以前の記事
刀剣乱舞、中国向けベータ開始直後に日本のコラボイベントで靖国神社が入って炎上
に関してイロイロとネタのタレコミや質問をいただいております。

この件に関して知り合いの中国オタクの方と話した際に、日本のコンテンツの中国展開における定番の問題として見たり、
「日中間のコミュニケーションにおける基本的な問題としても見ることが出来る」
という話も出て来たので、今回は個人的な印象によるまとめのようなものを。
(ただ、私自身はこの件に関してきちんと追いかけたわけではなく又聞きによる所も多々ありますので、間違っている部分に関してはツッコミ&情報提供をお願いいたします)

まずこの問題、中国のファンの方々の反応が非常に強烈なモノになっているのはなぜかというと、
「明確に靖国関係というレッテルを貼られた場合、中国では作品として終了」
ということになるので誇張でも何でも無く
「中国国内における作品、ジャンル存亡の危機」
だという事情があります。日本から突如飛んできた致死級の爆弾のようなものだとか。

中国では「たかが娯楽作品だから」と遠慮なく潰しに来ますから、規制や自粛の嵐に巻き込まれて最近オープンベータの始まった中国国内向け版のゲームや昨年10月に新作アニメとして正規に配信されている「花丸」が消えるだけでなく、作品の扱いそのものが中国のネットから消される、作品を好きであると公言するだけで叩かれ、ファンはしばらく活動を自粛しなければならなくなるといった可能性も否定できません。

実際、中国では日本のコンテンツに限らず過去にも政治とその影響により社会の槍玉にあげられて消された作品やジャンルがイロイロとありますし、海外系コンテンツということでも最近の中国国内における韓流に対するアレコレを見ればどんなことになるかは容易に想像できるかと。

そういった事情から中国のファンの方々が慌てて日本側にアプローチをかける、正規で遊んでいるので運営にクレームをつけるなどの動きが出ているそうなのですが、それと同時に事態を悪化させているというか、
「問題に燃料を注いで炎上させ政治的な意味合いを持たせてしまっているのが主に中国のファンである」
というのもこの件に関する難しい所でしょうか。

中国の方からはこの問題に関して
「日本はゲームに政治を絡めないで」
といった発言が出たりしているようですし、観光系のイベントであり千代田区が関係しているという点から中国では政治的なイベントだと勘違いして暴走している節もあるのですが、日本からすれば
「観光協会が企画した花見系のイベント」
でしかありません。中国への展開を抜きにして考えれば、作品の題材的にも違和感のある組み合わせではないという話も聞きます。

更にこの件に関しては中国のファンの一部に
「炎上を防ぐよりもまず話を広げよう」
「うやむやにされないように問題を拡大しよう」
としている流れがあり、それに加えて日本語で日本のネットに発信されている情報が中国の背景事情の説明よりも、靖国神社に関する中国の「公式見解」による批判やアピールが目立つというのが問題を更に複雑にしている感もあるそうで……

中国オタクの知り合いとこの問題についてグダグダと話していた際に、
「この流れは日中間のコミュニケーションにおける基本的な問題という見方もできるので、今後別のコンテンツにも似たような事態が発生する可能性がある」
という話も出て来ました。

中国オタクの方曰く
「中国での交渉は基本的に相手に要求を押し付けるように、高圧的かつストレートな物言いで大げさにアピールして相手を追い込もうとする。そして双方の押し問答により最終的な折り合いをつける」

「中国の感覚で見ると、日本人同士の交渉は中国と真逆で要求を相手が察することを期待しつつ、丁寧な物言いで実際の状況を遠回りに伝えて相手の出方を待つように見える」

「中国を『押し合い』とするなら日本は『引き合い』そして、この二つの交渉スタイルがぶつかるとデッドロック状態になってしまう……」


とのことで、これに関しては私も非常によくわかります。
今回の件はこの日本と中国の二つの交渉スタイルの衝突的な所も見て取れるので、
「もしかしたら中国側が中国そのままのノリで日本語の発言を投稿した時点でアウトだったのかもしれない……」
という話も出ました。

また別の方からは「これをやったら中国で遊べなくなる。刀剣男士に会えなくなってしまう!」といったような形で「中国ではシャレにならない」という点を中心に伝えて「キャラへの愛」を強調すれば、日本でもう少し味方が増えたのでは……といった話が出たりも。

ちなみに業界事情にも詳しい方だったので今回の件に関する中国サイドの見方はどんな感じになりそうか教えていただいたのですが、
「まず重要なのは事態の鎮静化。これが中国でのイベントなら消防や警備上の理由で場所の変更や一旦中止とやれますが、日本の国家権力と個人の権利のバランスでそういうことはできるのでしょうか?」

「幸い、政治的な狙いでやっているわけではないのはこちらからもよく分かるので、事態を悪化させなければオタク内、ジャンル内で終わることも考えられます」

「過去の例としては『提督の決断』の問題が近いかもしれません」


とのことでした。
政治的な方面に波及する危険性はそこまで高くないという見方もできるそうですが、作品へのダメージは避けられそうにないのがなんともかんとも。


それにしても今回は靖国神社ということで中国側の反発が激烈になっていますが、ここまでいかなくとも中国に展開した日本のコンテンツに関する政治や歴史関係の炎上案件やそのリスクは珍しいものではありません。

最近炎上した中ではFGOサーヴァント予想の川島芳子の件などもありますし、現在の環境では作品本体だけでなく、関連するイベントや作品関係者の言動に関しても炎上のリスクが大きくなってきているかと思います。
FGOサーヴァント予想「川島芳子」、中国で炎上

こういった政治や歴史に関する認識の違いによるリスクの具体的な所については日本側でも中国側でもきちんと意識されているケースは少ないので、結構な火種が燻っている気がします。
私の手を出している作品の範囲に限っても、この1年程の間に「中国に広まったらマズイ」と思われるケースがちょくちょくありました。

現在の環境では日本のコンテンツの中国進出には炎上のリスクが上がるという面がありますし、それを意識することにより日本国内の創作活動の手間が増えたり自粛や制限がかかってしまいかねないというめんどくさい面もあるのではないかと思います。

また、オタク系のコンテンツに関しては同じ作品同じジャンルについて語れるので、ある程度感覚的に「通じる」部分が多い上に関係者に若い世代が多いのもあってか、商業的な場面でも
「双方の常識が全く異なる」
という分野や話題を意識しないで進めてしまうケースが少なくないようです。

現在の中国社会特有の「敏感な扱い」のアレコレに関しては中国側からの具体的な説明がないと日本側には分からない、対応のしようが無いといったケースも多いのですが、そこを明確にしないまま進んでしまうことが少なくないという話も聞きます。

最近の中国ではネットの規制や検閲もあってか、ネット上のフォーラムやSNSに限らず、友人関係やビジネス関係のやり取りであっても、その手の敏感なワードに関しては触れないようにする、話題にする際にも隠語や別の言い回しを使ったりするといった傾向が強くなってきています。

その為、「今の中国」のこういったリスクに関する見解や扱い、それも具体的、個人的な物に関してはいよいよ外からは分かり難い形になっていますし、中国の「敏感な事情」に関して日本から調べるのはかなり困難になっているのも間違いありません。
そんな訳で中国側がこの手の敏感な事情に関する日本側の配慮を「説明なしでもやってくれる」と期待しても、それは無理な話となってしまうようですね。

私の知っている限りでも、中国では扱いの難しいテーマが含まれる某イベントにおいて大変なことになりかけたケースがあります。
そのイベントでは日本側も「中国では扱いの難しいテーマである」と知っていたので目立つ部分に関しては調整したものの一部日本の感覚でやった所がありそれに関しては
「中国側から何も言われないから大丈夫なのだろう」
「あえてお金を払おうとするくらいだから、中国側も分かっているのだろうし」
と考え、中国側もその手の事情を説明したのは最初の方だけで後は
「わざわざ言わなくててもこれは常識だし、ある程度配慮してくれるだろう」
といった対応だったことからすれ違いが発生してしまったそうで……

最近はコンテンツを単純に売り買いするのではなく、関連商品やサービスの動き、特にソーシャルゲーム関係の動きがいよいよ活発になっていますし、日本から中国へ或いは中国から日本へという動きもかなり増えています。

今回の「刀剣乱舞」の件に限らずソーシャルゲームの展開に関しては現地運営という要素からこれまでとは違ったリスクが出て来ているようなので、今後しばらくの間は予想外の方向からのゴタゴタが発生しそうな気もしてしまいますね。


グダグダと長くなってしまいましたが、
とりあえず、こんな所で。
例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

3/15追記修正:誤字脱字修正及び抜けていた文章を追加しました。ご指摘ありがとうございます。