蜷川実花監督、小栗旬・宮沢りえ・沢尻エリカ・二階堂ふみ
といった豪華キャストによって小説家太宰治の晩年期を
描いた映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」。







おすすめ度:7+
レイティング:R-15+



太宰治の晩年期、戦後の混沌期からようやく抜け出しそうな
しかしながらまだGHQは存在する1946年から1948年という
時代背景で描かれる、ダメ人間な太宰治と彼を取り巻く3人の
女性を描いた作品です。描かれてる事実関係はほぼ実話で
割と事実に忠実な感じでストーリーは進んでいきます。

蜷川監督得意の鮮明な映像美はある程度控えめはあったんですが
やっぱりそれと解るくらいにはふんだんに使われていて、その
色彩の状況とそこに登場してくる人物の心理描写を併せて
ワンカットにしてるため、直接的に入ってくる内容が割とライトな
感じというか薄っぺらいと感じてしまうのは否めないですが
どぎつい心理描写をそれでフラットにしてるので、割と見やすい
仕上がりになってるんではないでしょうか。

あまり映画慣れしてない人にも見やすい感じで作られてます。

自分好みではなかったですがw

また、その映像美・色彩美の影響で戦後の混沌期っていう
部分がかなり薄くなってしまっていて、カオス感はなく
シュッときれいめなレトロ感が全体を覆っているので
太宰治のぶっ壊れっぷりも割と上品というか、負の部分が
そこまでどぎつく表面に出てこないので、物足りないと
感じる人もいるだろうし、ちょうど良いと感じる人も
いるだろうしという、評価が真っ二つに分かれそうな
そんな映画かなというのが率直な感想です。

ただ、女性陣の演技は素晴らしいです(^^)!
特に二階堂ふみはやっぱり凄いなと思えるくらいに
役にはまり込んでて、あのまとわりつくような雰囲気や
濡れ場の描写などなど、宮沢りえの評価が割と高いですけど
完全に喰ってると自分的には感じました。
といっても、宮沢りえも演技良かったです。

沢尻エリカは。。


というところで、いつものように
ネタバレを含んだレビューを続けます。








 













以下ネタバレ含みます。








冒頭はとある女性と自殺しようとして太宰だけが助かる
というなんとも言えない場面から話はスタートします。

死ぬ間際に女性が別の男性の名前を叫んでみたり
助かった太宰が「死ぬかと思った。。」とか言ってみたり
まぁまぁのダメさ加減が詰め込まれた冒頭ですねw

そんな中、太田静子からのファンレターが太宰に届きます。
彼女との恋愛を経て長編小説「斜陽」が完成するわけですけど
なかなか強かな女性というか、浮気というのも知ってる上で
太宰の家の前で待ち伏せしてみたり、斜陽のヒントとなる
彼女の日記を見せる代わりに、彼との子どもが欲しいと言ってみたり。

男性的にはかなりヤバい状況に追い込まれるわけですけど
その辺流され系男子な太宰は受け容れてしまって見事受胎w
妊娠中も太宰は追い回されるわけですけど、斜陽が売れまくってる
のを知って、自分の名前を横に添えて欲しいとか、子どもを
認知させにいったりするのは割と人間っぽさがかなり出てるなぁと。
結局最後は斜陽日記を自分名で出版して一人勝ち状態というか
スキャンダルを逆手に取った炎上商法をこの時代からやってる
っていうのは凄まじいものがあるなぁと思ってみたりw

そんな中に知り合うのが二階堂ふみ演じる山崎富栄なんですが
なかなかに彼女はメンヘラですw
ラストは彼女と入水自殺をしてしまう太宰ですけど、彼女との
関係を断ち切れない流され系男子な太宰の心理描写が割と甘めで
苦悩の部分と快楽の部分、書きたいのに書けない苛立ちの部分、
そこら辺の描写が割とサラッといってしまってるので、ちょっと
彼女との関係に深みが見えなかったのが残念ポイントで、おすすめ度
8までにはいかなった大きな原因かなぁと。

どっちかっていうと二階堂ふみに小栗旬が喰われてる感じw

そんな生活を影でずっとただただひたすら支えているのが正妻の美知子。
宮沢りえが演じてるんですが、ただただひたすらに耐えて、彼や
その家族を支える彼女の愛情が凄まじいです。

結局彼女は太宰治を愛したわけで、津島修治を愛しているわけ
ではなかったのが、凄く響くというか、そこら辺はさすがに
よく描けてるなぁと思いました。太宰治が名作を書くのであれば
浮気しようが、家庭を崩壊させようがかまわないというその姿勢。

でもその現実を突きつけられた時には耐えきれず子ども達と
泣きながら青いインク?を顔中に塗りたくるわけですけど
青黒く顔を染めて泣くシーンにいろんなものの崩壊を重ねてる
と自分的には思いましたが、やっぱりその辺にオブラート感が
出てしまっていて直接的な表現でないので、狂気が伝わり
にくい演出になってしまってるのはホント残念ポイントです。

登場人物の全てが割とメンヘラで、太宰がみんなを囲って
飲んでる時にわざわざ文句言いに来る三島由紀夫とか
結構キーポイントな部分で太宰を堕落方向へと背中を押す
坂口安吾はやっぱりどこをどう見ても藤原竜也やなとか
小技も効いてて、ライト感がありながらも深読みもできる
万人受けしそうな映画かなぁという感想です。


個人的にはもっともっと苦悩する太宰が見てみたかったかな。