ダ・ヴィンチニュースの方で
中国のオタクは、実は日本以上にパクリに潔癖だった!(ダ・ヴィンチニュース)
というコラムを書かせていただきましたが、ありがたいことにコラムに関する質問をいただいておりますので、その辺りも含めた補足をちょっと書かせていただきます。


・中国パクリ作品事件史?
コラムの中で言及した「ヒカルの碁」、「秒速5センチメートル」のパクリ作品ですが、
秒速5センチメートルの件は、
「心灵之窗(心の窓)」
という作品で、当ブログでも昔記事のネタにしたことがありますので、よろしければご参照ください。
中国のパクリアニメ。今回は秒速5センチメートルから

そしてもう一つの「ヒカルの碁」のパクリ作品ですが、こちらは
「棋魂」
という小説です。

実は「棋魂」というのは「ヒカルの碁」の中国語タイトルでもありまして……
一応この作品が出て炎上した2004年当時では中国のファンの間では「ヒカルの碁」の中国語タイトルは「光之棋」或いは「棋魂」といった扱いになっていたようで、まだ中国国内における「ヒカルの碁」の中国語タイトルが固まっていなかった面もあったらしいのですが、それでもかなりアレなタイトルを付けたのは間違いないですね。

また内容に関しても、
「主人公の少年が唐代から千年の時を経て存在している囲碁の精(?)『上官天行』に出会い、その指導により棋士として成長していく」
というものだそうで、詳しいストーリー展開はさておき出だしの部分はわりとあからさまに「ヒカルの碁」と重なっているそうです。

ちなみに中国オタクの方によれば、
今となっては確認のとれない話ではあるものの
「サイン会にヒカルの碁のファンが現れ、この小説を作者の前で引き裂いた」
などという伝説もある作品だという話です。

この作品に関する大炎上は2004年頃の話ですが、ちょっと探してみた所、
昔のニュース記事(中国語)
が見付かりましたので、よろしければご参照ください。こちらのニュースでも、サイン会に関するゴタゴタが言及されていますね。


・「名作を変えてはいけない」ことに関する補足
コラムの方で中国には
「名作を変えてはいけない、いじってはいけない」
といった名作の「再構成」自体をタブーにするある種の美意識のようなものがあり、それが中国のオタク界隈の一部でオタク的な名作のパロディやオマージュが「名作」の改変、冒涜と考えられてしまうことにもつながっていると書かせていただきましたが、中国オタク界隈で見受けられる傾向としてもう一つ
「その名作に関してファンが分析する際に、影響を与えた作品に関して遡らない、それどころか遡ることを喜ばない」
というややこしい部分があったりします。

この辺りの、ある種の頑なさに関しては
「自分の原体験」
であるというのが大きいという話も聞きますね。

中国本土では大衆娯楽が非常に少ない時代が続きましたし比較対象となる作品が少ないこともあってか、人気作品のファンが増大し堅固なファンコミュニティが形成された場合、そのコミュニティにとっての「経典」(名作)となる作品が極めて強烈な存在となってしまい、それと同時にある種の絶対的な扱いというか、先入観的なものも形成されるのだとか。

そしてその結果、
「自分の原体験の作品のパクリに思える作品」
に対して非常に強烈な反応をしてしまう面もあるという話です。

ちなみにこの「遡りたがらない」件ですが、例えば中国オタク界隈における古典的人気作品の「Robotech」と「マクロス」の関係もそういった所があるそうです。

「Robotech」はハーモニー・ゴールド社により「マクロス」と「サザンクロス」と「モスピーダ」の三作品をアメリカ向きの内容にして一本に再構成した全85話となった作品で、第一部の「マクロス・サーガ」が超時空要塞マクロスの内容にあたります。

この作品が91年頃から中国のテレビでも放映され大人気となり中国に多くのファンを作ったそうですが、中国の古参のオタクの方の話によれば熱心な「Robotech」ファンの間では「Robotech」のテレビ放映の後に日本の「マクロス」の情報が入っても、「マクロス」を認めない人が少なくなかったという話です。
VF-1などのメカの人気はあっても、日本の「マクロス」の方のファンがきちんと構築されるのはそれこそ「マクロスプラス」や「マクロスF」などの「日本のマクロスの続編」が入ってからだった模様です。

一応90年代後半頃には既に日本の「マクロス」と「Robotech」の違いやそれぞれの成り立ちに関する情報自体は徐々に広まりつつあったそうですが、中国の「Robotech」系コミュニティの変化はあまりなく、そして今でも中国のRobotechファンの間ではマクロスの扱いは非常に微妙なもの、アンタッチャブルなものという扱いになっており、なかなか「Robotechもマクロスも両方楽しめばいい」といった気楽なスタンスでやっていくという風にはいかないそうです。

極端な所では、
「Robotechのもとになった作品がマクロスだとか、マクロスと他の作品を切り貼りした結果がRobotechとか、そんな情報はいらない!ファンの夢を壊すな!」
といった形で、イロイロとこんがらがった反応が出て来てしまうそうです。


・そもそも三国演義や水滸伝がパロディでは?
中国におけるパクリとオマージュ、パロディに関して、
「そもそも名作扱いの三国演義や水滸伝が史実をもとにしたパロディでは?」
といった質問をいただいておりますが、実は現在の中国ではこの辺りに関しては明確に「分けて考えられる」ものになっているようです。

三国演義や水滸伝などの四大名著クラスの作品は既に文芸作品、「経典」(名作)枠に入ってしまっているので、文化、政治関係のコンテンツになっているということから、中国ではパロディ作品だという認識はなかなか出てこないという話です。

現在の中国の創作に関する環境や扱いは独特なものがあり、文芸枠、名作枠に入ってしまった作品に関しては、政治的な要素も絡んだ文化的な作品になります。
そして作品に関する基準も共産党やお偉いさん基準になるので、なおさらパロディで軽く扱うのは難しくなってしまうそうです。


・同人のパロディの扱いはどうなのか?
パロディの感覚や方向性に関しては日本と異なる部分も少なくありませんが、中国の同人界隈においてはパクリやパロディがかなり許容されています。一般のコンテンツにおけるパクリに関する敏感さと比べると、同人界隈の異質さがかなり際立ちますね。

これに関しては、同人文化及び同人作品の楽しみ方が中国では日本からの輸入により形成されてきたから……というのがあるそうです。また、同人上がりのコンテンツ(例えば「十万個冷笑話」のような)の場合は、パロディ満載でも「恶搞」(ネタ)ということで許容してもらえることが多いそうです。これは最初から商業作品で展開されるパクリとは、明確に違うものだと認識されているのだとか。

これらの感覚について聞いてみた所
「同人は最初からパクリ、パロディ、二次創作だと分かる。しかし商業作品はパクリを自分のオリジナルにしようとするからダメといったように極めて厳しくなる」
「同人作品でも有名になってから自分のオリジナルだと強調しだしたらダメ」

といった見方になるという話でした。


とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。