が溜まるのであろうとスコップを入れてみると、すぐに硬いグライ土層と呼ばれる粘土質の土が出てきた。

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(グライ土層の上の層に水が溜まっていた)

ここではグライ土層によって空気が入らず、水も通らなかったので表面に水が流れ出ていたらしい。逆に空気が通っていた赤土の場所では、水も土の中を流れていたのだ。ということが掘っていて分かった。

棚田に沿って作られている素掘りの水路の中でも、早く雪が解けるところ、遅く解けるところがある。地形の関係もあるが、水量の多寡がより大きく影響しているようだ。舗装道路の直下にある水路は、そんな雪が早く解ける場所の1つだ。

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(水路右上の雪で覆われている部分が舗装道路。見事に舗装道路のあるところだけ水がしみ出ている)

おそらく、元々あった水脈が、舗装道路ができた影響を受けて変わり、法面からしみ出してくるようになったようだ。その水路の中に溜まった土砂が水路を滞らせて、ドブのような臭いを放っていた。
棚田の水路といってもうちは畑として使っている上に、下流で田んぼの耕作者もいないため、初年度に水はけ改善のために地元の建設会社に重機で水路を拡張してもらったのを除くと、この土地を借りてから5年間、特別「江さらい(地域によって呼び方が違うが「水路の掃除、泥上げ」のことを指す)」をしたことがなかった。おかげで10cmほどの厚さに土砂が溜まり、水草が生えていたのだ。その溜まった土砂をスコップで掘り上げていくと、流れる水もきれいになった。

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(水路左側が泥上げした部分、右側が土砂が溜まっている部分)

田んぼを維持していくのに不可欠だった江さらいという仕事も、今やU字溝が敷設されてほとんど必要なくなっている農地が多い。自分でスコップを持ってみるまでは考えてもみなかったが、この仕事は「量」としての水を確保するという意味合いだけでなく、棚田の環境保全の役割も担っているのだ。水は流れていても、溜まった土砂により停滞する水があり、大地の呼吸にも影響を与える。田んぼとして使っていなくても、やはり棚田の水路は毎年泥上げをしてあげなくてはいけないのだ。そもそも棚田は人間が稲作のために自然を作り変えてできた半人工的な環境なのだから。
それから掘っているとどんどんと出てくるのが、冬眠中のカエル、沢ガニ、カワニナなどの水生、両生類の生き物たち。

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(冬眠中のカエルを起こしてしまった……すまん)

彼らも人間が作った棚田という自然環境の中で、一緒に暮らしてきた生き物、言わばステークホルダーなのだ。こちらの都合で勝手に「じゃ、今年から水路の泥上げはしないから」といって彼らの生活環境を乱してはいけない。なんてことを頭でこねくり回してみたけれど、でも昔の人たちは本当にそんなことまで考えていたのかな? とも思う。もしかしたら「泥上げをしないと田んぼの神様が怒る」という理由でやっていただけなのかもしれない。

「○○の神様」がいた時代は、きっと無意識のうちに自然を保全するような暮らし方をしていたのだろう。翻って「神様を殺して」しまったおかげで、合理的な説明なくしては納得できない「意味の病」に陥ってしまった現代人は、私がとった「水を使う人がいないから水路の掃除はしなくてもいい」という行動のように、非合理・非効率なことは無駄として切り捨てている。でも棚田の水路のように実は一面的に見れば意味のないことの裏に、多くの意味が眠っていることがあるのかもしれない、と自戒を込めて思った。
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