ありがたいことに
「中国のオタクは子供向けとされる作品を妙に避けたり下に見る傾向が見受けられますが、彼らの子供向け作品に対する考え方などを知りたいです」
という質問をいただいておりますので、今回はそれについてを。

質問にもある通り、中国オタクの人の中には
「自分達の見ているアニメは子供向けじゃない」
というのにこだわる人がいるのは確かですし、子供向けとされる作品が中国オタク界隈では日本ほど盛り上がらないといった事情も存在します。

先日、中国のソッチ系のサイトを巡回して
「なぜ中国では子供向けということで強い反発が出るのか」
といったことに関するやり取りを見かけましたので例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


なぜウチの国のオタクは「子供向け」というだけで反発したり、見下す人が出たりするのか。日本のオタクは子供向けアニメにこれほどの反発しないのに。

ウチの国ではアニメや漫画に限らず「子供向け」という言葉はなんかネガティブな意味が付くよね。

いまだにそういう感覚が作品によっては露骨に出たりするからな。

子供向けという言葉をネガティブな意味で、否定的な意味で使うヤツとかいるのか?
ちゃんとした子供向け作品が出てくればこっちだって金を使う気にもなる。国産作品ももっとマシなものを作ればいいのに。

子供向け作品はアニメの中心になる、主流的なジャンルのはずなんだけどねえ。

作品が自分の好みの方向に行かないとか、ストーリーが気に入らないとか、或いはちょっとコメディ色を出してくるとすぐに「子供向けになってしまった!」と騒ぐのとかもいるよね。

子供向け作品と幼稚な作品というのを混同するヤツが多い。神作だって生まれているのに。

「子供だまし」というレッテルを貼る際に「子供向け」という言葉を使ってる気もする。或いは「子供だまし」な作品を見ているというレッテルを貼られるのを恐れて子供向けを避けたり、否定したりする。

中二病的には子供向けが許せない……というには、ちょっと独特過ぎるかも。
日本のアニメ以外にも「マイリトルポニー」なんかはウチの国のオタクの間でも比較的強い「子供向け」だが、分かる人間とそれ以外の間にある壁は高い。

俺もずっとアニメや漫画を見て育ったが、子供向けだとバカにしたり嘲笑したりする人間に会ったことなんて無いぞ。

嘲笑はしないが、評価するつもりも、自分から見る気もないという空気はあったぞ。ずっと。

逆にそういうのが「無い」という人間の方が信用できない。
人は成長の過程で誰しもが「自分はもう子供じゃない」と思ってそれまで見ていた作品から離れる時期が来る。問題はそこから子供向けかそうじゃないか関係無くアニメを見れるようになるかだ。

アニメがウチの国の青年向けというか、若者向けな娯楽コンテンツの象徴の一つでもあったからね。一時期は特に。
「子供向け」と「自分達の見るアニメ」を区別したがった感はある。

振り返ってみると、ある種の中二病的な考えの結果なのかだろうか……

でも一昔前に比べればウチの国のオタクも随分とマシになったと思うよ。「プリキュア」について普通に盛り上がったりしているし。

どの子供向け作品かで話は変わる。「ポケモン」や「デジモン」は今見ても問題無いが「喜羊羊」はさすがにキツイ。

俺ももういい歳になったから、当然子供向けなんか見る気にもならない。
だが別に作品を否定しているつもりはない。
自分が見るべきだと思う作品が他にもあるというだけだ。

お前さんのように子供向けを見ようともしないのがウチの国のオタクの特徴で、日本との違いだと思う。

しかし、子供が見るなら問題無くても大人が見るのは恥ずかしい作品があるのも確かなわけで。

子供向けが無ければ業界が成立しないし、その価値は認める。だが子供向け作品は、例えば「ドラえもん」なんかのようにストーリーが低年齢向けになっている。子供向けと全年齢向けを区別するのは当然だ。

作品そのものは否定しないが、子供向け作品とか、大人が見たら退屈なんだからしょうがない。単純な子供向け作品はつまらない。
中には子供向けっぽいけど全年齢向け的な作品になっているのもあるけどね。

子供向けを見下したこと無いとか言ってるヤツもいるが、じゃあなんで「ガッチャマンクラウズ」が当時こっちで全く話題にならなかったんだ?「人気にならなかった」じゃなくて、「話題にならなかった」だ。
当時の反応を見ても、明らかに中国語タイトルの「科学小飛侠crowds」の「科学小飛侠」が子供向けっぽいから避けられてしまったという感じだったぞ。あれは大人気になるのは難しい作品だったかもしれないが、話題にならずにスルーされるような作品でも無かった。

中には子供向けの皮をかぶったスゴイ作品、ヤバイ作品なんかもあるんだけどそういうのをスルーしてしまう今の状況はどうなんだろうと思わなくもない。

国内の今の環境はそんな感じだね。
私も子供向けとされる作品を結構見ているけど、外で「見ている」と言ったり、オタク仲間に直接語るのは無理だ。

日本も昔は「アニメなんて子供の見る物」ということで見下されていたはずなんだがな。

日本でもいまだにそういう意見が根強いという話だけど、日本はオリンピックの国家イメージにアニメやゲームのキャラを普通に使うようになっているからな。
ウチの国の空気とはやはり違うと思う。

ウチの国ではオタク同士で、子供向けアニメを見ているヤツをバカにする傾向がある……

そもそも、ウチの国では作品を叩くときに「子供向」という言葉を使ったりするのが多いんだよね。

極端な言い方をすれば俺の見ている作品の方が凄い、お前の見ている作品はダメ、だから俺の方が凄いというノリだ。

「小学生」がウチの国のネットでの罵倒語、相手を見下す言葉になっている件が、「子供向」という言葉に漂うネガティブさと共通している所もあるように思う……

世代間の衝突、異なる階層同士の蔑視の連鎖とも言えるのかね?
オタクとそれ以外だけでなく、オタクの間でもそういうのが出ているのかも。

これまで見たり聞いたりしたその手のやり取りを改めて考えてみたが、優越感の根拠、上下関係の作成みたいな面もあるように思う。言ってみれば覇権作品争いの時と似たような所はあるかもしれん。

ウチの国では「子供向けに作られたものではない」ものを求めているからじゃないかな?

遡っていくと、ウチの国ではダメな作品が子供向けの作品だったからというのも原因だったように思える。そんな頭の弱い人間向きの作品と自分達の見ている作品を同じカテゴリで扱ってほしくないとかで。
それに、中国国産アニメはつい最近まで子供向けの作品しか存在できなかったというのもある……

今世紀になってから国産アニメで子供向けでは無い、ある程度高い年齢層をターゲットにしたアニメが出るようになったのはほんと最近だからね。環境と背景の違いもありそうだ。

日本はまず大人でも楽しめる子供向け作品が出て来て、それを見て育った世代向けの、対象年齢の高い作品が出るようになっていく……といった流れだから、オタク社会でも子供向け作品をみるのに抵抗が無いのでは。

ウチの国には日本のアニメが制作された順番とか無しに一気に入ってきたという違いもある。最初から大人向けだけを求めることのできる環境だったというのも原因か。

子供向け作品の市場が無いか、特定の作品に偏っているから子供向け作品を評価する機会に出会わないとか?

ふと思いついたが、この問題の原因はウチの国のオタクが「育ってない」からというのもあるかもしれん。
ウチの国のオタクの歴史が本格に動き出してからまだ10年程度だし、日本のようにアニメを見るオタクが歳とり子供をもって……という流れがまだ一般的ではない。

オタク系フォーラムやBBSで結婚や子供の話になるとすぐに
「オタクが結婚できるわけないだろ」
というレスになるからな。親子で楽しむアニメとか想像し難い所は確かにある。

他には子供向け作品は子供をだしにして金を儲けるというあくどさが嫌われる、下等に見られる原因になってるかな。

その辺の「子供だまし」的なことに対する反発もあるか。
もっとも、萌えやエロで釣ったり、カッコイイキャラデザや中二病要素で釣る作品はどうなのかという話もあるけどね!

国産作品に関しては作る側や管理する側の「子供はこの程度で良い」とか、「子供には綺麗なモノだけ、ためになるものだけ見せるべき」といった考えが透けて見えるから嫌われるんじゃないかな。

そうそう。
子供向け自体は問題無いんだ。問題は「子供をバカだと思って作られている」ことだ。
国内の子供向け作品が制作分数重視でそんな作品があふれたのも、子供向けにネガティブなイメージが付く原因になったんじゃないかね。

でも「日本の子供向けアニメ」も普通に見下しているぞ?
プリキュアでさえ「ハートキャッチ」で作画がスゴイというマニアの声が出てようやく評価される、注目されるようになったくらいだぞ。
それ以前も注目しているヤツがいなかったわけじゃないが、ほとんどの人間の眼中になかった。そして今もストーリーやキャラでは無く作画がどうこうな声が大きい。

「知られている」「探せば情報は出て来る」と「オタク界で作品が認識、評価されている」は別物だからね……
子供向けとウチの国のオタクとアニメ界隈の問題は、結構根が深そうだ。



とまぁ、こんな感じで。
個人個人のイメージや許容範囲が異なりますし一概には言えないようですが、中国オタク的に「子供向け」の扱いが微妙なことになっているのは確かなようです。

実際、ここ数年の間に中国に入った作品に関しては、現地のアニメ視聴者に子供向けだと思われてしまう、「子供向け」のレッテルを貼られてしまった結果、中国オタク界隈における話題性などにおいて苦戦したケースもあります。
(作品によってはそれでも動画サイトで再生数を稼げているケースもあるのですが)

こういった背景もあるので、作品によっては中国で展開する際には「子供向け」的なイメージになるのを避けた方が良い場合もありそうですね。


とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。