日本語と中国語には
「同じ漢字でも意味が違う」
というケースがちょくちょくありますが、そういった言葉の翻訳に頭を悩ませる中国オタクの人も少なくないようです。

先日、中国のソッチ系のサイトでは
「日本語の『絆』の訳語」
に関するやり取りが行われていましたが、日本語の
「絆」
はアニメや漫画でもよく使われる上に、中国語にはしっくりくる言葉が無いということで扱いに困る言葉となっているのだとか。

一応現在は日本語で「絆」や「キズナ」が出たら
「羈絆」
と訳すことが多いようですが、この訳語に関して疑問を覚える人もいる模様です。
(例えば「NARUTO -ナルト- 疾風伝 絆」の中国語タイトルは「火影忍者疾風伝:羈絆」となっていますし、「キズナイーバ−」の中国語タイトルは「羈絆者」となっていました)

そんな訳で以下に中国のソッチ系のサイトで行われていたその辺に関するやり取りを、例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。


日本語の「絆」の中国語訳がよく分からん。どう訳せばいいのだろうか
こっちで翻訳する時は「羈絆」を使うのがお約束になっているが、中国語の「羈絆」という言葉の元々の意味と、日本語の「絆」は明らかに違うんだが……

「羈絆」については確かに。
一応、元の意味的には捕まって動けないとか、束縛とかだよね。「羈」には約束という意味もあるが……

「羈」の字には「轡」、そこから来て拘束という意味があるらね。

「絆」か……切り捨てることのできない人や物という意味に自分は受け取っているが、「羈絆」では厳密に考えると違うな。

「絆」の訳語として考えた場合、基本的にネガティブな意味ではないよな。

束縛的な面はあるんじゃないか?
私は絆によってキャラの行動が縛られる、好き勝手に動けなくなるといったようにも受け取っていたが。

俺はずっと「羈絆」を使わずに「絆」を使っている。

でも「絆」だけでも中国語の「絆」と日本語の「絆」は違うぞ。何かにさえぎられる、締め付けるといった束縛とかの意味が先に来て、日本のように人間関係における肯定的なある種の拘束といった意味にはならない。

自分はあまり深く考えずに使っていたわ……

実際、日常的に使う言葉や字ではないからね。

日本のアニメや漫画でよく出て来る人間関係や気持ちを表す言葉って厳密に考えると難しい。日常的に使う言葉でぴったりの訳語が無いといったものもあるからね。
例えば「幼馴染」だったら「青梅竹馬」とかが使えるんだが。

「青梅竹馬」も厳密には日本語の「幼馴染」と同じではないぞ。
日本語の幼馴染は同性、異性どちらに対しても使えるのに対して、青梅竹馬は異性に対してのみ使う言葉だ。

うわ……そうだったの!?
私はずっと同性に対しても使っていたよ!?

それ、日本語の「幼馴染」と「竹馬之友」を混同しているんじゃないか。
「青梅竹馬」は李白の「長干行」からで男女の幼馴染を指すもので、「竹馬之友」は「世説新語」からで性別を問わない幼馴染を指す言葉だ。

弾幕コメントでも、同性の幼馴染に対して「青梅竹馬」をあてるとツッコミが入るくらいの有名な誤訳ではあるのかも。私も昔、翻訳でやらかした間違いだが!

ちなみに、オタクの間ではBLや百合の関係を意識してあえて青梅竹馬を同性に対して使うケースもあるとか……

そこまでこだわらなくても……何となく通じているわけなんだし。

今ではこの「日本語の絆」的な意味の使い方も普及しちゃっているからね。テレビでも聞くし。

ただ具体的な意味に関してはまちまちな気もしないか?

今こっちで使われている意味としては、お互いが嫌でも、離れるに離れられない関係とかそんな所だろうか?

私は真の友情といった感じだと思っているんだが……

堅い友情ではあるが、ストーリーの上では心理的な障害になるもの。

「絆」という言葉は日本の作品や番組ではかなり多様されるけど、大体はポジティブな意味だよ。

言葉ってのは使っているうちに変わるもんだからね。
今ではウチの国では普通に使われている「萌」だって、元の意味には良いとかカワイイといった意味は無かったわけだし。

そこは「宅」で例えるのはどうだろう?
日本語の「オタク」「御宅」から来てウチの国の辞典にも乗る言葉になったが、日本語の「引きこもり」の軽めのバージョンや、外に出ないで過ごす人間の総称みたいな意味が前に来るようになった。もちろん現在もオタクという意味でも使われてはいるが。

「宅」も元の意味と完全に関係無いわけじゃないが、かなり意味の離れた使い方になってるな。

「羈絆」はどうなるんだろう。
いわゆる中国→近代日本で魔改造→中国の流れの日本漢語ではなく、日本語の翻訳で適当なものが無いから中国語の別の意味の言葉が使われて定着した形になるわけで……これも一種の外来語なのか?

「羈絆」は日本語にも無いはずだからな。言われてみれば少々ヘンな気もするな。

最初に「絆」を「羈絆」と訳したのは誰なんだろう?字幕組のファンサブ翻訳か?それとも商業のやっつけ仕事か?
恐らく日本語の「絆」を訳せなくて、「絆」という字を使っているからよく考えずに勢いで「羈絆」を当てたんじゃないだろうか?元々の「羈絆」は日本語の「絆」とは明らかに意味が異なる。

私も急ぎでやったか訳しているうちに混乱したか、という印象は受けるね。
実は日本語の辞書を調べると、「きずな」には「馬などの動物をつないでおく綱」という意味もあると書かれている。こちらの意味だったら、「羈絆」で問題無い。

「羈絆」は人間関係や人の感情に関しては使わないはずなんだよな。
でもいつの間にか感情に関してもつなぎとめる「羈絆」が広まっている。例えば「NARUTO」関係の「絆」の中国語表記はみんなそれで広まっているから、どこが最初なのか今となっては分からない。

字幕組に限らず翻訳する時に文芸的な、カッコイイ言葉や言い回しを使おうとする傾向があるし、その結果という気もする!

そして多用されて一気に広まると……
日本ではほぼ全ての娯楽ジャンルで「絆」という言葉が使われている感もあるからね。便利な訳語が出たら飛び付くのも分からなくはない。

そう言えば、私は「絆」と似たような意味もある「縁」をどう訳せばいいか頭を抱えたことがあるな……こういうのって説明的に訳したらカッコ悪くなるから、短いフレーズの単語が理想なんだよね。

ところで、日本語の「絆」の本来の意味ってどんなものなの?
私はずっと「羈絆」の方で認識していたから不安になってきた。

現在のアニメとかで使われている「羈絆」なら問題無いと思うよ。
例えば「NARUTO」や「ONE PIECE」における「羈絆」は、絆の主要な意味での使われ方だろう。

言ってみればナルトとサスケの関係みたいなもんだな。
友情や愛情や家族の情や共同体の情など、割り切って考えることが難しい関係。

私は「秒速5センチメートルの主人公」の心にずっと残っていたものだと思っている。

場合によっては愛情よりも更に深いものになるのが「絆」だ。

それと一方的な物じゃなくて、双方向、多方向的なものであるのも重要かな。一方的なものだと片思いだ。

友好関係だけでなく、ある種のライバル関係や競争関係における絆というのもあるな。自分が認める価値のある相手、自分と比肩するような人間との絆。、

すまない、ちょっと混乱してきた。
いまいち分からんのだが、相手を評価しているようなライバル関係というのは絆に入るのか?例えばラインハルトとヤン・ウェンリーのような。

「銀英伝」だと絆的な関係は双璧やヤン艦隊、ラインハルトならキルヒアイスとの関係じゃないかな?
濃淡や長さはそれぞれだろうけど基本的には一定の期間を共に過ごす、行動するというのも条件になると思う。

でも「金だけの絆」みたいな使い方も聞いたことがあるんだが?

いざ定義を考えるとなると、逆に混乱してくるな。
みんな、なんとなくは理解していると思うんだが……



とまぁ、こんな感じで。
現在の中国で「絆」の訳語とされることの多い「羈絆」の意味や解釈、元になっている日本語の「絆」の意味などイロイロな意見が出ていました。

そもそも「絆」という言葉に関しては日本でも最近になって特に多用されるようになってきていますし、使い方に関しても微妙に変化しているような所もありますから、きっちりした意味を定義するのは難しいのかもしれませんね。
ですがアニメや漫画といった日本のコンテンツにおいて現在進行形で頻繁に出て来る言葉ですから、翻訳する人達の苦労はまだまだ続きそうです。

それにしても、翻訳に関しては当ブログもかなりイイカゲンなので、こういった考察を読むたびにもう少し気をつけねば……と考えるのですが、実際はなかなか上手くいかないのがなんともかんとも。


とまぁこんな感じで。
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