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 また、このブログでは専門の天気図を多用し、あえて回りくどいコメントをしていますが、難しいと思われた方は飛ばし読みして、理解できる図だけをお読みください(これがブログの良いところ)。
 それでも、普通の天気マークの天気予報だけをチェックするより、ずっと多くの情報が得られる・・・はず??










 一昨日、昨日の大雨で仕事がバタバタ。
 今朝はちょっと疲れ気味なので・・・コメントは少な目でご容赦ください。

 1、今日の空模様・・・引き続き日本海側、でも山陰で大雨!!

 (1)予報のスタートライン・・・今朝の実況

 ご存じのように、今朝05時55分、島根県西部に「大雨特別警報」が発表されています。

 昨日17時30分~今朝05時30分、12時間のレーダー画像を見ると・・・

レーダー全国041730から050530GIFアニメ170705
(スマホ版のブログではアニメが動きません。PC版に設定してご覧ください)

 昨夜22時頃から山陰で雨が強まり始め、01時頃からライン状の雨雲(いわゆる線状降水帯)が島根県~広島県に停滞し始めたことがわかります。

 昨日の記事(リンク)を見直すと・・・解像度の高いMSMモデルには、北寄りの風と南寄りの風が収束し、線状降水帯が形成されることが予想されていますけど・・・
 降水量に関しては、大雨の可能性はあるものの「これまでに経験したことがないような大雨」というほどの降水量は予想されていませんでした。

 台風3号が通過した後、それだけ大雨になる条件が整い過ぎたから??
 今朝の実況をチェックしてみると・・・

実況170705

 台風3号が海上に抜け、梅雨前線が西日本で南下中。

 衛星の水蒸気画像を見ると、悪天パワー(地上の低気圧や雨雲を活発にするチカラ)を持った上空の気圧の谷(赤の点線:偏西風の北側への蛇行域)が、比較的冷涼で乾燥した空気(白くないエリア)を伴いながら南下中。

 台風とともに日本に流れ込んだ暖かく湿った空気(暖湿気:水蒸気)が、寒気を伴う上空の気圧の谷の手助けを得て、山陰付近の梅雨前線を活発化させていると思われます。

実況水蒸気70705

 これは水蒸気画像の北半球版。

 ザックリと見ると、太平洋高気圧の西側縁辺(熱帯低気圧も発生)から北上する暖湿気、インド洋で生まれて大陸を経て朝鮮半島方面に流入する暖湿気(いわゆる湿舌)、そして大陸の冷涼で乾燥した空気を運ぶ偏西風強風帯が、すべて西日本を指向していることが分かります。

 そんな中、梅雨前線に対応する南寄りの風と北寄りの風が山陰沖で収束。
 梅雨前線を形成する教科書的な条件をすべて満たし、経験したことがないような大雨を降らせているのかもしれません。

 (2)今日の空模様・・・気象庁発表GSMモデル

 では、今日これからの空模様・・・

 気象庁が普通の天気予報(短期予報・週間予報)の作成に用いているGSMモデル(スーパーコンピューターによるシミュレーション)を使って詳しくチェックしていきましょう。

GSM5日70705
(図をクリックすると注釈の書き込みのない図が拡大します)

 上段の図は、地上の空模様の骨格にあたる上空の気圧配置と寒気の様子。
 下段の図は、普通の天気図と同じ地上気圧と地形の影響を受けにくい上空約1500mの寒気の様子。

 (上段の図)実況でチェックした(冷涼で乾燥した空気を伴う)上空の気圧の谷(赤の点線:偏西風の南側への蛇行域)が、2ステップで本州を南東進。
 悪天パワー(地上の低気圧や雨雲を活発にするチカラ)を地上に降らせるとともに、大気の状態を不安定にすることが考えられます。

 また、上空の気圧の谷の南下とともに、梅雨前線上空の西寄り偏西風強風帯と、大陸から吹き降りる北西偏西風帯が山陰付近で接近(収束)。
 山陰沖に下降気流帯を形成(上空で収束・下層で発散)すると思われます(700hPa鉛直P速度に下降気流帯。その南側の前線帯で上昇流極大)。

 (下段の図)このため地上では、上空の気圧の谷に対応して山陰付近で梅雨前線の降水帯が活発化。
 上空の気圧の谷の南東進に伴い、梅雨前線も弱まりながら南下するようですが・・・

 本当に弱まるのか???
 少々疑心暗鬼になるところ・・・

相当温位70705
(図をクリックすると注釈の書き込みのない図が拡大します)

 これは気温に水蒸気を加味した相当温位図という特殊な天気図。

 下降気流が優勢の梅雨前線(黄色の点線)の北側からは、冷涼で乾燥した空気が北寄りの風に乗って流入(水色の矢印)。
 次第に西日本で優勢になってくることが分かります。

 一方、梅雨前線南側では、南西からの流入が西よりに変化し、暖かく湿った空気(暖湿気=雨の原料)の流れ込みが少しずつ弱まる傾向・・・と言えないわけでもない???(難しい!)

 (3)気象庁MSMモデルで空模様を具体的にイメージ!

 わからないことはわからないとして・・・解像度の高いMSMモデル(スーパーコンピューターによるシミュレーション)を使って、今日~明朝の空模様を具体的にイメージしておきましょう。

全国流線アニメ170705
(スマホ版のブログではアニメが動きません。PC版に設定してご覧ください)
 
 紫色は下層雲。

 Kasayan的には、山陰の豪雨・・・「暖かく湿った空気が梅雨前線に流れ込んで」という教科書的な理由だけでなく・・・・

 「上空で偏西風が収束して梅雨前線の北側で下降気流帯が発生」
 「下降気流によって偏西風強風帯北側の比較的冷涼で乾燥した空気が梅雨前線の北側に北寄りの風として流入」
 「下層風のシャープな収束線も形成されたことによって活発な線状降水帯形成された」

 ・・・なんてことも考えてみました(正しいか間違っているか・・・なんて私にはわかりません)。
 教科書的な理由だけでは、「かつて経験したことのないような大雨」なんて早々発生しませんから。

 で・・・このような理由からすると・・・今夜にかけて梅雨前線は南下してゆっくり弱まる傾向。
 ただ、あくまで実況重視(特に午前中は)。
 そして明日の九州方面・・・教科書的に「暖かく湿った空気が流れ込んで」再び雨が活発化しそうですね。

     府県天気予報(更新5時・11時・17時): http://www.imocwx.com/yohoud.htm
     府県天気予報(マークの予報 天気分布をチェック: http://www.jma.go.jp/jp/yoho/
       気象庁時系列予報: http://www.jma.go.jp/jp/jikei/
      (マークの予報は府県天気予報の括弧内(テロップ番号)をマーク表示したもの)

      府県週間天気予報(更新11時・17時): http://www.imocwx.com/weekd.htm
     府県週間天気予報(マークの予報): http://www.jma.go.jp/jp/week/     
      (マークの予報は府県週間予報の括弧内(テロップ番号)をマーク表示したもの)

 アメリカ気象機関(NOAA)GFSモデル: http://mag.ncep.noaa.gov/
 アメリカ海軍 HP GFSモデル: https://www.fnmoc.navy.mil/wxmap_cgi/index.html?tab=global#global
 ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF): http://www.ecmwf.int/en/forecasts/charts/catalogue

     専門の天気図は以下のURLで、無料で入手可能です。
                 http://n-kishou.com/ee/exp/exp01.html?cd=fxfe502&cat=e2

 KasayanのYouTubeチャンネル(タイムラプス映像集):https://www.youtube.com/user/kasayangw

拡大GSM170705 拡大相当温位170705
(図をクリックすると注釈の書き込みのない図が拡大します)

菅平170705
(今朝の長野市・・・ドン曇りから青空も・・・)

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