春節なので中国の方は休み状態ですし、新しい話題もあまりないですね。

ありがたいことに
「灰と幻想のグリムガルは中国ではどのような反応が出ていますか?」
という質問をいただいておりましたが、先日ネット小説関係の話題を探していた時にちょっとしたやり取りを見かけましたので、今回はそれについてを。

「灰と幻想のグリムガル」

は中国の動画サイトでは正規配信されていないようなので
(PPTVは正規ルートなのかイマイチ判断できませんし、どうなんでしょうね)
勢いはそれほどではないものの、アニメ化に伴って原作小説関連も含めてそれなりの情報が中国オタク界隈にも入り、一部で話題になったりしている模様です。

ざっと見た所では異世界トリップモノでありながら、
「龍傲天(俺TUEEEE)ではない作品」
といった面などが話題になったりしているようなので、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


灰と幻想のグリムガルは極めて珍しい作品ではないだろうか?
よくあるトリップ系の作品化と思いきや、一向に強くならずにずっとゴブリンと戦うというのは逆に新鮮だ。

異世界にトリップしたけど俺TUEEEEが出来ない作品か……

よくそんな作品をアニメ化しようとしたよな……1期の間のどれくらいがゴブリンとの戦いに費やされるのだろうか?

イヤな性格で能力の高いヤツがいて、最初どん底に落とされてからそいつを乗り越えて見下すという展開とも違うんだよな。

最初は最弱、底辺ってのはいくらでもあるけど、そういう作品は強くなっていつの間にか普通の俺TUEEEEになるからな。

ウチの国では珍しいかもしれないけど、欧米のファンタジー系作品を見ればそれなりにあると思うぞ。

国外の作品にそれなりに接していれば、こういう主人公が強くない作品にもぶつかる。ファンタジーなんかは特に。

だがネット小説系だとこういうのは埋もれる。今の若者向けとして考えた場合、結構珍しいと言えるのは確かではないだろうか?

話の出だしの異世界転移とかはよくある流れ。でも普通は話が進むと共に主人公が強くなる。グリムガルは慣れてはくるけど、強くはならないんだよな。

主人公が強くならない、最強感や万能感が無いってトリップ系じゃなくても、あんまり多くないような……

確かに文学系の作品じゃなく、普通の冒険作品だと非トリップ系でも俺TUEEEE的な展開の無い娯楽作品少ないかもなあ。

いや昔はあったよ。ジャンルを問わず。現在のオタク向けの作品では少なくなったけどね。
そして非俺TUEEEE系の作品はウチの国だとなかなかに厳しい。恐らく日本でも最近アニメ化されている作品の傾向からして、非俺TUEEEEはあまり人気になっていないはず。

まぁ特別な所の無い普通のキャラがトリップ先で普通にやっても英雄のように強くはならないよな。主人公補正の外にいると、弱い一般兵クラスのままってのも納得はできるが。

今の時代に読者ウケを考えると、俺TUEEEEじゃない方向で書くのはある種の冒険だ。しかもSFとかじゃなくてファンタジーでトリップ系という題材でよくアニメ化までこぎつけたもんだな……

金儲けする上では俺TUEEEEは必須に近いと思うぞ。結局みんな俺TUEEEEになってる。そしてだからこそグリムガルが異質に見えるんだが。

すまん、自分は俺TUEEEEが大好きなんだ!
弱いまま苦労するのはやはり、その……

いや、先が見えずに続く苦戦とかはやはり人を選ぶと思うよ。
感情移入するにしても、爽快感が必要だし今の時代に俺TUEEEEが増えているのもそっちに合わせた結果だろうし。

トリップ系主人公自体はありふれているけど、最初っから最後まで強くない、しかもそのレベルの人間で吹き溜まりのようにチームを組むような作品なんて読みたくなるか?

適度な強さで適度な敵や困難があって、それを乗り越えた結果の報酬(財宝や地位に限らず、精神的な物でも可)があったりすれば大丈夫じゃないか?
頂点だけ描写する必要は無いし、全てを主人公が手にしなければいけないわけでもない。人気作品の主人公が常に最強ってわけでもないしな。

活躍する、苦難を乗り越えるけど、全てを好きなようにできるわけではないという作品なら現在もあるよ。ウチの国のネット小説では人気になり難いだけで。

ネット小説読者は俺TUEEEEじゃない作品を好まない。
日本でもネット小説系作品は俺TUEEEEが主流だ。

主人公がヒドイ目に遭う系の作品はウチの国のネット小説でも珍しくない。
ただランキングとは無縁になるね。そういうのを書きたがる作家も、読みたがる読者もいないわけじゃない。でも稼げない。

D&D系の作品とか、最初弱いとかは珍しくないね。
ただグリムガルの場合はモブA的な立場がずっと続くのが珍しい。
レベル上がって中堅〜英雄とかにはならない。

最近は世界を主人公が好き勝手にできる作品が増えすぎているから「グリムガル」のような企画が通ったのでは?

最近の武侠ファンタジー全盛だと目に付かないが、ウチの国のネット小説でも西洋系ファンタジーがそこそこ強かった時代には主人公がそんなに強くないというか、強過ぎない作品もあった。

一応、女性主人公でずっと強くないとかはあった。もっとも戦闘メインの話では無かったが。

自分は設定だけしか見ていないが「灰と幻想のグリムガル」のような作品が面白くなりそうだとは思うが、やはり俺TUEEEEじゃないと、一般ウケは難しいとも思ってしまうね。

「グリムガル」の作者の発言によれば、元ネタがウィザードリィの小説化作品だからゲーム的なファンタジー世界の捉え方に関しても、ウチの国に多いWOW辺りから入った感覚とは違うだろうな。

なるほど。言われてみれば「グリムガル」はSFとかファンタジー世界へのトリップというカテゴリよりもゲームの小説化のカテゴリに近いかも。
ウチの国にはそれほど入ってこないが、日本のラノベは昔からゲーム系の小説の勢力が存在するが、そっちの方の流れとしても考えられるか?

実は主人公、恐らく元ネタとなった初期のウィザードリィに比べるとこれでもまだマシ。初期作の盗賊はカギ開け罠解除専門で盗みとかもできないし、戦闘もほんのちょっと武器攻撃が出来る程度で、僧侶の方が装備的に前衛として安定したりするくらい。
もっとも、盗賊は宝箱開けるために必要不可欠な職業でもあるから今の時代の作品の主人公としては向いているのかもしれないな。

しかし、疑問なのはなんでこの作品をアニメ化できたのかという点だよな。
アニメ原作のラノベが枯渇しつつあるというニュースを見た覚えもあるが、現在主流の視聴者の好みから外れるのは確実なこの作品をアニメにして、しかも結構高いクオリティで作ってしまうとは。俺達と日本の読者、視聴者の感覚の違いのようなものを感じる。



とまぁ、こんな感じで。
中国のネット小説などで一大ジャンルとなっている「穿越」(トリップ)系の作品のテンプレにも思える設定と、テンプレではない主人公たちの活躍にイロイロと思う所もあるようです。

今回のやり取りを見ていて感じたのですが、中国ではグリムガルの序盤に関して、ゲームの最序盤の展開、wizで言えば馬小屋、ドラクエ3で言えば勇者の実家で回復してEXPやお金を稼いでいく……といった流れと受け止める人はあまりいないようでした。

中国ではやや昔のタイプのRPG、リスクとコストの管理をしながらレベル上げをチマチマやるようなゲームがそこまで広まっていないといった背景もあるので、知識としてこういった冒険があるというのは知っていても自分自身のゲームプレイ体験と重なる人は少ないようですし、そういったスタイルのゲームプレイを体験したり、コンテンツに触れるという機会もそんなに無いのかもしれません。

またwiz関係についても知識としては入っているものの、実際にハマった人はそれほど多くないはずですから、「灰と幻想のグリムガル」や「隣り合わせの灰と青春」的な世界観、他にも死亡退場したキャラの紹介に「ロストした」と付けたくなるような感覚はあまりピンと来ないのかもしれませんね。


とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。